マンションの大規模修繕で外壁に足場を立てるとき、建物のまわりの植栽にも準備が要ります。当社が都内のマンションで行ってきたのは、足場の前の枝の剪定・支障になる木の伐採・養生、掘り上げた植物の敷地内での仮植え、そして工事のあとの植え戻しと樹木医の確認です。その流れを、樹木医の立場からまとめます。
先に答え
- 足場をかける前に、足場にかかる枝の剪定、支障になる樹木の伐採、植栽の養生を行います。
- 足場の下になる植物は掘り上げ、敷地内の空いた場所に仮植えしておき、工事のあとに植え戻します。
- 工事の期間中は、水やりができないことによる乾燥、資材の仮置きや職人の通路での踏み固め、塗料・洗浄水、シートによる日照の変化に気を配ります。
- 植栽のご相談は、足場の計画を決める前がよい時期です。残す木と更新する木を先に決めておけます。
大規模修繕と植栽──国のガイドラインでの位置づけ
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)は、足場や養生シートなどの仮設工事の修繕周期の例を「12〜15年」としています。屋上の防水などと同じ周期で、十数年に一度、建物のまわりに足場が立つことになります。
同じガイドラインの標準様式では、マンションの性能を上げる改良工事の例として「外部環境(外構、植栽、工作物等の整備)」が挙がっています。植栽は建物の付属物のように見えて、長期修繕計画の中でも扱われる項目です。足場の計画を立てる段階で、植栽をどうするかも一緒に決めておくと、工事の前後の手戻りが少なくなります。
足場をかける前に──剪定・伐採・養生

足場をかける前の作業(イラスト)。足場にかかる枝を付け根で切り、足元の植え込みには養生のシートをかける
足場は外壁に沿って立つので、建物に近い木の枝が足場の位置にかかります。当社では、足場にかかる枝を剪定し、足場の位置や工事の通り道にかかって残せない木は伐採しました。足元の植え込みには養生のシートをかけて守ります。
剪定は、当社のふだんの剪定と同じく、足場にかかる枝を付け根で切り、木の形を大きく崩さないようにします。工事のために一度に強く切り詰めると、太い枝の切り口から腐朽が入りやすくなるためです。伐るかどうかは、その木を工事のあとも残したいかどうかと合わせて決めます。
掘り上げた植物は、敷地内に仮植えする

足場の真下になる植物を掘り上げ、敷地内の空いた場所へ運んで仮植えする(イラスト)
足場の真下になる低木や草花は、そのままでは踏まれたり資材に押しつぶされたりします。当社では、こうした植物を掘り上げ、敷地内の空いた場所に仮植えしておき、工事が終わってから元の場所へ植え戻しました。
「植木の預かり」というと、どこか別の場所へ運んでいくものと思われがちですが、敷地の中に仮植えの場所をとれれば、運ぶ手間も少なく、工事の期間中も同じ敷地で様子を見られます。仮植えの場所は、足場や資材置き場、職人の通り道にかからない所を選びます。
工事の期間中に気をつけること
足場が立っている間、植栽には次のようなことが起きます。どれも当社の現場で気をつけてきたことです。
| 起きること | 植栽で困ること |
|---|---|
| 水やりができない | 水やりの手が入りにくく、植え込みや根元の土が乾きやすい |
| 資材の仮置き、職人の通り道 | 植え込みや根元の土が踏み固められる |
| 塗料・洗浄の水 | 外壁の塗装や高圧洗浄の水が、葉や土にかかる |
| シートによる日照の変化 | 養生のシートで、木や植え込みが長い期間暗くなる |
土が踏み固められると、根に水と空気が届きにくくなります。その仕組みは「土が原因で樹木が弱るとき」で説明しています。工事の期間中も、改修会社と日程を合わせながら、こうした点に気を配ります。
工事のあとに──植え戻し・植え替え・土をほぐす・樹木医の確認

工事のあと、仮植えしていた植物を植え戻し、残した木の状態を樹木医が確かめる(イラスト)
足場が外れたら、植栽を元に戻します。当社で行ってきたのは次の作業です。
- 仮植えしていた植物を、元の場所へ植え戻す
- 工事の間に弱った植物を、新しい植物に植え替える
- 踏み固められた土を耕し、必要なところは土を入れ替える
- 残した木の状態を、樹木医が確かめる
足場を立てる前と同じ姿に戻すだけでなく、工事でかかった負担を受けた木が、その後も育っていけるかを見るところまでが、植栽の側から見た大規模修繕だと考えています。
段取りと、相談の時期
これまでの現場では、植栽の作業は管理組合からご依頼をいただき、足場を立てる日、外す日などの日程は改修会社と合わせて決めました。植栽の作業は足場の工程の前後に入るので、改修会社との日程の調整が欠かせません。
ご相談の時期としては、足場の計画を決める前がよいと考えています。この段階で植栽を見ておけば、残す木と更新する木を先に決められます。足場の位置にかかる木を伐るのか、枝を切って残すのか、弱っている木はこの機会に植え替えるのか。工事が始まってから決めるより、選べることが多くなります。
残す木と更新する木の見極めは、当社では「植栽の現状評価と再生方針」としてお引き受けしています。マンションの植栽を新しくするときの進め方は、4つの事例で「マンションの植栽リニューアルの進め方」にまとめています。年間の植栽管理の中で、修繕の前後の作業もあわせてご相談いただけます。
よくある質問(Q&A)
Q1. マンションの大規模修繕のとき、植木はどうするのですか?
A. 当社の現場では、足場をかける前に、足場にかかる枝の剪定、支障になる樹木の伐採、植栽の養生を行いました。足場の真下になる植物は掘り上げて敷地内に仮植えし、工事のあとに植え戻しています。
Q2. 掘り上げた植木は、どこで預かるのですか?
A. 当社の現場では、敷地内の空いた場所に仮植えしました。足場や資材置き場、職人の通り道にかからない所を選びます。同じ敷地の中なので、運ぶ手間も少なく、工事の期間中も様子を見られます。
Q3. 植栽の相談は、いつするのがよいですか?
A. 足場の計画を決める前がよい時期です。この段階で植栽を見ておけば、残す木と更新する木を先に決められ、足場にかかる木を伐るのか、枝を切って残すのかも選びやすくなります。
Q4. 工事が終わったあと、植栽はどう戻すのですか?
A. 仮植えしていた植物の植え戻し、工事の間に弱った植物の植え替え、踏み固められた土を耕す・入れ替える作業を行い、残した木の状態を樹木医が確かめました。
Q5. 植栽の作業は、誰が発注するのですか?
A. これまでの現場では、管理組合からご依頼をいただき、足場を立てる日や外す日などの日程を改修会社と合わせて決めました。
出典・参考情報
- 国土交通省「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」(平成20年6月、令和6年6月改定)。仮設工事(共通仮設・直接仮設)の修繕周期の例「12〜15年」、改良工事の例「外部環境(外構、植栽、工作物等の整備)」
マンションの大規模修繕の前後の植栽のご相談は、「植栽管理・メンテナンス」のページと、お問い合わせのページで承っています。
関連記事
- マンションの植栽リニューアルの進め方──植栽の確認・植栽デザイン・工事・植えた後の管理を、4つの事例で樹木医が解説
- マンションの植栽管理とは──年間の作業・費用の決まり方・業者選びを樹木医が解説
- 土が原因で樹木が弱るとき──締め固め・水はけ・pHと塩類・狭さと、根元の工事が根に与える影響を樹木医が解説|土壌調査と土壌改良 第2回
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊




















