寿昌院 臥竜の松の病虫害防除と、マツ枯れの仕組み──マツ・マツノマダラカミキリ・マツノザイセンチュウの関係を樹木医が解説

臥竜の松 マツ 支柱 寿昌院 江戸川区 天然記念物

江戸川区登録天然記念物・寿昌院の臥竜の松(クロマツ)で行った病虫害防除の記録に、マツ枯れを起こすマツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウの関係、林野庁が公表した最新の被害データ、予防と駆除の考え方を加えて、樹木医が一次情報をもとに解説します。

この記事は、2020年の夏に行ったマツノマダラカミキリ対策の薬剤散布と、年末の手入れの打ち合わせを、2020年10月に記録したものです。2026年10月に、マツ枯れの仕組みと最新のデータ、防除の考え方を書き加えました。全国の新しい動きは、毎月のマツ枯れのニュース(第1回・第2回)で追っています。

先に答え──マツ枯れは「カミキリが線虫を運ぶ伝染病」です

  • マツ枯れ(正式にはマツ材線虫病)は、マツノマダラカミキリが運ぶマツノザイセンチュウ(体長1mmほどの線虫)が松の中で増え、水の通り道をふさいで枯らす病気です。
  • カミキリの幼虫は枯れた松の中で育ち、初夏に線虫を体に乗せて飛び出します。健全な松の若い枝をかじるときに線虫がうつり、その松が枯れると、次の年の発生源になります。
  • 林野庁によると、全国の被害量は令和7(2025)年度に約63万m3で、前年度比163%でした。東京都でも、令和6年度の0.7千m3から令和7年度は5.8千m3に増えています。
  • 守り方は、成虫の時期に合わせた薬剤散布と冬の樹幹注入(予防)、枯れた松を成虫が出る前に枝まで処理すること(駆除)の組み合わせです。樹幹注入に治療の効果はありません。

 

寿昌院 臥竜の松の病虫害防除(2020年の記録)

植栽の年間管理をご依頼頂いている寿昌院様へ
・年末の手入れ作業の打ち合わせ
・病虫害防除薬剤散布の対応
に伺いました。

松葉の色も良く、特に樹勢含め問題もなく、年末の古葉の揉み上げ作業を予定通り行わせて頂きます。古い葉を手でむしる手入れの考え方は、「松の「もみあげ」とは」でご説明しています。

臥竜の松 マツ 支柱 寿昌院 江戸川区 天然記念物

寿昌院の臥竜の松。枝を低く広げ、支柱が支えている(江戸川区、当社撮影)

弊社では薬剤散布もきめ細かく対応できるように、背負式動力噴霧器で散布対応を行っております。今回はエンジン式ですが、作業環境によってバッテリー式での対応も行っております。

背負式動力噴霧器 マツ 枝 薬剤散布 病虫害防除 寿昌院

支柱の間から、背負式動力噴霧器で松の枝に薬剤を散布する

臥竜の松 支柱 背負式動力噴霧器 薬剤散布 マツノマダラカミキリ 寿昌院

太い幹と枝の下に入り、支柱の間から散布する

トシ・ランドスケープ使用の背負式動力噴霧器

丸山製作所
・霧王
 MS5901D-25 (エンジン式)
・スーパー霧大将 MSB1500Li (バッテリー式)

マツノマダラカミキリの成虫をねらう薬剤散布は、成虫が出てくる初夏から夏に合わせて行います。この記事の散布も2020年の夏に行ったもので、10月にまとめて記録しました。2022年5月に公開した臥竜の松の記録では、新芽の緑摘みとあわせて、マツ枯れ対策としてスミパイン乳剤を散布しています。

臥竜の松について

寿昌院の臥竜の松は、推定樹齢500年。大正期に大風で幹が折れて現在のような這う松の形になり、その姿から臥竜の松と命名されたようです。樹種はクロマツで、江戸川区のページによると、昭和61年(1986年)に区の登録天然記念物になりました(江戸川区「松本弁天臥竜の松」)。

江戸川区登録天然記念物、江戸川区景観重要樹木に指定され、えどがわ百景のひとつに選ばれています。

この「臥竜の松」を観にいらしてくださる方が少しでも増えてくれる様、私たちも全力で維持管理だけでなく魅力を伝えられる様に努めてまいります。お近くにお越しの際は、お立ち寄りいただければ幸いです。

作業から3年後も、松の樹勢は良好です。

 

マツ枯れとは──松・カミキリ・線虫の三者の関係

マツ枯れは「松くい虫被害」とも呼ばれますが、虫が松を食べて枯らすわけではありません。森林総合研究所の冊子によると、松を枯らす病原体はマツノザイセンチュウで、その線虫をマツノマダラカミキリが松から松へ運びます。1970年代に、伝染病であることが分かりました。松・カミキリ・線虫の三者がそろって、はじめて被害が広がります。

マツノザイセンチュウ──松を枯らす病原体

マツノザイセンチュウは、成虫の体長が1mmほどの線虫です。原産地は北アメリカで、明治期以降の物流にまぎれて日本に入ったと考えられています。数日で成虫になり、産卵数も多いため、松の中で一気に増えます。林野庁の資料では、マツ枯れは明治38年に長崎で初めて発生し、令和7年度までに北海道を除く46都府県で被害が出ています。

マツノマダラカミキリ──線虫の運び手

マツノマダラカミキリ 成虫 マツ枯れ 松くい虫 媒介昆虫

マツノマダラカミキリの成虫。体長2〜3cmほどで、褐色のまだら模様と長い触角が目立つ

マツノマダラカミキリの成虫は、生きた松の枝の皮を食べます。一方、幼虫は枯れた松の幹の内樹皮を食べて育ちます。幼虫は松やにを盛んに出す元気な松では育たないため、雌は弱った木や伐った木を選んで卵を産みます。

枯れた松の中で冬を越した幼虫は、初夏に蛹になり、成虫になります。このとき、蛹室のまわりに集まっていた線虫がカミキリの体(気管など)に乗り移り、多いときには数万〜数十万頭が運び出されます。線虫はカミキリから栄養をとらず、運ばれるだけの「便乗」の関係です。成虫は直径7〜8mmほどの丸い穴をあけて、枯れた木から出てきます。

カミキリは1回の飛翔で3kmほど移動できますが、ふだんは10m程度の短い移動を繰り返しています。枯れた松が1本残ると、まずそのすぐ周りの松が危なくなるのはこのためです。

マツノマダラカミキリ 後食 クロマツ 若い枝 マツ材線虫病

羽化したカミキリは松の若い枝の皮をかじり(後食)、このときに線虫が松の中へ入る(当社イラスト)

松──感染から枯れるまで

脱出した成虫が健全な松の若い枝の皮をかじる(「後食」と呼ばれます)と、そのかじり傷から線虫が松の中に入ります。感染した松は、数週間のうちに松やにを出せなくなり、やがて水の通り道がふさがります(水分通導障害)。この時点では、針葉の色はまだはっきり変わりません。晩夏から秋にかけて針葉が赤く変わり、枯れていきます。

松やにを出せなくなった松は、カミキリの雌にとって格好の産卵場所です。こうして、枯れた松の中で次の世代のカミキリと線虫が育ち、翌年また別の松へ広がります。日本の松は、分かっている範囲ですべてこの病気にかかりやすく、なかでもクロマツは弱いことが知られています。臥竜の松もクロマツです。

 

マツ枯れの1年の流れ──いつ、何が起きているか

林野庁と森林総合研究所の資料をもとに、1年の流れを表にまとめました。時期は地域の気候で変わるため、林野庁の資料も「おおよその季節」として示しています。

季節の目安 マツノマダラカミキリ マツノザイセンチュウ 松
初夏(5〜7月ごろ) 枯れた松の蛹室で羽化し、穴をあけて脱出する カミキリの体に乗り移って運び出される 前の年に枯れた松が発生源になる
夏 健全な松の若い枝の皮をかじり(後食)、数週間で成熟して産卵できるようになる かじり傷から松の中へ入り、増える 数週間で松やにが出なくなり、水の通り道がふさがる(葉の色はまだはっきり変わらない)
晩夏〜秋 弱った松や伐った木に産卵し、幼虫が樹皮の下で育つ 枯れていく木の中で増え続ける 針葉が赤く変わり、枯れる
冬〜春 幼虫が材の中に蛹室を作って越冬し、初夏が近づくと蛹になる 蛹室の近くに集まる 枯れた松が、翌年の発生源として残る

出典: 林野庁「松くい虫被害対策について」p.2、森林総合研究所「マツ材線虫病にどう対処するか」p.5〜6をもとに当社作成

松枯れ マツノマダラカミキリ マツノザイセンチュウ 枯死 イラスト

マツノマダラカミキリがマツノザイセンチュウを運び、マツが枯れる流れ(当社イラスト。図中の時期はおおよその目安で、地域の気候によって変わります)

 

データで見るマツ枯れ──全国の被害量は前年度比163%

林野庁は、マツ枯れの被害量を「被害材積」、つまり枯れた木の幹の体積(m3)で数えています。令和8年9月30日に公表された値では、令和7(2025)年度の全国の被害量は約63万m3で、前年度比163%でした。林野庁は今も、松くい虫被害を「我が国最大の森林病虫害」と位置づけています。

年度 全国の被害量(万m3) 備考
昭和54(1979) 243 過去最大
平成元(1989) 91 –
平成11(1999) 72 –
平成21(2009) 59 –
令和元(2019) 30 –
令和4(2022) 25 昭和52年度以降で最も少ない
令和5(2023) 31 12年ぶりに増加
令和6(2024) 39 –
令和7(2025) 63 前年度比163%

出典: 林野庁「全国の松くい虫被害量(被害材積)の推移(昭和52〜令和7年度)」(令和8年9月30日更新。民有林と国有林の合計、小数第1位を四捨五入)

松くい虫被害 マツ枯れ 被害量 推移 全国 グラフ 林野庁

全国の松くい虫被害量の推移(被害材積、昭和52〜令和7年度)

長く減ってきた被害は、令和5年度に12年ぶりに増え、3年続けて増えています。森林総合研究所が林野庁の広報誌「林野」2026年9月号に寄せた記事は、ここ数年の夏の異常高温の影響もあって、各地で被害が深刻に広がっていると伝えています。

都道府県別では、山形県が全国の約半分を占めています。東京都は全国の中では小さな数字ですが、1年で8倍ほどに増えました。

都道府県 令和6年度(千m3) 令和7年度(千m3)
山形県 108.8 323.8
長野県 60.7 53.2
秋田県 30.7 35.6
福島県 24.8 28.8
新潟県 18.8 19.5
東京都(参考) 0.7 5.8
全国 389.6 633.6

出典: 林野庁「都道府県別松くい虫被害量(被害材積)の推移(総数)」(令和8年9月30日更新)。山形県の海岸林の状況など、都道府県ごとの動きは「マツ枯れの被害量は前年度の1.6倍に」でまとめています。

 

マツ枯れの防除──予防・駆除・見つけることの3つを組み合わせる

森林総合研究所の冊子は、マツ材線虫病の防除を「伝染病対策」と位置づけ、普通の害虫と同じように対応してもうまくいかないとしています。守りたい松への予防と、発生源になる枯れた松の駆除、そして枯れ始めた木を見つけることを組み合わせます。

方法 ねらい 時期の目安 気をつけること
薬剤散布(予防) 枝をかじりに来た成虫を殺し、線虫がうつるのを防ぐ 成虫の発生初期と、発生最盛期の直前(製品のラベルによる) 散布だけでは防ぎきれない、周りの環境への配慮が要る
樹幹注入(予防) 松の中に入った線虫が動いて増えるのを抑える 成虫が出る前まで(製品ごとに期限がある) 治療の効果はない、老木・庭園木は慎重に、五葉松類は勧められていない
伐倒駆除(くん蒸・破砕・焼却など) 枯れた松の中の幼虫を、成虫になって出る前に殺す 秋から翌春、成虫が出る前まで 直径1.5〜2cmほどの枝まで集めて処理する、厳冬期のくん蒸は避ける
見つける(探査と診断) 枯れ始めた木や、症状の出ていない感染木を探す 樹脂の調査は冬を避ける 葉の色だけで判断しない

出典: 森林総合研究所「マツ材線虫病にどう対処するか」p.12〜21、林野庁「松くい虫被害対策について」p.3、各製品のラベルをもとに当社作成

薬剤散布──成虫が出る時期に合わせる

予防の薬剤散布は、守りたい松の枝に殺虫剤を付けておき、枝をかじりに来た成虫を殺す方法です。スミパイン乳剤(MEP)のラベルは、マツノマダラカミキリ成虫への散布を「後食防止を目的とする」ものとし、成虫の発生初期と発生最盛期の直前に行うとしています。森林総合研究所の冊子は、通常は2回の散布が要ること、伐倒駆除などでカミキリを減らさずに散布だけで防除が成功することは期待できないことを書いています。臥竜の松は枝が低く広がっているため、上の写真のように枝の下に入って散布しています。

樹幹注入──効くのは予防だけ

マツ枯れ 予防 樹幹注入 クロマツ 樹木医

樹幹注入は、製品ごとの期限までに行う(当社イラスト)

樹幹注入は、幹の下のほうにドリルで小さな穴をあけて薬剤を入れ、あとから入ってきた線虫が動いたり増えたりするのを抑える方法です。森林総合研究所の冊子は、適切に施用すれば確かな予防効果があり、薬剤によって最大7年まで続くとする一方、治療の効果はなく、すでに感染した木の発病は止められないとしています。幹に穴をあけること自体が木のストレスになるため、老木や庭園木への施用には十分な注意が要り、五葉松の類は薬害が出やすく勧められていません。どの木にいつ注入したかの記録も欠かせない、としています。

注入できる期限は、製品ごとに「成虫発生の2〜3か月前まで」「発生前まで」などと決まっています。

伐倒駆除──枯れた松を、成虫が出る前に枝まで処理する

マツ枯れ 伐倒駆除 破砕 チップ 枝 マツノマダラカミキリ

伐った枯れ松は、細い枝まで集めて破砕する(当社イラスト)

枯れた松は、次の年のカミキリと線虫の発生源です。伐倒駆除は、枯れた松を伐り、くん蒸・破砕・焼却などで中の幼虫を殺します。森林総合研究所の冊子は、カミキリは被害木の中ほどから上に多く、直径1.5〜2cmほどの枝にもいることがあるので枝まで集めて処理すること、成虫が出てくる時期までに作業を終えることを「絶対条件」としています。

伐倒木のくん蒸に長く使われてきたカーバム剤の「NCS」「ヤシマNCS」は、2026年6月30日に農薬登録が失効しました。使える薬剤や時期の最新の状況は「マツ枯れ対策の道具が変わる」でまとめています。どの方法でも、薬剤を使う前には、最新のラベルと農薬登録情報提供システムで、適用と使い方を確かめる必要があります。

見つける──葉の色だけで判断しない

マツ枯れ 樹脂滲出調査 松やに 診断 クロマツ

幹に小さな傷をつけ、松やにの出方を見る(当社イラスト)

針葉の変色はいちばん分かりやすいサインですが、秋の古い葉の変色や、ほかの木の陰になって弱った木、潮風、除草剤でも松の葉は変色します。森林総合研究所の冊子は、針葉の変色だけでマツ材線虫病と判断するのは危険だとしています。手がかりは、葉の変色より先に止まる松やにです。幹に直径1cmほどの穴をあけて松やにがにじみ出るかを見る「樹脂滲出調査」があり、松やにの出が落ちる冬は向きません。

 

樹木医から見たこと──1本の名木を守るために

臥竜の松では、これまでに公開した記録だけでも、病虫害防除の散布(2020年)、割竹挿入法・水圧穿孔法による土壌改良とマツ枯れ対策の散布(2022年)、支柱の改修(2023年)、年末のもみあげと、木の体力を支える作業を積み重ねてきました。

公開した記録を、年の順に並べると次のとおりです(年月は記事の公開日です)。

年月(公開日) 行ったこと 記録
2020年4月 池の中の支柱を、丸太1本から丸太2本の仕様に交換 池の中の支柱の交換
2020年10月 病虫害防除の薬剤散布と、年末のもみあげの打ち合わせ この記事
2022年3月 割竹挿入法・水圧穿孔法・施肥による土壌改良 土壌改良
2022年5月 新芽の緑摘みと、マツ枯れ対策の薬剤散布 緑摘みと薬剤散布
2023年3月 支柱の改修(焼き丸太への交換と頬杖支柱での補強) 支柱改修プロジェクト
2024年12月 年末の古葉のもみあげ 生命力を感じる名木「臥竜の松」

江戸後期の境内の絵図と見比べた記録を含む年表は「【江戸川区・寿昌院】200年の時を超える「臥竜の松」」にまとめています。

ただ、マツ枯れの仕組みを追っていくと、樹勢を保つことだけでは防げないことが分かります。線虫は、健全な松の若い枝をカミキリがかじったときにうつるからです。土壌改良やもみあげは木の体力を支える仕事で、マツ枯れの予防は、それとは別に、成虫の時期に合わせて手を打つ仕事だと私は考えています。

もう1つは、守りたい1本の周りです。カミキリはふだん10m程度の移動を繰り返しているので、境内や近所に枯れた松が残っていれば、それがいちばん近い発生源になります。1本の名木を守るには、その木だけでなく、周りの枯れた松の扱いにまで目を向けることになります。

 

よくある質問

Q1. マツ枯れ(松くい虫被害)とは何ですか。

A. マツノマダラカミキリが運ぶマツノザイセンチュウという体長1mmほどの線虫が、松の中で増えて水の通り道をふさぎ、松を枯らす病気です。正式にはマツ材線虫病といいます。虫が松を食べて枯らすのではなく、カミキリが線虫を運ぶ伝染病です。

Q2. マツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウは、どんな関係ですか。

A. 線虫はカミキリの体に乗って運ばれるだけで、カミキリから栄養はとりません。カミキリの幼虫は枯れた松の中で育ち、初夏に成虫になるときに線虫を体に乗せて飛び出し、健全な松の若い枝をかじるときに線虫をうつします。

Q3. マツ枯れの対策は、いつ行えばよいですか。

A. 成虫をねらう薬剤散布は、成虫の発生初期と発生最盛期の直前です。樹幹注入は、成虫が出る前の製品ごとの期限までに行います。枯れた松の伐倒駆除は、秋から翌春、成虫が出てくる前までに枝まで処理します。時期は地域の気候で変わります。

Q4. 薬剤散布と樹幹注入は、どう違いますか。

A. 薬剤散布は、枝をかじりに来たカミキリの成虫を殺して、線虫がうつるのを防ぐ方法です。樹幹注入は、幹に入れた薬剤で、松の中に入った線虫が動いて増えるのを抑える方法です。どちらも予防で、すでに感染した松を治すことはできません。

Q5. 葉が緑なら、マツ枯れの心配はありませんか。

A. 安心はできません。感染した松は、葉の色が変わる前に松やにを出せなくなります。寒い地域などでは、症状が出ないまま感染している木もあります。森林総合研究所の冊子は、葉の変色だけで判断するのは危険だとし、松やにの出方を調べる樹脂滲出調査を勧めています。

Q6. 枯れた松は、そのままにしておいてもよいですか。

A. 枯れた松の中では、次の年のカミキリの幼虫が育っていることがあります。成虫が出てくる前に伐って、直径1.5〜2cmほどの枝まで集めて処理しないと、周りの松に被害が広がるおそれがあります。人家や道路の近くの枯れ松は、倒れる危険もあります。

 

株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊

出典・参考情報

・林野庁「松くい虫被害」(令和8年9月30日更新)、「松くい虫被害対策について」p.1〜3、「全国の松くい虫被害量(被害材積)の推移」、「都道府県別松くい虫被害量(被害材積)の推移(総数)」(いずれも2026年10月10日に確認)
・森林総合研究所 東北支所「マツ材線虫病にどう対処するか―防除対策の考え方と実践―」(2022年3月)p.2〜6、p.12〜13、p.16〜22
・林野庁 広報誌「林野」2026年9月号「終わらないマツ材線虫病被害、終わりなき研究対応」(森林総合研究所)
・農林水産消費安全技術センター「登録・失効農薬情報」(失効農薬一覧 2026年9月30日現在)、農林水産省「農薬登録情報提供システム」
・サンケイ化学「スミパイン乳剤」(農林水産省登録 第15043号、適用表と使用上の注意。2026年10月10日に確認)
・江戸川区「松本弁天臥竜の松」、寿昌院「臥竜の松」

臥竜の松のほかの記録

・【江戸川区・寿昌院】200年の時を超える「臥竜の松」 古地図と地名が語る土地の記憶(臥竜の松の記録のまとめ)
・寿昌院様 臥竜の松 緑摘みとマツ枯れ対策の薬剤散布 東京都江戸川区
・寿昌院様 臥竜の松 割竹挿入法・水圧穿孔法の土壌改良 東京都江戸川区
・寿昌院様 臥竜の松 支柱改修プロジェクト
・寿昌院 臥竜の松 池の中の支柱を丸太二本の仕様に交換 江戸川区登録天然記念物
・生命力を感じる名木「臥竜の松」 その美しさと歴史 江戸川区
・寿昌院様 江戸川区・保護樹木管理 江戸川区

関連記事

・マツ枯れの被害量は前年度の1.6倍に──2026年10月、全国の最新状況と山形県庄内の海岸林を樹木医が読む
・マツ枯れ対策の道具が変わる──くん蒸剤NCSの登録失効、抵抗性マツの新品種、秋から春の伐倒駆除を樹木医が読む
・松の「もみあげ」とは──古い葉を手でむしる冬の手入れ|樹木医が解説
・庭園樹のアカマツ 樹木医による樹勢回復、病虫害防除薬剤散布
・松の伝統技術「短葉仕立て」とは|剪定・芽切り・病害虫管理まで徹底解説
・三保松原(みほのまつばら) 静岡県
・松保護士研修講師補助として 髙尾樹木医
・仕立て松の手入れ

「ケミカルコントロール」のサービス内容と、ご相談の窓口であるお問い合わせのページはこちらです。

人気の記事
最新の記事
おすすめ記事
  1. 登録されている記事はございません。
  1. 社殿 屋根 新緑 枝 鎮守の森 樹木の時間 樹木医 随想

    熊楠が守ろうとした森 樹木の時間 第7回

  2. アーボソニック3D ArborSonic 3D 音響トモグラフ センサー アンプボックス 樹木診断 樹木医

    アーボソニック3D(ArborSonic 3D)の仕組みと得られる結果──センサーの数、測れる太さ、断面画像と安全率の読み方を樹木医が解説

  3. AI 樹木診断 車載レーザー 街路樹 台帳 樹木医

    AI樹木診断は海外でどこまで進んでいるか──シンガポール・英国・米国の事例と論文を樹木医が一次情報で読み解く

  4. アーボソニック3D 風荷重 樹冠 写真 撮り方 樹高 離れて撮る 樹木医

    アーボソニック3Dの風荷重解析 強風で幹は折れないか、安全率の出し方と読み方を樹木医が解説

  5. クレーン 伐採 ブーム 建物 高木 特殊伐採 樹木医

    クレーンと高所作業車を使う伐採──ロープワークとの分担、運転と玉掛けの資格、建物越しの作業を樹木医が解説|高木・特殊伐採とケーブリング 第4回

  6. ファコップ Fakopp アーボソニック3D 樹木診断機器 メーカー ハンガリー ショプロン 樹木医

    ファコップ社とは──アーボソニック3Dをつくるハンガリー・ショプロンの樹木診断機器メーカーと、製品の全体像を樹木医が解説

  7. マンション 植栽 コンサルティング 流れ 管理組合 理事会 樹木医 中庭 ケヤキ

    マンションの植栽コンサルティングは、どう進むのか──管理組合と樹木医が歩く8つの段階と、3つの入口

  8. 巨木 御神木 大径木 樹木診断 樹木医

    日本人は子どものころから御神木に特別な思いを持っているのか 御神木・霊木と日本人の関係、歴史、文化を樹木医がたどる

  9. ハーネス 各部の名前 ウエストベルト レッグループ アタッチメントブリッジ リング サイドD環 ギアループ アーボリスト イラスト

    ハーネス ― 各部の名前と役割|アーボリストの基礎 第4回

  10. 3級造園技能士 実技試験 竹垣 縁石 敷石 植栽 模式図

    3級造園技能士の試験 竹垣・縁石・敷石の実技と樹種判定60種、学科の範囲を1級の樹木医が解説

  1. 登録されている記事はございません。

関連記事