送電線と樹木の離隔距離が定められており、
樹木の成長に応じて伐採や剪定等の管理を行う必要があります。
埼玉県の山林で、送電線の下に育った樹木を、作業車を入れられないためツリークライミング・ロープワークの特殊伐採で管理した記録です。送電線と樹木の離隔距離を決めている国の基準と、電線の近くで作業するときの決まりを、法令と電力会社の資料をもとに書き添えます。
作業車の入らない山林で、ロープワークの特殊伐採
今回のご相談いただいた作業環境は、作業車の設置困難な為、
ツリークライミング・ロープワークでの特殊伐採対応となりました。
特殊伐採は、木に登って枝や幹を上から少しずつ切り、ロープで吊り下ろしながら小さくしていく伐り方です。斜面の山林では高所作業車やクレーンを据える場所が取れないことが多く、人が木に登って作業する方法が選ばれます。
普段の都会の植栽樹木とはまた雰囲気が異なり、
森林の過酷な環境に適応した樹木の生命力を強く感じる空間でした。
- 森林 雑木林 管理 林業 ロープワーク 特殊伐採
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山林での伐木などの作業では、一般には、物が飛んできたり落ちてきたりする危険に備えて、作業に当たる人は保護帽(ヘルメット)を着けるものとされています(出典: 労働安全衛生規則 第484条)。
送電線と樹木の離隔距離は、国の技術基準で決められている
電線と植物の関係は、経済産業省の「電気設備に関する技術基準を定める省令」第29条が大もとです。電線路の電線は、植物と接近する場合に、植物を傷めるおそれがなく、接触や断線による感電や火災のおそれがないように施設しなければならないとしています。省令そのものに数値は無く、具体的な距離は「電気設備の技術基準の解釈」に書かれています。
解釈が示す電線と植物との離隔距離を、表にまとめました。
| 電線の区分 | 使用電圧 | 植物との離隔距離 |
|---|---|---|
| 架空電線(第79条) | 低圧・高圧 | 平時吹いている風などで植物に接触しないように施設する |
| 特別高圧の架空電線(第106条) | 35,000V以下 | 特別高圧絶縁電線・ケーブルは接触しないこと、高圧絶縁電線は0.5m以上、その他は2m以上 |
| 特別高圧の架空電線(第103条) | 35,000Vを超え60,000V以下 | 2m |
| 特別高圧の架空電線(第103条) | 60,000Vを超え170,000V以下 | (2+c)m、cは使用電圧と60,000Vの差を10,000Vで割った値(小数点以下は切り上げ)に0.12を掛けたもの |
| 特別高圧の架空電線(第103条) | 170,000Vを超えるもの | 日本電気技術規格委員会の規格による |
出典: 経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」(令和7年11月20日改正)第79条・第103条・第106条、「電気設備に関する技術基準を定める省令」第29条(e-Gov法令検索)
この距離は、電線を施設する側が守る設備の基準です。木は毎年伸びるので、一度離しても、何年かたつと電線に近づいてきます。冒頭の「樹木の成長に応じて伐採や剪定等の管理を行う必要があります」は、このことを指しています。
電気事業法 第61条は、植物が電線路に障害を及ぼす、またはそのおそれがある場合で、やむを得ないときは、電気事業者が経済産業大臣の許可を受けて、その植物を伐採・移植できるとしています。あらかじめ植物の所有者に通知することも決められています。
普段目に触れにくい空間の森林管理や、
そこで生まれる新たな価値観を日々考える必要があり、
造園と林業が連携し繋がっていく必要が今後あるように思います。
電線の近くで作業するときの決まり
送電線の下の作業では、木そのものの危険に加えて、電気の危険があります。東京電力パワーグリッドは、送電線は裸線のため、接近するだけで感電するおそれがあり、電線に接触しなくても感電することがあると案内しています。同社は、電線の近くで作業するときに保つ「安全な離隔距離」を電圧ごとに示し、送電線の付近で工事や作業をする前には、同社と施工協議をするよう求めています。

図: 電線の電圧と、近くで作業するときの安全な離隔距離(出典: 東京電力パワーグリッド「送電線近くでの感電事故防止のお願い」)
労働安全衛生規則 第349条は、架空電線などに近い場所で作業をするとき、感電の危険が生じるおそれがあれば、電線の移設、囲いの設置、絶縁用防護具の装着のいずれか、それが著しく困難なときは監視人を置いて作業を監視させることを、事業者に義務づけています。
伐採そのものについては、厚生労働省の「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」(令和2年1月改正)が、保護帽を常に着けることや下肢の切創防止用保護衣の着用、伐倒の合図をして伐倒者以外の労働者の退避を確かめてから倒すこと、伐倒する木の高さの2倍を半径とする円の内側への立入禁止などを示しています。
造園と林業がつながる現場
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企業にとっても、その地域社会、そしてその近くにある自然環境など、
全てにとって相乗効果となるような関係性が求められていると考えています。
地域社会との丁寧な繋がりや貢献はいずれ自らにも還元される
サスティナブルとも関係してくる部分であり、
弊社トシ・ランドスケープは、植栽によるみどりの空間の提供だけにこだわらず、
都市景観~森林の自然環境、そして人と人が繋がりながら、
今後の目指すべき未来に向けて少しずつ前進していきます。
株式会社ウッディーコイケ様
いつもご相談いただきありがとうございました。
まとめ
埼玉県の山林で、送電線の下の樹木を、作業車を設置できないためツリークライミング・ロープワークの特殊伐採で管理しました。送電線と樹木の離隔距離は国の技術基準で決められていて、木が育てば、伐採や剪定でその距離を保ち直す必要があります。電線の近くでの作業には、電力会社との事前の協議と、感電を防ぐ措置が求められます。
よくある質問
Q1. 送電線と樹木の離隔距離は、どこで決められていますか。
経済産業省の「電気設備に関する技術基準を定める省令」第29条と、具体的な距離を示す「電気設備の技術基準の解釈」で決められています。たとえば35,000Vを超え60,000V以下の特別高圧架空電線と植物との離隔距離は2mです。
Q2. 送電線の近くの木を切るときは、どこに連絡すればよいですか。
東京電力パワーグリッドは、送電線の付近で工事や作業をする前には同社と施工協議をするよう求めています。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
樹木医 髙尾聡司
出典・参考情報
・電気設備に関する技術基準を定める省令 第29条(平成9年通商産業省令第52号、e-Gov法令検索)
・経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」(令和7年11月20日改正)第79条・第103条・第106条
・電気事業法 第61条(e-Gov法令検索)
・労働安全衛生規則 第349条・第484条(e-Gov法令検索)
・東京電力パワーグリッド「送電線近くでの感電事故防止のお願い」
・厚生労働省「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」(令和2年1月31日改正)
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・樹木医 別荘地・樹木伐採 静岡県熱海市
※ 「ツリークライミング」は、株式会社ツリークライミングワールドの登録商標です。当社の記事では、ロープとハーネスで樹木に登って作業する技術を指す言葉として使っています。



































