アーボソニック3Dのパソコンのソフトで、樹種の選択からセンサーの配置、時間データの記録、断面画像、保存までを操作する手順と、測った音の時間・ばらつき・往復の差・速さを読み解く方法を、当社の実測データとソフトの画面を使って、この機器を使う樹木医が解説します。
アーボソニック3D(東京都の街路樹診断等マニュアルでの呼び名は多点式応力波速度測定器)は、幹に打ったセンサーをハンマーでたたき、音が届くまでの時間から幹の中の様子を推し量る、ファコップ社(ハンガリー)の機器です。結果として目に入るのは色の付いた断面画像ですが、その元にあるのは、マイクロ秒(100万分の1秒。μs)単位で並んだ時間の数字です。この数字がどう集められ、どこで乱れ、ソフトがそれをどう絵にしているのかを知っておくと、断面画像を受け取ったときに「この色をどこまで信じてよいか」を自分で確かめられるようになります。
この記事は、当社が現場で使っている社内のマニュアルと、メーカーの取扱説明書(2026年9月7日版。以下「説明書」)をもとに書きました。道具の一つずつや打ち込み方はアーボソニック3Dの使い方と断面画像の見方に、東京都の様式のカルテの欄ごとの読み方はアーボソニックの腐朽診断カルテの読み方に、風荷重と安全率はアーボソニック3Dの風荷重解析に書いています。ここでは、その間にある「パソコンの画面の中」を詳しく見ていきます。
ソフトの画面は英語です。記事では、画面の項目名を英語のまま書き、日本語の訳を括弧で添えます。操作の説明には「画面3の⑧」のように、記事の中の画面写真の番号と、写真に重ねた番号の枠を示します。
先に答え
- ソフトの画面の上には「Tree(樹木)」「Sensor Geometry(センサーの配置)」「Time Data(時間データ)」「Tomograms(断面画像)」「Biomechanics(力学の評価)」「Image Container(画像入れ)」「Report(報告書)」の7つのタブが並び、現場では左から順に使います。
- 測った音は、まず Time Data(時間データ)の表に、たたくたびに1行ずつ時間(μs)で入ります。断面画像はこの時間とセンサーの間の距離から計算される、音の速さの地図です。
- データの良し悪しは Processed Times(集計した時間)の2つの表で確かめます。同じ組の時間のばらつき(既定では5%を超えると赤いセル)と、行きと帰りの時間の差(対称差)が、たたき直すかどうかの手がかりです。
- 断面画像の色は、健全さではなく音の速さを表します。色の範囲(Velocity limits=速さの上下限)は自動の計算が推奨で、手で動かすと腐朽と読む範囲も変わります。
- 説明書は、コードの入れ違い・浮いたセンサー・入力の桁違いでも、腐朽のような断面画像になる例を挙げ、巻尺の付けっぱなしでは音の近道が現れる例も載せています。おかしな画像は、まず設置と入力を疑います。
ソフトの全体像 7つのタブを左から順に
アーボソニック3Dのソフトは Windows のパソコンで動き、メーカーの公式サイトのダウンロードのページに置かれています(2026年10月25日の時点で ArborSonic 3D 5 for Windows、版は 5.3.179)。当社の画面写真は 5.3.168 のもので、この記事の画面はその版です。Android のスマートフォン用のアプリもありますが、説明書は、アプリの機能はパソコンより少なく、結果の評価にはパソコンのソフトで開く必要がある、としています(p.42)。
画面の上に並ぶ7つのタブを、当社の作業の順に並べると次のようになります。最後の Image Container(画像入れ)と Report(報告書)は、どちらも画像と報告書の仕事なので1つにまとめました。

ソフトのタブと、当社の作業の順(ArborSonic 3D Manual 2026年9月版のソフトの章をもとに当社作成)
| タブ | することの例 | 説明書のページ |
|---|---|---|
| Tree(樹木) | 樹種を選ぶ、1か所をたたく回数を決める、名前・メモ・位置 | p.12〜15 |
| Sensor Geometry(センサーの配置) | 測る高さ、配置の方式、センサーの数、センサーの間の距離 | p.16〜19 |
| Time Data(時間データ) | 機器とつなぐ、たたいて時間を集める、データを確かめて消す | p.20〜25 |
| Tomograms(断面画像) | 速さの表・線の図・断面の色の図・立体の図・表面の割れの深さ | p.25〜31 |
| Biomechanics(力学の評価) | 腐朽の面積の割合、風の力と安全率 | p.32〜41 |
| Image Container(画像入れ)・Report(報告書) | 画像を集める・保存する、報告書を作る | p.31・41 |
出典: ArborSonic 3D Manual(Fakopp、2026年9月版)のページは印字のページ番号
画面の英語と日本語の対応
記事に出てくる画面の項目名を、先にまとめておきます。日本語はソフトの正式な訳ではなく、当社が説明書の内容に合わせて付けた訳です。
| 画面の英語 | 日本語の訳 | 出てくるタブ |
|---|---|---|
| New project / Open project | 新しいプロジェクト/プロジェクトを開く | 画面の左上 |
| Save project / Save project to a different file | 上書き保存/名前を付けて保存 | 画面の左上 |
| Application Options | アプリの設定 | 画面の左上(青いスパナ) |
| User data / Reader device | ユーザーデータ(復元用の写し)/読み取り装置 | Application Options の中のタブ |
| Reader configuration | 読み取り装置の設定(使うバッテリーボックスを選ぶ) | Application Options・Time Data |
| Species | 樹種 | Tree |
| Project options | プロジェクトの設定 | Tree |
| Min. good row count | 1つのセンサーに要る正しい打撃の回数 | Tree(Project options) |
| Rel. Time Error Threshold | 時間のばらつきの境目(%) | Tree(Project options) |
| Sensor type(Normal / Long) | センサーの種類(ふつう/長い釘) | Tree(Project options) |
| Tree location | 木の所在地 | Tree |
| Layer / Add layer / Copy layer | レイヤー(1つの高さの断面)/レイヤーを足す/配置を写す | Sensor Geometry |
| Height | 測る高さ | Sensor Geometry |
| Valid spatial data | 配置の入力は正しいという表示(誤りがあれば赤い帯) | Sensor Geometry |
| Scheme(Circle / Ellipse / Irregular / Rectangle) | 配置の方式(円/楕円/不定形/長方形) | Sensor Geometry |
| Sensor count | センサーの数 | Sensor Geometry |
| Ludwig sensors | Ludwig センサー(音を出すだけで受けない追加の釘) | Sensor Geometry |
| PD / BT | 貫入深さ(釘の先の深さ)/樹皮の厚さ | Sensor Geometry |
| Start BT Caliper | Bluetooth のキャリパーにつなぐ | Sensor Geometry |
| Start / Stop、Device inactive / Connected | つなぐ/切る、つながっていない/つながった | Time Data |
| Time rows | 時間の行(打撃ごとの時間の表) | Time Data |
| Remove bad rows / Remove selected rows / Remove all rows | エラーの行を消す/選んだ行を消す/全部の行を消す | Time Data |
| Record: normal / Record: Ludwig | ふつうのセンサーを記録/Ludwig センサーを記録 | Time Data |
| Auto advance | 次の Ludwig センサーへ自動で進む | Time Data |
| Show Ludwig sensor data | Ludwig センサーのデータを表示 | Time Data |
| Processed Times / Average Time | 集計した時間/平均の時間 | Time Data |
| Regularized Time | 補正した時間(センサーの中の時間と方向の違いを補正) | Time Data |
| Absolute values / Relative values | ばらつきを μs で表示/% で表示 | Time Data |
| Raw measurements / Auto-filtered measurements | 全部の行で計算/外れた行を自動で除いて計算 | Time Data |
| symm. diff. | 対称差(往復の時間の差) | Time Data |
| Time correction | センサーの中を通る時間の補正 | Time Data |
| Color scheme / Detailed | 配色/詳細(推奨の配色) | Tomograms |
| Matrix / Graph / 2D Map / 3D Map / Cracks | 速さの表/線の図/断面の色の図/立体の図/表面の割れ | Tomograms |
| Velocity limits / Calculate automatically | 色の範囲(速さの上下限)/自動で計算 | Tomograms |
| Layers and elements / Multilayer model | レイヤーの一覧/高さを重ねた立体の図 | Tomograms |
| Isec. plane / Rotation / Offset | 各断面を貫く縦の面/回転/ずらす | Tomograms |
| Rulers | 定規(長さを測る線) | Tomograms(2D Map) |
| Tomogram options / Minimal Line Velocity | 断面画像の設定/線の速さの下限 | Tomograms(スパナ) |
| Wind / Layers | 風の条件/レイヤーの表 | Biomechanics |
| Decayed area | 腐朽の面積の割合 | Biomechanics |
| Avg. T/R | 平均の t/R(残る健全な材の厚さ÷半径) | Biomechanics |
| Image Editor / Layer Map | 画像の編集/荷重を支える範囲と弱い方向の図 | Biomechanics |
| Title | 画像の名前 | 画像を保存する画面 |
| Add to Image Container / Save to file | 画像入れに加える/ファイルに保存 | 画像を保存する画面 |
| Generate report | 報告書を作る | Report |
| Picture size / Use custom size | 画像の大きさ/大きさを指定する | 画像を保存する画面 |
出典: 項目名は ArborSonic 3D 5.3.168 の画面と ArborSonic 3D Manual(2026年9月版)、訳は当社
測る前に 機器との接続と、現場へ出る前の点検
ソフトとバッテリーボックス(センサーの信号をまとめてパソコンへ送る灰色の箱)は、USB のケーブルか Bluetooth でつながります。測る前に、ソフトに「どの機器を使うか」を一度教えておく必要があります。機器を選ぶ「Reader configuration(読み取り装置の設定)」の画面は、画面の左上の青いスパナの「Application Options(アプリの設定)」(画面1の②)からも、Time Data(時間データ)のタブのスパナ(画面4の③)からも開けます(p.8・85)。Application Options の中では、Reader device(読み取り装置)のタブにボタンがあります。Reader configuration の画面そのものは、記事の画面には写っていません。
| つなぎ方 | 選び方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| USB のケーブル | 「Cable(ケーブル)」のボタンで自動で探す、手で選ぶときは、名前に「Prolific」「USB」とある COM ポート(パソコンの通信の口) | 差す USB の口を変えると COM ポートの番号も変わり、選び直しが要る |
| Bluetooth(BLE) | 「Bluetooth」→「Detect Bluetooth port(Bluetooth の口を探す)」で自動で探す、一覧では名前に「ArborSonic3D」、最近見えた機器に「[ACTIVE](動いている)」 | 近くで電源の入った機器が1台だけのときに自動の検出がうまくいく |
| Bluetooth(旧型の Classic) | 2025年より前に売られた機器は、先に Windows でペアリング(機器どうしの登録)をする | ペアリングのときに PIN(暗証番号)を求められたら 1234 |
出典: ArborSonic 3D Manual(2026年9月版)p.8〜12・70〜72。キャリパー(センサーの間の距離を測る道具)は無線だけでつながる
説明書は、3か月以上使っていなかった機器を現場へ持ち出す前に、点検の章を読むよう勧めています(p.57)。木の切れ端にセンサーを2個打ち、1台のアンプボックス(センサーの信号を受ける黒い小箱)とバッテリーボックスにつなぎ、ソフトを起動して Time Data(時間データ)のタブでセンサーをたたく。時間の行が入ってくれば、ここまでの部品は働いています。木片が無ければ、センサーの釘どうしを軽く当てても確かめられる、とあります(p.58)。

現場へ出る前に、木片に打ったセンサー2個で、時間の行が入るかを確かめる(イラストは当社作成)
つながらないときの原因として、説明書は、電池の残り、機器との距離(Bluetooth が安定するのはおよそ10mまで)、間にある障害物、電磁的な雑音、同僚が使った別の機器を選んだままになっていること、などを順に挙げています(p.58〜60)。現場で見落としやすいのが障害物で、バッテリーボックスとパソコンが幹をはさんで反対側にあると、木そのものが電波をさえぎることがあります。バッテリーボックスはどのアンプボックスにつないでもよいので、パソコンと同じ側のアンプボックスへつなぎ替えれば済みます(p.59)。

バッテリーボックスが幹の向こう側だと電波が届きにくい(左)。パソコンと同じ側へつなぎ替える(右)(イラストは当社作成)
電線の近くや地下鉄の上でもつながりにくくなることがある、と説明書は書いています。都市の街路樹を測る当社の現場では、こうした場所が少なくありません。
Tree タブ 樹種と、1か所をたたく回数
ソフトを起動したら、まず Tree(樹木)のタブ(画面1の④)を開きます。ファイルの操作は、画面の左上の小さなボタンで行います。新しく測るときは New project(新しいプロジェクト)、保存したデータを見るときは Open project(プロジェクトを開く)(画面1の①)、保存はタブが並ぶ灰色の帯の左端の保存のボタン(画面1の③)です。社内のマニュアルは、Save project(上書き保存)と Save project to a different file(名前を付けて保存)を使い分けるよう挙げています。説明書は、測ったあとは必ずデータを保存すること、と書いています(p.69)。なお、ソフトは編集中のプロジェクトの写しを定期的に保存していて、停電やファイルの破損のときは、Application Options(アプリの設定。画面1の②)の「User data(ユーザーデータ)」のタブ(記事の画面には写っていません)から復元用のフォルダを開けます(p.84)。

画面1 Tree(樹木)のタブ。①新規・開く ②アプリの設定 ③保存 ④Tree のタブ ⑤樹種の欄 ⑥樹種を探す虫眼鏡 ⑦プロジェクトの設定 ⑧位置を加える ⑨木の所在地(当社のソフトの画面)
Tree(樹木)のタブで必ず入れるのは、Species(樹種。画面1の⑤)だけです(p.12)。右端の虫眼鏡のボタン(画面1の⑥)から、3,000種を超える樹種のデータベースを学名か英名で探します(p.13・14)。⑤の欄の右の▼からは、最近使った樹種を選べます。当社では学名の一覧表を道具箱に入れて、現場で迷わないようにしています。Tree location(木の所在地。画面1の⑨)は空欄でも測れますが、当社ではここに現場名と樹種を入れ、ファイルの名前にもしてから保存しています。GPS(位置。画面1の⑧は位置を加えるボタン)は、新しいバッテリーボックスなら位置を取ろうとし、取れれば測るときに送られます。地図で手で直すこともできます(p.14・15)。
樹種を選ぶ意味は、名前の記録だけではありません。データベースには樹種ごとの性質が入っていて、断面画像と力学の計算に使われます。東京都のマニュアルも、学名で樹種を選び、データベースから樹種の標準の伝達速度を取り込む、と測定の手順に書いています(参考資料 p.108)。
| データベースの項目 | 日本語の訳 | 意味 |
|---|---|---|
| A | 速さの比 | 接線方向と放射方向の音の速さの比(Vt/Vr) |
| Density (green) | 生材の密度 | 生材の平均の密度 |
| Drag factor | 抗力係数 | 風を受ける抵抗の係数(小さいほど風の抵抗が小さい) |
| Elastic limit | 弾性限界 | 元に戻らない変形が始まる前の、最大の相対的な変位(単位は‰) |
| Yield strength | 降伏強度 | 材が変形し始める点の応力(MPa) |
| Radial reference velocity | 放射方向の基準の速さ | 幹の放射方向の、典型的な応力波の速さ |
出典: ArborSonic 3D Manual(2026年9月版)p.13
同じタブの Project options(プロジェクトの設定)の左のスパナ(画面1の⑦)を押すと、そのプロジェクトだけの設定の画面(画面2)が開きます。説明書は、ここで確かめるのは「Sensor type(センサーの種類。画面2の③)」と「Min. good row count(1つのセンサーに要る正しい打撃の回数。画面2の①)」の2つで、ほかは普通は変えなくてよい、としています(p.14)。

画面2 Project options(プロジェクトの設定)。①打撃の回数を5にしている ②ばらつきの境目 ③センサーの種類 ④決定(当社のソフトの画面)
打撃の回数は、最小が3回、推奨が5回です。あとで外れた打撃を消しても足りるように、というのが5回の理由です(p.23)。当社の社内マニュアルも、①の数字の欄の左の▲で5に設定し、OK(決定。画面2の④)を押してから測ることにしています。Sensor type(センサーの種類。画面2の③)は、普通の長さ6cmの釘のセンサーなら Normal(ふつう)、樹皮の厚い木に使う長さ12cmの釘のセンサーなら Long(長い釘)を選びます。説明書は、センサーの種類の設定を間違えると断面画像が誤り、長い釘で測ったデータを Normal のまま計算すると、実際より腐朽が小さく見えた例を載せています(p.73〜75)。
この画面にはもう一つ、「Rel. Time Error Threshold (%)(時間のばらつきの境目。画面2の②)」という項目があります。次の Time Data(時間データ)のタブで、ばらつきの大きい組を赤く示す境目で、既定は5%です(p.22)。
Sensor Geometry タブ 高さ・方式・センサーの数・形
Sensor Geometry(センサーの配置)のタブ(画面3の①)では、センサーをどこに打ったかを入れます。ソフトは1つの高さの断面を「Layer(レイヤー)」と呼び、測れるのは一度に1つのレイヤーです(p.16)。左の一覧に今のレイヤーが並び、上の Layer name(レイヤーの名前。画面3の④)は見分けやすくするための名前で、空のままでも測れます(p.16)。

画面3 Sensor Geometry(センサーの配置)のタブ。番号は下の凡例のとおり(当社のソフトの画面)
高さと方式
Height(測る高さ。画面3の⑤)に、地面から測った高さを入れます。レイヤーはすべて違う高さにする必要があり、一覧は高さの順に並びます(p.16・17)。Scheme(配置の方式。画面3の⑥)は、右の▼から選びます。幹がほぼ円なら Circle(円)、楕円なら Ellipse(楕円)、それ以外は Irregular(不定形)を選びます。Rectangle(長方形)は角材の測定用で、幹には使いません(p.17)。
Circle(円)と Ellipse(楕円)は、幹周(と長径・短径)を入れるだけで、ソフトがセンサーの位置を計算します。Irregular(不定形)は、打ったセンサーどうしの距離をキャリパーで測って入れる方式です。説明書は、理想はセンサーを等間隔に置くことで、まず Circle でセンサーの位置の目安を出して打ち、そのあと Irregular に切り替えて距離を測る、という手順を書いています(p.18)。街路樹の幹はきれいな円でないことが多いので、当社では Irregular を基本にしています。説明書(2026年9月版)には、キャリパーの腕が届かない太い木のために、各センサーから3つ先の隣までを測る「Irregular 3(不定形・3つ先まで)」があり、センサー16個で2mのキャリパーなら直径およそ3.49mまで測れる、という表が載っています(p.19)。ただし、当社が使っている版(5.3.168)の Scheme の一覧は Irregular・Ellipse・Circle・Rectangle の4つで、Irregular 3 はありません。
センサーの数と間隔
Sensor count(センサーの数。画面3の⑦)は、右の▲▼で変えます。センサーの数は、メーカーの製品のページの仕様では10〜32個です(2026年10月25日閲覧)。当社の社内マニュアルでは、測る断面の周囲の長さをセンサーの数で割ったセンサーの間隔が、10cm以上・20cm以内に収まる数(多くは10〜16個)を選ぶことにしています。こぶの中央には必ず1個を打ち、開いた空洞があればその両隣に1個ずつ打ち、こぶや空洞の縁からは10cm以上離す、というのが当社の目安です。センサーは上から見て反時計回りに番号を付けて並べます(p.17)。
Ludwig sensors(Ludwig センサー。音を出すだけで受けない追加の釘)を使うときだけ、その下のチェックの欄(画面3の⑧)にチェックを入れます。使い方は、Time Data(時間データ)の節の「Ludwig センサーを使うとき」に書きました。
貫入深さ(PD)と樹皮の厚さ(BT)
PD と BT の2つの値は、距離の欄と同じ表に、どの方式でも入れます(記事の画面3には写っていない所にあります)。PD(Penetration Depth=貫入深さ)は樹皮の表面から測った釘の先の深さ、BT(Bark Thickness=樹皮の厚さ)は樹皮の厚さで、PD は BT より大きくなければなりません(p.17)。入力に誤りがあると、画面3の⑨のような赤い帯で知らせてくれます。説明書は、PD と BT は細い木ほど結果に効く値で、とくに注意して入れるよう書いています。当社では、樹種ごとの樹皮の厚さの一覧で確かめ、打ち込んだ深さと樹皮の厚さを野帳に書いてから入力しています。

釘は樹皮を貫いて木部へ。上の寸法が貫入深さ(PD)、下が樹皮の厚さ(BT)(イラストは当社作成)
キャリパーで距離を入れる
Irregular(不定形)では、センサーの間の距離の欄(画面3の⑩)に、測った距離を入れます。「2 – 1」は1番と2番の間、「3 – 1」は1番と3番の間の距離です。当社では Bluetooth のキャリパーで、この欄へ直接送っています。下の「Start BT Caliper(Bluetooth のキャリパーにつなぐ。画面3の⑪)」を押してキャリパーとつなぐと、パソコンが次に測る組を音声で読み上げ、キャリパーのピンを2つのセンサーに当ててボタンを押すと、値が欄に入ります。社内マニュアルでは、次の点に気をつけることにしています。
- キャリパーは、使う前にピンの先を合わせて0mmを確かめ、巻尺に当てて正しい長さが出るかを確かめる
- ⑪のボタンの下の接続の表示(Inactive=つながっていない)が緑ならつながっていて、橙ならつながっていない。つながらないときは「Start BT Caliper」を押して切ったりつないだりし、それでもだめなら値を読み上げてもらって手で入れる
- パソコンがキャリパーから離れるとエラーが出やすいので、パソコンを持ってキャリパーの近くへ寄る
- 自動で次の欄へ進むので、測っている組と入力された欄(⑩)がずれていないかを確かめる。ずれたら正しい欄をクリックして測り直す。赤いエラーが出た欄も、その欄をクリックして測り直す

パソコンが次に測る組を読み上げ、キャリパーのピンを2つのセンサーに当てて送る(イラストは当社作成)
説明書は、キャリパーの電池が3.5V以上あることも条件にしています(p.18)。全部の距離が入ると、右の広い枠に断面の形が描かれる(画面5の④のように)ので、実際の幹の形とおおむね合っているかを、目で必ず確かめます。大きく違えば、どこかの距離の入れ違いを疑って測り直します。最後に、右下のコンパス(画面3の⑫)の赤い点を動かして、センサー1の方角を合わせます。既定は北です(p.19)。
次の高さへ移るとき
高さを変えて測るときは、左の「Add layer(レイヤーを足す。画面3の②)」で新しいレイヤーを足します。「Copy layer(配置を写す。画面3の③)」は配置だけを写し、時間のデータは写さないので、Irregular(不定形)で形の似た高さを続けて測るときに便利です。写したら Height(画面3の⑤)を新しい高さに直します(p.16)。センサーを次の高さへ移すときは、必ず先にセンサーのコードを外してから動かします。付けたまま動かすと、接触の不具合のもとになる、と説明書は注意しています(p.16)。

次の高さへ移る前に、アンプボックスからセンサーのコードを外す(イラストは当社作成)
当社の社内マニュアルでは、まず、いちばん気になる断面(打音の異常がある所など)を下の断面として測り、上の断面はそこから50cm以上離して決めることにしています。下に広がる根株腐朽の危険度が高い、というのが下の断面を基準にする理由です。説明書も、測る高さは外観でいちばん弱そうに見える所(子実体、傷、目に見える腐朽など)を選ぶ、としています(p.5)。
Time Data タブ たたいて、音の時間を集める
Time Data(時間データ)のタブ(画面4の①)で「Start(つなぐ。画面4の②)」を押すと、ソフトがバッテリーボックスにつなぎにいきます。説明書では、たいていは30秒ほどでつながり、Bluetooth が40秒たってもつながらないときは「Restart Bluetooth(Bluetooth をやり直す)」のボタンが出ます(p.20)。中央の帯(画面4の④)が「Device inactive(つながっていない)」から「Connected(つながった)」に変われば、たたき始められます。帯の右には電池の残りも出ます(p.20)。

画面4 Time Data(時間データ)のタブ。上が打撃ごとの時間の表(Time rows)、下が組ごとの平均とばらつき(Processed Times)、右下が往復の時間の差(symm. diff.)。番号は下の凡例のとおり(当社のソフトの画面。現場名は消しています)
時間の表(Time rows)の読み方
1回たたくごとに、上の Time rows(時間の行)の表に1行が入ります。列はセンサーの番号で、数字はそのセンサーに音が届くまでの時間(μs)です。たたいたセンサーの列は0になります。列の見出し(画面4の⑥)の番号の横の数字は、そのセンサーの正しい打撃の回数で、決めた回数に届くと緑になります。説明書は、緑は最小の回数に届いたという印で、測り終えてよいという意味ではない、と書いています(p.21)。
行の左端の小さな丸(画面4の⑦)は、その打撃が正しく測れたかを示します。緑なら正しい打撃、赤い印ならエラーで、赤い印にマウスを乗せると短いエラーの説明が出ます。行は書き換えられず、消すことだけができます(p.21。Ludwig センサーの番号の付け替えだけは別で、後の「Ludwig センサーを使うとき」に書きました)。消すボタンは表の上(画面4の⑤)に3つ並んでいます。
| ボタン(画面4の⑤) | 働き | 当社の使い方 |
|---|---|---|
| Remove bad rows(エラーの行を消す) | エラーのある行をすべて消す | 測り終えたら押す、打撃の回数がそろって緑になる |
| Remove selected rows(選んだ行を消す) | 選んだ行だけを消す(Shift で続けて、Ctrl で飛び飛びに選べる) | 外れた時間の行を消し、そのセンサーを5回たたき直す |
| Remove all rows(全部の行を消す) | すべての行を消す | 説明書は、本番の前の試しの打撃を消すのに使えるとしている、当社では最初から測り直すときだけ使う |
出典: ArborSonic 3D Manual(2026年9月版)p.21、当社の社内マニュアル
エラーの印が付いた行は、断面画像の計算にも力学の評価にも使われないので、消さずに残しても結果は変わりません(p.22)。それでも当社では、画面を見やすくするために、測り終えたら消しています。
たたき方は、鋼製のハンマーで、センサーの頭の中心を釘の向きにたたきます。手首の力を抜き、ハンマーが跳ね返るようにし、毎回同じ強さで、太い木ほど強めにたたきます。センサーの横をたたいてしまったら、そのデータは消してたたき直します(p.5)。

頭の中心を釘の方向にたたく(左)。横の面やケーブルの付け根はたたかない(右)(イラストは当社作成)
たたく前に、巻尺は必ず幹から外します。説明書は、巻尺を巻いたままだと音が巻尺を伝わって近道する(音の短絡)として、腐朽した木で巻尺の有り無しを比べた断面画像を載せています(p.5・68)。

巻尺を巻いたままたたくと、音が巻尺を伝わって近道する(左)。たたく前に外す(右)(イラストは当社作成)
エラーの種類と、当社のデータに残っていた実例
赤い印の行(画面4の⑦)のエラーには、いくつかの種類があります。
| エラーの表示 | 日本語の訳 | 説明書の意味と主な原因 |
|---|---|---|
| Missing black box | 黒い箱(アンプボックス)が応えない | アンプボックスかセンサーが信号を送らなかった、つないでいない、コードの差し込みが甘い、電池が8V を下回っている、など |
| Missing sensor | センサーが応えない | アンプボックスは応えたが、センサーが黙っていた、センサーとコードを確かめる |
| Start sensor could not be determined | たたいたセンサーが決められない | 打ち損じ、幹をたたいた・蹴った、枝の揺れ、近くの電車やトラック |
| Measurement below lower threshold | 時間が下限より短い | ありえないほど短い時間、直径30cm未満の木や、3cmより近いセンサーなら別、28や29は雑音のことがあり、続くならアンプボックスの故障もありうる |
| Hit detected on multiple sensors | 複数のセンサーで打撃を検出 | 打ち損じか、外からの振動 |
| Data count higher than selected sensor count | データの数がセンサーの数より多い | 信号を送るセンサーの数が、Sensor Geometry(センサーの配置)の数より多い、数を増やす |
出典: ArborSonic 3D Manual(2026年9月版)p.60〜62。訳は当社
2025年10月に当社が測った18本・20断面(ソメイヨシノ16本、シラカシ1本、ケヤキ1本)のデータを見直すと、20断面のうち4断面に、エラーの行が消されずに残っていました。一部のセンサーの欄が空の行(プロジェクトファイルの中では -1 や -2 の値)や、たたいたセンサーの0が無く、28・29μs という短い値が並ぶ行です。どれも計算には使われていませんでした。
外からの振動は、街路樹の測定では身近な原因です。大きなトラックが通る間は、たたく手を止めて待ちます。

近くを大きな車が通る間は、たたくのを止めて待つ(イラストは当社作成)
Ludwig センサーを使うとき
Ludwig センサーは、ふつうのセンサーの間に打つ追加の釘で、たたけば音を出しますが、音を受けることはできません。測る線が増えるので、断面画像を細かくできます(p.76)。手順は次のとおりです。
- Sensor Geometry(センサーの配置)のタブで、Sensor count(センサーの数。画面5の①)をふつうのセンサーの数にし、その下の「Ludwig sensors(Ludwig センサー)」のチェックの欄(画面5の②。何も入れていない画面3では⑧)にチェックを入れる。
- 距離の欄(画面5の③)に「L1 – 1」のような Ludwig センサーの欄が加わるので、キャリパーの読み上げに従って、Ludwig センサーとの距離も測って入れる。断面の形の図(画面5の④)に、1〜16の間に L1〜L16 が並ぶ。
- Time Data(時間データ)のタブで、まずふつうのセンサーを全部、決めた回数たたく。このとき右上の切り替え(画面6の①)は「Record: normal(ふつうのセンサーを記録)」のまま。
- 全部のふつうのセンサーが緑になったら、画面6の①を「Record: Ludwig(Ludwig センサーを記録)」に切り替え、L1 から順にたたく。「Auto advance(自動で次へ進む。画面6の③)」にチェックがあれば、L1 の回数がそろうと読み上げとともに L2 へ進む(p.79)。
- たたいた Ludwig センサーの番号は、行の左(画面6の⑤)に L16・L15 のように出る。列の見出し(画面6の④)は、1 と L1、2 と L2 のように2段になる。

画面5 Ludwig センサーを使うときの Sensor Geometry(センサーの配置)。①センサーの数 ②Ludwig sensors にチェック ③距離の欄 ④断面の形(当社のソフトの画面。現場名は消しています)
Ludwig センサーをたたく番号を間違えたときは、画面6の②の欄で正しい Ludwig センサーの番号を選び、その行を選んで鉛筆のボタンで直せます。「Record: Ludwig」を選んだ状態で行を選び、画面6の②の✕のボタンを押すと、Ludwig センサーとして記録した打撃を、ふつうのセンサーの打撃に戻せます(p.81)。Processed Times(集計した時間)の表の上には、「Show Ludwig sensor data(Ludwig センサーのデータを表示)」のチェックの欄(画面6の⑦)もあります。

画面6 Ludwig センサーを使った断面の Time Data(時間データ)。①記録の切り替え ②Ludwig センサーの番号と直し ③自動で次へ ④列の見出し ⑤たたいた Ludwig センサー ⑥エラーの行 ⑦Ludwig の値を表に出す ⑧往復の時間の差(当社のソフトの画面。現場名は消しています)
この画面の中ほどの、左に赤い印のある行(画面6の⑥)はエラーの行で、多くのセンサーの欄が -1 になっています。計算には使われません。
説明書は、Ludwig センサーはふつうのセンサーと同じ数を交互に打つこと、10個より少ないと時間データが誤りを招き断面画像は信頼できないこと、を条件にしています(p.77)。当社では、ふつうのセンサー16個の間に L1〜L16 を打つ形で使っています。Ludwig センサーを外したらどう見えるかは、画面5の②のチェックを外せば確かめられ、データは消えません(p.81)。

センサー(白)の間に Ludwig センサー(黒)を交互に打つ。Ludwig センサーは音を出すだけで受けない(イラストは当社作成)
音波データの読み方① ばらつき(Processed Times)
すべてのセンサーで決めた回数の正しい打撃がそろうと、Time Data(時間データ)のタブの下に「Processed Times(集計した時間)」の表が現れます(画面4の下半分)。説明書は、この表を、測定の質を見きわめ、どうすればよくなるかを知るための大事な道具としています(p.22)。表の上の「Average Time(平均の時間。画面4の⑧)」が押された状態で、ばらつきを「Relative values(%で表示。画面4の⑨)」にしておくと、次の読み方になります。
「532 ± 47%」の読み方
表の行はたたいたセンサー、列は音を受けたセンサーです。説明書の例では、4行1列のセルに「532 ± 47%」とあり、これは4番をたたいたとき、1番で受けた時間の平均が532μs、標準偏差が47%だった、という意味です(p.22)。同じセンサーどうしの欄は空になります。
ばらつきが既定の5%を超えたセルは、赤く塗られます(画面4の⑪)。説明書は、赤いセルは1つずつ確かめるべきだとしつつ、10%を下回るばらつきは普通のことかもしれない、とも書いています(p.22・23)。セルにマウスを乗せると、その組の時間が全部出るので、1つか2つだけ大きく外れた値があればすぐに分かります。外れた値のある行を上の Time rows(時間の行)で選んで消します。

多めにたたくと、正しい時間の集まりが見え、外れた1回が分かる(上は説明書の例、下は当社の実測。帯は逆向きの組の時間)
説明書の例が分かりやすいので紹介します。2つのセンサーの間で 400・450・900 と測れたとき、900 が外れていることは分かりますが、400 と 450 のどちらが本当に近いかは分かりません。続けて 440・460・445 と測れれば、正しい値は440〜460のあたりで、400 と 900 が外れていると分かります(p.23)。最小の回数に届いたあとも、何回か多めにたたいておくと、あとで1〜2回を消しても足り、どれが外れているかも見分けやすくなる、というのが説明書の勧めです。
当社の実測にも、外れた1回がはっきり分かる例がありました。あるソメイヨシノの断面で、8番をたたいて7番で受けた組は、6回のうち5回が274〜278μs、1回だけが30μs と、桁の違う値でした。向きを逆にした組(7番をたたいて8番で受ける)も283〜288μs で、30μs が外れていることは明らかです。この組のばらつきは約39%で、30μs の行を消せば1%を下回ります。
反対に、外れたように見えても、すぐには消せない例もありました。別の断面のある組では、5回のうち1回目だけが672μsで、ほかの4回(546〜558μs)より約120μs遅かったのですが、向きを逆にした組は672〜681μsでした。1回目の値は、逆向きの時間とはよく合っていたことになります。どちらが本当に近いか分からないときは、消す前にその組をたたき足して見分けるのが、説明書の勧めに沿ったやり方です。
当社の打ち直しの目安
当社の社内マニュアルでは、Processed Times(集計した時間)で±10%以上のセルがあれば、その組の外れた行を「Remove selected rows(選んだ行を消す。画面4の⑤)」で消し、そのセンサーを5回たたき直すことにしています。たたき直すほど結果の精度は上がりますが、時間とのつり合いで測り終える、というのが現場での決め方です。たとえば、下の表の4番のセンサーの欄に外れた値があれば、上の表で4番をたたいた行のうち外れた行を選んで消し、4番を5回たたき直します。
なお、東京都の街路樹診断等マニュアルの測定方法の説明には、計測の値が著しくばらつくときはソフトが再打撃を促し、解析に使うデータのばらつきは標準偏差2%以内に収まる、とあります(参考資料 p.108)。説明書の既定の境目は5%、当社が打ち直す目安は10%と、数字は資料によって違います。受け取ったカルテの数字を読むときは、どの目安で測ったデータかを確かめると、比べやすくなります。
| 当社の20断面の時間データ(2025年10月) | 値 |
|---|---|
| センサーの数 | 10〜16個(断面ごと) |
| 1つのセンサーの打撃の回数 | ほとんどが5回(一部のセンサーは6回) |
| 5%を超えたセル(エラーの行を除いて当社が計算) | 20断面のうち8断面で0個、多い断面で240個のうち12個 |
| 10%を超えたセル(同上) | 20断面のうち17断面で0個、残る3断面は1個ずつ |
| エラーの行が残っていた断面 | 20断面のうち4断面 |
出典: 当社の測定データ(ソメイヨシノ16本・シラカシ1本・ケヤキ1本、18本・20断面)から当社が計算。ばらつきは標準偏差÷平均で、ソフトの表示と小数点以下が違うことがある
表の上の切り替え(画面4の⑩)で「Raw measurements(全部の行で計算)」を選ぶと全部の行から、「Auto-filtered measurements(外れた行を自動で除いて計算)」を選ぶと外れた行を自動で除いてから表を計算します。後者は断面画像の計算に実際に使われるものを示しますが、外れた行を見つけるには前者のほうが向いている、と説明書は書いています(p.24・25)。
音波データの読み方② 往復の時間の差(対称差)
Processed Times(集計した時間)の右には、「symm. diff.(symmetric difference=対称差。画面4の⑫)」の列があります。アーボソニック3Dは、ひとつのセンサーをたたくと残りの全部のセンサーで時間を測るので、2つのセンサーの間は「Aをたたいて Bで受ける」と「Bをたたいて Aで受ける」の2回測られます。音の通り道は同じなので、本来は行きと帰りでほぼ同じ時間になるはずです。対称差は、あるセンサーについて、全部の相手との行きと帰りの差をまとめた値(差の二乗平均の平方根)です(p.23・24)。画面4の⑫の例では、4番のセンサーの対称差が224μsでした。

同じ2つのセンサーなのに、たたく向きで時間が約350μs違った例(当社の実測)
当社のデータの中に、はっきりした例がありました。センサー14個で測ったソメイヨシノの断面で、4番をたたいて7番で受けると平均510μs、7番をたたいて4番で受けると平均857μsと、約350μsも違っていました。この断面では、4番・7番・2番の3つのセンサーの対称差が約100〜130μsに達しています(当社の計算)。
説明書は、対称差が大きくなる原因として、次の3つを挙げています(p.23)。
- 音の伝わりが悪い付き方(センサーが材にしっかり入っていない)
- センサーが音の遅い所(腐朽など)に入っている
- 外からの雑音(幹に巻いたままの巻尺、近くの車の通行など)
目安の数字は、配置や材などで変わる「基本の目安」と断ったうえで、次のように示されています(p.24)。

対称差の目安(説明書)と、当社の2つの断面の実測
| 対称差(symm. diff.) | 説明書の目安 |
|---|---|
| 20μs 未満 | 健全な木で、条件がよく、センサーの付き方がよければ届く |
| 約100μs まで | 大きな腐朽があると、このくらいまで届くことがある |
| 300μs 超 | 付き方の重い問題(釘がしっかり入っていない、腐朽に入っている) |
| 500μs 超 | 健全な材でも続くなら、センサーか信号の増幅の不具合の可能性が高い |
出典: ArborSonic 3D Manual(2026年9月版)p.24。状態の悪い木や大きな木ほど対称差は大きくなる、とも書かれている
当社の20断面では、対称差のいちばん大きいセンサーの値が20μs以下だった断面が13あり、80μsを超えるセンサーがあった断面は2つでした(エラーの行を除いて当社が計算)。20断面とは別の木ですが、画面6(画面8で見る、内側の広い範囲の音が遅い断面の時間データ)は赤いセルが多く、対称差(画面6の⑧)が200μsを超えるセンサーもありました。説明書も、状態の悪い木ほど対称差は大きくなる、としています(p.24)。対称差が大きいセンサーを見つけたら、まず付き方を疑います。説明書は、付き方がよいかどうかを、まっすぐそろえた指3本でセンサーの頭が回らないことで確かめ、回るならもっと打ち込む、としています(p.5)。

まっすぐそろえた指3本で頭が回らなければ、付き方はよい(イラストは当社作成)
釘の先が樹皮の中で止まって材に届いていないと、センサーは音をうまく受けられません。センサーは樹皮を貫いて材に入っていること、腐った材ではなく健全な材に入っていることが条件です(p.5)。当社の社内マニュアルでは、もろい所なら位置を変え、どうしてもだめなら浅くても刺さる所に打つ、としています。

上は樹皮を貫いて材に入ったセンサー。下は釘の先が樹皮の中で止まり、材に届いていない(イラストは当社作成)
音波データの読み方③ Tomograms 時間を速さに、速さを絵に
Tomograms(断面画像)のタブ(画面7の①)は、推定した音の速さを絵にして見せます。ここで説明書は、断面画像は測った断面の健全さを示すのではなく、断面の中の応力波の速さを示しているだけで、速さは健全さと関係することが多いが、目回り(年輪に沿った割れ)や入り皮でも速さは下がる、と念を押しています(p.25)。
時間から速さへ
説明書によると、ソフトは測った時間から、センサーの中を音が通る時間(Time correction=時間の補正。画面4の⑬)を差し引き、放射方向と接線方向の違いも補正します(p.24・25)。そのうえで、原理としては、センサーの間の距離と時間から速さが出ます。当社のソメイヨシノの断面(センサー10個)で、センサー1から各センサーへの距離と時間を並べると、音の遅い向きが数字だけでも見えてきます。

同じ速さなら遠いほど時間がかかる。1→4・1→5 は 1→6 より近いのに、同じか長い時間がかかっている(当社の実測)
センサー1から6までは42.1cmで約269μs、センサー1から4までは32.6cmと短いのに約273μsかかっています。距離のわりに時間のかかる線は、音が遅い所を通っている線です。画面の上の表示のボタン(画面7の④)は、これを順に絵にしていきます。
| ボタン(画面7の④) | 見えるもの | 読むところ |
|---|---|---|
| Matrix(速さの表) | センサーの組ごとの速さの表 | とくに遅い組、腐朽や空洞が間にあるかもしれない |
| Graph(線の図) | 組ごとの速さを色の線で結んだ図(東京都の様式のカルテの「計測時の伝達経路図」) | 線にマウスを乗せると、その組の速さが出る、1つのセンサーから出る線がすべて遅いとき |
| 2D Map(断面の色の図) | 断面全体の推定の速さの色の図(カルテの「想定断面図」) | どの点でもマウスで座標と速さが出る、Rulers(定規)で長さも測れる |
| 3D Map(立体の図) | 2D Map を、速いほど高い立体の面にした図 | 速さの違いが強調される、ドラッグで回せる |
| Cracks(表面の割れ) | 表面から始まる割れの推定の深さ | 内部の割れは検出しない |
出典: ArborSonic 3D Manual(2026年9月版)p.25〜29。カルテの欄の名前は東京都建設局「令和三年度 街路樹診断等マニュアル」参考資料 p.139 の様式5

画面7 Tomograms(断面画像)のタブの Graph(線の図)。番号は下の凡例のとおり(当社のソフトの画面。現場名は消しています)
Graph(線の図)で気をつけたいのは、1つのセンサーから出る線が、どの相手に向かっても遅い色(青や赤)になっているときです。説明書は、その原因を、付き方の悪さ(もっと打ち込む)、センサーが腐朽に入っている、センサーの故障、の3つとしています(p.26)。腐朽が幹の一部にあるなら、遅い線はその部分を通る線に偏るはずで、1つのセンサーから全方向に遅いのは、まずそのセンサーの側を疑う理由になります。
配色は「Color scheme(配色。画面7の③)」の▼で選べ、説明書の推奨は「Detailed(詳細)」です。色と速さの対応(凡例)は画面の左(画面7の⑧)に出ます(p.29)。当社でも Detailed で表示し、カルテに使う画像を保存しています。色の見方の基本は、外側の濃い緑ほど速く、黄、赤、青と遅くなり、淡い水色がいちばん遅い所です。

断面画像の色の見方(模式図)。外側の濃い緑ほど音が速く、内側の水色ほど遅い(イラストは当社作成)
次の画面8は、Ludwig センサーを使って測ったイチョウの断面の 2D Map(断面の色の図。画面8の①)です(社内マニュアルの画面で、前の20断面とは別の木)。外側に緑の帯が残り、内側の広い範囲が、いちばん遅い淡い水色になっています。画面5・画面6は、この断面のものです。2D Map では、定規(Rulers)のボタン(画面8の④)で、図の上の長さも測れます(p.27)。

画面8 Tomograms(断面画像)のタブの 2D Map(断面の色の図)。①2D Map ②高さを重ねた図とレイヤーの一覧 ③色の範囲 ④定規 ⑤凡例(当社のソフトの画面。現場名は消しています)
色の範囲(Velocity limits)は、触らない
画面の上の「Velocity limits(色の範囲。画面7の⑤、画面8の③)」は、どの速さにどの色を当てるかを決める範囲です。その右の「Calculate automatically(自動で計算。画面7の⑥)」にチェックが入っていれば、ソフトが自動で計算します。説明書は自動の計算を推奨していて(p.29)、当社の社内マニュアルでも、基本的には調整しないことにしています。チェックを外すと、⑤の▲▼で範囲を手で変えられるようになります。
理由は、色の見え方だけの問題ではないからです。Biomechanics(力学の評価)のタブの Layer Map(荷重を支える範囲と弱い方向の図)は、この範囲の「中間点」より遅い所を、荷重を支える力を失った材として透明に表します(p.40)。たとえば画面8の範囲は 1401〜1832 m/s で、中間点は約1616 m/s です。下限を手で下げれば中間点も下がり、荷重を支えられないとされる範囲は狭くなります。当社の社内マニュアルにも、下限を下げると音の遅い範囲が狭まる、とあります。腐朽の面積の割合(Decayed area)も、この推定した腐朽の範囲から出していると考えられます(説明書に中間点との関係の明記は無い)。色の範囲を手で動かすと、断面画像の印象だけでなく、腐朽と読む範囲そのものが変わります。

Layer Map が荷重を支えられない材とするのは、色の範囲の中間点より遅い所。下限を下げると、その範囲が狭くなる(説明書 p.29・40 をもとに当社作成)
ごく遅い速さのせいで画像に乱れが出るときのために、スパナのボタン(画面7の⑦)で開く「Tomogram options(断面画像の設定)」には、速さの下限を決める「Minimal Line Velocity(線の速さの下限)」もあります(p.29。設定の画面は記事には写っていません)。
高さを重ねる(Multilayer model)
2つ以上の高さを測ると、左の一覧の「Multilayer model(高さを重ねた立体の図。画面7の②、画面8の②)」で、全部の断面を立体に重ねて見られます。「Isec. plane(各断面を貫く縦の面)」を押すと、断面どうしをつなぐ縦の面が現れ、「Rotation(回転)」で回し、「Offset(ずらす)」で前後に動かせます。縦の面の色は、上下の断面の間を補って描いたもので、測った面ではありません(p.30)。この段落と次の段落の操作は、記事の画面には写っていません。
ここで説明書が注意しているのは、それぞれのレイヤーが自分の色の範囲で塗られるので、同じ色でも高さが違えば速さが違うことがある点です。健全な材でも、地際と胸の高さで平均の速さが違うのは珍しくない、とあります(p.30)。高さを比べるときは、色ではなく、マウスで出る速さの数字で比べます。レイヤーの高さが近くて見にくいときは「Equidistant display(等間隔に表示)」で等間隔に並べられますが、見た目だけの変更です。
おかしな断面画像は、設置の誤りかもしれない
説明書の点検の章には、主に健全な木で、設置や入力を誤って測った断面画像の例が並んでいます。おかしな断面画像の中には本当の腐朽や傷みを示すものもあるが、設置や設定の誤りでも同じような画像になる、という前置きつきです(p.62)。
| 誤り | 説明書の例 | 断面画像に出たこと |
|---|---|---|
| コードの入れ違い | 9番の位置のセンサーをアンプの10番の口へ、10番を9番の口へ差した | 穴と、両脇の赤い範囲 |
| アンプボックスの取り違え | 9・10番用のアンプボックスと、11・12番用を入れ替えた | 穴と、脇の不自然な範囲 |
| 浮いたセンサー | 12番が樹皮を貫いておらず、ぐらぐらだった | 傷みのような範囲(腐朽などでも同じ画像になりうる) |
| 貫入深さ(PD)の入れ間違い | PD を 2cm のところ 20cm と入れた | 健全な木なのに、全体が腐朽したように見える |
| 幹周の桁違い | 232cm のところ 2320 と入れた | 全体が淡い水色になり、軸の目盛りの数字が大きくなる |
| 巻尺の付けっぱなし | 巻尺を巻いたまま測った(腐朽した木で比較) | 音の近道が現れる |
出典: ArborSonic 3D Manual(2026年9月版)p.62〜68
コードの入れ違いは、絵にするとこうなります。センサーの番号の札は飾りで自由に付け替えてよいが、アンプボックスの番号は大事で、コードを交差させると測定がめちゃくちゃになる、と説明書は書いています(p.5・6)。

左はセンサーのコードをまっすぐ下の口へ。右は2本が交差して入れ違っている(イラストは当社作成)
アンプボックスの取り違えは、見た目では気づきにくい誤りです。箱の形は同じで、違うのは箱の番号だけだからです。

左は9・10番用と11・12番用の箱が正しい位置。右は2台が入れ替わっている(イラストは当社作成)
当社の社内マニュアルでは、アンプボックスどうしは、1・2番の箱の横の口から3・4番の箱の下の口へ、と順に最後の箱までつなぎ、バッテリーボックスは1・2番の箱の下の口につなぐ、と決めています。センサーの番号とアンプボックスの番号が一致していなくてもデータには影響しない、という点も社内で共有しています。番号で大事なのは、アンプボックスのほうです。
説明書には、センサーの種類(Sensor type。画面2の③)の設定を変えただけで断面画像が変わる例もあります(p.75)。入力の数字の1つの桁の違いで、健全な木が腐朽した木のように見えてしまうということです。断面画像を受け取ったら、Sensor Geometry(センサーの配置)のタブの入力の値(画面3の⑥の方式・⑦のセンサーの数・⑩の距離と PD・BT、円・楕円なら幹周)と、現場の野帳の数字が合っているかを見るのが、手早い確かめ方の一つです。
Biomechanics の腐朽の面積の割合と、保存・報告書
腐朽の面積の割合(Decayed area)
Biomechanics(力学の評価)のタブ(画面9の①)の左下の「Layers(レイヤーの表。画面9の②)」には、レイヤーごとに「Decayed area(腐朽の面積の割合。画面9の③)」が出ます。測った高さの断面全体の面積に対して、腐朽と推定した範囲が占める割合です(p.38)。推定の元は Tomograms(断面画像)の速さなので、前の節の色の範囲の設定とも結びついています。当社では、この値を断面ごとに野帳に書き写しています。

画面9 Biomechanics(力学の評価)のタブ。①タブ ②レイヤーの表 ③腐朽の面積の割合 ④画像の編集/荷重を支える範囲の図 ⑤風の条件(当社のソフトの画面。現場名は消しています)
表で選んだレイヤーの詳しい欄(Details of the selected layer=選んだレイヤーの詳細。記事の画面には写っていません)の「Avg. T/R(平均の t/R)」は、残っている健全な材の厚さを幹の半径で割った値の平均で、腐朽の面積の割合から 1−√(腐朽の面積÷断面全体の面積) の式で出します。説明書は、0.3を超えれば安全とする研究者もいるが、安全率の計算にはこの値を使わない、と書いています(p.38)。上の Image Editor(画像の編集)の右の「Layer Map(荷重を支える範囲と弱い方向の図)」のタブ(画面9の④)を押すと、断面の荷重を支えられる範囲と、風に弱い方向が出ます(p.40)。東京都の様式のカルテの腐朽空洞率と、その参考基準値(10%未満、10〜30%、30〜50%、50%以上の4段階)は、アーボソニックの腐朽診断カルテの読み方で説明しています。左上の Wind(風の条件。画面9の⑤)から始まる風の力と安全率は、アーボソニック3Dの風荷重解析に書きました。
画像とプロジェクトを保存する
カルテや報告書に使う画像は、Sensor Geometry(センサーの配置)と Tomograms(断面画像)のタブの右上の、画像を保存するボタン(画面7の⑨、画面10の⑦)から保存します(p.31)。当社では、Tomograms で Graph(線の図)と 2D Map(断面の色の図)をそれぞれ表示し、このボタンを押して開く画面(画面10)で、Title(画像の名前。画面10の②)を付け、「Save to file(ファイルに保存。画面10の⑤)」で画像のファイルとして保存しています。

画面10 画像を保存するときの画面。①線の図を表示 ②画像の名前 ③大きさを指定 ④画像の大きさ ⑤ファイルに保存 ⑥画像入れに加える ⑦画像を保存するボタン(当社のソフトの画面。現場名は消しています)
画像の大きさは「Picture size(画像の大きさ。画面10の④)」で決め、印刷に使うなら「Use custom size(大きさを指定する。画面10の③)」で幅・高さ・解像度を指定できます(p.31)。「Add to Image Container(画像入れに加える。画面10の⑥)」を押すと、画像はプロジェクトの中の画像入れに入ります。Image Container(画像入れ)に入れた画像はプロジェクトのファイルの中に写されるので、ファイルが大きくなります(p.41)。タブの並びの右端(画面1の④の並び)の Report(報告書)のタブでは、入れた画像を選んで「Generate report(報告書を作る)」を押すと、Microsoft Word の形式(.docx)の簡単な報告書を作れます(p.41。Report のタブの中は記事の画面には写っていません)。測り終えたら、画面1の③の保存のボタンでプロジェクトを保存します。
| 当社がカルテ用に残すもの | 枚数 |
|---|---|
| 測った位置の写真(北・東・南・西の4方向、時計回りに撮る) | 4枚 |
| 全景の写真(根元から枝先まで) | 1枚 |
| 伝達経路図(Tomograms の Graph=線の図) | 断面ごとに1枚 |
| 想定断面図(Tomograms の 2D Map=断面の色の図) | 断面ごとに1枚 |
| プロジェクトのファイル(Save project=上書き保存) | 1本 |
出典: 当社の社内マニュアル(診断手順・PCマニュアル)。補足に、子実体や空洞などの被害部、作業中、周りの様子の写真も撮る
Android のアプリで測ったファイルは拡張子が .f3dx ですが、パソコンのソフトで .f3d と同じように開けます(p.53)。
当社の現場での運用 社内マニュアルの決まりから
ここまでの中から、当社の社内マニュアルで決めていることを1つの表にまとめます。説明書の推奨に、当社が現場で積み上げてきた目安を足したものです。
| 場面 | 当社の決まり・目安 | 説明書との関係 |
|---|---|---|
| Tree(樹木) | 樹種は学名で選ぶ、1か所をたたく回数(Min. good row count=正しい打撃の回数、画面2の①)は5 | 最小3回、推奨5回(p.23) |
| Sensor Geometry(センサーの配置) | 方式(Scheme、画面3の⑥)は Irregular(不定形)を基本にする | 円・楕円以外は Irregular(p.17) |
| センサーの数 | 間隔が10cm以上・20cm以内に収まる数(多くは10〜16個) | 製品の仕様は10〜32個 |
| 測る高さ | いちばん気になる断面を下に測り、次の断面は50cm以上離す | いちばん弱そうな高さを選ぶ(p.5) |
| 打ち込み | 硬いゴムハンマーで、樹皮を貫いて形成層まで、こぶの中央に1個、開いた空洞は両隣に1個ずつ、PD(貫入深さ)と BT(樹皮の厚さ)を野帳に書く | 樹皮を貫いて健全な材へ(p.5) |
| たたく前 | 巻尺を外す | 音の短絡を防ぐ(p.5) |
| Time Data(時間データ) | 測り終えたら Remove bad rows(エラーの行を消す、画面4の⑤)、±10%以上のセルは外れた行を消して5回たたき直す | 赤いセルは既定で5%超、10%未満は普通のこともある(p.22・23) |
| Tomograms(断面画像) | 配色(Color scheme、画面7の③)は Detailed(詳細)、色の範囲(Velocity limits、画面7の⑤)は基本的に調整しない | Detailed と自動の計算を推奨(p.29) |
| Biomechanics(力学の評価) | Decayed area(腐朽の面積の割合、画面9の③)を断面ごとに野帳に書く | 腐朽の面積の割合(p.38) |
| 保存 | Graph(線の図)と 2D Map(断面の色の図)の画像を断面ごとに保存し(画面10)、プロジェクトを上書き保存(画面1の③) | 測ったあとは必ず保存(p.69) |
| 片付け | センサーの抜き取り具で抜き、穴に癒合剤を塗る、道具は清掃・消毒してから箱へ | 菌を運ぶおそれがあればセンサーを消毒(p.69) |
出典: 当社の社内マニュアル(PCアプリ操作マニュアル 2025年11月25日更新、診断手順・PCマニュアル 2025年12月2日更新)、ArborSonic 3D Manual(2026年9月版)
当社の考え方
断面画像は、数字を絵にしたものです。絵だけを見ると、緑と水色のはっきりした図は確かな答えのように見えますが、その下には、1回ずつのたたき方、1本ずつのコード、1つずつの入力の数字が積み重なっています。私たちが Time Data(時間データ)の表を一つずつ確かめるのは、絵になる前の数字の段階で誤りを取り除いておけば、絵を読むときに迷わずに済むからです。
そのうえで、アーボソニック3Dの結果は、外観診断で見た木の姿と並べて読みます。必要ならレジ(Resi PD)で、音の遅い所に本当に腐朽があるのかを確かめます。音の速さの地図と、実際の木の状態を照らし合わせること。それが、機器の数字を「危ないから伐る」に直結させず、残せる木を残すための判断の土台だと考えています。
当社の樹木診断では、機器診断の結果を、剪定や支柱などの処置、その後の経過観察まで、同じ樹木医が一貫してお受けしています。アーボソニック3Dの結果の読み方や、診断の仕様づくりのご相談は、お問い合わせページからどうぞ。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくある質問(Q&A)
Q1. アーボソニック3Dのソフトでは、どのタブから操作しますか?
A. 画面の上に並ぶタブを左から使います。Tree(樹木)で樹種と1か所をたたく回数を決め、Sensor Geometry(センサーの配置)で高さ・配置の方式・センサーの数と距離を入れ、Time Data(時間データ)でたたいて時間を集めます。そのあと Tomograms(断面画像)で断面画像、Biomechanics(力学の評価)で腐朽の面積の割合と安全率を確かめ、画像とプロジェクトを保存します。
Q2. Time Data(時間データ)の表の数字は何を表していますか?
A. 1回たたくごとに1行が入り、各列の数字はそのセンサーに音が届くまでの時間をマイクロ秒(μs)で表しています。たたいたセンサーの列は0になります。列の見出しの横の数字は正しい打撃の回数で、決めた回数に届くと緑になります。
Q3. Processed Times(集計した時間)の赤いセルは何ですか?
A. 同じセンサーの組で測った時間のばらつき(標準偏差)が、既定の5%を超えたセルです。説明書は赤いセルを1つずつ確かめるよう勧め、10%未満なら普通のこともあるとしています。外れた値のある行を消し、たたき直します。当社は±10%以上を打ち直しの目安にしています。
Q4. 対称差(symm. diff.=往復の時間の差)はいくつなら問題ですか?
A. 説明書の基本の目安では、健全な木で条件がよければ20μs未満、大きな腐朽があると約100μsまで届くことがあり、300μsを超えれば付き方の重い問題、健全な材でも500μsを超えて続くならセンサーか増幅の不具合の可能性が高いとされています。配置や材で変わるので、大きいセンサーはまず付き方を確かめます。
Q5. 断面画像の色の範囲(Velocity limits=速さの上下限)は調整してよいですか?
A. 説明書は自動の計算を推奨しており、当社も基本的には調整しません。Layer Map(荷重を支える範囲と弱い方向の図)は色の範囲の中間点より遅い所を荷重を支えられない材として示すため、範囲を手で動かすと、見た目だけでなく腐朽と読む範囲そのものが変わるからです。
Q6. 断面画像に穴のような範囲が出たら、必ず空洞ですか?
A. 必ずではありません。説明書は、コードの入れ違い、アンプボックスの取り違え、浮いたセンサー、貫入深さや幹周の入れ間違いでも、穴や腐朽のような画像になる例を挙げています。設置と入力を確かめ、外観診断と照らし合わせて読みます。
出典・参考情報
Fakopp Kft.「ArborSonic 3D Manual」2026年9月7日版(ページは印字の番号。p.4〜6・8〜41・42・53・57〜72・73〜81・84)。センサーの数の範囲は Fakopp の製品のページの仕様(2026年10月25日閲覧)。ソフトの版は Fakopp のダウンロードのページで確認(2026年10月25日閲覧)。
東京都建設局「令和三年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.108(アーボソニック3Dの測定方法)・p.139(様式5 腐朽診断カルテの「計測時の伝達経路図」「想定断面図」の欄)、本編 p.66(腐朽空洞率の参考基準値)。
当社の社内マニュアル「アーボソニック3D PCアプリ操作マニュアル」(2025年11月25日更新)・「アーボソニック3D 診断手順・PCマニュアル」(2025年12月2日更新)。当社の測定データ(2025年10月、18本・20断面)。記事中の画面は当社のソフトの画面で、現場名は消しています。
記事中のイラストと図は、株式会社トシ・ランドスケープが作成しました。絵と模式図は説明のための簡略化です。実測の図の数字は当社がプロジェクトファイルから計算したもので、ソフトの表示と小数点以下が違うことがあります。
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※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。
































