キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート
2021年秋に東京都庭園美術館で開かれた、キュー王立植物園(キューガーデン)のボタニカルアートの展覧会を家族で訪ねた記録です。ボタニカルアートがどんな絵なのか、キューガーデンとはどんな植物園なのかを、美術館と研究機関の資料で補い、庭園の高木や芝生の手入れで目にとまったことも書き留めます。
展覧会の概要
会期
2021年9月18日(土)〜11月28日(日)
会場
東京都庭園美術館
美術館の展覧会の案内に書かれていた内容は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主催・協力 | 東京都庭園美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、特別協力 英国キュー王立植物園 |
| 会場 | 東京都庭園美術館 本館と新館 |
| 主な展示 | 18〜19世紀のキューガーデン所蔵のボタニカルアート 約100点 |
| 貴重な図版 | 手彩色の植物誌『フローラの神殿』、『カーティス・ボタニカル・マガジン』など |
| 陶磁器 | シャーロット王妃が愛好したウェッジウッドなど、王室ゆかりの陶磁器 |
出典: 東京都庭園美術館「キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート」展覧会ページ(2021年)
キューガーデン(キュー王立植物園)とは
キュー王立植物園は、ロンドン南西部のテムズ河畔にある植物園です。1759年に、ジョージ3世の母オーガスタ皇太子妃が小さな庭園として造ったのが始まりで、ジョージ3世とシャーロット王妃の時代に規模が広がり、研究機関としての整備も進みました。展覧会の題にシャーロット王妃の名があるのは、この時代とのつながりによるものです。
面積は132ヘクタール、3万種以上の植物と約1万4千本の樹木があり、2003年に植物のコレクションと造園技術の歴史・発展への貢献が評価されて、ユネスコの世界遺産に登録されました。所蔵するボタニカルアートは22万点を超え、世界最大級とされています(東京都庭園美術館の展覧会ページによる)。
ボタニカルアートとは──「植物学的な絵画」
精緻な描写による科学的視点と、
美しさが共存するボタニカルアートです。
ボタニカルアートの定義は、
「植物学的な絵画」という意味です。
植物学的なとは、植物学の立場から
植物の品種の特徴が正しく正確に
描かれた絵画という事になります。
単に「綺麗な植物の絵」を描くのではなく、
「この植物の特徴は何か」が
分かるように描く点が
ボタニカルアートの重要なポイント
だというのが興味深い点でした。
京都大学の植物園の安江尚子さんは、兵庫県立人と自然の博物館の『共生のひろば』(2016年)で、ボタニカルアートは古代から薬草を見分けるために描かれ、17〜18世紀の大航海時代には新しく見つかった植物を記録する手段として、植物学者と植物画家が連携して描いてきたと紹介しています。キュー王立植物園には今も専属の植物画家がいて、植物学者の指示を受けながら植物の構造を正確に描き、種の同定(見分けること)に役立てる「Scientific Illustration(科学的な植物画)」を描いているそうです。1787年からは植物学者と植物画家の連携による『ボタニカル・マガジン』が刊行され、今も『カーティス・ボタニカル・マガジン』として続いています。
同じ寄稿によると、科学的な植物画は図1の順で描かれます。分解図に倍率かスケールバーを必ず添えるのは、絵を見た人が実物の大きさまで読み取れるようにするためです。

図: 科学的な植物画(Scientific Illustration)ができるまで(出典: 安江尚子「Scientific Illustration を学んで」『共生のひろば』11号、兵庫県立人と自然の博物館、2016年、p.38〜42 をもとに当社作成)
日本でも江戸時代の本草学から植物図譜が描かれ始め、明治時代に植物学へ移るとともに多くの植物画が描かれました。牧野富太郎の『大日本植物志』は、その代表として挙げられています(同上)。
トケイソウの額絵もお土産に
購入する事もでき、大満足でした。

庭園美術館の庭──芝生の広場と和風庭園の高木
庭園美術館内には、
しっかりと整備された芝生の広場や
和風庭園もあり一見の価値があります。
特に樹林の骨格を形成する20mを超えるような
マツ、ヒマラヤスギの枝ぶりは圧巻です。
東京都庭園美術館の本館は、朝香宮鳩彦殿下の邸宅として建てられたアール・デコ様式の建物(旧朝香宮邸)で、2015年(平成27年)に国の重要文化財に指定されました。庭は芝庭・日本庭園・西洋庭園からなり、芝庭は朝香宮邸の時代から引き継がれたものです。日本庭園には、1936年(昭和11年)に上棟した茶室「光華」があります(東京都庭園美術館「庭園」のページによる)。
芝生の質を保つロボット芝刈機
小さな小屋の中を覗き込むと、
ハスクバーナ製のロボット芝刈機(オートモア)がありました。
営業時間外などに時間設定しこまめに刈って、
このクオリティを維持しているのかもしれません。

小屋の中に収まったロボット芝刈機
こまめに刈ることが芝生の質につながる理由は、芝の管理の資料にも書かれています。米国カンザス州立大学の芝の刈り込みの資料(2017年)は、1回に刈るのは草の葉の3分の1までとし、それ以上刈ると生理的なストレスになり、暑さや寒さによる傷みにつながるおそれがあるとしています。また、刈り高を低く保つほど刈る回数を増やす必要があり、十分にこまめに刈っていれば、短い刈りかすは芝の中に落ちて取り除かなくてよいとしています。上の「時間設定しこまめに刈って」という見立ても、この考え方に沿ったものです。
美術館にこどもを連れて行く機会も
あまりない為、家族で良い体験となりました。
ボタニカルアートにご興味ある方には、
おすすめの展覧会かと思います。
まとめ
- 2021年9月18日〜11月28日、東京都庭園美術館で、キュー王立植物園のボタニカルアートの展覧会が開かれました
- ボタニカルアートは「植物学的な絵画」で、綺麗な絵というより、その植物の特徴が分かるように描かれます
- キュー王立植物園は1759年に始まり、2003年に世界遺産に登録された植物園で、22万点を超えるボタニカルアートを所蔵しています
- 庭園美術館の庭では、20mを超えるようなマツ、ヒマラヤスギの枝ぶりと、ロボット芝刈機で手入れされた芝生の広場が目にとまりました
よくある質問
Q1. ボタニカルアートとは、どんな絵ですか。
「植物学的な絵画」という意味で、植物学の立場から、その植物の特徴が正しく分かるように描かれた絵です。キュー王立植物園では、植物学者の指示を受けて種の同定に役立てる、科学性に重点をおいた植物画も描かれています。
Q2. キューガーデンは、いつ世界遺産に登録されたのですか。
2003年に、植物のコレクションと造園技術の歴史・発展への貢献が評価されて、ユネスコの世界遺産に登録されました。
Q3. 芝生は、なぜこまめに刈るとよいのですか。
芝の管理の資料では、1回に刈るのは葉の3分の1までとされ、それ以上刈ると芝のストレスになります。こまめに刈れば一度に刈る量が少なく、短い刈りかすも芝の中に落ちて残りません。
出典・参考情報
- 東京都庭園美術館「キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート」展覧会ページ(2021年)
- 東京都庭園美術館「庭園」のページ(2026年10月に確認)
- 安江尚子「Scientific Illustration(サイエンティフィック イラストレーション)を学んで」『共生のひろば』11号、兵庫県立人と自然の博物館、2016年3月、p.38〜42
- Kansas State University Research and Extension, “Turfgrass Mowing” MF2129, 2017年4月
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