3年前から樹木医がお庭内で場所を変えながら継続的に土壌改良と施肥(肥料やり)を行っています。
練馬区の個人邸のお庭で続けている、樹木医による土壌改良の記録です。「割竹挿入法」と「水圧穿孔法」の2つの方法と、ごま色斑点病で弱っていたカナメモチのことを、国や東京都の資料とあわせてご紹介します。
ごま色斑点病で弱っていたカナメモチ
以前までゴマ色斑点病で衰弱傾向にあったカナメモチも、土壌改良と継続的な殺菌剤散布を続け、元気になりました。
ごま色斑点病は、カビ(糸状菌)の一種によって起こる葉の病気で、カナメモチやレッドロビン(ベニカナメモチ)、シャリンバイ、カリン、ビワなど、バラ科ナシ亜科の樹木に出ます。その年に開いた新しい葉に紅色の小さな斑点がたくさん出て、やがてつながって灰褐色の病斑になり、病気の葉が落ちて葉の量が減ると、樹勢が衰えていきます。前の年からの古い葉には出ません。
病斑の中央にできる黒い分生子層は、落ちた葉の上にも残り、翌年の春に胞子が飛んで新しい葉に感染します。長野県林業総合センターの技術情報は、薬剤による防除の目的は健全な部分への感染を防ぐことで、斑点の出た葉を治す効果は期待できないとしています。病気の落ち葉を集めて片付けることと、発病の初期に散布して新しい葉を守ることを組み合わせるのは、このためです。

落ち葉の回収と散布の時期の考え方は、マンションの生垣の事例「レッドロビン(ベニカナメモチ)の「ごま色斑点病」対策」でくわしくご説明しています。
樹木医が土壌改良をする理由──締め固まった土と根
樹木は衰弱が進行し過ぎてしまうと適切な処置を行なっても効果が薄くなってしまう事も多い為、迅速な状況把握と対応が不可欠です。
葉の病気だけでなく、根の張る土の状態も樹勢を左右します。国土技術政策総合研究所(国総研)の「景観重要樹木の保全対策の手引き」は、堅く締まった土では根が伸びにくく、踏み固められた土は水や空気が通りにくくなるとしています。東京都建設局の「街路樹診断等マニュアル」も、乾燥や踏圧などで締め固められて生じた通気性や透水性の障害を改善するため、堆肥や土壌改良資材を入れて耕すことや、土壌潅注器で液肥を土に混ぜることを、土壌改良の処置として挙げています。
ただ、すでに木が植わっている場所では、根元の近くを深く耕すと根を切ってしまいます。根を残したまま、穴をあけた所から土をほぐしていくのが、この回に行った2つの方法です。
割竹挿入法(割竹挿入縦穴式土壌改良法)の手順
- 割竹挿入土壌改良法 樹木医 樹勢回復 土壌改良 植栽基盤
- 割竹挿入土壌改良法 樹木医 樹勢回復 土壌改良 植栽基盤
- 割竹挿入土壌改良法 樹木医 樹勢回復 土壌改良 植栽基盤 割竹
穴を掘って半割に加工した竹を入れて土壌改良資材を投入するシンプルな土壌改良ですが、
締め固まった土が柔らかくなるとともに養分や透水性などの改良効果があります。
2〜3年もすると、穴の中に差した竹は朽ちてそのまま土に戻ります。
その為、毎年少しずつ場所を変えながら施工しています。

ダブルスコップで60〜80cm程の深さまで掘ります。
竹を縦に割り、節を取り除きシュロ縄で再度竹を結び直します。
掘った穴に竹を差し込み、周囲に土壌改良資材や肥料を入れます。
- 割竹挿入土壌改良法 樹木医 樹勢回復 土壌改良 植栽基盤 完熟たい肥 炭 パーライト
- 割竹挿入土壌改良法 樹木医 樹勢回復 土壌改良 植栽基盤 完熟たい肥 炭 パーライト
- 割竹挿入土壌改良法 樹木医 樹勢回復 土壌改良 植栽基盤 完熟たい肥 炭 パーライト
完熟堆肥、炭、パーライト(黒曜石、真珠岩)、化成肥料
などを配合して土と混ぜて戻していきます。
その現場での土壌環境に合わせて資材の配合調整を行なっております。
割竹挿入縦穴式土壌改良法は、NPO法人樹木生態研究会の堀大才氏が考えた方法です。国総研の手引きも、ダブルスコップで掘った縦穴への割竹の挿入を、人の手でできる簡易な土壌改良の一つに挙げ、例として、直径20cm程度・深さ1m程度の縦穴に、節を除いて組み合わせた長さ1m程度の割竹を挿し、周りを完熟堆肥で埋め戻す形を示しています。この現場の深さ(60〜80cm程)や資材は、手引きの例と同じではありません。なお、当社代表の中村雅俊は、樹木生態研究会の会員です。
この現場で配合した資材が、東京都建設局のマニュアルの「土壌改良材の種類」の表でどの土の問題に印が付いているかを並べると、次のとおりです。
| 資材 | マニュアルの表で印のある土の問題 |
|---|---|
| 真珠岩パーライト | 過乾(特に有効)、団結(有効) |
| 黒曜石パーライト | 過湿(特に有効)、団結(有効) |
| 木炭・再生炭 | 過乾(有効)、過湿(有効)、団結(やや効果あり) |
| 堆肥(表では種類ごとに分かれる) | 多くの堆肥で養分不足・保肥力不足に印(有効か特に有効) |
出典: 東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度)p.81 表Ⅳ-1・5「土壌改良材の種類」。化成肥料は肥料なので、この表には入っていません。
水圧穿孔法──スコップで掘りにくい場所に
合わせてスコップでは掘りにくい箇所については、
背負式動噴とポアノズルを使った「水圧穿孔法」も実施しました。
- 水圧穿孔法 土壌改良 液肥 背負式動噴 丸山製作所 霧王
- 水圧穿孔法 土壌改良 液肥 背負式動噴 丸山製作所 霧王
- 水圧穿孔法 液肥 土壌改良 樹木医
- 水圧穿孔法 液肥 土壌改良 樹木医
水圧穿孔法は、背負式の動力噴霧機から送った水を、土に差し込んだノズルの先から噴き出させて、固い土に細い孔をあけてほぐす方法です。当社の土壌調査のページでは、ノズルを差し込んで先端から十字に噴射し、80cmほどの深さまで注入できると案内しています。

この方法も、堀大才氏が広めたものです。堀氏は、小型の農薬散布用の機械の弱い水圧でも硬い土に穴をあけられ、水圧が強くないので根を傷めることはないだろう、と考えたと書いています。根への影響を測った研究ではなく、考案した人の見込みとしての記述です。
1本の木の根元での使い分けは、次の図のようになります。

割竹挿入法と水圧穿孔法の違い
この記事の現場で行った2つの方法を並べると、次のとおりです。
| 項目 | 割竹挿入法 | 水圧穿孔法 |
|---|---|---|
| 孔のあけ方 | ダブルスコップで60〜80cm程の縦穴を掘る | 土に差したノズルの先から水を噴き出させる |
| 穴に入れるもの | 割竹と、完熟堆肥・炭・パーライト・化成肥料などを土と混ぜたもの | 水(背負式動噴で送る) |
| 向く所 | スコップで縦穴を掘れる所 | 根が張ってスコップで掘りにくい所 |
| 続け方 | 竹は2〜3年で朽ちるので、毎年少しずつ場所を変える | 割竹と組み合わせて、掘りにくい所を補う |
出典: この記事の本文と、当社の土壌調査のページ。
土壌改良の限界と、続けて見ること
土は一度ほぐしても、また固まります。国総研の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、植栽地の多くは植えた後に次第に固結し、マサ土や粘土は耕しても再び固結する性質があるとしています。このお庭で3年続けて、場所を変えながら施工しているのも、1回で終わる処置ではないからです。
ご依頼いただきありがとうございました。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくある質問
Q1. 割竹挿入法とは、どのような土壌改良ですか。
ダブルスコップで掘った縦穴に、縦に割って節を除いた竹を挿し、周りに堆肥などの土壌改良資材を入れて埋め戻す方法です。この記事の現場では60〜80cm程の深さまで掘り、完熟堆肥、炭、パーライト、化成肥料などを土と混ぜて戻しました。
Q2. 水圧穿孔法とは、どのような方法ですか。
背負式の動力噴霧機から送った水を、土に差し込んだノズルの先から噴き出させて、固い土に孔をあけてほぐす方法です。根が張ってスコップで掘りにくい場所で、割竹挿入法と組み合わせて行っています。
Q3. 挿した竹は、どのくらいで朽ちますか。
2〜3年もすると、穴の中に差した竹は朽ちてそのまま土に戻ります。そのため、毎年少しずつ場所を変えながら施工しています。
Q4. ごま色斑点病の斑点は、殺菌剤で消えますか。
出てしまった斑点は消えません。長野県林業総合センターの技術情報は、薬剤による防除の目的を、健全な部分への感染を防ぐことだとしています。落ち葉を片付け、発病の初期に散布して新しい葉を守ります。
出典・参考情報
・国土技術政策総合研究所「景観重要樹木の保全対策の手引き」(国総研資料第565号、2010年1月)p.102 表3-12、p.128 表3-19、p.215 表5-11
・国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」(国総研資料第1059号、2019年2月)p.1-58
・東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度)p.69 表Ⅳ-1・2、p.81 表Ⅳ-1・5
・長野県林業総合センター「ミニ技術情報 No.47 ごま色斑点病」(2010年)
・日本造園組合連合会「ベニカナメモチとごま色斑点病」(造園連新聞 960号、平成17年)
・堀大才「土壌改良の考え方と基本」(NPO法人樹木生態研究会、2025年10月1日掲載)
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