マンション中庭 植栽改修工事 東京都目黒区

マンション中庭 竹林 植栽 苔

東京都目黒区のマンションの管理組合様より中庭の植栽改修工事のご相談を頂きました。

築30年を超えたマンションの中庭で、植栽が衰えて土が露出し、その土が流れ出て景観が悪くなっていました。流れ出た土を撤去して整地し、防草シートと砂利、スナゴケの苔山、マダケの植栽で改修した事例です。土が流れ出るしくみと、それぞれの作業の考え方を、研究機関や行政の資料をもとにあわせて説明します。

ご相談のきっかけ──中庭の景観が悪くなってきた

ご相談は、目黒区のマンションの管理組合様からでした。築30年を超えた中庭で、植栽が経年で衰え、衰えたところから土が露出して、その土が流れ出ることで景観が悪くなっていたことが、ご相談の内容です。

中庭は、住まわれている方が毎日目にする場所です。植え込みの土が流れて地面が荒れてくると、見た目の問題だけでなく、植栽の管理そのものをどうするかが管理組合様の課題になります。

現地で確かめたこと──土の露出と流亡

現地の確認とお打ち合わせでは、植栽が経年で衰えていること、衰えたところで土が露出していること、露出した土が流れ出して景観が悪くなっていることを確かめました。

中庭植栽 経年劣化

植物に覆われていない土は、雨で少しずつ削られます。三重県林業研究所の研究報告は、土壌の侵食は主に雨粒が地面をたたく衝撃によって起こり、地表面を覆って保護することが大事だとしています。神奈川県の丹沢の土壌浸食対策の検討資料でも、林床の植生や落ち葉による覆いがなくなると、雨滴による侵食を受けて土壌の侵食量が急に増えるとされています。どちらも森林の斜面の調査ですが、地面を覆うものがなくなると土が動きやすくなる、という考え方は中庭の植え込みにも通じます。

中庭 植栽改修 土の流亡 雨滴侵食 防草シート 砂利 スナゴケ マダケ 図

図: 土が流れ出るしくみと、この中庭で行った4つの作業(出典: 三重県林業研究所・神奈川県・埼玉県農林総合研究センター・日本大学・農研機構・国土交通省の資料と本文をもとに当社作成)

ご提案と、その理由──地面を覆い、緑を戻す

土が流れ出る大きな理由が、地面を覆うものがなくなったことにあるため、ご提案の中心は「流れ出た土を整え、地面を覆い直し、緑を戻す」ことにしました。行った作業は次の4つです。

作業 資料から言える考え方
流れ出た土の撤去と整地 覆う資材を敷く前に、地面を整える
防草シートの施工と砂利の補充 地表を覆うと、雨粒が土を直接たたきにくくなる
スナゴケによる苔山 土壌も肥料も要らない緑化の資材とされるコケで、緑の面をつくる
マダケの植栽 竹を補植して、中庭に緑を戻す

作業の内容

流れ出た土の撤去と整地

流れ出た土を撤去し、地面を整地しました。防草シートについても、最初の敷き方が大事だとされているので(次の項目)、覆う資材を敷く前に地面を整える作業は欠かせません。

防草シートと砂利で地面を覆う

砂利には、伊勢砂利を使いました。

防草シートは、光を遮って雑草を抑える資材です。埼玉県農林総合研究センターの試験では、遮光率99%の資材で地面を覆うと、雑草はほとんど発生しなかったとされています。光が届かないので、土の中にある種も芽を出しにくくなります。一方で、群馬県の試験では、薄いシートはアズマネザサやススキに突き破られて3年目には効果が低く、高密度のシートや不織布のシートは3年目も効果が続いたと報告されています。シートを長持ちさせるには、最初の敷き方を確実にすることが大事だとされています。

スナゴケの苔山

スナゴケは、屋上緑化などにも使われるコケです。学名は、日本の資料では Racomitrium japonicum と書かれることが多く、国際的な分類のデータベース(GBIF)では Niphotrichum japonicum が使われています。日本大学の研究では、スナゴケは乾燥に強く、土壌も肥料も要らない緑化の資材とされ、乾くと茶色に変わることが記録されています。農研機構の事業の成果の概要では、屋上や壁面の緑化でコケの施工が増えていることと、スナゴケが貧栄養を好むことが述べられています。

コケを使った別の現場の記録は、「マッシュホールディングス様 苔(コケ)植栽工事 千代田区麹町」でも紹介しています。

マダケの植栽──水極めと支柱

マダケは、モウソウチク・ハチクとならぶ日本の代表的な竹の一つです。林野庁の「竹の性質」と農林水産省の広報誌(監修は東京大学の研究者)によると、稈(かん)は高さ20m・直径15cmにもなり、地下茎は1年に5m伸びた記録があります。マダケとハチクの開花は、120年周期といわれています。

この中庭では、マダケの植栽で「水極め(みずぎめ)」と支柱を行いました。水極めは、植え付けの植え方の一つです。和歌山県の植栽工の仕様書では、根の周りに土がいきわたるよう、埋め戻すときに水を注いで締める植え方と定義されています。国土交通省の土木工事共通仕様書も、水極めでは根の周りにすき間ができないよう土を流し込むことを求めています。

言葉 仕様書にある説明
水極め 根の周りに土がいきわたるよう、埋め戻すときに水を注いで締める植え方
土極め 水湿を嫌う樹種や凍結のおそれがある場合に、小棒でついて土を根の周りにつき入れる植え方
支柱 風などによる揺れを防いで活着を促し、または風による倒れを防ぐための支え

出典: 和歌山県「第15編 公園緑地編 第2章 植栽工」15-2-1-3 用語の定義、国土交通省「土木工事共通仕様書」10-2-11-3 道路植栽工

改修後の中庭

竹を補植し、砂利と苔山の境界がはっきりしたことで、明るく緑豊かな中庭になりました。

改修後の管理で気をつけたいこと

改修して終わりではなく、そのあとの見守りも中庭の景観を保つ大事な要素です。資料から言えることは次の点です。

  • スナゴケは乾くと茶色に変わることが記録されています。色の変化を、見た目の変化として管理組合様と共有しておくことが大切です。
  • 支柱は、風による揺れや倒れを防いで活着を促すためのものです。竹が根づくまでの間、支えが緩んでいないかを見守ります。
  • 防草シートは、最初の敷き方を確実にすることが長持ちの条件とされています。砂利の補充を含め、地面の覆いが保たれているかを定期的に確かめます。

同じお悩みの管理組合様へ

中庭の植栽が衰えて土が流れる、地面が荒れて景観が悪くなってきた、というお悩みは、築年数のたったマンションで起こりやすいものです。現状を確認し、地面の覆い方と植える植物を考えるところから、ご一緒に進めていきます。マンションの植栽リニューアルの全体の進め方は「マンションの植栽リニューアルの進め方」で、4つの事例とあわせて解説しています。日ごろの植栽管理のご相談もお受けしています。

「植栽リノベーション」のサービス内容と、ご相談の窓口であるお問い合わせのページはこちらです。お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。

よくある質問

Q1. 植え込みの土が流れ出るのは、なぜですか。

植物や落ち葉に覆われていない地面を、雨粒が直接たたくためです。研究機関の資料では、土壌の侵食は主に雨滴の衝撃で起こり、地表を覆うものがなくなると侵食量が急に増えるとされています。

Q2. 防草シートで雑草は生えなくなりますか。

埼玉県農林総合研究センターの試験では、遮光率99%の資材で覆うと雑草はほとんど発生しませんでした。ただし、薄いシートは竹やススキに突き破られて効果が落ちたという群馬県の試験もあり、シートの種類と敷き方が大事です。

Q3. 植栽の「水極め」とは何ですか。

植え付けのとき、埋め戻しながら水を注いで、根の周りに土をいきわたらせる植え方です(和歌山県・国土交通省の仕様書)。この中庭のマダケの植栽でも、水極めをして支柱を付けました。

Q4. スナゴケは、乾くと枯れてしまうのですか。

日本大学の研究では、スナゴケは乾燥に強い緑化の資材とされ、乾くと茶色に変わることが記録されています。茶色に変わることと、枯れることを分けて見る必要があるため、管理の相談では現物を確認します。

Q5. マンションの中庭の植栽改修は、どこに相談すればよいですか。

管理組合様や管理会社様から、お問い合わせフォームでご相談いただけます。現地を確認し、土の状態と植栽の状況に応じた改修内容をご提案します。

マンション・施設・行政のご担当者様へ

当社の樹木診断・植栽管理・植栽リノベーションをまとめた資料は資料ダウンロードのページから、ご相談はお問い合わせのページから承っています。

出典・参考情報

・島田博匡「スギ・ヒノキ人工林における間伐後3年間の林床被覆と侵入植物種の変化」三重県林業研究所研究報告 第10号 p.17(2020年)
・神奈川県「18年度土壌浸食対策工の検討」(丹沢・堂平)
・埼玉県農林総合研究センター「ひと目でわかる新技術2010 被覆資材でコンテナ植木の雑草を抑える」
・群馬県 坂和辰彦「単木柵と併せた防草資材の検討」
・内田裕貴ほか「野外環境下におけるスナゴケの生育評価」日本大学生産工学部 第44回学術講演会講演概要 p.465〜466(2011年)
・農研機構 生研センター「緑化用培養スナゴケの大規模栽培と利用技術の実用化研究」成果の概要
・林野庁「竹の性質」、農林水産省 広報誌 aff 2021年3月号「身近で不思議なタケの生態に迫る!」
・和歌山県「第15編 公園緑地編 第2章 植栽工」、国土交通省「土木工事共通仕様書」10-2-11-3 道路植栽工

株式会社トシ・ランドスケープ

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