ピカスの断面画像を、色だけで判断しないための読み解き方を、当社が2026年に測った6本・13断面の実例と計算の図で樹木医が解説します。速さのグラフと経路の見方、入り皮や高さの違いの読み方、トロニックとレジとの突き合わせ、カルテに書く言葉までを扱います。
ピカス(PiCUS Sonic Tomograph 3)は、幹の周りの測定点をハンマーでたたき、音が届くまでの時間から幹の中を推し量る、ドイツ IML Electronic 社の機器です。前の記事「ピカスのPC解析の手順と、音波データの読み方」では、測った時間の質を確かめ、幹の形を正しく入れるまでの手順を書きました。この記事はその続きで、出てきた断面画像をどう読み、どう判断するかを扱います。
実例は、当社が2026年に測ったクスノキ・ケヤキ・ギンモクセイなどの断面です。現場の名前は伏せ、樹種と測った高さだけを書きます。図の数字は、当社がソフトのファイル(.pit)に残っている時間と測定点の位置から計算したもので、ソフトの計算とは方法が違います。メーカーの説明書は、メーカーが公開している英語版の「IML Tree Inspection Manual」v1.1(以下「説明書」)を使い、ページは印字の番号で書きます。
先に答え
- 断面画像は「腐朽の写真」ではなく、その断面の中での音の速さの、相対的な地図です。茶は速い、紫・青は遅い。説明書は、青でも空洞とは限らず、色だけでは空洞・腐朽・亀裂を区別できないとしています(p.130〜131)。
- 断面画像の前に、速さのグラフと経路を見ておくと、色のどこが確かかが分かります。多くの樹種で、健全な木は幹の中を通る向きがいちばん速く、腐朽があるとそこが谷になります。
- 当社の11断面では、計算した「遅い経路の割合」と、カルテの「異常の程度」がほぼ一直線に並びました。断面画像の数字は、経路の時間から出ています。
- 入り皮や亀裂は音をさえぎるので、横切る向きの経路だけが遅くなり、断面画像の傷みが大きめに出ることがあります。高さを変えて測ると、傷みが根元だけか、上まで続くかが分かります。
- 判断に迷う中間の色はトロニック(電気抵抗)と重ね、健全な外周が薄い方向はレジ(Resi PD)で確かめます。断面画像だけで伐るかどうかは決めません(説明書 p.9・125)。
断面画像の色は、何を表しているか
ピカスが測るのは、たたいた点から各センサーまで音が届く時間です。ソフトは2点の間の距離をその時間で割って速さを出し、たくさんの経路の速さから、断面のどこが速く、どこが遅いかを推定して色を塗ります。説明書は、経路を直線とみなして速さを当てはめるので、画像が表すのは「見かけの速さ」だとしています(p.126)。

木の中の音は、縦がもっとも速く、周の方向がもっとも遅い(イラストは当社作成)
色の意味を、説明書の記述でまとめました。
| 色 | 音の伝わり方 | 読み方 |
|---|---|---|
| 黒・茶 | 速い | 健全な材(p.10) |
| 緑 | 中間 | どちらとも決まらない所、傷みの種類に応じて読む(p.130) |
| 紫・青・白 | 遅い | 傷んだ材か空気、青でも空洞とは限らない(p.130) |
出典: 説明書 p.10・130・131(訳と要約は当社)
説明書は、色を茶/緑/紫・青・白の3つの群に分けて読み、色だけでは穴・腐朽・亀裂の区別はできないとしています(p.131)。また、色の範囲は測定ごとに張り直されます(p.131)。同じ茶色でも、木ごと・断面ごとに速さの値は違います。色は、必ず速さの数値と合わせて読みます。
色の並び方にも意味があります。説明書は、茶と紫が直接接して緑の帯が細いときは傷みがよく封じ込められていて、緑の帯が広いときは菌の侵入が考えられる、としています(p.150)。

空洞・腐朽・亀裂は、音の断面画像の色だけでは見分けがつかない(イラストは当社作成)
当社のカルテでは、腐朽空洞率(東京都の様式では「異常の程度」)を、紫・青に緑を加えて数えています。緑を「どちらとも決まらない所」として外さず、傷みの候補に含めておく当社の目安です。カルテの欄の読み方はピカスの腐朽診断カルテの読み方で説明しています。
解析の順番
当社は、パソコンで幹の形、データの点検、断面画像の順に確かめています。この記事では、その間と後に次の見方を足した順番をおすすめします。
- 幹の形: キャリパーで作った形が、実際の幹と合っているか
- たたいた時間の点検: 外れた回、ばらつき、往復の差(ここまでは前の記事「ピカスのPC解析の手順と、音波データの読み方」)
- 速さのグラフと経路: どの向きの経路が遅いか、遅い経路がどこに集まるか
- 断面画像: 色の広がりと、健全な外周の厚さ
- 黄色の線と経路の向き: 亀裂・入り皮の影響
- 高さの比較: 同じ木の別の高さと比べる
- 突き合わせ: 外観診断の所見、トロニック、レジと照らして結論を出す
断面画像を4番目に置くのは、画像が経路の時間から計算された推定だからです。元の経路の様子を先に見ておくと、画像の色のどこが確かで、どこが補って塗られた所かを見分けやすくなります。
速さのグラフで読む
1つの点から見た速さ 向かい側が谷になる
ソフトの結果のタブでは、たたいた点ごとに、各センサーまでの速さを棒グラフで見られます(p.110)。図1は、当社のデータで同じ見方をしたものです。測定点1をたたき、右回りに並ぶセンサーまでの速さを並べました。

図1 測定点1から各センサーへの速さ。健全な木は中ほどが山、腐朽のある木は谷になる(当社の測定データから当社が計算。考え方は説明書 p.110〜111・128〜129)
健全なクスノキ(地上0.3m)は、両端の隣どうしの経路が約1,050m/s と遅く、幹の中を通る向き(図の中ほど)で約1,830m/s と最も速くなりました。説明書 p.128〜129 でも、多くの樹種の健全な木では中心を通る向きが速く、隣どうしの向きが最も遅いとされています。これは木の中で音が伝わる速さが向きで違い、周の向きが遅いためです。
腐朽のあるケヤキ(地上0.3m、カルテの異常の程度70%)は反対に、中ほどが約440m/s まで落ちる谷になりました。谷の位置で傷みのある方向を、谷の深さで傷みの強さを読みます。すべての点のグラフを重ねたものが、次の経路図と断面画像です。
速さの分布の形
幹の中を通る経路の速さを、断面の中の速い経路を1とした割合に直し、分布を見たのが図2です。

図2 幹の中を通る経路の速さの分布。健全な断面(上)と、異常の程度71%の断面(下)(当社の測定データから当社が計算)
健全な断面は、1の近くに細い山が1つです。傷んだ断面は、0.4前後に大きな山があり、1の近くにも小さな山が残りました。遅い山は傷んだ内側を通る経路、速い山は健全な材を通る経路で、2つの山が分かれて見えるときは、健全な部分と傷んだ部分がはっきり分かれて測れています。
経路図で読む 遅い線がどこに集まるか
ソフトは、すべての経路を平均の速さで濃淡を付けて描け、点を押すとその点に集まる経路だけを出せます(p.112・132)。図3は、当社の計算で、幹の中を通る経路を速さで色分けしたものです。

図3 幹の中を通る経路を速さで色分けした。健全(左)と腐朽のある木(右)(当社の測定データから当社が計算)
健全なクスノキ(左)は、どの線も濃い色(速い)です。腐朽のあるケヤキ(右)は、中心を横切る線がそろって金茶(遅い)になり、北東側の縁を通る線だけが速く残りました。断面画像の色の境目は、この線の間を補って塗った推定です。細かい形より、遅い線の束がどこを通っているかを信じます。
ソフトの断面画像と、経路を並べる

図4 ソフトの断面画像(左。.pit に残る色の格子から描き直した)と、音がよく通った経路(右)(当社の測定データから当社が計算)
図4の左は、クスノキの根元(地上0.3m)の断面画像を、.pit のファイルに残っていたソフトの色の格子から描き直したものです。色の格子の数の割合は、茶29%・緑16%・紫と青55%で、カルテの数字と一致しました。右は、速さが断面の中の速い経路の0.6倍以上だった線だけを描いたものです。音がよく通った線は、断面画像の茶色の所を通り、青い帯の中はほとんど通っていません。
遅い経路の割合と、異常の程度

図5 幹の中を通る経路のうち速さ0.6倍未満の割合と、カルテの異常の程度(11断面)(当社の測定データから当社が計算)
当社の11断面で、幹の中を通る経路のうち速さが0.6倍未満だった割合と、カルテの異常の程度を並べると、ほぼ一直線になりました。断面画像の「何%」という数字は、経路の時間から出ています。ただし、2つの数字が10ポイント以上離れた断面もあり、割合で見ると、異常の程度14%に対して遅い経路29%だった断面のように、数字の小さい断面で差が大きく出ることがあります。数字だけで済ませず、遅い経路がどこにあるかを見ます。
黄色の線と入り皮 経路の向きで読む
ソフトは、亀裂の可能性がある所に黄色の線を引きます。説明書によると、線の太さは確からしさを表し、感度は変えられます(p.135〜136)。注意したいのは次の点です。
- 線は、必ず2つの測定点のちょうど真ん中に引かれる(p.136)
- 縁まで届く大きな傷みや、センサーの付け方の誤りでも線が出ることがある(p.136)
- 歯車効果(健全な木でよく出る見え方)を見つけたときは、亀裂の検出が止まる(p.137)
- 大きな亀裂が疑われるときは、亀裂の両側を別々に計算する(p.137)
線が出ても亀裂とは限らず、出なくても亀裂が無いとは限りません。米国の研究では、音波の断面画像はおおよその位置と大きさを示すもので、正確な位置や、亀裂による音の影と腐朽の区別には、穿孔抵抗の測定が要るとされています(Wang & Allison 2008)。
当社のクスノキ(木の中に入り皮があり、カルテで「東西方向に入り皮がある」と記録した木)で、幹の中を通る経路を向きで分けたのが図6です。

図6 幹の中を通る経路を向きで3つに分けた速さの中央値(当社の測定データから当社が計算。考え方は説明書 p.128・135〜136)
健全なクスノキは、向きによる差がほとんどありません。入り皮のあるクスノキは、根元(地上0.3m)で、入り皮を横切る南北に近い経路が667m/s、入り皮に沿う東西に近い経路が983m/s でした。地上1.0mでは、東西は1,782m/s と健全な木と同じ速さに戻る一方、入り皮を横切る南北は1,039m/s と、まだ遅いままでした。入り皮や亀裂は音をさえぎって回り道をさせるので、横切る向きの経路だけが遅くなり、断面画像の傷みが大きめに出ることがあります。当社はこの木のカルテに、東西方向の入り皮の影響で音波の伝わりが抑えられ、被害部の計測結果が過大に出ている可能性が高いと書きました。経路の向きによる速さの差は、その見立てと合っています。
高さを比べる 根元だけか、上まで続くか

図7 同じ木の2〜3つの高さで、カルテの異常の程度と遅い経路の割合を比べた(当社の測定データから当社が計算)
同じ木を2つ以上の高さで測ると、傷みの広がり方が見えてきます。入り皮のあるクスノキは、地上0.3mの異常の程度が71%、地上1.0mでは14%でした。傷みと入り皮の影響が、根元に集まっている木です。別のケヤキは、地上0.7m・1.0m・1.3mが78%・59%・83%で、3つの高さとも数字が大きい木でした。1つの高さだけで、木全体を判断しないようにしています。
高さで値が大きく違うときは、測った位置に開口部・こぶ・枝の付け根がなかったかを、外観の記録で確かめます。複数の高さを重ねる3D表示では、すべての断面に共通の色の範囲を張り直すので、1断面ずつの画面とは色の濃さが変わります(p.182)。
実例で読む 当社が測った断面から
健全なクスノキ 比べる基準
地上0.3mと1.0mで測ったクスノキは、どちらも異常の程度0%でした。時間と距離のグラフは1本の帯にそろい、たたくたびのばらつきが10%を超えた経路は1割未満、行きと帰りの差の中央値は1%未満でした。健全な木のグラフと経路図を一度見ておくと、傷んだ木の図との違いが読み取りやすくなります。
入り皮のあるクスノキ 数字は大きいが、理由がある
根元の異常の程度は71%でした。経路の向きで分けると、入り皮を横切る向きだけが遅く(図6)、地上1.0mでは14%に下がります。当社のカルテには、北側の開口空洞と南側の鋼棒の入り方の異常から幹から根元にかけての腐朽を考えたうえで、入り皮の影響で過大に出ている可能性を書き、樹冠を小さくする剪定と、幹どうしを固定するケーブリングなどの処置を勧めました。
3つの高さで大きいケヤキ
3つの高さとも異常の程度が59〜83%で、黄色の線も出ました。カルテには、入り皮の部分で数値が大きめに出ている可能性を書いたうえで、数値の上では折損や倒木の可能性が高いとして、撤去・植え替え・ケーブリングなどの処置が必要と書きました。
数字が小さいギンモクセイ
地上0.7mと1.0mの異常の程度は7%と9%でした。数字だけなら軽微ですが、幹には開口空洞がありました。カルテには、軽微な内部腐朽としたうえで、開口空洞があるため被害の進行に注意して経過を見る、と書きました。数字の小さい断面でも、外観の所見と合わせて結論を出します。
ピカスとレジを突き合わせたケヤキ
地上0.3mと0.5mで測ったケヤキは、ピカスの異常の程度が70%と62%でした。地上0.5mでは、レジ(Resi PD)で4方向を穿孔し、健全な材の厚さは13.5〜21.5cm、t/R率(健全な外周の厚さ÷半径)は4方向とも0.3未満、腐朽空洞率は58.5%でした(穿孔しきれなかった奥は異常部とみなして計算)。ピカスの62%と、レジから計算した58.5%は近い値です。幹の上部の開口空洞や大きな枯れ枝の所見と合わせ、カルテには撤去・植え替え・樹高を下げる剪定などの検討が必要と書きました。
トロニックと重ねて読む
当社がトロニック(PiCUS TreeTronic。電気抵抗で断面を測る機器)を重ねるのは、音波の断面画像で緑・紫の中間の色が広く出て、腐朽の初期かどうか迷うときです。説明書には、音波と電気抵抗の組み合わせの読み方が表で載っています。
| 音波(ピカス) | 電気抵抗(トロニック) | 読み方 |
|---|---|---|
| 速い(茶) | 高い | 健全 |
| 速い(茶) | 低い | まだ安全、腐朽の初期 |
| 遅い(紫・青) | 高い | 空洞・亀裂・止まった腐朽 |
| 遅い(紫・青) | 低い | 進んでいる腐朽 |
出典: 説明書 p.166(電気抵抗の分布が外側で低く内側で高い型〈タイプ1〉の木の表。訳と要約は当社)
電気抵抗の分布の型は樹種で違い、説明書はクスノキなどを外側が低く内側が高い型に挙げています(p.164〜165)。また、活発な腐朽が広がる木を何年か追った例で、傷みの広がりは音波の方が電気抵抗より小さく出たとしています(p.167)。トロニックの測り方はIML社の樹木診断機器 第5回 トロニックで説明しています。

音波の断面画像の例。中心に紫・青、外周に茶(当社のソフトの画面)
この例の木は、音波では中心に紫・青の範囲があり、外周に茶色の健全な帯が残っています。色の帯の左端の「v:100%」と右端の「v:52%」は、この断面の最も速い経路を100%として、色の範囲が52%まで張られていることを示しています。

同じ木・同じ高さの電気抵抗の断面画像(当社のソフトの画面)
同じ高さのトロニックでは、中心は青(低い)でも赤(高い)でもない、黄から黄緑の中ほどの値で、低い値は測定点2〜3の間と9〜10の間の縁に出ています。電気抵抗の分布は樹種の型で違い、説明書は値そのものより、その樹種の健全な分布と比べるよう書いています(p.164〜165)。電気抵抗の画像は、上の表にすぐ当てはめず、その樹種の型を踏まえて読みます。
読み違えやすい場面
- 樹皮の近くと小さな欠陥: 米国の研究は、ピカスの断面画像は目で見た腐朽とおおむね合い、違うときは少なめに出て、差は平均で断面の5%ほど、樹皮の近くは画像の質が落ちると報告しています。論文は、検出できる最も小さい欠陥を5〜10cmほどとするメーカー側の見解も紹介しています(Gilbert & Smiley 2004)
- 腐朽の初期: 傷を付けて腐朽菌を接種した試験では、ある菌と樹種の組み合わせを除き、断面画像に腐朽が現れませんでした(Deflorio ほか 2008)。伐った木の切り口と断面画像を比べた当社の経験でも、空洞や進んだ腐朽はおおむね合いますが、腐朽の初期は画像に出にくいと感じています
- 入り皮・亀裂: 横切る向きの経路だけが遅くなり、傷みが大きめに出ることがあります(図6)
- 温度と含水: 説明書は、霜の後の音波の測定は比べられないとし、年をまたいだ比較では、音波は温度、電気抵抗は雨や乾燥の後の含水の影響を受けるとしています(p.58・179〜180)
- 樹種: 音の速さは樹種の間でも、同じ樹種の中でも違います。ソフトは木ごとに基準を合わせて計算します(p.10)。説明書は、樹種ごとの記述は限られたデータによるとしています(p.125)
伐った木の切り口と機器の結果を比べた研修会の様子は、診断した木を、その日のうちに伐る──樹木診断機器比較研修会に書いています。
外観とレジと突き合わせて、結論を出す
ピカスは、断面のどこが怪しいかを面で見る機器です。レジは、その線の上の材の固さを細かく確かめる機器です。ピカスを使った中国の研究は、33樹種147本を調べ、目視、音波の断面画像、穿孔抵抗の組み合わせが有効だとしています(Wu ほか 2018)。
当社がピカスの後にレジを足すのは、断面画像で腐朽が大きい方向、または健全な外周が薄い方向を、その線の上で確かめるときです。レジの結果の読み方はレジの波形の読み方で説明しています。
カルテや報告書には、異常の程度の数字だけでなく、どの方向に、どの高さで傷みが広がり、健全な外周がどれだけ残っているかを文で書きます。入り皮や開口部のように数字を大きく、あるいは小さく見せる理由があるときは、その理由も書き添えます。
当社の考え方
断面画像は、判断の材料の一つです。説明書自身が、断面画像だけで木を伐ってはならないとしています(p.9・125)。色の広がりの裏には、何百本もの経路の時間があり、その時間の質と向きを確かめてはじめて、色の意味が読めます。
当社が樹木診断でピカスの結果を読むときは、幹の形とデータの点検を確かめてから断面画像を読み、外観診断の所見と、必要に応じてトロニック・レジの結果を重ねて、残すための処置と安全のための処置の両方を検討します。数字の大きい木でも理由を確かめ、数字の小さい木でも外観の所見を見落とさないようにしています。
ピカスによる機器診断、診断結果の読み方、仕様書づくりについて、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
よくある質問(Q&A)
Q1. ピカスの断面画像で青い所は、空洞ですか?
A. 空洞とは限りません。青は音の伝わりが遅い所で、傷んだ材か空気を表します。メーカーの説明書は、青でも空洞とは限らず、色だけでは空洞・腐朽・亀裂を区別できないとしています。入り皮や亀裂で音が回り道をしても青くなるので、経路の向きや外観の所見と合わせて読みます。
Q2. ピカスの断面画像の緑は、何を表していますか?
A. 音の速さが中間の所で、説明書は、どちらとも決まらない所として傷みの種類に応じて読むよう書いています。茶と紫の間の緑の帯が広いときは、菌の侵入が考えられるともしています。当社はカルテの腐朽空洞率を紫・青に緑を加えて数え、迷うときはトロニックを重ねて確かめます。
Q3. 断面画像の異常の程度の数字は、どこから出ているのですか?
A. 音が届くまでの時間から計算した、たくさんの経路の速さから出ています。当社の11断面では、幹の中を通る経路のうち遅い経路の割合と、カルテの異常の程度がほぼ一直線に並びました。ただし10ポイント以上離れる断面もあるので、遅い経路がどこにあるかも合わせて見ます。
Q4. 断面画像に黄色の線が出たら、亀裂がありますか?
A. 亀裂の可能性を示す線ですが、亀裂とは限りません。説明書によると、線は2つの測定点の真ん中に引かれ、縁まで届く大きな傷みやセンサーの付け方の誤りでも出ることがあります。反対に、線が出なくても亀裂が無いとは限らないので、外観の所見やレジと合わせて確かめます。
Q5. ピカスとトロニックは、どう組み合わせて読みますか?
A. 説明書の表では、音波が速く電気抵抗が高ければ健全、音波が速く電気抵抗が低ければ腐朽の初期、音波が遅く電気抵抗が高ければ空洞・亀裂・止まった腐朽、音波が遅く電気抵抗が低ければ進んでいる腐朽とされています。当社は、音波で中間の色が広く出て腐朽の初期か迷うときにトロニックを重ねます。
Q6. ピカスの断面画像だけで、木を伐るかどうか決められますか?
A. 決めません。メーカーの説明書自身が、断面画像だけで木を伐ってはならないとしています。当社は、幹の形とデータの点検を確かめてから断面画像を読み、外観診断の所見、必要に応じてトロニックやレジの結果を重ね、残すための処置と安全のための処置の両方を検討して結論を出します。
出典・参考情報
IML Electronic GmbH「IML Tree Inspection Manual」v1.1(英語。ページは印字の番号。p.9・10・58・110〜112・125・126・128〜132・135〜137・150・164〜167・179〜180・182)。説明書の訳と要約は当社によります。
Gilbert, E. A. & Smiley, E. T. (2004) Picus Sonic Tomography for the Quantification of Decay in White Oak (Quercus alba) and Hickory (Carya spp.). Journal of Arboriculture 30(5): 277–281.
Deflorio, G., Fink, S. & Schwarze, F. W. M. R. (2008) Detection of incipient decay in tree stems with sonic tomography after wounding and fungal inoculation. Wood Science and Technology 42: 117–132.
Wang, X. & Allison, R. B. (2008) Decay detection in red oak trees using a combination of visual inspection, acoustic testing, and resistance microdrilling. Arboriculture & Urban Forestry 34(1): 1–4.
Wu, X., Li, G., Jiao, Z. & Wang, X. (2018) Reliability of acoustic tomography and ground-penetrating radar for tree decay detection. Applications in Plant Sciences 6(10): e01187.
当社の測定データ(2026年、ピカス3で測った6本・13断面)と、同じ木の当社のカルテ。図の数字は、当社が .pit のファイルの時間と測定点の位置から計算したもので、ソフトの計算とは方法が違います。速さの割合は、各断面の速い経路(上位5%の境)を1とした当社の計算です。記事中の画面は当社のソフトの画面で、現場名は写っていません。記事中のイラストと図は、株式会社トシ・ランドスケープが作成しました。
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※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。

































