マンションの大規模修繕工事に合わせて植栽改修のご検討をされるにあたり、
植栽基盤(土壌)調査のご依頼をいただきました。
神奈川県川崎市のマンションで行った、植栽基盤(土壌)調査の記録です。土の硬さ・水はけ・土壌成分を器具で調べ、植栽された時の状況や水やりの頻度などの情報と合わせて考える調査の進め方を、国の手引きや器具の判定の目安とあわせて紹介します。
マンションの植栽改修の前に、植栽基盤を調べる
最近は樹木医診断(街路樹や保護樹木の点検・診断)だけでなく、
マンションでの植栽の生育不良の原因究明の為の調査のご相談を多くいただいております。
植栽基盤とは、植物の根が伸びて育つ土の層のことです。国土技術政策総合研究所(国総研)の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、植栽基盤を、根の伸びを妨げず、適度な養分や水分を含む「有効土層」と、その底に水がたまらないようにする「排水層」からなるものとしています。そのうえで、良い植栽基盤の条件として、物理的な条件(水はけが良く下の層との境で水が停滞しない、土の硬さが適当、適度な保水性がある)と、化学的な条件(有害物質を含まない、酸度〈pH〉が適当、養分がある程度以上ある)を挙げています。
植えた木や低木の育ちが悪いとき、原因が地上(日当たり・剪定・病害虫)にあるのか、土の中にあるのかで、打つ手は変わります。大規模修繕に合わせて植栽を改修するなら、植え替える前に土の状態を確かめておくと、同じ失敗を繰り返さずに済みます。
土の硬さ・水はけ・土壌成分を、器具で調べる
専門の診断器具を使い
土の硬さ、水はけ、土壌成分
など植栽に影響のある土の状態を調査します。
※診断器具や調査内容の説明につきましては
弊社ウェブサイト内で下記のようなイラスト入りでご紹介しています。
「ツリーリスクアセスメント部門」
- 植栽基盤調査 樹木医 植栽基盤診断士
- 植栽基盤
当社の土壌調査で使う器具と、それぞれで分かることを並べると次のとおりです(記事「植栽基盤診断士とは」の表と同じ内容です)。
| 器具 | 調べるもの | 結果の表し方 | 「良」の目安 |
|---|---|---|---|
| 長谷川式土壌貫入計 | 土の硬さ(根が伸びられるか) | S値(1回の落下で入った深さ、cm/drop) | 1.5を超え4.0以下 |
| 長谷川式簡易現場透水試験器 | 水はけ(透水性) | 最終減水能(mm/hr) | 100mm/hr以上 |
| pH計・EC計(採った土で測る) | 酸度と塩類の濃さ | pH、EC(dS/m) | pH5.6〜6.8、ECは砂土0.2〜0.5・その他の土0.2〜1.0dS/m |
出典: ダイトウテクノグリーン株式会社の各器具の取扱説明書(長谷川式簡易現場透水試験器 Ver.4.1 p.5ほか)、国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」p.1-57 表-2.6
土の硬さは、根が伸びられるかどうかの目安です。長谷川式土壌貫入計のS値が小さいほど硬い土で、取扱説明書に載っている日本造園建設業協会の基準では、0.7以下は「極不良」(多くの根が入り込めない)、1.5を超え4.0以下が「良」とされています。水はけは、水を注いだ穴の水位が1時間に何mm下がるか(最終減水能)で表し、同じ基準では100mm/hr以上が「良」、10mm/hr以下は「不良」で、湿け枯れ(過湿による枯れ)が予想されるとしています。

図: 土の硬さ(S値)の判定の目安(記事 14393 の図)

図: 水はけ(最終減水能)の判定の目安(記事 14402 の図)
新人を樹木医2人がマンツーマンで指導
今年入社した20代の新人2人も
樹木医2人によるマンツーマン指導で
スキルアップしていっています。
診断器具での調査経験が多くなり、
作業と分析のスキルが向上して嬉しい限りです。
- 樹木医 植栽基盤調査
- 樹木医 植栽基盤調査
データだけに頼らない──現場の情報と合わせて考える
初めは診断器具での調査データだけに
頼りがちになりますが
データは重要な指標となりますが、
データだけに頼らず、
▪️植栽された時の状況
▪️定期管理の頻度、内容
▪️植栽されている周辺環境
▪️灌水装置設定など水やり頻度
▪️土の臭い、感触
なども考察する上で非常に重要である事を
伝えながら作業を行いました。
- 植栽基盤調査 樹木医 土壌
- 植栽基盤調査 樹木医 土壌
- 植栽基盤調査 樹木医 土壌
- 植栽基盤調査 樹木医 土壌
- 植栽基盤調査 樹木医 土壌
国の手引きにも、数値と現場の観察を組み合わせる考え方が出てきます。国総研の手引きは、灰色を帯びた土の層や粘り気の強い土(粘性土)の場合は水はけの悪さが考えられるため、透水性の調査が必要としています。土の色や手ざわりは、器具の数値を読むときの手がかりになります。水やりについても、同じ手引きは、植え付けたときの水決めに限らず、葉のしおれなどの様子を見ながら灌水することとしています。灌水装置の設定や水やりの頻度を聞き取るのは、水はけの数値と、実際に土へ入っている水の量を合わせて考えるためです。

図: 植栽基盤(土壌)調査の進め方(調べる項目と5つの情報は記事の本文、器具は各器具の取扱説明書から当社作成)
診断の結果を、改善提案報告書にまとめる
診断の結果を元に
改善提案報告書をまとめていきます。
- 植栽基盤調査 樹木医 土壌
ご相談頂きありがとうございました。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
樹木医 髙尾聡司
まとめ
大規模修繕工事に合わせて植栽改修を検討されているマンションで、植栽基盤(土壌)調査を行いました。専門の器具で土の硬さ・水はけ・土壌成分を調べ、植栽された時の状況、定期管理の頻度と内容、周辺環境、灌水装置の設定、土の臭いと感触といった情報と合わせて考察し、改善提案報告書にまとめます。調査には、今年入社した新人2人も樹木医2人の指導のもとで加わりました。
よくある質問
Q1. 植栽基盤調査では、何を調べますか。
この現場では、専門の器具で土の硬さ、水はけ、土壌成分を調べました。あわせて、植栽された時の状況や定期管理の内容、灌水装置の設定などの情報も集めて考察します。
Q2. 土の硬さや水はけは、どんな基準で判断しますか。
器具の取扱説明書に載っている日本造園建設業協会の基準では、土の硬さ(長谷川式土壌貫入計のS値)は1.5を超え4.0以下、水はけ(最終減水能)は100mm/hr以上が「良」とされています。
Q3. マンションの大規模修繕の前に調べる理由は何ですか。
生育不良の原因が土の中にある場合、植え替えるだけでは同じことが起きるおそれがあるためです。植栽改修を考える段階で、土の状態を数値で確かめておくと、改修の内容を決める材料になります。
出典・参考情報
・国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」(国総研資料第1059号、2019年)p.1-56、p.1-57 表-2.6、p.1-65、p.1-72
・ダイトウテクノグリーン株式会社「長谷川式土壌貫入計 取扱説明書」Ver.5.5 p.14、「長谷川式簡易現場透水試験器 取扱説明書」Ver.4.1 p.9(判定の基準は日本造園建設業協会「植栽基盤整備ハンドブック」第6版)
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・長谷川式簡易現場透水試験器で水はけを測る


































