東京都杉並区の個人邸のお庭で作庭・石工事のご相談をいただきました。
出入り口の狭いお庭へ石を運び入れ、丸太で組んだ三又(さんまた)で据えた石工事の記録です。使った石の呼び名のもとと、重い石を吊るときの法令の決まりも書き添えます。
見習いのスタッフがまとめた、2日間の石工事
2日間作業した見習いのスタッフ福場・島田が
今回の工事の事を文章にまとめてました。
書き出すことで覚えること、気づくこともたくさんあると思います。
- ユニック 小型移動式クレーン 石 吊り上げ 運搬 玉掛け
- ユニック 小型移動式クレーン 石 吊り上げ 運搬 玉掛け
重機が入らない庭へ──四輪台車と三又で石を据える
今回のお庭は出入り口が狭く重機が中まで入らないため、
四輪台車で石を搬入し、丸太で組んだ三又(さんまた)を使用して据付けます。
- 三又 さんまた 石工事 鞍馬石 筑波石 伊予青石 据え付け 造園工事
- 三又 さんまた 石工事 鞍馬石 筑波石 伊予青石 据え付け 造園工事
- 三又 さんまた 石工事 鞍馬石 筑波石 伊予青石 据え付け 造園工事
- 三又 さんまた 石工事 鞍馬石 筑波石 伊予青石 据え付け 造園工事
- 三又 さんまた 石工事 鞍馬石 筑波石 伊予青石 据え付け 造園工事
- 三又 さんまた 石工事 鞍馬石 筑波石 伊予青石 据え付け 造園工事
使った石──甲州鞍馬石・筑波石・伊予青石
使用石
水鉢「甲州鞍馬石」
少し赤茶色の天然石。
- 水鉢 蹲 つくばい 灯篭
角石「筑波石」
黒っぽくザラっと。
「伊予青石」
青々とした色味と波の様な模様が美しい。
3つの石について、研究機関の資料にあることを並べると次のとおりです。
| 石 | この記事で書いた見た目 | 研究機関の資料にあること |
|---|---|---|
| 甲州鞍馬石 | 少し赤茶色の天然石 | 京都の鞍馬石と同じものが京都以外でも産出する一例で、山梨県の甲府盆地の徳和花崗閃緑岩体の一部から得られる |
| 筑波石 | 黒っぽくザラっと | 筑波山の山頂付近にある斑れい岩、筑波山は山頂部が斑れい岩で、周囲は花崗岩からなる |
| 伊予青石 | 青々とした色味と波の様な模様 | 緑色片岩(変成岩の一つの結晶片岩の一種)、愛媛県域の三波川変成帯から良質の緑色片岩が産出することから「伊予の青石」と呼ばれていた |
出典: 石原舜三「さび石,とくに鞍馬石について」地質ニュース443号 p.42〜49(1991年7月、工業技術院地質調査所)、酒井彰「つくば市内の石材」地質ニュース643号 p.44〜45(2008年3月、産業技術総合研究所 地質標本館)、宮地良典ほか「地質標本館2008年度野外観察会『筑波山へ行こう~石が語る自然の歴史~』」地質ニュース653号 p.40〜41(2009年1月)、愛媛大学埋蔵文化財調査室「文京遺跡の解明Ⅵ『伊予の青石、赤石』」(2017年12月13日)
同じ地質ニュースの記事によると、京都の鞍馬石は、鞍馬寺の下を流れる鞍馬川のころび石が使われてきた石で、鞍馬石の蹲(つくばい)は茶人の間で特に好まれているとされています。この石は鉱物の磁硫鉄鉱を多く含み、それが風化で酸化して褐色の酸化鉄に変わることで「さび」が出ると説明されています。同じ記事は、今回の水鉢に使った甲州鞍馬石も、こうした「さび石」の一つとして取り上げています。
筑波石のもとになる斑れい岩は、マグマが地下深くでゆっくり冷えて固まった深成岩で、急に冷えて固まった火山岩に比べて、岩石の中の鉱物の粒が大きくなります。産業技術総合研究所の地質標本館の解説では、筑波山で見られる斑れい岩は風化して表面が黒くなっていること、花崗岩に比べて浸食されにくいことが説明されています。
水鉢の写真の説明にある「蹲(つくばい)」について、観光庁の多言語解説文は、通常お茶室の近くにある、周りに石を配した石の鉢で、客が手や口を濯ぎ清めるためのものと説明しています。
愛媛大学の資料では、四国山地には中央構造線に沿って東西に延びる三波川変成帯があり、結晶片岩が基盤岩をなしていると説明されています。同じ変成帯の群馬県の三波石峡について、観光庁の多言語解説文は、三波川の岩石の独特の色と形が、何世紀にもわたって伝統的な庭園の特徴として珍重されてきたと紹介しています。
三又とチェーンブロック──狭い現場で重い物を吊る
・三又
3本の丸太の上部を結束したもので、下部を三方に開いて、
上部にチェーンブロックを吊り下げる。
狭い現場で、重量物を吊り上げる方法のひとつです。
最初の写真の説明にある「小型移動式クレーン」と「玉掛け」は、法令で資格が決まっている作業です。クレーン等安全規則では、移動式クレーンの運転も、荷にワイヤーなどを掛け外しする玉掛けも、その機械の「つり上げ荷重」(構造と材料に応じて負荷させることができる最大の荷重)によって、特別教育・技能講習・免許のどれが要るかが分かれます。

図: 移動式クレーンで重い物を吊るときに要る資格(出典: クレーン等安全規則・労働安全衛生法施行令をもとに当社作成)
つり上げ荷重1t以上の移動式クレーンの玉掛けには玉掛け技能講習の修了が、つり上げ荷重1t以上5t未満の移動式クレーンの運転には小型移動式クレーン運転技能講習の修了か移動式クレーン運転士免許が要ります(クレーン等安全規則 第221条・第68条)。運転と玉掛けは、別々の資格です。
石の据え方で、空間の見え方が変わる
石を据える際は、形状、色味、高さ、気勢(石の持つ勢い)など、
その石を最大限に活かし、美しく据えることが大切です。
石の表情をよく確かめてどのくらい埋めると、
どっしりと安定感が出るのかなど、
石の据え方一つで空間の見え方が変わります。
- 水鉢 蹲 つくばい 灯篭
これからは和風庭園を和風だけで終わらせず、
洋と和の混合空間での庭づくりも伝統技術+現代の庭との
調和を目指して行きたいです。
ありがとうございました。
株式会社トシ・ランドスケープ
福場・島田
よくある質問
Q1. 三又(さんまた)とは何ですか。
3本の丸太の上部を結束し、下部を三方に開いて、上部にチェーンブロックを吊り下げたものです。重機が入らない狭い現場で、重量物を吊り上げる方法のひとつです。この記事のお庭では、四輪台車で運び入れた石を、三又を使って据え付けました。
Q2. 筑波石とは、どんな石ですか。
産業技術総合研究所の地質標本館の記事では、筑波石は筑波山の山頂付近にある斑れい岩と紹介されています。この記事では角石として使い、見た目は黒っぽくザラっとした石です。
出典・参考情報
・石原舜三「さび石,とくに鞍馬石について」地質ニュース443号 p.42〜49(1991年7月)
・酒井彰「つくば市内の石材」地質ニュース643号 p.44〜45(2008年3月)
・宮地良典ほか「地質標本館2008年度野外観察会『筑波山へ行こう~石が語る自然の歴史~』」地質ニュース653号 p.40〜41(2009年1月)
・愛媛大学埋蔵文化財調査室「文京遺跡の解明Ⅵ『伊予の青石、赤石』」(2017年12月13日)
・観光庁 地域観光資源の多言語解説文データベース「三波石峡」「お茶の井」
・産業技術総合研究所 地質標本館「おすすめ標本ストーリー 標本館の表札」(高橋誠)
・クレーン等安全規則 第2条・第67条・第68条・第221条・第222条、労働安全衛生法施行令 第10条・第20条(e-Gov 法令検索で原文を確認)
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