不定期ではありますが、わたくし現場責任者の髙尾聡司もブログでの発信させていただきます。
作庭、庭石工事の施工例をひとつご紹介します。
東京都杉並区のお庭で、庭石と灯篭を据え、塀を版築土塀で仕上げた作庭の途中のご報告です。お客様とイメージを合わせた進め方と、版築という塀のつくり方、石灯籠と石組の背景を、用語辞典や研究機関の資料をもとに書き添えます。
「庭石を使って落ち着きのある庭を」というご相談
お客様から、「このスペースで、庭石を使って落ち着きのある庭を」
ということでご相談をいただきました。
図面より先に、その場のスケッチでイメージを合わせる
普段では、庭の設計図やパースなどでの提案を行いますが、
ご夫婦とお話しているうちに、ゆっくりと落ち着いた感じのインスピレーションを感じました。
一度イメージを持ち帰りパース絵などに落としてから提案をしようと思いましたが、
その場でのお互いのイメージの共有をさせて頂くのが最善だと考え
今回はその場でスケッチを描きお伝えしてしまいました。
わたし「この庭石のイメージでいかがでしょうか」
ご夫婦「これでいきましょう!」
わたし「ありがとうございます。かしこまりました。」
造園の提案に使う図には、いくつかの種類があります。厚生労働省の造園技能検定の「試験科目及びその範囲並びにその細目」でも、造園の設計図として平面図・立面図・断面図・透視図が挙げられています。「パース」は、このうちの透視図にあたります。
| 図の種類 | 表すもの |
|---|---|
| 平面図 | 真上から見た配置(石・植栽・園路の位置) |
| 立面図・断面図 | 横から見た高さや、地面の下を含む断面 |
| 透視図(パース) | 人の目の高さから見た、できあがりの見え方 |
| スケッチ(この現場) | その場で描き、お客様とイメージを共有した絵 |
出典: 厚生労働省職業能力開発局「造園技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目」(平成21年3月)1級 4 設計図書
施工の途中のご報告──庭石と灯篭
現状、大工さんの建築側の施工工程の兼ね合いで、
途中ではありますが、施工実績のご報告をいたします。
- 庭石 灯篭 作庭
- 庭石 灯篭 作庭
- 庭石 灯篭 作庭
庭に石を立てる考え方は、古くから書き残されています。日本最古の作庭書とされる『作庭記』は、11世紀末から12世紀初めごろに成立したとみられ、橘俊綱の作と伝えられています。日本造園学会の論文によると、作庭記の見出しの最初は「石をたてん事」で、まず角のある主な石を1つ立て、次の石はその石の求めに従って立てる、という考え方が示されています。
灯篭(石灯籠)は、もとは寺社に明かりを献じる献灯として使われていました。日本建築・美術の用語辞典 JAANUS によると、寺社の外で使われるようになったのは16世紀で、茶人が茶室を囲む庭(露地)に石灯籠を置いたことに始まります。千利休は夜の茶会の明かりとして灯籠を1基だけ使い、後の露地では2〜3基を置くことが多くなったとされています。
| 項目 | 資料にあること |
|---|---|
| 作庭記 | 日本最古の作庭書、11世紀末〜12世紀初めごろの成立とみられ、橘俊綱の作と伝えられる |
| 石を立てる考え方 | まず角のある主な石を1つ立て、次の石はその石の求めに従って立てる |
| 石灯籠のはじまり | 寺社の献灯として使われ、16世紀に茶人が茶室の庭に置いたことから庭でも使われるようになった |
| 露地の灯籠 | 千利休は夜の茶会の明かりに1基だけ使い、後の露地では2〜3基を置くことが多くなった |
出典: 飛田範夫「日本庭園の原点としての『作庭記』」ランドスケープ研究 87巻2号 p.112〜115(日本造園学会、2023年)、JAANUS「tourou 灯籠」「roji 露地」「sakuteiki 作庭記」
版築土塀とは──土を層にして突き固める塀
塀は版築土塀で仕上げました。

版築土塀
版築(はんちく)は、土を木の枠の間に入れて突き固め、層を重ねていく工法です。JAANUS によると、飛鳥時代に中国から伝わり、建物の基壇の芯や土の塀をつくるのに使われてきました。塀の場合は先に溝を掘るのが普通で、土は硬くなるまで突き固め、1層の厚さは10〜15cmまでとされています。

図: 版築のしくみ(模式図。出典: JAANUS「hanchiku 版築」「tsuiji 築地」、京都市埋蔵文化財研究所・京都市考古資料館「リーフレット京都 No.305」をもとに当社作成)
寺院などで見かける、屋根を葺いた土の塀「築地塀(ついじべい)」も、この版築でつくられます。京都市埋蔵文化財研究所の東寺の東築地塀の調査では、平安時代前期の塀は約5cmの厚さを単位に土を叩き締めていたこと、室町時代の塀は10cm未満を単位にしていたことが確かめられています。同じ塀の基底部の幅は約2.3m、高さは約3mの台形でした。
土を突き固めて層を重ねる工法は、古代の寺院の塀から今の庭の塀まで、同じ考え方でつながっています。
まとめ
このお庭では、お客様のご要望を伺ったうえで、図面やパースを持ち帰る前に、その場のスケッチでイメージを共有しました。庭石と灯篭を据え、塀は土を層にして突き固める版築土塀で仕上げています。この記事は、建築側の施工工程との兼ね合いによる途中のご報告です。
完成しましたら、またご報告します。
現場のわたくし髙尾聡司からは以上です。
株式会社トシ・ランドスケープ
よくある質問
Q1. 版築土塀とは、どんな塀ですか。
土を木の枠の間に入れて突き固め、層を重ねてつくる土の塀です。版築は飛鳥時代に中国から伝わった工法で、1層の厚さは10〜15cmまでとされています(JAANUS)。
Q2. 庭の石灯籠は、もとは何に使われていたのですか。
寺社に明かりを献じる献灯として使われていました。16世紀に茶人が茶室を囲む庭に置いたことから、庭でも使われるようになったとされています(JAANUS)。
Q3. 作庭の提案は、必ず図面で行うのですか。
普段は庭の設計図やパースで提案しています。このお庭では、ご夫婦とお話しするうちにイメージが浮かび、その場でスケッチを描いてお伝えしました。
出典・参考情報
・JAANUS(日本建築・美術用語辞典)「hanchiku 版築」「tsuiji 築地」「tourou 灯籠」「roji 露地」「sakuteiki 作庭記」(2001年)
・京都市埋蔵文化財研究所・京都市考古資料館「リーフレット京都 No.305 不動の築地塀―教王護国寺(東寺)東築地塀の調査―」(2014年6月)
・飛田範夫「日本庭園の原点としての『作庭記』」ランドスケープ研究 87巻2号 p.112〜115(日本造園学会、2023年)
・厚生労働省職業能力開発局「造園技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目」(平成21年3月)
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