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サービス樹木とともに都市景観の未来を切り拓く
事業部門
グリーンメンテナンス部門、ツリーリスクアセスメント部門、ランドスケープコンサルティング部門の3部門が連携し、専門知識と技術を融合して、中⾧期的に植物を育成・管理します。これにより、景観や資産の付加価値を創造します。
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飛行機で八丈島に渡り、今日から一週間の樹木診断が始まります。
宿のオーナーに島での動き方を伺ったところ、「護神の交差点を起点にするといい」と教えていただきました。地図を広げてみて納得しました。八丈島は八丈富士と三原山という二つの火山がくっついてできた島で、その二つの山に挟まれた低い平地に、役場も空港も港も集まっています。護神はちょうどその真ん中あたりでした。北へ向かうにも南へ下るにも、一度ここに戻ってくれば距離感が狂わなそうです。
それにしても「護神」というすごい名称が気になって少し調べてみました。交差点のすぐ脇に護神山という小さな丘があり、そこから来ているようです。
この丘、八丈富士の側火山のひとつで、丘に見えて火口も残っているのだそうです。戦時中は軍の司令部が置かれていたとも伺いました。「護神」の字がなぜ当てられたのかまでは資料に行き着けませんでしたが、火山の丘がそのまま信仰の場として残ってきた土地なのかと思います。
樹木医としては、この成り立ちも気になります。スコリアが積もってできた丘は水はけがよく、そこに立つ樹木の姿は、潮風をまともに受ける海沿いや、湿り気の残る谷筋の樹木とは違ってきそうです。
明後日からは天候も崩れそうなので、段取りをしっかりやっていきたいと思います。
9月28日、日比谷公園で開かれる「暮らしに役立つ樹木講座 ~樹木で生活を豊かに~」で、講師を務めさせていただくことになりました。
主催は東京都公園協会様で、東京都都市緑化基金の講座として、樹木が私たちの暮らしにもたらすさまざまな効果について学ぶ内容です。
樹木の木陰は、日差しを遮るだけでなく、日射で熱くなった舗装や建物の表面から出る熱もやわらげてくれます。昨今の夏の暑さの中、現場で樹木の下に入ると、日なたとの違いを体で感じます。ただ、この効果は樹木が健全に育っていてこそのものだと思っています。
当日は、樹木による木陰の効果と合わせて、実際の樹木の管理事例についてもお話しさせていただく予定です。2018年に会社を設立してから、植栽管理、樹木診断、植栽コンサルティングを一貫して手掛けてきました。その現場で見てきたことを、なるべく分かりやすくお伝えできればと考えています。
暑さ対策や住環境の向上に関心のある方、マンションや集合住宅の管理に携わる方、自治体職員の方などに向けた講座ですが、身近な樹木に少し関心のある方にもお気軽にご参加いただけたらと思います。
開催日時
2026年9月28日(月)
13:30〜16:30(受付は13:00より)
会場
日比谷公園 緑と水の市民カレッジ 2階
講習室(東京都千代田区日比谷公園1-5)
定員 先着30名
受講料 無料
お申し込み 下記ページ内の「参加申込フォーム」から
主催・お問い合わせ
公益財団法人東京都公園協会
公園事業部 公益事業推進課 緑の基金担当
TEL:03-5510-7183(平日9:30〜17:00)
https://www.tokyo-park.or.jp/public/greening/news/2026/park_info.html
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
素敵な芝生のお庭に植えられた古木のオリーブの手入れに伺いました。
オリーブアナアキゾウムシ対策の薬剤散布と、樹皮がはがれてカビが出ていた部分の確認と対応をさせていただきました。
近年植栽されたオリーブへの被害が多くなってきている、オリーブアナアキゾウムシは日本在来の虫で、オリーブが入ってくる前はネズミモチやイボタノキなど、同じモクセイ科の樹木についていたと考えられているそうです。成虫が幹の地際に卵を産み、孵った幼虫が樹皮の下を食い進んで形成層を傷めます。被害が多いと枯れてしまうこともあります。成虫は3年ほど生きることもあり、冬以外は産卵できるとされていますので、春に一度気をつければよい虫ではないと思っています。
対策の基本は幹への薬剤散布で、今回はオリーブに登録のあるダントツ水溶剤を使いました。地際の幹に産卵し、幼虫が樹皮の下にいる虫ですので、かけるのは葉より幹が中心になります。根元から幹、枝の分かれ目まで、薬液が流れて樹皮が濡れるくらい行います。成虫は夜行性で、昼間は株元の下草などに潜んでいるそうなので、根元まわりをすっきりさせておくことも大切だと思います。
樹皮がはがれた箇所にカビが出ていた部分は、浮いた樹皮を取り除いて内側に食害の跡がないかを確かめ、乾かしてから殺菌癒合剤を塗りました〕。カビそのものよりも、そこに湿気がこもらないかを気にしています。
オリーブは丈夫な樹木ですが、根元だけはこまめに見てあげる必要があると思います。根元に木くずのようなものが出ていたら、虫が入っている合図かもしれません。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
大島での樹木診断を終えたあと、神津島での診断に伺いました。神津島でも島の中をいくつか見て回り、特に印象に残ったのが、港のすぐ上の丘に鎮座する物忌奈命神社(ものいみなのみことじんじゃ)です。石段を上がった先には、タブノキの参道が続いています。
境内には、ご神木のイチョウのほか、サクラ、タブ、イブキ、マツ、マキが立っていました。観光協会の資料では、このイチョウは樹齢169年(2024年時点)とされ、江戸の終わりから明治の初めの頃に植えられたと伝わっています。海のすぐそばで、これだけの大きさに、しかも健全に育っていることに、まず驚きました。
一般的にイチョウは潮風に弱い樹木とされています。2018年の台風24号のあと、鎌倉や横浜のイチョウ並木が黄葉を待たずに茶色く枯れ込んだのを覚えている方もいるかと思います。葉の薄い落葉樹は、葉の表面に付いた塩水に水分を奪われて枯れてしまうとされています。イチョウは根が深く、風そのものには比較的強い樹木ですが、葉は潮に弱い性質を持っています。
私たちの見立てとしては、社殿の背後に続くシイやタブノキ主体の「社叢(しゃそう)」、いわゆる鎮守の森が、海からの風を受け止める防風壁の役目を果たしていて、その内側に立つイチョウまでは潮風が届きにくくなっているのではないかと思います。
境内のタブ、イブキ、マツ、マキは、どれも海辺で古くから頼りにされてきた潮風に強い樹種です。マツやマキは海辺の防風林や生垣に使われ、イブキは海岸の岩場に自生し、タブノキは海沿いの照葉樹林をつくる樹木です。潮に強い常緑樹が風と塩を引き受け、その内側でイチョウとサクラが育っている。森が自分の内側に穏やかな環境をつくる「微気候」の保護の、よい例なのだと思いました。
もちろん、一度の見学で言い切れることではありません。土の深さや水の通り方、これまでの手入れの積み重ねなど、ほかにも理由はあるはずです。ただ、樹木はその立ち姿に、その場所の環境と人の手入れの跡をそのまま残します。この境内では、人が守ってきた森が、今度は一本のご神木を守っているように見えました。
神津島観光協会は、島の樹木と人の暮らしの物語を「神津の森」としてまとめ、樹木巡りのマップまで作られています。昔はこの境内で、おじいさんたちが漁の網を編み、子どもたちが虫取りをして遊んでいたそうです。石段や鳥居の石材は、氏子の皆さんが人力で運び上げたものだとも書かれていました。樹木を景色としてではなく、暮らしの一部として語っている島だと感じました。
神社のあとは、前浜海岸にも寄りました。港の南に白い砂浜が続いています。大島で見てきた黒い砂とは、まるで色が違います。大島が玄武岩の島で、神津島は流紋岩の島だそうです。岩の白さがそのまま砂の白さになっていました。
伊豆の島々をつくった神々がこの島に集まり、水を分け合ったという「水配り」の伝説が、神津島の由来だそうです。同じ伊豆諸島でも、島ごとに岩が違い、砂の色が違い、風と潮の当たり方が違います。樹木の育ち方も、その島ごとに環境で想像しないといけないのだと、前浜の白い砂を見ながら思いました。
週明けからは八丈島に渡り、樹木診断に入らせていただきます。
八丈島は常春の島とも呼ばれる温暖な島で、幹を立ち上げて樹木のような姿に育つシダ植物・ヘゴが自生しています。その自生地は国の天然記念物「ヘゴ自生北限地帯」に含まれ、樹木状に育つヘゴの分布としては国内の最北にあたるそうです。花束の添え葉として広く使われるフェニックス・ロベレニーも、国内産のほとんどが八丈島で育てられていると聞きます。この温暖な環境で樹木がどんな立ち姿を見せているのか、樹木医としてはそこが楽しみです。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
小田急線の線路跡につくられた下北線路街で、葉の生理状態を測る機器「LI-600」のデモンストレーションに参加させていただきました。主催は一般社団法人シモキタ園藝部様で、樹木医の佐々木知幸さんのご提案から企画された会だと伺いました。
私たちが普段、診断で手にしているのは、幹の内部の腐朽や空洞を診る機器が中心です。今回の「LI-600」は幹ではなく葉に挟んで使う機器で、気孔を通したガスの出入りと、葉が受け取った光をどれだけ光合成に使えているかという二つの側面を数値にしてくれます。
私たち樹木医が樹木の外観から判断している葉の色や量といった目に見える変化とは別に、葉の中で起きている働きそのものを見せてくれる、とても興味深い機器です。
初めに、河合菜採樹木医から診断の属人性と主観の問題について、佐々木樹木医から伊豆大島の事例と葉の構造・光合成のしくみについてお話があり、続いてメイワフォーシスさんから機器の仕組みの説明を受けて、実際の計測へ移りました。
河合さん、佐々木さんのお話は普段から現場で樹木と向き合っているからこそ疑問や課題に感じる部分を言葉にしてくださっていたのでとても共感できる事が多かったです。
フィールドは代田さくら広場からボーナストラック、そしてシモキタのはら広場。植栽環境などの影響で生育が弱り、シモキタ園藝部の皆さんが樹勢回復の手入れを続けてこられた樹木と、旺盛に育っている樹木の葉を同じ機器で測り、結果を見比べました。
生育状態も管理履歴も違う樹木を同じ物差しで測って並べてみるという組み立てそのものに、日頃の観察と科学的な測定を行き来しながら樹木を理解しようとするシモキタ園藝部の姿勢が表れていると思いました。ご案内にもありましたが、「LI-600」は測定値だけで樹木の健康・不健康や樹勢を判定する機器ではなく、樹冠や枝葉、根系、土壌、生育環境の観察と組み合わせて、これからの管理を考えるための手掛かりの一つとされています。一度の診断はその時点の状態を切り取ったものにすぎない、という普段の現場の実感とも重なっていました。
今日の話を聞きながら、どうしても昨今の夏の暑さと結びつけて考えていました。暑さと乾きが強まると、樹木は水を失わないように気孔を閉じていきます。気孔が閉じれば蒸散が減り、葉から熱を逃がす働きも、光合成のための二酸化炭素の取り込みも一緒に弱まります。葉の色が変わる、葉を落とすといった目に見える変化の前に、まずこの見えないところで変化が起きているはずで、「LI-600」が測っているのはその部分です。海外の研究では、猛暑の時期でも土の深い所に水があれば、樹木は気孔を絞りながら蒸散を保ち、周囲を冷やし続けることが報告されているそうです。裏を返せば、植え桝が小さく土が締まった都市の樹木ほど、暑さの中で先に気孔を閉じやすいということになると思います。
これから先も夏の暑さがこの調子で続くのであれば、樹木の診断も、幹の腐朽や空洞といった安全性の側面に加えて、葉がどの程度働けているかという生理の側面を数値で持っておくことが必要になってくると考えています。
たとえば、樹勢回復の手入れをした樹木の葉が翌年の夏にどう変わったか、同じ樹種でも日当たりや土壌の違いで気孔の開き方にどれだけ差が出るかといった比較を季節をまたいで重ねていけば、どの樹木にいつ水をやるか、どこの土を先に改善するかといった判断の根拠が、人の目に加えてもう一つ増えることになります。
数値は一瞬を切り取るもので、時間帯や光の当たり方でも変わりますから、扱いには慎重さが要ります。それでも、日頃の観察と測定を行き来しながら樹木を診るという今日の考え方は、これからの植栽管理の基本になっていくと思いました。
樹木医としてお付き合いのある佐々木樹木医、河合樹木医、笠井樹木医、そしてシモキタ園藝部の皆様と、研修の合間に意見を交わせたことも今日の収穫でした。皆様、機器のご説明をいただいたメイワフォーシス様、貴重な機会をありがとうございました。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
野増大宮の椎樹叢
鳥居の先は、森でした。
伊豆大島での樹木診断の折に、野増の大宮神社に参拝してきました。一の鳥居から石段を上るほどに木々の影が濃くなり、昼でも薄暗いほどの椎の森が、社殿までずっと続いていました。
三原山の度重なる噴火の降灰を避けて、室町時代に今の地へ遷ってきたと伝わっています。溶岩をかわして生き残った「サクラ株」とは逆に、こちらは人と社殿が動いた、火山の島のもう一つの答えだと思いました。
参道から社殿のまわりには、スダジイを主にイヌマキやタブノキの驚くほど大きな巨木が群れ、1939年に「野増大宮の椎樹叢」として東京都の天然記念物に指定されています。
幹周り7mに達すると紹介される椎の古木もあり、縄の巻かれた御神木は、幹の一面が大小のこぶに覆われていました。もはやその形状は樹木医といえど長い年月に受けた傷を、どのようにその都度ふさぎ、包み込んできた痕なのか理解が難しい様相をしていてとても印象的でした。
一方で、この森が2019年9月の台風で大規模な倒木被害を受けたことも記録されています。実際に歩くと、倒れたままの樹木や折れて枯れた大枝がそのまま残されていて、そのときの風の力を肌で感じる、大迫力の環境でした。
ただ、倒木の跡は森に光の窓を開けます。明るくなった足元からは次の世代が育ち始めるはずで、被害の痕は、同時に森のやり直しの始まりでもあります。社寺林の管理に関わる私たちにとっても、天然記念物の森が嵐とどう付き合っていくのかを考えさせられる時間でした。
こぶだらけの幹も、折れた枝も、横たわる倒木も、この森が生きてきた時間の重みを感じました。噴火から逃げてきた社殿を、傷を負いながらなお立ち続ける樹々が守っている。その組み合わせに、島の千年の時間に思い巡らせることができました。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
大島での樹木診断を終えたあと、新島に渡り、こちらでも樹木診断をさせていただきました。
診断の合間に島の総鎮守である十三社神社へ。十三社神社は「明神さま」とも呼ばれ、伊豆諸島で最大規模の神社とされています。
境内で目にした樹木は、スギ、スダジイ、タブノキ、マキ、ソテツ、サクラ。スギやマキ、ソテツ、サクラのように人の手で植えられたと思われる樹木と、スダジイやタブノキのようにこの島本来の樹木が、同じ境内に立っていました。
新島村博物館の研究紀要によると、新島の自然植生は「照葉樹林帯」に属し、スダジイ林にタブノキやホルトノキ、ツバキが混じる林が島のもともとの姿だそうです。神社の背後にそびえる宮塚山の東側斜面には、人の手が入らないまま残ったスダジイの自然林があるとのことでした。
「鎮守の森」は、その土地本来の樹木が長く守られてきた場所でもあります。社殿がいまの場所に移ってから370年あまり。神社とともに育ってきた樹木が、いまの神域の空気をつくっていると感じました。
幹に大きな樹洞を抱えながら、再生を続けている樹木もありました。樹木は中心が朽ちても、外側に新しい材を重ね、空洞の縁を巻き込み、残った幹から新しい枝を伸ばしながら生きていきます。空洞があるからすぐに危ないというわけではなく、残っている材の厚みや健全さ、根元の状態、樹勢を合わせて見ていくのが、私たち樹木医の診断の基本です。
鳥居とお社の背後に見える岩肌は、庭園でいう「借景」のように山を景色として取り込んでいるようでもありました。日本には古くから山そのものを神体とする信仰があります。十三社神社の由緒がそうだと伺ったわけではありませんが、そのような雰囲気を感じる場所でした。
神社をあとにして前浜海岸へ。白い砂浜が続いています。新島の砂が白いのは、島の岩の多くが流紋岩でできているためだそうです。宮塚山は約1万7千年前の噴火でできたと聞きました。あの岩肌も足元の白い砂も、もとは同じ火山の営みで、そう思うと、鎮守の森の樹木たちが生きているのはずいぶん短い時間なのだなと思いました。
前浜海岸の一角にある「ボロ桟」にも立ち寄りました。穴の開いた古い桟橋で、夕暮れになると地元の方々も集まる場所だそうです。古くなったものが名前ごと親しまれ、景色の一部になっているのは、樹木との付き合い方にも通じるところがあると思いました。
都内の現場が多い私たちにとって、山と森と社と海が一続きになっている風景を見られたのは、とてもいい時間でした。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
新宿区のお寺様で、樹木医チームが境内の桜を「ピカス」で診断させていただきました。
ピカスはドイツ生まれの樹木診断機器で、今は「Resi PD」と同じIML社の製品になっています。私たちが使っているのは、音波で測る「ソニックトモグラフ」と、電気抵抗で測る「ツリートロニック」の2種類で、今回はこの2台を合わせて使いました。
機器の前に、まず目視で外観全体をを見ます。樹皮の様子、木槌で叩いた音、根元まわりの状態から、幹のどの高さを測るかを決めます。そのうえで幹のまわりに細い釘を打ち、釘同士の距離を測って断面の形を記録します。この形の測り方が粗いと、あとで出てくる画像もずれてしまうので大事な工程です。
音波のピカスは、釘にセンサーを取り付け、電子ハンマーで釘をひとつずつ軽く叩いて、音が幹の中を伝わる時間を100万分の1秒の単位で測ります。健全な材では音がまっすぐ速く伝わり、途中に腐朽や空洞があると、音はそこを避けて遠回りするぶん到着が遅れます。その時間と断面の形から音の速さの分布を計算し、最も速く伝わった部分を濃い茶色、最も遅かった部分を青として、その間を段階的な色で表した断面図にします。音の速さは材の硬さと密度で決まり、どちらも材の健全さと関係が深いので、空洞の幹の残りの壁の厚さや腐朽の広がりを読み取る手がかりになります。
メーカーの説明では、根元のほか、剪定の切り口や枝分かれ部の診断にも有効とされています。豆知識的なお話ですが、桜は枝の切り口から腐りやすい樹種と言われていますので、古い切り口を抱えた桜には向いている機器だと思っています。
ただ、音波には不得意なところもあります。幹の中に割れがあると、腐朽と同じように音の伝わりが遅くなって画像がぼやけ、腐朽なのか、空洞なのか、割れなのかの区別がつきにくくなります。
そこで音波のセンサーを外し、同じ釘にクリップをつなぎ替えて、ツリートロニックで電気抵抗を測ります。電気の通りやすさは、材の中の水分と、そこに溶けているイオン、細胞の構造や成分で変わります。腐朽が進んでいるところは水分を多く含んで電気が通りやすくなっていることが多く、材の硬さにまだ響いていない早い段階の腐朽が、音波より先に抵抗の低い場所として写ることがあるとされています。乾いた空洞や割れは逆に、電気が通りにくい場所として写る傾向があります。
2枚を重ねると、音は速いのに抵抗が低いところは、まだ固いけれど腐朽が始まっているのかもしれない、音が遅くて抵抗が高いところは空洞か割れか乾いた腐朽、どちらも低いところは湿った腐朽、というふうに読み分けの手がかりが増えます。
とはいえ、メーカー自身が書いているとおり、抵抗の画像だけで傷みの種類を言い当てられるわけではありません。電気の通り方は樹種ごとに健全な状態でも癖がありますし、地際に近い高さでは根に向かって幹の形が変わるぶん計算が乱れやすいので、その樹種の普段の姿や外観の所見と照らし合わせての分析が必要です。
2枚の画像を重ねても、それで今後の方針が決まるわけではありません。写っているのは測った高さの断面ですし、樹木全体の樹勢、根元の状態と合わせて考えていきます。高さを変えて何面か測れば、腐朽が上下にどう広がっているかも立体的に見ることができます。
診断で分かるのはその時点の様子ですから、何年かおきに同じ高さで測って変化を見ていくと、判断の材料が増えていきます。お寺様とご相談しながら、この桜との付き合い方を考えていければと思っています。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
このところ、管理組合の皆様や自治体のご担当者から、クビアカツヤカミキリの件でご相談を多くいただくようになりました。
実は、卵はブラックライトで見つけられます。どこまでが研究で確かめられていて、どこからがまだ分かっていないのかが少し混ざって伝わっている印象もありますので、自分自身の整理も含め出どころも添えていこうと思います。
もとになっているのは栃木県農業試験場の研究です。病理昆虫研究室の春山直人氏が、令和4(2022)年度の研究として、この虫の卵に紫外線を当てると青白い蛍光を発することを見つけられ、「ブラックライトを使用したクビアカツヤカミキリ卵の簡易検出法の開発」として栃木県農業試験場研究成果集第42号に報告されています。その後、「クビアカツヤカミキリ卵における生物蛍光の発見とブラックライトによる簡易検出法」として、月刊「植物防疫」第78巻第3号(2024年)に総説がまとめられました。
なぜ光るのかというと、卵の成分が何かと化学反応を起こしているわけではないようです。紫外線のエネルギーを吸って、その一部を目に見える光として返しているだけで、これは蛍光と呼ばれる現象になります。深野和裕氏の「発光・蛍光・リン光 高等学校における光る物質の化学」(化学と教育65巻9号、2017年)を読んでみると、光る現象がルミノール反応のような化学発光と、紫外線で励起されて光る蛍光とに分けて説明されていて、クビアカの卵は後者にあたります。ですのでライトを消せばその瞬間に光は止まります。光を蓄えて後から発光する夜光塗料とは別のものです。
波長には向き不向きがあるようです。栃木県の成果集では、市販のブラックライトのピーク波長がおおむね365ナノメートルから405ナノメートルであることを踏まえて、365、375、395、405の4種類に、紫外線をほとんど含まない450ナノメートルを加えた5種類のLEDで検証されています。結果は365から405までは蛍光が見られ、450では見られなかったとのことでした。紫外線から紫の領域で励起される性質が、たまたま市販品の帯域に収まっているということかと思います。特別な機器を用意しなくても確認できるのは、有り難い偶然だという気がしました。この研究は、若齢の幼虫はフラスをほとんど排出せず、量が増えて気づく頃には樹皮の下が広く食害されている、という遅れをどうにかするために、その手前の卵を捕まえようとして始まったものです。
効率については、同じ成果集に佐野市のもも園での比較が載っています。調査者3名がそれぞれ5本ずつ、計15本の主幹部と主枝の下部30センチほどの範囲を調べたところ、肉眼では全体で1個しか確認できなかった卵が、紫外線を当てながらの調査では212個確認できたそうです。
使ううえでの注意も成果集に書かれていました。365ナノメートルのLEDは可視光をほとんど含まないため、自分がどこを照らしているのか分かりにくいこと、光源が弱いと日中の明るい場所では見えにくいこと、照射範囲が狭いと調査に時間がかかること。日中でも日陰であれば蛍光は確認できるそうです。それから、裸眼で長時間ブラックライトを使うと目を傷める危険があるため、紫外線カットゴーグルなどの使用が勧められています。
農林水産省と環境省は令和8年7月31日に対策本部を設置し、農林水産省の公表では令和8年8月現在、22都府県で発生が確認されているそうです。私たちがお預かりしている団地や公園にも、サクラやウメ、モモは当たり前に植わっています。ブラックライトによる卵の調査は、成虫への薬剤散布や被害樹の処理、フラスをもとにした幼虫の駆除と組み合わせて使う補助的な手段ではありますが、被害が出てしまう前の段階に手が届く数少ない方法かと思いますので、成虫の発生期にあたる6月以降の見回りに取り入れさせていただこうと考えています。
写真提供 川瀬さん
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
ここは火星か…!
伊豆大島出張の締めくくりに、早朝の「裏砂漠」を歩いてきました。
見渡す限りの真っ黒なスコリアの大地に朝の雲が影を落としていて、まるで火星に降り立ったようだ、というのが一緒に行ったスタッフの第一印象でした。一歩ごとにザクッと鳴る足元の音だけが響く、静かで圧倒的な風景でした。
島には「表砂漠」と呼ばれる一帯もあるのに、国土地理院の地図に「砂漠」と載るのは日本中でこの裏砂漠だけだと伺いました。三原山の度重なる噴火で降り注いだマグマのしぶきが大地を焼き、噴火のあとも強い風が吹き抜けて、植物の定着をなかなか許しません。しかもこの島は、わずか40年前の1986年にも、約1万人が1か月島を離れる全島避難の噴火を経験しています。裏砂漠の黒さは大昔の名残ではなく、いまも続いている火山そのものでした。一帯は国立公園の「特別保護地区」に指定されています。
それでも、緑はゼロではありません!
黒い大地のところどころに、「ハチジョウイタドリ」や「オオバヤシャブシ」が株になって身を寄せ合い、点々と小さな緑の島をつくっていました。遠くを眺めると、緑の島とスコリアの大地に水の道のようなものができていてまるで枯山水のような景観です。
この株のかたちには、ちゃんと理屈があります。
イタドリは地下茎を四方八方に伸ばして株を広げる植物で、スコリアの原では地上部よりはるかに大きな根系を育て、明け方の結露まで水として使っているとみられる、という研究結果があります。
私が歩いたあの朝の湿り気は、彼らの命綱でもあったのかと思いました。大きく育った株の下には枯れ葉が積もって土がつくられ、他の植物が住みやすくなっていく様子は、この島の一次遷移の調査でも報告されています。富士山では、イタドリの株が次にやって来る樹木の苗床になる「ナースプラント」の働きも知られています。オオバヤシャブシも負けていません。根粒で空気中の窒素を取り込んで痩せ地に足場を築く樹木で、隣の三宅島では、1983年の溶岩の上に最初に定着したのがヤシャブシの仲間だったという報告があるほどです。街の植栽管理では抜かれる側にまわることも多いイタドリが、ここでは緑の最前線に立っていました。なかなか見かけない光景に思わずしゃがみ込んで、しばらく見入ってしまいました。
高台に上がると、黒い砂漠の縁を囲むように島の森の緑が広がり、その先に海まで一望できました。素晴らしい眺めに、思わず声が出ました。そして気づいたのです。この出張で向き合ってきた島の緑は 、溶岩をかわして800年を生きるサクラ株も、切通しのスダジイも、クダッチの松並木も、みんな、こういう黒い裸地から始まったのだと。裏砂漠は島の緑の、まさに出発点の感じがしました。
火星のようだと思った大地は、歩いてみれば、森が生まれる現場でした。緑がゼロから森になるまでの道のりを、これほどまとめて見せてくれる場所はそう多くない気がします。樹木の仕事をしていてよかったと素直に思える、旅の締めくくりの朝でした。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
わたしたちの会社について
グリーンマネジメント
①自社で一貫した管理
②科学的な知見(アーボリカルチャー / arboriculture)と現場の融合
③長期的な植栽管理メンテナンスの計画/プランニング
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