
この記事は、当社のSUGEEが南アフリカで出会った多肉植物ハオルシアをめぐる体験を、本人の語りでまとめたものです。後半に、樹木医として感じたことを添えています。
南アフリカにはバオバブやアロエ、パキポディウムなど多肉質で独自の進化を遂げた魅惑的な植物が数多く存在し、その中には薬効を持ち人間にとって有用性の高い植物も多くあります。
特にキダチアロエ(アロエ アルボレスケンス。日本では俗に「医者いらず」と呼ばれます)は、現地では薬局だけでなく町の雑貨店や食料品店などでも軟膏が売られていて、民間薬として身近な植物でした。
さらに南アフリカには、街中に「ウィッチドクター」と呼ばれる民間療法の施術者があちこちにいて、薬草や樹木の葉を調合して症状に応じて処方してくれます。いわゆるメディスンマンです。
民間療法で使われる多肉:ハオルシアとの出会い
その民間療法で使われる植物に、アロエに近い仲間のハオルシアという多肉植物があります(現在の分類ではススキノキ科。以前はユリ科に分類されていました)。濃い緑色の葉がプチプチしていて中は粘り気のある繊維質、まるで野菜のモロヘイヤのような質感で、見るからに身体に良さそうな、そんな植物です。 
僕は以前からそのハオルシア シンビフォルミスに何かインスピレーションを感じていて、帰国後に思い切って、育てていた個体を星薬科大学の生薬研究室に持ち込んでみました。
少し説明に時間は要しましたが南アフリカの植物事情と現地でのハオルシアの使われ方をお話すると、成分を調べてみても良いというありがたいお返事を頂きました。
新規化合物の単離:ハオルフォルビンA・B・C
1か月後に結果が出たというので訪ねてみると、M教授は少し興奮したご様子で、ハオルシア シンビフォルミスには未知の化合物が3種ほど含まれている、というお話をしてくださいました。
二人でその化合物をハオルフォルビンA、B、Cと名付けさせていただき、その後、学術誌『Journal of Natural Medicines』(2013年、67巻1号)に、ハオルフォルビンに関する論文「Haworforbins A-C, new phenolics from Haworthia cymbiformis」を僕の名前と連名で発表してくださいました。
論文の要点
- ハオルシア シンビフォルミスから、新しいフェノール化合物であるハオルフォルビンA、B、Cが単離された。
- ハオルフォルビンAとBは新しいイソクマリン配糖体、ハオルフォルビンCは新しいクロモンで、構造はNMRとCDのデータから決められた。
- ハオルフォルビンCは、培養細胞(RAW264.7細胞)を使った実験で、一酸化窒素の産生を中程度に抑えた。
この世界には、僕らの知らない植物がまだたくさんあります。このエピソードは、そのことを実感した出来事でした。
民間療法の植物から学んだこと
いわゆる民間療法やシャーマニズムで使われている植物の中には、今回のハオルシアのように、成分を調べて初めて分かることがある種もあるのだろうと、僕は感じています。
自分としては癒しの空間創造も含めた新しい植物の可能性と意義を、今後も探求していきたいと思っています。
株式会社トシ・ランドスケープ SUGEE 
都市生活への示唆
SUGEEのこの経験から、植物は眺めるだけのものではないと、あらためて感じました。民間療法やシャーマニズムで使われてきた草木が、科学の目で見直されていくことに期待しています。
都市の暮らしに植物を取り入れることは、知ることの楽しさや、美しさに触れる時間にもつながると、私は感じています。
都市の植物は、インテリアや空間の演出だけでなく、暮らしの中で役に立ち、心を潤す存在にもなっていくのではないかと思います。植物の科学と文化の両方に目を向けながら、これからの提案を考えていきたいと思っています。
株式会社トシ・ランドスケープ 樹木医 中村雅俊
※医療に関わる内容は研究段階の知見を含みます。体調や治療に関する判断は、医療の専門家への相談が前提です。





















