先日サクラの倒木があったとご連絡をいただいて緊急対応で伐採を行いました。
樹木医が状況を確認してみますと、根元には「ベッコウタケ」というキノコの発生痕がみられました。
人的な被害が無かったことが救いでした。
先に答え
- 杉並区でサクラが倒れたとご連絡をいただき、緊急対応で伐採を行いました。人的な被害はありませんでした。
- 根元にはベッコウタケというキノコの発生痕があり、太い根はスポンジ状で、腐朽がかなり進んでいました。
- 倒れる前の昨年の写真では、葉がしっかりついていて、危険な兆候は感じにくい状態でした。
- 樹木医が外観診断と機器診断で、危険がある木・経過観察が必要な木・健全な木を判定します。ご相談をお待ちしています。
ベッコウタケとは 根株を腐らせる腐朽力の強いキノコ
ベッコウタケは、広葉樹の生木や枯れ木の根元に出るキノコで、材を白く腐らせる白色腐朽菌です。傘は扇形で平たく、何層にも重なって出ることが多く、出始めは卵黄色のこぶ状で、傘ができると上面は栗褐色から紫がかった褐色になります(東京都建設局『街路樹診断等マニュアル』令和3年度、参考資料)。
東京都のマニュアルは、ベッコウタケによる腐朽を、根の傷などから入って根株から幹へ進む「根株心材腐朽」の例に挙げ、ベッコウタケやコフキタケのようなキノコが出ていれば、根株や幹は著しく腐朽していると考えてよい、としています。多くの木材腐朽菌は死んだ組織を分解しますが、ベッコウタケは条件によって生きた組織にも入り込むため、樹勢への影響にも注意が要るとされています(同 p.28)。
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弊社の樹木診断の投稿の中でも何度かご紹介させていただきましたが、
キノコによって根や幹が腐って倒木する可能性があります。
その中でベッコウタケは根を特に腐らせていくキノコになります。
今回の倒木した桜をみても、太い根はスポンジ状になっており、
かなり腐れ(腐朽)が進行していたことが確認できました。
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下記が昨年撮影した倒木前のサクラの写真になります。

ベッコウタケ 倒木 樹木医 樹木診断 根 腐朽 腐れ サクラ
ベッコウタケとコフキタケの見分け方──出る場所と腐朽の広がり
根元に出るキノコには、ベッコウタケとよく似たコフキタケもあります。国土技術政策総合研究所の『街路樹の倒伏対策の手引き 第2版』は、2つを次のように説明しています。
- ベッコウタケ: キノコは一年生(東京都のマニュアルの事例集では多年生)で、柄が無く幹の根元に直接付き、幅5〜20cm・厚さ0.5〜2cm。何枚も重なって出ることが多く、初夏に鮮やかな黄色〜山吹色のかたまりができ、表面は黄色から琥珀色・褐色・黒色へと変わります。広葉樹(まれに針葉樹)の地際に季節を問わず見られ、緑化樹に出る頻度が最も高い腐朽菌の一つです。マメ科の樹木に多く、根株を腐らせるだけでなく、木を枯らすこともあります。
- コフキタケ: 何年も育つ多年生のキノコで、傘の肉はチョコレート色。大量の胞子で傘の表面や周りが粉をまぶしたようになるのが名前の由来です。ベッコウタケと並んで緑化樹に最も多く出る腐朽菌です。
2つのキノコの違いを表にまとめると、次のとおりです。
| 項目 | ベッコウタケ | コフキタケ |
|---|---|---|
| 腐朽の型と部位 | 白色腐朽、根株の心材腐朽 | 白色腐朽、幹・枝の心材腐朽 |
| キノコの寿命 | 一年生(国総研の手引き) | 多年生(何年も育つ) |
| 付き方と大きさ | 柄が無く根元に直接付く、幅5〜20cm・厚さ0.5〜2cm、何枚も重なって出ることが多い | 柄が無く幹に付く、扁平な半円形〜やや丸山形、その年のものは幅10〜20cm・厚さ2〜4cm程度、年を経ると幅50cm以上・厚さ40cmにもなる |
| 色と見た目 | 初夏に鮮やかな黄色〜山吹色のかたまりができ、傘の表面は黄色から琥珀色・褐色・黒色へと変わる | 傘の表面は灰白色〜黄土色〜茶色、大量の胞子でココアの粉をまぶしたようになる、傘の肉はチョコレート色 |
| 出る場所と時期 | 広葉樹(まれに針葉樹)の枯れ木や生きた木の地際、季節を問わない | 広葉樹の枯れ木や生きた木、季節を問わない |
| 腐朽の広がり方 | 根元や根の傷から入り、地際の心材と根を腐らせる、時間がたつと辺材や幹の上の方へも進む | 幹や根の傷、枯れ枝から入り、地際から高い部分の幹や枝まで上下に、心材と辺材の両方を腐らせる |
| 東京都のマニュアルの対処(根元に出たとき) | 必ず根株診断を行う、梢端の枯れも多ければ更新(植え替え) | 腐朽力が強いため機器診断(発生の場所や被害の様子で腐朽診断か根株診断)、梢端の枯れも多ければ更新 |
出典: 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」(国総研資料 第1059号、2019年)Ⅱ別冊 p.1-53(情報コラム「ベッコウタケ・コフキタケに侵された街路樹」)・p.2-27(コフキタケ)・p.2-42(ベッコウタケ)、東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度)表Ⅲ-2・8(p.29)
腐朽の広がり方も違います。ベッコウタケは根元や根の傷から入って地際の心材と根を腐らせ、時間がたつと辺材や幹の上の方へも広がります。コフキタケは幹や根の傷、枯れ枝などから入り、地際から高い部分の幹や枝まで、上下に腐朽を広げます。どちらも、キノコが出た時点で木の中の腐朽はすでに進んでいるとされ、速やかな診断が必要です。

なぜ元気そうに見える木が倒れるのか
キノコは、木材腐朽菌が胞子を散らすための器官です(同 p.28)。腐朽は、目に見えない根株や太い根の中で進みます。根が腐って支える力が落ちても、葉を茂らせる力はしばらく残るため、倒れる直前まで枝葉だけを見ても変化に気づきにくい、というのが私たちの現場での実感です。今回のサクラも、前の年の写真では葉がしっかりついていました。

一般の方目線で見ますと、葉もしっかりついていて全く危険な兆候は感じないのではないでしょうか。
見た目には普通そうに見えても目には見えない幹や根の部分が腐ってしまい、
倒木の危険性が知らず知らずのうちに高まってしまう点が非常に怖い部分でもあります。
都内の樹木も大型化や、老木化による樹勢の衰退傾向にあるものが多く見受けられます。
適切な管理と定期的な点検や診断の重要性が
これからさらに求められる時期になってきているのかもしれません。
下記は弊社で何度かご紹介しております樹木医診断の説明となります。
樹木診断のご相談をお待ちしています。
▪️外観診断(外観の目視や打診等による診断)

樹木医 樹木診断 外観診断 街路樹 公園
▪️機器診断(精密診断)
使用機材:レジ(Resi PD)
令和3年度 東京都建設局『街路樹診断等マニュアル』に準拠
- レジ 樹木医 機器診断 外観診断 サクラ 樹木診断
- レジ Resi PD500 樹木診断 外観診断 機器診断 樹木医 街路樹診断士
- レジ Resi PD500 樹木診断 外観診断 機器診断 樹木医 街路樹診断士
- レジ 樹木医 機器診断 外観診断 サクラ 樹木診断 ベッコウタケ 根株診断 倒木
今回のサクラのように、外観上の見た目では葉も茂り元気そうに見えても、
根や幹の内部が悪くなっていることも多くあります。
内部の検査も重要ですが、この結果だけではなく、
枝葉や樹皮の状態、キノコの有無、根の状態、周辺環境等の外観診断も重要な判断材料になります。
樹木医が診断を行う事で
・危険がある樹木
・注意が必要で経過観察が必要な樹木
・健全な樹木
を判定し今後の管理方針に活かしていきます。
東京都のマニュアルでは、外観診断と機器診断の結果を合わせた総合判定を、A・B1・B2・Cの4段階で出し、段階ごとに処置と次の診断の時期を決めます。

東京都建設局の『街路樹診断等マニュアル』(令和3年度)は、健全な材の厚さの割合である「t/R率」(各測定方向の半径Rに対する健全材の厚さtの割合)が0.3未満になると倒木が発生する可能性が高くなり、これを面積に換算すると、腐朽空洞部の割合(腐朽空洞率)が断面積の約50%以上にあたる、としています(p.58)。ただし、機器診断の結果は外観診断と併せて総合判定を行うための判断材料の一つとされ(p.56)、数値だけで伐採を決めるものではありません。
tとRに樹皮は含みません。

弊社では昨年から街路樹診断協会(現・一般社団法人 街路樹・都市樹木診断協会)へ加入いたしました。
常に診断に関する最新の知見に触れ、診断業務に活かして、
より安心安全で環境と景観の維持、向上に繋がるご提案を出来ればと思います。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくある質問
Q1. ベッコウタケとは何ですか。
ベッコウタケは、広葉樹の根元に出る腐朽力の強いキノコで、根株から幹へ進む腐朽(根株心材腐朽)を起こします。東京都のマニュアルは、ベッコウタケが出ていれば根株や幹は著しく腐朽していると考えてよい、としています。今回の杉並区のサクラでも根元に発生痕があり、太い根はスポンジ状になっていました。
Q2. なぜ元気そうに見える木が倒れるのですか。
見た目には普通に見えても、目には見えない幹や根の部分が腐ってしまうことがあるためです。今回のサクラも、昨年の写真では葉がしっかりついていました。倒木の危険性が知らず知らずのうちに高まる点が、非常に怖い部分です。
Q3. 樹木診断では何を調べますか。
外観診断では外観の目視や打診等で調べ、機器診断は精密診断として内部を調べます。内部の検査の結果だけでなく、枝葉や樹皮の状態、キノコの有無、根の状態、周辺環境といった外観診断も、重要な判断材料になります。
Q4. 診断の結果はどのように判定されますか。
樹木医が診断を行い、危険がある樹木、注意が必要で経過観察が必要な樹木、健全な樹木の3つに判定します。この判定を、今後の管理方針に活かしていきます。個別の木の状態は現地での診断で決まります。ご相談をお待ちしています。
Q5. 倒木の危険が高まる目安はありますか。
東京都のマニュアルは、t/R率が0.3未満になると倒木が発生する可能性が高くなり、面積に換算すると腐朽空洞率が約50%以上にあたる、としています。ただし、機器診断の結果は外観診断と併せて総合判定する材料の一つで、数値だけで伐採を決めるものではありません。
Q6. ベッコウタケを見つけたら、どうすればよいですか。
根株診断が必要なサインです。東京都のマニュアルは、根株にベッコウタケが見られる場合は必ず根株診断を行うとしています。見つけたときの流れと、駆除できるのかについては、続きの記事(伐根作業)で詳しくまとめています。
Q7. ベッコウタケとコフキタケは、どう見分けますか。
ベッコウタケは一年生(東京都のマニュアルの事例集では多年生)で、根元に柄の無い傘が重なって付き、表面は黄色から褐色・黒色へと変わります。コフキタケは多年生で、傘の肉がチョコレート色、胞子で表面が粉をまぶしたようになります。腐朽は、ベッコウタケが地際の心材と根を中心に、コフキタケは地際から高い部分の幹や枝まで広げます(国土技術政策総合研究所『街路樹の倒伏対策の手引き 第2版』)。
マンション・施設・行政のご担当者様へ
当社は、年間の植栽管理、樹木診断、高木の剪定・特殊伐採を承っています。管理の進め方や診断の流れは、資料ダウンロードのページでご覧いただけます。ご相談はお問い合わせフォームからお待ちしています。
出典・参考情報
- 東京都建設局『街路樹診断等マニュアル』(令和3年度) キノコ(子実体)は繁殖用の器官・ベッコウタケは生きた組織にも侵入する種(p.28)、t/R率と腐朽空洞率(p.56・p.58)、参考資料(根株心材腐朽、キノコの事例集)
- 国土技術政策総合研究所『街路樹の倒伏対策の手引き 第2版』(国総研資料 第1059号、2019年2月) 根株と根の腐朽と倒伏との関連、資料編(ベッコウタケ・コフキタケ)
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※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。






























