これから樹木の植栽予定地の植栽基盤診断
これから樹木を植える予定地で、植える前に土の透水性(水はけ)と硬さを数値で調べた、樹木医による植栽基盤診断の記録です。植栽基盤とは何か、2つの器具で何を測るのか、結果をどう判断するのかを、国の研究機関の手引きと器具の取扱説明書をもとに書き添えます。
植栽基盤診断とは──植える前に土を調べる理由
植栽基盤診断
難しい言葉ですが、樹木がしっかり根を伸ばせて元気に生育できる環境か調べる作業です。
前もって調査する事で、現状の植栽基盤(土壌)に問題があるか確認でき、
植えた後に枯れたり衰退したりする可能性を少なくできます。
国土交通省 国土技術政策総合研究所(国総研)の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、植栽基盤を、根が支障なく伸びられる「有効土層」と、その底に水がたまらないようにする「排水層」からなるものとし、植栽基盤に求められる条件を次のように挙げています。
| 条件 | 手引きにある内容 |
|---|---|
| 物理的な条件 | 透水性が良く、下の層との境で水が停滞しない、土の硬さが適当、適度な保水性がある |
| 化学的な条件 | 生育に障害となる有害物質を含まない、酸度(pH)が適当、養分がある程度以上含まれる |
出典: 国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」p.1-55。植栽基盤の4つの条件は「植栽基盤の4つの条件」でくわしくご紹介しています
同じ手引きは、植栽の設計の段階で土壌調査を行い、問題があれば植える前に改善することを求めています。
今回調べた2つの項目──透水性と土の硬さ
今回は現場の仕様により
・長谷川式簡易現場透水試験器
透水性(水はけ)
・長谷川式土壌貫入計
土壌の硬さ(根が伸びられるか)
にて樹木医による植栽基盤診断を行いました。

長谷川式簡易現場透水試験器を据えて、土の透水性(水はけ)を測る
透水性──長谷川式簡易現場透水試験器
直径15cm前後の穴を掘って水を張り、水位が下がる速さから、その場で水はけを調べる器具です。取扱説明書では、穴の深さは植える木の植穴の底にあたる深さとし、中低木で20〜40cm程度、高木で40〜80cm程度としています。結果は、水位が安定して下がる速さ(最終減水能)を1時間あたりの mm(mm/hr)で表します。

長谷川式簡易現場透水試験器の使い方(当社イラスト)

手前に透水試験器、奥に長谷川式土壌貫入計を立てた植栽予定地
土の硬さ──長谷川式土壌貫入計
2kgのおもりを50cmの高さから落とし、先端のコーンが土に入った深さから、地表から深さ1mまでの土の硬さを調べる器具です。おもり1回の落下で入った深さ(cm)を「S値」(cm/drop)と呼び、値が小さいほど土が硬いことを示します。根が伸びにくい硬い層が、どの深さにあるかも分かります。

長谷川式土壌貫入計の使い方(当社イラスト)
数値で判断する目安
数値で示せる点はお客様にも理解して頂きやすく、
説明の際にメリットが多いです。
国総研の手引きは、設計の段階の土壌調査の評価基準として、透水性は100mm/hr を超えれば「良」、30〜100mm/hr で「可」、30mm/hr 未満で「不良」、硬さは S値 1.5〜4.0 cm/drop で「良」、1.0〜1.5 で「可」、1.0 未満で「不良」としています。数値で「良・可・不良」に分けられるので、植える場所の土の状態を、お客様と同じ物差しで確かめられます。

図: 植える前の植栽基盤診断の流れ(出典: 国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」p.1-57 表-2.6・p.1-58 表-2.7をもとに当社作成)
「不良」と出たときの直し方も、同じ手引きに示されています。透水性と硬さの改善には土層改良工・土壌改良工・盛土工・客土置換法が、排水の改善には排水層工・通気工が挙げられています。測定の手順と判定のくわしい見方は、「長谷川式簡易現場透水試験器で水はけを測る」「長谷川式土壌貫入計で土の硬さを測る」でご紹介しています。
数値だけでは決まらないこと
しかし数値だけではない部分として
日照環境
風当たり
周辺環境
適正樹種の選定
なども非常に重要な要素となりますので、
それらも加味して総合的に判断できる知見と経験が必要です。
前もって植栽基盤診断を行えば事前に様々な対応策を検討することが出来ます。
植栽した樹木が元気に育ちますように。
まとめ
これから樹木を植える予定地で、長谷川式簡易現場透水試験器で透水性(水はけ)を、長谷川式土壌貫入計で土の硬さを測り、植栽基盤診断を行いました。数値で示せることはお客様に伝わりやすく、そのうえで日照環境・風当たり・周辺環境・適正樹種の選定も合わせて、総合的に判断します。前もって診断すれば、排水や土壌の改良などの対応策を、植える前に検討できます。
Toshi Landscape inc.
株式会社トシ・ランドスケープ
中村雅俊 樹木医
よくある質問
Q1. 植栽基盤診断では、何を調べますか。
今回は、長谷川式簡易現場透水試験器で透水性(水はけ)を、長谷川式土壌貫入計で土の硬さを調べました。植栽基盤には、物理的な条件(透水性・硬さ・保水性)と化学的な条件(有害物質・酸度・養分)があります。
Q2. 透水性と土の硬さは、どのくらいなら「良」ですか。
国総研の手引きの設計段階の評価基準では、透水性は100mm/hr を超えれば「良」、硬さは S値 1.5〜4.0 cm/drop で「良」です。透水性が30mm/hr 未満、S値が1.0 未満なら「不良」とされています。
Q3. なぜ植える前に調べるのですか。
現状の植栽基盤に問題があるかを確認でき、植えた後に枯れたり衰退したりする可能性を少なくできるからです。問題があれば、植える前に排水や土壌の改良を考えられます。
出典・参考情報
・国土交通省 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」p.1-55〜1-58(表-2.6 設計段階における土壌調査項目と判定基準、表-2.7 植栽基盤の標準的な数値目標と整備工法)
・ダイトウテクノグリーン「長谷川式簡易現場透水試験器 取扱説明書」Ver.4.1、「長谷川式土壌貫入計 取扱説明書」Ver.5.5
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