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Service
サービス樹木とともに都市景観の未来を切り拓く
事業部門
グリーンメンテナンス部門、ツリーリスクアセスメント部門、ランドスケープコンサルティング部門の3部門が連携し、専門知識と技術を融合して、中⾧期的に植物を育成・管理します。これにより、景観や資産の付加価値を創造します。
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埼玉県内の伝統校で、シンボルツリーとして大切にされてきたクスノキ2本を樹木医が機器診断をさせていただきました。幹周はいずれも600cm近く。測定用のピンを1本ずつ打ちながら、あらためてその大きさを実感する一日でした。
この学校は明治期の開校から120年以上の歴史があり、2本のクスノキは創立当初から正門のあたりに立っていたと伝えられています。この2本は世代を超えて生徒たちを見守り続け、「川越景観百選」にも選ばれた、学校と地域の誇りとなっています。教職員やOBの方々からも診断中にたくさんお声がけをいただけ、皆様からとても愛されている樹木だということが伝わってきました。
樹高は20m超で、定期的剪定の手が入れられてきた、丁寧な手入れの跡がよく分かる樹木です。
クスノキは本来、本州では関東南部より西を分布域とする暖地性の常緑高木で、内陸のこの土地はその北限に近い環境にあたります。深く肥沃な土壌を好み、成長の早い樹種ですので、台地上の深い土壌が2本の長い歩みを支えてきたのだと考えています。
今回は各樹木につき高さの異なる2断面ずつ、ピカスの音波トモグラフィと、電気抵抗トロニックの2つの方法で内部を診ました。ピカスは、幹の周囲に打った多数の測定点の間を伝わる音波(応力波)の速さを計測し、断面の内部を画像として可視化する診断です。健全な材では音波が速く伝わり、腐朽や空洞があると音波はそこを迂回するぶん遅くなります。この速度の差を色分けして、断面の様子を1枚の画像に描き出します。ドリルで深く穿孔するタイプの機器と違い、直径3mmに満たない細い釘を浅く打つだけですので、樹体への負担はごくわずかで済みます。
今回は、この測定点を通常よく用いる12点から36点に増やしました。理由は幹の大きさです。開発元であるドイツの会社は、測定点の間隔をおおむね15〜40cmに収めることを推奨していますが、幹周600cm近い樹木を12点で測ると間隔は約50cmになり、推奨の上限を超えてしまいます。36点なら間隔は約17cmで、推奨の範囲に収まります。さらに、測定点が増えると音波の通り道の数も大きく増えます。測定点がn個あれば通り道はn×(n-1)÷2本。12点では66本のところ、36点では630本になります。通り道が密になるほど、内部の欠陥の位置や形、大きさをより正確に描き出せますし、大径木や断面の形が整っていない樹木でも輪郭を忠実に捉えることができます。大径木の診断では、施工内容と費用的なバランスはありますが、この手間を惜しまないことが画像の質にそのまま表れると考えています。
トロニックは、幹内部の電気の通りやすさの分布を画像にする診断です。木材の電気抵抗は含水率や水に溶けたイオンに大きく左右され、腐朽が進んだ部分は水分が多く電気が通りやすくなる傾向があります。このため、音波だけでは捉えにくい初期の腐朽や湿った領域を補って見ることができますし、亀裂の影響で音波の画像が不鮮明になった場合の読み解きにも役立ちます。音波と電気、性質の異なる2枚の画像を重ね合わせることで、空洞なのか、腐朽なのか、それとも健全なのかという見立ての精度が上がります。開発元や欧米の研究でも、この2つを組み合わせて評価する方法が勧められています。
解析結果は、報告書としてあらためて学校にご報告いたします。長い年月、生徒たちを見守ってきた2本です。これからも安全に立ち続けられるよう、丁寧に診てまいります。
ご依頼いただきありがとうございました。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
八丈島での樹木診断の合間に、島の屋敷の防風林を庭にした古民家カフェに立ち寄らせていただきました。
室内から見る庭の景色が見事でした。ヤシ、シュロ、オオタニワタリ、ドラセナといった南国の植物が並んでいながら、騒がしさはなく、落ち着いた空気の中でゆったりと時間が流れていきます。
お庭は女性オーナー様が自らこだわって手入れをされているそうです。草取りをこまめに、実生は間引きながら残せるものは活かし、枝を整理して、できるだけ自然に見えるように心がけていると伺いました。手を入れているのに、手の跡が前に出てこない。普段植栽管理をしている私たちにとっても学ぶところの多いお庭でした。
台風のときは、屋敷を囲む常緑樹の防風林に守られているとのことでした。八丈島は黒潮の影響で温暖で雨が多く、そのぶん周囲を海に囲まれて風の強い日が多い島です。
島の自然の森はスダジイやタブノキが主体の常緑広葉樹林で、風当たりの強い場所では森全体が低く抑えられているそうです。家のまわりでは古くから玉石垣を積み、その上の土手にツバキやシイなどを植えて風を防いできたと伺いました。
このお庭でもツバキ、マキ、タブ、モチノキなどが見られ、いずれも潮風に強く葉の密な樹木で、島の暮らしが選び続けてきた顔ぶれだと思いました。台風で折れた枝は薪として使っているそうです。一方で、風でよくしなるヤシやタケ類にも助けられていると伺いました。硬く風を受け止める樹木と、しなって風を逃がす植物の両方があって、この庭が守られているのだと思いました。
クロツグの実は、長い時間をかけてゆっくり赤く色づいていくそうです。島の恵みを使ったメニューもおいしくいただきました。
1週間の八丈島での樹木診断を終え、羽田空港に戻ってきました。大島から始まった島々での診断も、ひとまず一区切りです。島の樹木が風と付き合ってきた立ち姿を、この先の診断や提案にも活かしていきたいと思います。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
都市の価値について、最近とても強く感じていることがあります。
これからの都市に求められるのは、単に「新しくてきれいな空間」ではなく、その場所でしか得られない体験や、時間の積み重なりまで感じ取れる景観ではないかということです。
大きな樹冠を広げた一本の樹木や、夏の日差しをやわらげる深い木陰、その土地の記憶を受け継いできた並木は、お金だけではつくれません。
樹木を植えること自体はできます。
けれども、30年、50年、100年という時間を経た樹木がつくる景観や木陰は、今すぐ買ってくることができません。
そこには、どうしても時間が要ります。
雨の日も、猛暑の日も、台風の日も、その土地でやり過ごしながら生きてきた時間があります。
人が木陰でひと休みした記憶。
子どもが遊んだ記憶。
通勤や通学の途中、毎日のように見上げてきた景色。
季節が変わるたびに感じる、その街らしさ。
都市樹木の価値は、樹木の大きさだけでは測れないと思っています。
その樹木がつくる涼しさや心地よさ、街並みとの調和、人の記憶、土地の歴史まで含めて、ようやくその価値が見えてくるのだと考えています。
なかでも「木陰」は象徴的です。
真夏の都市では、数メートル先に木陰があるというだけで、人の歩き方や過ごし方が変わります。
立ち止まり、腰を下ろし、話し、休む。
木陰は、単に日射を遮るものではなく、人が都市のなかで過ごす時間そのものを豊かにしてくれる空間なのだと感じています。
だからこそ、これからの都市づくりでは、
「何を新しくつくるか」
だけではなく、
「すでにそこにある価値を、どう残し、どう育てるか」
という視点が、ますます大切になってくると思っています。
日本の都市には、長い時間をかけて育ってきた樹木や並木、寺社の森、公園、住宅地の緑など、お金だけではつくれない資産がすでに数多くあります。
足りないのは、樹木そのものではないのかもしれません。
そこにある木陰や景観、歴史の価値を私たち自身がきちんと理解し、正しく評価し、この先にも残していこうとする視点なのだと思います。
都市樹木は、単なる緑ではありません。
時間をかけて育てていく、都市の資産です。
そして気持ちのよい木陰は、その価値を私たちがいちばん身近に感じられる場所だと思っています。その木陰に向き合い、樹木を育て、残していける存在でありたいと考えています。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
まだ日が昇りきらない時間から、新大久保でセンペルセコイアの伐採作業に入らせていただきました。
車通りも人通りも多い通りで、日中はどうしても歩道も車道も落ち着きません。周囲への配慮を考えると作業できる時間帯は限られますので、今回は早朝からの着手としています。
ラフタークレーンのオペレーターの稲見さんと、クレーンを据える位置、アウトリガーの張り出し、どちら側へ旋回して荷を下ろすかを一つずつ確認しながらのスタートになりました。大きな樹木ほど、刃を入れる前の段取りに時間をかけます。
クレーンを使った伐採は、樹木を切る仕事であると同時に、吊り荷を扱う仕事でもあります。生きた樹木は水を含んでいて見た目よりも重く、枝の付き方によって重心も偏ります。玉掛けの位置を重心に対してどこに取るか、幹から切り離した瞬間に荷がどちらへ振れるかのイメージが重要です。クレーンは作業半径が伸びるほど吊れる重量が小さくなりますので、1回でどれだけの長さを落とすかも、木に登る前に決めておきます。
センペルセコイアは北アメリカ西部の海岸沿いを原産とするヒノキ科の常緑針葉樹で、セコイアメスギ、レッドウッドとも呼ばれます。原産地では樹高が100mを超えることもあるそうです。成長が早く、幹はまっすぐに立ち上がり、樹皮は厚く縦に深く裂けます。葉は枝に二列に並び、針葉樹ですが触っても痛くありません。自生地が霧の多い湿った環境ですので、乾燥は不得意な樹木です。
日本では風や雪の影響もあって20〜30mほどで収まることが多いようですが、それでも街中の限られた敷地には大きくなる樹種だと思います。植えられた当時の大きさと、20年後30年後の姿は、まるで別の樹木になります。
ご依頼をいただきありがとうございました。
先日アナウンスさせていただきました下記の講座につきまして、申込定員を超えるたくさんのご応募をいただきました。ありがとうございました。
今回の講座は申し込み受付終了となりますが、また今後も数回に分けて講座の実施予定がありますので都度アナウンスさせていただきます。
【受付終了】
9月28日、日比谷公園で開かれる「暮らしに役立つ樹木講座 ~樹木で生活を豊かに~」で、講師を務めさせていただくことになりました。
主催は東京都公園協会様で、東京都都市緑化基金の講座として、樹木が私たちの暮らしにもたらすさまざまな効果について学ぶ内容です。
樹木の木陰は、日差しを遮るだけでなく、日射で熱くなった舗装や建物の表面から出る熱もやわらげてくれます。昨今の夏の暑さの中、現場で樹木の下に入ると、日なたとの違いを体で感じます。ただ、この効果は樹木が健全に育っていてこそのものだと思っています。
当日は、樹木による木陰の効果と合わせて、実際の樹木の管理事例についてもお話しさせていただく予定です。2018年に会社を設立してから、植栽管理、樹木診断、植栽コンサルティングを一貫して手掛けてきました。その現場で見てきたことを、なるべく分かりやすくお伝えできればと考えています。
暑さ対策や住環境の向上に関心のある方、マンションや集合住宅の管理に携わる方、自治体職員の方などに向けた講座ですが、身近な樹木に少し関心のある方にもお気軽にご参加いただけたらと思います。
開催日時
2026年9月28日(月)
13:30〜16:30(受付は13:00より)
会場
日比谷公園 緑と水の市民カレッジ 2階
講習室(東京都千代田区日比谷公園1-5)
定員 先着30名
受講料 無料
主催・お問い合わせ
公益財団法人東京都公園協会
公園事業部 公益事業推進課 緑の基金担当
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
八丈島の夜の森で
光るキノコ ナイトウォーク
をしてきました!
ツアーは、まず暗闇に目を慣らすところからスタートしました。
ライトを消して、しばらく黙って立つ時間がないと、足元で光っているものにまったく気づけません。ガイドの方が案内してくださるナイトウォークで、会場は八丈町中之郷の「光るキノコの森」。
今年は7月25日から9月30日までの開催で、夜7時半から9時までの1時間半ほどでした。
月や星が出ていると、かえってキノコの光は見えにくくなるそうです。この日は曇り。ガイドの方いわく、条件としては申し分ない夜とのことでした。
普段、樹木医として向き合っているキノコは、幹や根株に出た腐朽菌の子実体です。それがどの菌で、樹木の内部がどこまで傷んでいるかの手がかりであって、八丈島の光るキノコは、同じキノコでもまったく別の世界でした。
教えていただいた話をいくつかご紹介します。
本来の見頃は6月頃で、気温が30℃を超えるとキノコは傷んで死んでしまうそうです。湿度の影響も大きく、出てきた子実体の寿命はおよそ3日。島の代表格であるヤコウタケは、ビロウという八丈島のヤシの仲間を好んで住処にしていて、その幹や枯れた葉柄から顔を出します。傘の大きさは1〜3cmほどで、暗闇でなければ通り過ぎてしまう小ささです。
なぜ光るのか非常に気になるところですが、ガイドの方によれば、はっきりとはわかっていないそうです。近年、光る仕組みそのものは化学的にかなり明らかになってきたと聞いていますが、何のために光るのかについては定説がなく、虫を呼び寄せて胞子を運んでもらうためではないか、という考えが有力とのことでした。腐朽菌の子実体も胞子を飛ばすために出てくるわけで、そこは同じなのだと思うと、少し見方が変わります。
八丈島は発光生物が多く息づく島で、光るキノコだけでも複数種が確認されているそうです。チラシにはヤコウタケのほか、エナシラッシタケ、スズメタケ、シイノトモシビタケの名前が並んでいました。
名前がどれもきれいで、島の人たちが長く付き合ってきた生きものなのだと感じます。
ちなみに、エナシラッシタケの名前の由来は、
柄無しで、エナシ
でヤシなどの裸子 ラシ
を好む茸 タケ
なのだそうです。
ツアーは公式LINEからの予約制で、定員は20名、当日の正午が受付の締切です。歩きやすい靴と長袖長ズボン、虫よけがあれば大丈夫でした。主催はNPO法人八丈島観光レクリエーション研究会で、東京宝島チャレンジプロジェクトの支援を受けて実施されているそうです。
樹木の内側を傷めるキノコを追いかける仕事をしていると、キノコに対してどうしても身構える癖がつきます。ヤシの枯れた葉の陰で静かに光っている小さな傘を見て、菌というものの幅の広さを、あらためて教わった夜でした。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
飛行機で八丈島に渡り、今日から一週間の樹木診断が始まります。
宿のオーナーに島での動き方を伺ったところ、「護神の交差点を起点にするといい」と教えていただきました。地図を広げてみて納得しました。八丈島は八丈富士と三原山という二つの火山がくっついてできた島で、その二つの山に挟まれた低い平地に、役場も空港も港も集まっています。護神はちょうどその真ん中あたりでした。北へ向かうにも南へ下るにも、一度ここに戻ってくれば距離感が狂わなそうです。
それにしても「護神」というすごい名称が気になって少し調べてみました。交差点のすぐ脇に護神山という小さな丘があり、そこから来ているようです。
この丘、八丈富士の側火山のひとつで、丘に見えて火口も残っているのだそうです。戦時中は軍の司令部が置かれていたとも伺いました。「護神」の字がなぜ当てられたのかまでは資料に行き着けませんでしたが、火山の丘がそのまま信仰の場として残ってきた土地なのかと思います。
樹木医としては、この成り立ちも気になります。スコリアが積もってできた丘は水はけがよく、そこに立つ樹木の姿は、潮風をまともに受ける海沿いや、湿り気の残る谷筋の樹木とは違ってきそうです。
明後日からは天候も崩れそうなので、段取りをしっかりやっていきたいと思います。
9月28日、日比谷公園で開かれる「暮らしに役立つ樹木講座 ~樹木で生活を豊かに~」で、講師を務めさせていただくことになりました。
主催は東京都公園協会様で、東京都都市緑化基金の講座として、樹木が私たちの暮らしにもたらすさまざまな効果について学ぶ内容です。
樹木の木陰は、日差しを遮るだけでなく、日射で熱くなった舗装や建物の表面から出る熱もやわらげてくれます。昨今の夏の暑さの中、現場で樹木の下に入ると、日なたとの違いを体で感じます。ただ、この効果は樹木が健全に育っていてこそのものだと思っています。
当日は、樹木による木陰の効果と合わせて、実際の樹木の管理事例についてもお話しさせていただく予定です。2018年に会社を設立してから、植栽管理、樹木診断、植栽コンサルティングを一貫して手掛けてきました。その現場で見てきたことを、なるべく分かりやすくお伝えできればと考えています。
暑さ対策や住環境の向上に関心のある方、マンションや集合住宅の管理に携わる方、自治体職員の方などに向けた講座ですが、身近な樹木に少し関心のある方にもお気軽にご参加いただけたらと思います。
開催日時
2026年9月28日(月)
13:30〜16:30(受付は13:00より)
会場
日比谷公園 緑と水の市民カレッジ 2階
講習室(東京都千代田区日比谷公園1-5)
定員 先着30名
受講料 無料
お申し込み 下記ページ内の「参加申込フォーム」から
主催・お問い合わせ
公益財団法人東京都公園協会
公園事業部 公益事業推進課 緑の基金担当
TEL:03-5510-7183(平日9:30〜17:00)
https://www.tokyo-park.or.jp/public/greening/news/2026/park_info.html
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
素敵な芝生のお庭に植えられた古木のオリーブの手入れに伺いました。
オリーブアナアキゾウムシ対策の薬剤散布と、樹皮がはがれてカビが出ていた部分の確認と対応をさせていただきました。
近年植栽されたオリーブへの被害が多くなってきている、オリーブアナアキゾウムシは日本在来の虫で、オリーブが入ってくる前はネズミモチやイボタノキなど、同じモクセイ科の樹木についていたと考えられているそうです。成虫が幹の地際に卵を産み、孵った幼虫が樹皮の下を食い進んで形成層を傷めます。被害が多いと枯れてしまうこともあります。成虫は3年ほど生きることもあり、冬以外は産卵できるとされていますので、春に一度気をつければよい虫ではないと思っています。
対策の基本は幹への薬剤散布で、今回はオリーブに登録のあるダントツ水溶剤を使いました。地際の幹に産卵し、幼虫が樹皮の下にいる虫ですので、かけるのは葉より幹が中心になります。根元から幹、枝の分かれ目まで、薬液が流れて樹皮が濡れるくらい行います。成虫は夜行性で、昼間は株元の下草などに潜んでいるそうなので、根元まわりをすっきりさせておくことも大切だと思います。
樹皮がはがれた箇所にカビが出ていた部分は、浮いた樹皮を取り除いて内側に食害の跡がないかを確かめ、乾かしてから殺菌癒合剤を塗りました〕。カビそのものよりも、そこに湿気がこもらないかを気にしています。
オリーブは丈夫な樹木ですが、根元だけはこまめに見てあげる必要があると思います。根元に木くずのようなものが出ていたら、虫が入っている合図かもしれません。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
大島での樹木診断を終えたあと、神津島での診断に伺いました。神津島でも島の中をいくつか見て回り、特に印象に残ったのが、港のすぐ上の丘に鎮座する物忌奈命神社(ものいみなのみことじんじゃ)です。石段を上がった先には、タブノキの参道が続いています。
境内には、ご神木のイチョウのほか、サクラ、タブ、イブキ、マツ、マキが立っていました。観光協会の資料では、このイチョウは樹齢169年(2024年時点)とされ、江戸の終わりから明治の初めの頃に植えられたと伝わっています。海のすぐそばで、これだけの大きさに、しかも健全に育っていることに、まず驚きました。
一般的にイチョウは潮風に弱い樹木とされています。2018年の台風24号のあと、鎌倉や横浜のイチョウ並木が黄葉を待たずに茶色く枯れ込んだのを覚えている方もいるかと思います。葉の薄い落葉樹は、葉の表面に付いた塩水に水分を奪われて枯れてしまうとされています。イチョウは根が深く、風そのものには比較的強い樹木ですが、葉は潮に弱い性質を持っています。
私たちの見立てとしては、社殿の背後に続くシイやタブノキ主体の「社叢(しゃそう)」、いわゆる鎮守の森が、海からの風を受け止める防風壁の役目を果たしていて、その内側に立つイチョウまでは潮風が届きにくくなっているのではないかと思います。
境内のタブ、イブキ、マツ、マキは、どれも海辺で古くから頼りにされてきた潮風に強い樹種です。マツやマキは海辺の防風林や生垣に使われ、イブキは海岸の岩場に自生し、タブノキは海沿いの照葉樹林をつくる樹木です。潮に強い常緑樹が風と塩を引き受け、その内側でイチョウとサクラが育っている。森が自分の内側に穏やかな環境をつくる「微気候」の保護の、よい例なのだと思いました。
もちろん、一度の見学で言い切れることではありません。土の深さや水の通り方、これまでの手入れの積み重ねなど、ほかにも理由はあるはずです。ただ、樹木はその立ち姿に、その場所の環境と人の手入れの跡をそのまま残します。この境内では、人が守ってきた森が、今度は一本のご神木を守っているように見えました。
神津島観光協会は、島の樹木と人の暮らしの物語を「神津の森」としてまとめ、樹木巡りのマップまで作られています。昔はこの境内で、おじいさんたちが漁の網を編み、子どもたちが虫取りをして遊んでいたそうです。石段や鳥居の石材は、氏子の皆さんが人力で運び上げたものだとも書かれていました。樹木を景色としてではなく、暮らしの一部として語っている島だと感じました。
神社のあとは、前浜海岸にも寄りました。港の南に白い砂浜が続いています。大島で見てきた黒い砂とは、まるで色が違います。大島が玄武岩の島で、神津島は流紋岩の島だそうです。岩の白さがそのまま砂の白さになっていました。
伊豆の島々をつくった神々がこの島に集まり、水を分け合ったという「水配り」の伝説が、神津島の由来だそうです。同じ伊豆諸島でも、島ごとに岩が違い、砂の色が違い、風と潮の当たり方が違います。樹木の育ち方も、その島ごとに環境で想像しないといけないのだと、前浜の白い砂を見ながら思いました。
週明けからは八丈島に渡り、樹木診断に入らせていただきます。
八丈島は常春の島とも呼ばれる温暖な島で、幹を立ち上げて樹木のような姿に育つシダ植物・ヘゴが自生しています。その自生地は国の天然記念物「ヘゴ自生北限地帯」に含まれ、樹木状に育つヘゴの分布としては国内の最北にあたるそうです。花束の添え葉として広く使われるフェニックス・ロベレニーも、国内産のほとんどが八丈島で育てられていると聞きます。この温暖な環境で樹木がどんな立ち姿を見せているのか、樹木医としてはそこが楽しみです。
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樹木医 中村雅俊
わたしたちの会社について
グリーンマネジメント
①自社で一貫した管理
②科学的な知見(アーボリカルチャー / arboriculture)と現場の融合
③長期的な植栽管理メンテナンスの計画/プランニング
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