マンションの植栽リニューアルは、植える植物を選ぶ前に、今の植栽がなぜ衰えたのかを確かめるところから始まります。当社がお手伝いした東京都内の4つのマンションの事例をもとに、現状の確認、植栽デザインの提案、工事、植えた後の管理までの進め方を、樹木医の立場からまとめました。
取り上げるのは、墨田区のマンションの外周の植栽、目黒区のマンションのエントランスと中庭、港区のマンションの芝生の改修です。どれもマンションからご相談をいただき、提案から工事まで当社で行ったものです。
先に答え
- 植栽が衰える原因は、日当たりや雨の当たり方、人の出入り、土の状態など、場所ごとに違います。原因をそのままにして植え替えると、同じことが繰り返されやすくなります。
- 植栽デザインは、ラフスケッチ・平面図(樹木名やサイズ)・植物のイメージ写真で、理事会や住民の方が完成の姿を思い描ける形にしてご提案します。
- 工事では、植える前の下地づくりが仕上がりを左右します。芝生なら、根が集まる地表から10cmほどの土を重点的に改良します。
- 植えた後、根がしっかり張るまでの最初の夏越えが大切です。点検と水やりの段取りまで含めて、リニューアルと考えています。
リニューアルを考えるきっかけ──4つのマンションで起きていたこと
ご相談の入口は、マンションごとに違いました。
- 目黒区のマンションの中庭(事例): 築30年を超え、植栽が経年で衰退し、土が露出して流れ出すことで、景観が悪くなっていました。
- 港区のマンションの外構(事例): 生育不良で、低木や地被植物が衰退して枯れていました。
- 目黒区のマンションのエントランス(事例): 屋根のある構造で植栽の生育条件が良いとは言えず、居住者の方から改善を求める声があがっていました。
- 墨田区のマンションの外周(事例): 外周の植栽全体のリニューアルのご依頼です。記事では、正面エントランスと正面の通り沿いをご紹介しています。
竣工から年数がたったマンションでは、植え込みの衰えに、樹木の大型化や衰弱、管理費用の増加が重なることもあります。そのときは、植栽全体の総点検から考える必要が出てきます。

まず、なぜ衰えたのかを確かめる
植え替える植物を決める前に、現地で次の点を確かめます。
- 日照・雨の環境: 日の当たり方、雨の当たり方。屋根の下など、雨が当たらない場所もあります
- 周辺の環境: 人や車の往来が多いか、管理員さんなどが植栽地に頻繁に入るか
- 土の状態: 地面の凸凹、土の流出、硬さや水はけ
港区のマンションでは、地面が凸凹の状態(不陸)になっていたため、植えるより先に、耕耘と黒土の客土で下地をつくり直しました。原因が土にあるときは、土壌調査で硬さや水はけを測ってから、改良の方法を決めます。
樹木が大きく育ったマンションや、竣工から25年を過ぎたマンションでは、植え込みの手直しの前に、樹木を一本ずつ評価し、残す樹木と更新する樹木を分けておくと、その後の計画が立てやすくなります。当社ではこれを植栽の現状評価と再生方針としてお引き受けしています。考え方はマンション植栽の老朽化は、まず現状評価からに書いています。

植栽デザインの提案──理事会で決めやすい資料に
植物の組み合わせやバランスは、立地の環境によって変わり、植物の種類も多いため、図面だけでは完成の姿を思い描きにくいと思います。墨田区のマンションでは、検討の段階で次の3つの資料を使って、リニューアル後のイメージをご説明しました。
- ラフスケッチ
- 平面図(樹木名やサイズ)
- 植物のイメージ写真


※ ご提案のときのラフスケッチをもとに、2026年に描き直した完成予想スケッチです。
ご希望をうかがいながら、日照・雨の環境、周辺の環境、ご予算に合わせた優先順位(どのエリアを重点的にリニューアルするか)、管理のしやすさを合わせて考え、長い目で見て植物の魅力が発揮できる植栽にすることを心がけています。
目黒区のエントランスでは、管理組合様の「多くの住民に愛される格調と美観をもった新しい植栽のエントランスにしてほしい」というご要望を受けて、次の6つを条件にデザインを立てました。
- 日照条件を把握したうえでの、環境に合った植栽デザインと管理方法
- 隣接地との境界の目隠し(構造物か植栽、またはその両方)
- 照明による夜間の演出
- 既存建物とのデザインの調和と、現代性の両立
- 安全な歩車距離を保つこと
- メンテナンスコストへの配慮

工事──植える前の下地づくりが仕上がりを決める
工事の中心は植え付けですが、仕上がりと、その後の育ち方を左右するのは、その前の下地づくりです。
芝生の改修(港区)
衰退した植栽をきれいに整理し、耕耘と黒土の客土で下地をつくりました。芝生の根は主に地表から10cmくらいの深さまでに集まるため、とくに10cmの範囲を重点的に改良し、高麗芝を隙間なく「ベタ張り」で張りました。

中庭の改修(目黒区)
流れ出た土を取り除いて整地し、防草シートを敷いて砂利を補充しました。そのうえでスナゴケの苔山をつくり、マダケを植えています。竹を補植し、砂利と苔山の境界がはっきりしたことで、明るく緑の多い中庭になりました。

エントランスの改修(目黒区)
植栽とあわせて、目隠しの格子フェンスと照明をつくりました。格子の材には、耐久性の高いハードウッドの「セランガンバツ」を選び、工務店さんのお力添えで工房でユニットを製作してから、現地で取り付けました。格子の内側には防水仕様のLED照明を入れ、タイマーで夕方から朝方まで点灯するようにしています。最後に、既存のプランターにダイミョウチクを植えて仕上げました。

外周の植栽(墨田区)
正面エントランスと正面の通り沿いに、サルスベリやイロハモミジなどの高中木と、アベリア・アセビ・クリスマスローズなどの低木・地被植物を植えました。この現場では、近年人気の高まっているオージープランツも加えています。

植えた後の1年──最初の夏越えまでがリニューアル
植えたばかりの植物は、根がまだ土になじんでいません。港区のマンションでは、植栽改修の1か月後に点検に入り、芝が青々と育っていることを確かめました。植えた直後は、お客様も育ち方にご不安を感じることが多いため、巡回点検でその後の様子をお伝えするようにしています。
とくに大切なのが、植えた最初の年の夏越えです。根がしっかり張る前に暑い時期を迎えるため、夏場の水やりは、マンション様にもご協力をいただきながら進めました。墨田区のマンションでは、リニューアルとあわせて年間の植栽管理もご依頼いただき、植えた後の手入れまで当社でお引き受けしています。年間の管理で何をするのかはマンションの植栽管理とはにまとめています。
よくある質問
Q1. マンションの植栽リニューアルは、何から始めればよいですか。
植える植物を選ぶ前に、今の植栽がなぜ衰えたのかを確かめるところから始めます。日当たりや雨の当たり方、人の出入り、土の状態を現地で確かめ、原因に合わせて植物と工事の内容を決めます。樹木が大きく育っている場合は、樹木を一本ずつ評価し、残す樹木と更新する樹木を分けておくと、その後の計画が立てやすくなります。
Q2. 完成のイメージは、どうやって確かめられますか。
ラフスケッチ、樹木名やサイズを入れた平面図、植物のイメージ写真の3つを使ってご説明します。理事会や住民の方が完成の姿を思い描けるよう、検討の段階で資料をお作りしています。
Q3. 予算が限られている場合は、どうすればよいですか。
どのエリアを重点的にリニューアルするかの優先順位を決め、ご予算に合わせてご提案します。植物の選び方では、管理のしやすさも合わせて考えます。
Q4. 植えた後の手入れも頼めますか。
はい。植えた後の点検や、年間の植栽管理もお引き受けしています。植えた最初の年の夏越えがとくに大切なため、水やりの段取りもご相談しながら進めます。
Q5. 植栽だけでなく、フェンスや照明も一緒に頼めますか。
はい。目黒区のマンションのエントランスでは、植栽とあわせて、ハードウッドの格子フェンスとLEDの間接照明を設けました。植栽と一体で考えるフェンスや照明などの工事も、ご相談いただけます。
マンションの植栽のリニューアルのご相談は、植栽リノベーションのページと、お問い合わせから承っています。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
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