杉板の表面を焼いて炭化層をつくった「焼杉板(やきすぎいた)」は、日本の伝統的な外壁材です。
先日、タイ・プーケットの別荘建築の現場で、北海道帯広の宮大工、株式会社おかげさま様が焼杉板を施工されました。この素材の美しさと合理性に、あらためて感銘を受けました。今回は、樹木医の視点から、焼杉板の性質と、壁際の植栽との関係についてお話しします。
1. 焼杉板の炭化層は何を守るのか
焼杉とは、杉板の表面を焼いて炭化層をつくる伝統的な技法です。この炭化層に何が期待できるのかを、言い伝えと研究を分けて見ていきます。研究の報告をさらに詳しく整理した記事は『焼杉板の外壁と植栽の相性 日本の美意識』です。
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腐朽への強さ 焼杉は腐りにくく、炭化した表層が雨水を弾くと言い伝えられてきました。東京理科大学の研究室が2024年に公開した研究報告では、腐朽試験で無垢材に比べて焼杉のほうが腐朽に強い結果が出ています。ただ同じ報告は、焼杉の耐久性を実際に確かめた論文はごくわずかだとも書いています。
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シロアリへの強さ 焼杉は虫がつきにくいと言い伝えられてきました。ただ、森林総合研究所の試験では、スギの心材そのものが比較的シロアリに強い結果が出ています。虫への強さは、炭化層だけでなく、スギという木の性質から来ている部分もあると考えられます。焼杉の壁が長持ちすることは、壁際の植栽の環境を長く安定させることにもつながると考えています。
- 焼杉の外壁が続く町並み
- 焼杉板の表面
- 現場で焼杉板を並べる作業
2. 「経年劣化」ではなく「経年優化」する美しさ
一般的な塗装の外壁は、紫外線で塗膜が傷み、定期的な塗り直しが必要です。焼杉の黒は塗膜ではなく炭の色で、東京理科大学の研究室の試験では、炭化層の厚い焼杉ほど紫外線による劣化に強い結果が出ています。
時間とともに色味は落ち着きを増し、風合いが深まっていく。 その姿は、古びてダメになる「経年劣化」ではなく、時を重ねて価値が増す「経年優化(けいねんゆうか)」として、私たちの目に美しく映ります。この移ろいが、焼杉の壁が日本の町並みになじむ理由の一つだと思います。

焼杉板 植栽 景観 陰影
焼杉の板塀とモミジ
3. 樹木医が注目する「植栽と焼杉」の相性
私たちが特に注目しているのが、焼杉板が作り出す「光の環境」と「植物の生育」の関係です。
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照り返しは少なく、熱はたまる 焼杉板は黒くマットな質感のため光の反射が少なく、白い壁のような強い照り返しは起きにくくなります。照り返しによる葉焼けは起きにくいと、現場では感じています。一方で、黒い面は日射を吸って温まります。東京理科大学の研究室の測定では、外気温が10℃前後の冬でも、日の当たる焼杉の表面は40℃ほどまで上がっていました。壁のすぐ近くの植栽では、この熱で葉や土が乾きやすくなることも考えに入れておく必要があります。
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壁に映る枝葉の影 光を返さない壁には、枝葉の影がやわらかく滲むように映ります。その景色に、私は落ち着きを感じます。

焼杉板 植栽 景観 陰影
焼杉の壁際の植栽
4. 機能と美の両面から「風景」を支える
焼杉板は、見た目の美しさと、外壁として家を守るための工夫の両方を備えた素材です。
私たちが考える植栽管理とは、単に植物だけを手入れすることではありません。 外壁や舗装、建築素材の特性を理解したうえで、植栽が健やかに、長くそこにあり続けられる環境を整えることです。
時間とともに成熟していく風景を、機能と美の両面から支え続けることが、私たち株式会社トシ・ランドスケープの姿勢です。

焼杉板 植栽 景観 陰影
焼杉の壁に映る枝葉の影
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
出典・参考情報
・東京理科大学 今本研究室 中嶋亮介「焼杉の特性と劣化に及ぼす環境要因に関する研究」(2024年 研究パネル)
・森林総合研究所 所報No.12「木質材料の耐蟻性の評価と改良」(2002年)
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