アーボソニック3Dの腐朽診断カルテは、どこをどう読めばよいのか。東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」の単断面と多断面の記入例を使い、伝達経路図、想定断面図、健全部推定範囲、腐朽空洞率、所見、3D図までを、樹木医が欄の順に解説します。
音で幹の中を調べるアーボソニック3D(多点式応力波速度測定器)の診断を委託すると、色の付いた多角形の図が何枚も並んだカルテが届きます。緑や赤や青の図が、それぞれ何を表しているのか。同じ「青」が、図によって逆の意味で使われていることもあります。
この記事では、マニュアルの参考資料に載っている記入例2枚、「腐朽診断カルテ(アーボソニック単断面)」(様式5、p.140)と「同(多断面)」(様式6、p.142)を、欄ごとに読んでいきます。機器の道具立てや測り方はアーボソニック3Dの使い方と断面画像の見方に、外観診断のカルテは街路樹診断カルテ(外観診断)の読み方に書きました。ページ番号は、断りのない限り上記マニュアルのものです。
アーボソニックのカルテはどんな書類か 単断面と多断面の2種類
東京都の街路樹診断では、機器診断は貫入抵抗測定器(商品名: レジ(Resi PD))を基本とし、診断の目的や部位に応じてほかの機器も使えることになっています(本編 p.51)。アーボソニックはその一つで、マニュアルの表では「多点式応力波速度測定器」と呼ばれています(本編 p.53 表Ⅲ-3・1)。レジ以外の機器のカルテの様式は参考資料にまとめられていて、アーボソニックには、1つの高さを測る単断面と、いくつかの高さを重ねて測る多断面の2つの様式があります(参考資料 p.139〜142)。
下の2枚が、その記入例です。カルテの画像はマニュアルのページを加工せずに引用し、左右の❶〜❽の番号と線だけを当社が付けました。単断面は❶から❽の順に、多断面は後半の節で読みます。

腐朽診断カルテ(アーボソニック単断面)記入例。出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.140 様式5 より引用(ページの画像は加工せず、番号と線は当社が付記)
| 番号 | 欄 | 書かれていること |
|---|---|---|
| ❶ | 基本情報 | 路線名・樹木医名・診断日・樹木番号・樹種名・樹高・幹周・枝張 |
| ❷ | 測定高さ・測定直径・プロブ数・機種名 | 1.5m、185cm と 192cm、8個、アーボソニック3D |
| ❸ | 測定位置写真 | 測った高さを矢印で示した写真(GL+1.5m) |
| ❹ | 計測時の伝達経路図 | センサーどうしの間を音が伝わった速さの線 |
| ❺ | 想定断面図 | 速さから描いた断面の色の図 |
| ❻ | 健全部推定範囲 | 健全と推定した範囲を青で塗った図 |
| ❼ | 腐朽空洞率 | 55% |
| ❽ | 所見 | 数字と図から読み取ったことと、処置の考え |
出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」参考資料 p.140 様式5 の記入例をもとに当社作成
❶ 基本情報 外観診断のカルテと同じ番号でつながる

基本情報の欄(出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.140 様式5 の記入例より引用)
いちばん上には、カルテの通し番号、街路樹診断カルテ番号、事務所名、路線名、樹木医名、診断日、樹木番号、樹種名、樹高、幹周、枝張が並びます。欄の並びはレジの腐朽診断カルテ(本編 p.56・59)とほぼ同じです。
読むときに確かめたいのは、街路樹診断カルテ番号と樹木番号です。機器診断は、外観診断で「機器診断が必要」とされた木に行います(本編 p.51)。このカルテは、その木の外観診断のカルテ(表と裏の2ページ)とこの番号で結び付いていて、外観診断の所見と機器診断の結果を並べて読むための手がかりになります。
❷ 測定高さ・測定直径・プロブ数・機種名

測定高さ・測定直径・プロブ数・機種名の欄(出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.140 様式5 の記入例より引用)
記入例は、測定高さ1.5m、測定直径は「↕185cm」「↔192cm」、プロブ数8個、機種名はアーボソニック3Dです。
測定高さは、外観診断で問題を指摘された幹の位置です。その位置に巻尺を巻き、周囲の長さを記録してから測ります(参考資料 p.108)。測定直径の2つの数字は、十字に交わる2方向の直径です。幹は真円ではないので、2方向の直径がそろっているか、どちらかに長いかで、断面のおおよその形が分かります。

巻尺で幹周を測る(イラストは当社作成)
プロブは、幹に打ち込むセンサーのことです。先の尖ったセンサーを樹皮の上から打ち込み、実際に入る深さは0.5〜1.5cmほどです(参考資料 p.108)。樹皮の厚みなどにより打ち込み深さは変わってきます。センサーの数は標準で10個とされていますが(同)、記入例は8個で測っています。幹の太さや周りの状況で数は変わります。センサーには番号が付いていて、上から見て順に並べます。伝達経路図や想定断面図の外周に書かれた1〜8の数字が、このセンサーの番号です。

センサーの番号は反時計回り(イラストは当社作成)
❸ 測定位置写真 どの高さを測ったか

測定位置写真の欄(出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.140 様式5 の記入例より引用)
写真には「GL+1.5m」の矢印が入っています。GL は地面の高さ(グラウンドライン)のことで、地面から1.5mの高さを測った、という意味です。マニュアルは、測定位置が分かるように撮った写真をカルテに貼ることを決めています(本編 p.56)。次の診断で同じ高さを測り、前回と比べるための記録でもあります。
❹ 計測時の伝達経路図 線1本はセンサー2個の間の音の速さ

計測時の伝達経路図の欄(出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.140 様式5 の記入例より引用)
カルテの下半分の「測定結果」の左側が、計測時の伝達経路図です。外周の黒い点がセンサーで、点と点を結ぶ1本1本の線が、その2個のセンサーの間を音が伝わった速さを表しています。

伝達経路図の見方(ArborSonic 3D 取扱説明書 2026年9月版 p.25・26 をもとに当社作図)
測るときは、センサーを1個ずつハンマーで3回たたきます。1個をたたくと、音は幹の中を通ってほかのすべてのセンサーへ届き、到達までの時間が記録されます。ソフトは、2個のセンサーの間を行きと帰りの両方向で3回ずつ、計6回の測定を平均して、速さを出します(参考資料 p.108)。8個のセンサーなら、組み合わせは 8×7÷2=28本です。

1個をたたくと全部のセンサーへ(イラストは当社作成)
線の色は、左の色の帯のとおり、濃い緑が速く、黄・赤と遅くなり、青から水色がもっとも遅い速さです。帯の横の英語は、緑の側が Intact(健全)、赤が Decayed(腐朽)、青から水色の側が Hollow(空洞)です。測った断面の中に異常があると、健全な材を通る場合に比べて、音の到達に遅れが出ます(参考資料 p.108)。空洞があると、音はそれを回り込んで遠回りするので、その分も時間がかかります(参考資料 p.106)。
記入例では、外周に沿った隣どうしのセンサーを結ぶ線はほとんどが濃い緑で、1番と2番を結ぶ線だけが黄から橙です。幹の中心を通る線は、1番と5番、2番と6番、2番と8番などが青から水色、3番と7番、1番と4番などが黄から橙で、緑のままの線もあります。中心を通る音ほど遅い傾向があり、外周では1番と2番の間が遅い、という読み取りです。なお、1つのセンサーから出る線がすべて遅い場合は、そのセンサーの釘が浅い、腐った材に打ち込まれている、センサーの不具合、といった測り方の問題も疑います(取扱説明書 2026年9月版 p.26)。
❺ 想定断面図 色は「健康状態」ではなく「音の速さ」

想定断面図の欄(出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.140 様式5 の記入例より引用)
右側の想定断面図は、伝達経路図の速さの値をソフトが処理し、断面の中の速さの分布を色で描いた図です(参考資料 p.108)。線と線の間の速さは測っていないので、ソフトが補って面にしています。「想定」と付くのはそのためです。

断面画像の色の見方(イラストは当社作成)
色の意味は伝達経路図と同じで、緑が速く、赤が遅く、青から水色がもっとも遅い範囲です。ただし、メーカーの取扱説明書は、断面画像は測った断面の健康状態ではなく音の速さを示すもので、速さと健全さはよく対応するものの、輪状の割れや入り皮(幹の中に巻き込まれた樹皮)でも速さは下がる、と注意しています(取扱説明書 2026年9月版 p.25)。

音は空洞を回り込む(イラストは当社作成)
記入例の想定断面図は、中心に大きな水色の範囲があり、その周りを赤い帯が囲み、外側に緑が残っています。左の3番から下の5番のあたりは緑が厚く、右上の1番と8番の間にも緑の帯が残っています。一方で、上の1番と左上の2番の間や、右の8番から6番のあたりでは、赤が外周の近くまで迫っています。2番のあたりでは、水色の範囲が外周まで届いています。この読み取りが、後で出てくる所見の文章につながります。
❻ 健全部推定範囲 この図の青は「健全」

健全部推定範囲の欄(出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.140 様式5 の記入例より引用)
カルテの右上の健全部推定範囲は、健全と推定した範囲を青で塗った図です。矢印の先に「健全部」と書かれているとおり、この図では青が健全です。
ここは取り違えやすいところです。同じカルテの想定断面図では、青から水色は「もっとも遅い=空洞(Hollow)」の色でした。同じ青が、図によって逆の意味で使われています。カルテを見るときは、どの図の青なのかを先に確かめてください。

健全部推定範囲の青は健全、想定断面図の青は空洞(東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」参考資料 p.140 の記入例より引用。枠と文字は当社が付記)
記入例の健全部推定範囲は、左の3番から下の5番を回って6番の手前まで青い帯が厚く続き(矢印の「健全部」が指すのはこの帯です)、右上の1番と8番の間にも細い帯、7番の脇にも小さな塗りがあります。2番のあたりと、2番から1番へ向かう間の大部分には、青がありません(1番のすぐ脇に小さく残る程度です)。想定断面図で緑が残っていた所に青があり、赤や水色が外周に迫っていた所に青が無い、という対応になっています。
❼ 腐朽空洞率 断面の面積のうち、腐朽・空洞と推定した範囲の割合

腐朽空洞率の欄(出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.140 様式5 の記入例より引用)
記入例の腐朽空洞率は55%です。今のアーボソニックのソフトでは、腐朽の面積の割合は、測った高さの断面全体の面積に対して、腐朽と推定した範囲が占める割合と説明されています(取扱説明書 2026年9月版 p.38「Decayed area」)。
同じ「腐朽空洞率」でも、レジ(貫入抵抗測定器)のカルテとは求め方が違います。レジは、十字方向の4本の線で針が通った長さを読み、断面も空洞も円と仮定して、{(A+B)÷(a+b)}² の式で計算します(本編 p.57)。アーボソニックは、断面の色の図の面積から出します。線で測るか面で測るかの違いで、同じ木でも数字が一致するとは限りません。

腐朽空洞率の求め方の違い(東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」本編 p.57、ArborSonic 3D 取扱説明書 p.38 をもとに当社作図。断面の色は模式)
東京都のマニュアルは、総合判定の目安として腐朽空洞率の参考基準値を示しています。10%未満が A、10%以上30%未満が B1、30%以上50%未満が B2、50%以上が C です(本編 p.66 表Ⅲ-4・1)。記入例の55%は、C の目安に入ります。

腐朽空洞率の参考基準値と記入例の数字(東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」本編 p.66 表Ⅲ-4・1 をもとに当社作図)
| 総合判定 | 内容 | 腐朽空洞率の参考基準値 |
|---|---|---|
| A | 健全か健全に近い | 10%未満 |
| B1 | 注意すべき被害が見られる | 10%以上30%未満 |
| B2 | 著しい被害が見られる | 30%以上50%未満 |
| C | 不健全 | 50%以上 |
出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」p.66 表Ⅲ-4・1
参考までに、取扱説明書には、腐朽の面積の割合から平均の t/R(残っている健全な材の厚さ÷幹の半径)を出す式、1−√(腐朽面積÷断面全体の面積)が載っています(取扱説明書 2026年9月版 p.38)。記入例の55%を入れると約0.26で、マニュアルが倒木の可能性が高くなる目安とする0.3(本編 p.58)を下回ります。カルテの欄には無い参考の計算ですが、腐朽空洞率55%がどのくらいの健全材の薄さに当たるかの見当になります。
❽ 所見 図のどこを指しているかを確かめて読む

所見の欄(出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.140 様式5 の記入例より引用)
記入例の所見は3つの文です。それぞれが、ここまでの図のどこから読み取られたかを確かめながら読みます。
- 「幹内部に腐朽空洞が大きく広がっている。道路斜め方向では、腐朽空洞が幹を貫通している。」 想定断面図の中心の大きな水色と、左上の2番のあたりで水色が外周まで届いている所に当たると読めます
- 「車道側の健全材が非常に薄く、車道側に屈曲して倒れる危険性が高い。」 図の上に「▲車道側」とあります。上の1番と2番の間で赤が外周に迫り、健全部推定範囲にも青がほとんど残っていない所です。伝達経路図でも、外周の線のうち1番と2番を結ぶ線だけが黄から橙でした。健全材が薄い側へ曲がって折れやすい、という読みです
- 「樹体が大きいので、支柱による補強は難しい。植え替えが必要である。」 腐朽空洞率55%(C の目安)と、樹木の大きさ・立地を合わせた処置の考えです
マニュアルは、総合判定は機器診断だけの結果から出すのではなく、外観診断の結果と合わせて考えたうえで出すことを求めています(本編 p.65)。所見の「植え替えが必要」も、この1枚だけで決まるのではなく、外観診断のカルテと合わせた総合判定の欄で最終的に判断されます。
多断面のカルテ(様式6) 高さを重ねて、腐朽の上下の広がりを見る

腐朽診断カルテ(アーボソニック多断面)記入例。出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.142 様式6 より引用(ページの画像は加工せず、番号と線は当社が付記)
多断面のカルテは、いくつかの高さで測った断面を重ねて、腐朽が上下にどう広がっているかを見るための様式です。アーボソニックは多断層の測定に対応していて、内部の異常の上下方向への広がりを推定できます(参考資料 p.108)。欄は、❶基本情報、❷測定結果の3D図、❸測定部ごとの高さ・直径・腐朽空洞率、❹最大腐朽空洞率、❺所見の順です。

3D図の欄(出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.142 様式6 の記入例より引用)
3D図は、測った高さの断面を下から積み重ねた図です。色の意味は単断面の想定断面図と同じです。手前に「▲歩道側」、奥に「▲車道側」と方位が入っています。センサーの番号が断面ごとに付いているので、どの方向が薄いかを高さごとに比べられます。

測る高さを重ねた立体表示(イラストは当社作成)

測定部の欄(出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.142 様式6 の記入例より引用)
右の測定部の欄は、下から測定部1、2、3と並び、5つの高さまで書けます。記入例は3つの高さを測り、測定部4と5は空欄です。
| 測定部 | 高さ | 直径(↕ と ↔) | 腐朽空洞率 |
|---|---|---|---|
| 測定部1 | 0.1m | 110cm・120cm | 47% |
| 測定部2 | 0.4m | 90cm・110cm | 32% |
| 測定部3 | 0.8m | 80cm・100cm | 26% |
出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」参考資料 p.142 様式6 の記入例

多断面の記入例の高さと腐朽空洞率(東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」参考資料 p.142 をもとに当社作図)
根元に近いほど腐朽空洞率が大きく、上へ行くほど小さくなっています。地面から10cmの測定部1は、ほぼ根株の高さです。最大腐朽空洞率の欄には、3つのうちいちばん大きい測定部1の47%が書かれています。参考基準値では B2(30%以上50%未満)の目安に入ります。

根元の測定(イラストは当社作成)

所見の欄(出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 参考資料 p.142 様式6 の記入例より引用)
所見は「根株から幹にかけて腐朽空洞が広がっている。根株に近い位置で最大腐朽空洞率47%となっている。腐朽空洞率は50%未満であるが、外観からの診断も総合して、支柱などによる補強や軽減剪定を行うか、または更新を検討することが必要。残置する場合は重点的な経過観察が必要。」です。数字は C の目安の50%に届いていなくても、根株から上へ続く腐朽の広がりと外観の診断を合わせて、残すなら何をするか、残さないなら更新か、という処置の幅を示しています。
音波の数字が実際とずれるとき 空洞の形で大きく出る・小さく出る

空洞の形によって、腐朽空洞率は大きくも小さくも出る(東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」参考資料 p.106 表Ⅶ-2・1 をもとにしたイラスト。当社作成)
アーボソニックの腐朽空洞率は、空洞の形によって、実際より大きく出ることも小さく出ることもあります。マニュアルは機器ごとの例を表にまとめていて、アーボソニックについては、幹の断面の放射方向や外周に沿って長い空洞のように、音の回り道が長くなる形では腐朽空洞率が大きく評価されることがあり、反対に小さな空洞では回り道の影響が小さく、小さく評価されることがある、としています(参考資料 p.106 表Ⅶ-2・1)。
速さの出方そのものにも癖があります。音は木の繊維に沿った方向で速く伝わること、健全な材を通る短い経路があると異常の範囲が小さく見えること、わずかな傷でも経路が長くなると大きく見えることを加味し、外観診断の状況と照らして総合的に判断する、とされています(参考資料 p.108)。

表面から入った亀裂(イラストは当社作成)
マニュアルの総合判定の節も、測定値は腐朽の大きさや形や状態によって実際と差が出ることがあり、その差は概して腐朽空洞が大きい場合は小さく、小さい場合は大きくなる傾向があること、機器によって得意・不得意な形も違うことを挙げ、各機器の特徴を理解したうえで t/R率や腐朽空洞率を使うように、としています(本編 p.65)。
カルテを受け取ったら確かめたいこと
- どの機器の腐朽空洞率か。アーボソニックとレジでは求め方が違うので、別の機器の数字と直接比べない
- どの図の青か。想定断面図の青は空洞、健全部推定範囲の青は健全
- 所見の文が、図のどこを指しているか。方位(車道側・歩道側)とセンサーの番号で確かめる
- 外観診断のカルテと合わせて読んだか。総合判定は外観診断と合わせて出すもの(本編 p.65)
- 次に測るとき、同じ高さ・同じ位置で測れる記録があるか。測定位置写真と測定高さ、センサーの番号

センサーの間をレジで確かめる(イラストは当社作成)
音の機器は断面の全体を一度に見られるのが強みで、レジは針の通った線の上の材の硬さを細かく読めるのが強みです。現場での経験から言うと、断面図で健全な材が薄く見える方向があれば、その方向をレジ(Resi PD)で確かめると、残っている材の厚さを具体的な数字で示せます。レジのカルテの読み方はレジ(Resi PD)の腐朽診断カルテの読み方に書きました。
診断のご相談、仕様書づくり、イラストの使用について
当社の樹木診断は、診断して判定を出すところで終わりません。判定に合った剪定や支柱、植栽基盤の改善といった処置、その後の経過観察や長期の管理計画まで、同じ樹木医が一貫してお受けしています。カルテの内容を「次に何をするか」までつなげたい管理者の方は、ご相談ください。
また、自治体・行政の方からの、樹木診断の仕様書や点検要領の作成に関するご相談にも対応しています。この記事に載せた当社の透かし入りのイラストを、仕様書や説明資料などに使用されたいご希望があれば、あわせてお問い合わせページからお知らせください。
よくある質問(Q&A)
Q1. アーボソニックの想定断面図の色は、何を表しているのですか?
A. 幹の断面の中を音が伝わる速さの分布です。緑が速く、赤が遅く、青から水色がもっとも遅い範囲で、それぞれ健全・腐朽・空洞の目安として読みます。メーカーは、色は健康状態そのものではなく音の速さを示すもので、輪状の割れや入り皮でも速さは下がると注意しています。
Q2. 計測時の伝達経路図とは何ですか?
A. 幹に付けたセンサーどうしを結ぶ線で、1本の線が、その2個のセンサーの間を音が伝わった速さを色で表した図です。8個のセンサーなら線は28本になります。中心を横切る線が遅ければ、中心部に腐朽や空洞があると考えます。
Q3. 健全部推定範囲の青は、空洞のことですか?
A. 違います。東京都のマニュアルの単断面の記入例では、健全部推定範囲は健全と推定した範囲を青で塗った図で、青は健全を表します。同じカルテの想定断面図では、青から水色が空洞を表すので、どの図の青かを確かめて読む必要があります。
Q4. アーボソニックとレジの腐朽空洞率は、同じものですか?
A. 同じ名前ですが、求め方が違います。アーボソニックは断面の色の図の面積から、腐朽と推定した範囲の割合を出します。レジは、十字方向の4本の線で針が通った長さから、断面と空洞を円と仮定して計算します。機器が違えば、同じ木でも数字が一致するとは限りません。
Q5. 多断面のカルテの最大腐朽空洞率とは何ですか?
A. いくつかの高さで測った腐朽空洞率のうち、いちばん大きい値です。東京都のマニュアルの記入例では、地面から0.1m・0.4m・0.8mの3つの高さを測り、根株に近い0.1mの47%が最大腐朽空洞率として書かれています。
出典・参考情報
東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅲ章 3 機器診断(p.51〜58)、4 総合判定(p.64〜66)、第Ⅶ章 参考資料 2 樹木診断機器の測定誤差について(p.106 表Ⅶ-2・1)、3 機器診断で使用可能な機器について(p.108 アーボソニック)、8 カルテ様式(様式5・6 p.139〜142)。カルテの記入例(p.140・142)の画像は、解説のために同マニュアルから引用しました(ページの画像は加工しておらず、❶〜❽の番号と線は当社が付記)。表と図は、同マニュアルをもとに当社が作成しました。
Fakopp Kft.「ArborSonic 3D User’s Manual」2026年9月7日版(p.25・26・38)
記事中のイラストは、株式会社トシ・ランドスケープの説明用イラストです。絵は説明のための簡略化で、実際の判定はカルテの基準と現地の状況によります。
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樹木の精密診断(機器診断)とは 外観診断との違いを樹木医が解説
※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊






















