昨年の竹垣作製に引き続き、
港区南麻布のお客様のマンションのバルコニーでの
茶庭作庭を行わせて頂きました。
港区南麻布のマンションのバルコニーで行った、茶庭の作庭の記録です。石材の選び方、マンションへの搬入と養生、石の据え付け、排水の工夫を順にご紹介し、茶庭(露地)の飛石や灯籠、甲州鞍馬石について、用語辞典や研究機関の資料をもとに書き添えます。
石材店で、お客様と一緒に石を選ぶ
調布の石材店の森田園さんへ
お客様とご一緒に訪ね、
石材を吟味しました。
- 鞍馬石
- 灯篭
- 鞍馬石
- 砂利
独特のサビ色の風合いが良い甲州鞍馬石と、
相性の良い伊勢砂利を用いました。
灯篭は国産の織部灯篭になります。
甲州鞍馬石の「さび」
鞍馬石は、もとは京都の鞍馬寺の下を流れる鞍馬川のころび石が使われてきた石で、鞍馬石の蹲踞(つくばい)は茶人の間で特に好まれてきたとされています。工業技術院地質調査所の地質ニュースの記事によると、この石は鉱物の磁硫鉄鉱を含み、それが風化で酸化して褐色の酸化鉄に変わることで、錆びたような色の「さび」が出ます。同じ記事は、鞍馬石と同じような石が京都以外でも採れる例として甲州鞍馬石を挙げ、山梨県の甲府盆地の徳和花崗閃緑岩体の一部から得られるとしています。
茶庭(露地)の飛石と織部灯籠
茶庭は露地(ろじ)とも呼ばれ、茶室に入るために通る小さな庭です。日本建築・美術の用語辞典 JAANUS によると、江戸時代の典型的な露地は、飛石・灯籠・蹲踞・中門と常緑の植栽で構成され、華やかな花は避けられました。飛石は、千利休が雨のあとにぬかるむ露地に使ったのが始まりとされ、よく使われる石として鞍馬石が挙げられています。織部灯籠は、園路を照らす小さな灯籠で、台座を持たずに地面に直接立てる形です。
| 露地のもの | JAANUS にあること | このバルコニーの茶庭 |
|---|---|---|
| 飛石 | 雨のあとのぬかるみを歩くための石、鞍馬石がよく使われる | 甲州鞍馬石 |
| 灯籠 | 織部灯籠は園路を照らす小さな灯籠で、台座がない | 国産の織部灯篭 |
| 垣 | 露地は垣や中門で区切られる | 前年に設置した竹垣 |
出典: JAANUS(日本建築・美術用語辞典)「roji 露地」「chaniwa 茶庭」「tobiishi 飛石」「oribe-dourou 織部灯籠」、石原舜三「さび石,とくに鞍馬石について」地質ニュース443号 p.42〜49(工業技術院地質調査所、1991年7月)
マンションのバルコニーへの搬入と養生
マンションのバルコニーなどへの搬入の場合には、
お部屋内だけでなく、エレベーターや通路などの養生に注意を払います。
今回の様に石など重量物がある場合には、
カーペットの沈み込みや、床材を傷つけないように、
養生シートの上にさらにコンパネを引いて養生を行います。

マンション内 廊下養生

図: 石などの重量物を運び入れるときの養生の重ね方(この記事の方法を図にしたもの。厚さは実際の比率ではありません)
バルコニーに石を置くときは、床が支えられる重さも気にかかります。建築基準法施行令 第85条は、建物の床の積載荷重を実況に応じて計算するよう定め、住宅の居室の床を計算するときの数値を1平方メートル当たり1,800N(ニュートン)としています。バルコニーはこの住宅の居室の数値によるとされています。石の大きさと数は、建物の条件に合わせて決めることになります。
国土交通省のマンション標準管理規約(コメント)も、バルコニーに物品を固定する工事について、避難上の支障がないか、防水層や排水に悪影響がないかを確かめるという考え方を示しています。マンションのバルコニーで作庭するときは、管理規約や使用細則を確かめておくことが欠かせません。
図面に沿って石を据える
搬入完了後、
まずは図面に沿って石を仮置きしていき、
全体のバランス・配置を確認します。
石の高さ(レベル)も墨出し器で確認しながら、
モルタル、石用ボンドで固定していきます。
- 作庭工事 石工事 茶庭
- 作庭工事 石工事 茶庭
- 作庭工事 石工事 茶庭
- 作庭工事 石工事 茶庭
- 作庭工事 石工事 茶庭
排水管と排水溝を、天然の素材で目立たせない
人工的な雰囲気が少しでも緩和する為、
排水管には、晒竹で覆い、
機能性を損なわずに天然の素材でまとめることができました。
- 作庭工事 石工事 茶庭
- 作庭工事 石工事 茶庭
排水溝に砂利が流れてしまわないように、
金属製のアングルでの固定、フィルター代わりの市販の鉢底ネットシート、
見た目の人工感を無くすために、伊勢ゴロタ石を置きました。
バルコニーの排水溝は雨水を流すための設備で、砂利が流れ込んで詰まると排水の妨げになります。この茶庭では、金属製のアングルで囲いをつくって固定し、鉢底ネットシートをフィルターの代わりにして砂利の流れ込みを防ぎ、その上に伊勢ゴロタ石を置いて見た目を整えました。
完成した茶庭
お客様に大変ご満足いただけ私たち施工スタッフも励みになります。
次は鉢植えの植栽へ
第3段は、鉢植えでの植栽を予定しています。
町田市の榎本園さんでこの茶庭に合う樹木の打ち合わせを進めています。
引き続きよろしくお願い致します。
ありがとうございました。
まとめ
前年の竹垣に続いて、港区南麻布のマンションのバルコニーに茶庭をつくりました。石材店でお客様と一緒に選んだ甲州鞍馬石を飛石にし、伊勢砂利と国産の織部灯篭を合わせています。搬入では廊下やエレベーターの養生に注意を払い、石は墨出し器で高さを確かめながら据えました。排水管は晒竹で覆い、排水溝には砂利止めを施して、機能を損なわずに天然の素材でまとめています。
株式会社トシ・ランドスケープ
この茶庭に使った材料
■甲州鞍馬石
■伊勢砂利 3分
■伊勢ゴロタ石 2寸
■織部灯篭 国産
■排水管カバー 晒竹 太さ:七分
■井戸蓋 14本締め唐竹
■銅線
■黒棕櫚縄
■50mm金属アングル
よくある質問
Q1. 茶庭(露地)とは、どんな庭ですか。
茶室に入るために通る小さな庭です。江戸時代の典型的な露地は、飛石・灯籠・蹲踞・中門と常緑の植栽で構成されていたとされています(JAANUS)。
Q2. 鞍馬石の「さび」とは何ですか。
石に含まれる磁硫鉄鉱が風化で酸化し、褐色の酸化鉄に変わって出る、錆びたような色の風合いです(地質ニュース443号)。
Q3. マンションのバルコニーに石を運び入れるときは、どんな養生をしますか。
お部屋の中だけでなく、エレベーターや通路も養生します。石のような重量物があるときは、カーペットの沈み込みや床材の傷を防ぐため、養生シートの上にさらにコンパネを敷きます。
出典・参考情報
・JAANUS(日本建築・美術用語辞典)「roji 露地」「chaniwa 茶庭」「tobiishi 飛石」「oribe-dourou 織部灯籠」
・石原舜三「さび石,とくに鞍馬石について」地質ニュース443号 p.42〜49(工業技術院地質調査所、1991年7月)
・建築基準法施行令 第85条(e-Gov 法令検索)
・国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント」別添2「区分所有者が行う工事に対する制限の考え方」
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