コブラ・ツリーケーブリングシステムは、ドイツで開発された樹脂製のロープで、樹木の幹や枝どうしを樹冠の中で結び、枝折れや落枝の危険を下げる工法です。部材の役割、3つの使い分け、設置の目安と当社の施工例を、樹木医が販売元のマニュアルと国の手引きをもとに解説します。
当社では、目黒区のマンションのスダジイ(2022年)や御神木のスギなどで、このコブラを使ったケーブリングを行ってきました。ケーブリングとはどんな工法で、普通の支柱と何が違うのかを、一度まとめておきたいと思います。

樹上でケーブリングを取り付ける作業。ツリークライミングで木に登り、二又の幹どうしをロープでつなぐ
ケーブリングとは──地上に支柱を立てず、木の上で支える
庭や公園の木を支える支柱というと、丸太や竹を地面に立てて幹に結ぶ鳥居型や八ツ掛を思い浮かべる方が多いと思います(日本の樹木支柱の種類と歴史)。これらは主に、植えたばかりの木が根づくまでを支えるためのものです。
一方のケーブリングは、大きく育った木の樹冠の中で、幹と幹、幹と枝をロープでつなぐ方法です。地上には何も立たないので、通路や駐車場の上に枝を広げた木でも使えます。
国土交通省の「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」(令和8年3月30日改訂)は、倒伏や落枝の危険が高い木について、すぐに本格的な対策が取れない場合の措置として「樹木を仮支柱やケーブリングで支持」することを挙げています。国土技術政策総合研究所の「街路樹の倒伏対策の手引 第2版」も、幹や枝の不完全な結合や亀裂のような小さな弱点がある木について、幹や枝をつなぐことで危険性を下げられる、としています。
ただし同じ手引きは、ケーブリングは弱点を根本から解消するものではなく、将来の剪定や伐採の検討が要る、とはっきり書いています。私もここは大事な所だと考えています。ケーブリングは木を治す工法ではありません。木を残しながら、枝が折れたり落ちたりする危険を下げるための工法です。
コブラ・ツリーケーブリングシステムとは──5つの部材
コブラは、ドイツの pbs 社が製造し、日本林業肥料株式会社が輸入、レイ・ソーラデザイン株式会社が販売しているケーブリングの資材です。ドイツでは1993年から使われてきたシステムで、当社がドイツの専門店を訪ねたときの様子はドイツ・フライジングでのアーボリスト視察の記事にまとめています。
システムは、次の5つの部材でできています。

コブラの部材。左上からコブラロープ、インサート板、左下からコブラホース、エンドキャップ、ショックアブソーバー
コブラロープ
ポリプロピレン製の、中が空洞になった編みロープです。この中空の構造がコブラの要で、ロープの中にほかの部材を差し込んだり、ロープの端を自分のロープの中に通して留めたりできます。そのため、ボルトや金具を一切使いません。
インサート板
幹や枝に巻く部分のロープの中に差し込む、細長い樹脂の板です。ロープが木に当たる面を広げて、樹皮や幹にかかる圧力を分散します。
コブラホース
幹や枝に当たる部分のロープの外側にかぶせる、耐摩耗の筒です。風で木が揺れるたびにロープがこすれて傷むのを防ぎます。
ショックアブソーバー(緩衝材)
ゴム製の紡錘形の部品で、ロープの中に差し込んで使います。突風のように一瞬で大きな力がかかったとき、その力をやわらげてロープの断裂を防ぎます。
エンドキャップ
切ったロープの端にかぶせ、バーナーで熱を当てて縮ませる筒です。ロープの端がほつれず、ロープの中に通しやすくなります。年ごとに色が変わり、施工した年がひと目で分かるようになっています。

当社で使う8tの部材。袋の中の黄色いエンドキャップには「cobra 8t 2018」と施工の年が入っている
ロープの太さと強さは、次の5つの規格があります(販売元のマニュアル 2025年版の諸元。引張強度はショックアブソーバーかループを使ったときのメーカー公表値)。
| 規格 | 直径 | 素材 | 初期引張強度 | アブソーバー・ループ使用時 |
|---|---|---|---|---|
| ミニ | 8mm | ポリプロピレン | 600daN | 500daN |
| 2t | 14mm | ポリプロピレン | 3,400daN | 3,030daN |
| 4t | 18mm | ポリプロピレン | 5,340daN | 4,800daN |
| 8t | 28mm | ポリプロピレン | 9,860daN | 10,000daN |
| ウルトラスタティック | 10mm | 超高強力ポリエチレン繊維 | 7,640daN | 7,000daN |
※ 2t・4t・8t・ウルトラスタティックの初期引張強度は JIS L 2706 準拠。daN(デカニュートン)は約1kgの重さにかかる力で、1,000daN がおよそ1t分です。マニュアルが示す適用年数は8年以上です。
金属ワイヤーと比べて──軽く、食い込まず、調整できる
ケーブリングには、以前から金属のワイヤーも使われてきました。コブラとの違いは、大きく3つあります。
1つ目は重さです。カタログの比較では、直径12mmの被覆ワイヤーロープが100mあたり38.3kgなのに対し、同じくらいの強さのコブラロープ(4t)は12.0kgです。ケーブリングは、ロープを担いで木に登り、樹上で取り付ける作業です。持ち上げる重さが3分の1ほどになり、落としたときの危険も小さくなることは、樹上で働く者にとって軽くない差です。取り付けに使う道具も、ハサミとメジャー、バーナー、ビニールテープくらいです。
2つ目は、木への食い込みです。金属のワイヤーは、取り付けた後に締め付けを調整しにくく、木が太るうちに樹皮へ食い込むことがあります。国総研の手引きも、ケーブリングの結束材が緩んだまま放置された場合や、保護材が木に食い込んだ場合を、腐朽や病虫害につながる原因として挙げています。コブラは、ロープの端に作る小さな輪(余剰輪)で、取り付けた後も締め付けを調整できます。

左:幹に巻いた金属ワイヤーが樹皮に食い込み、周りが盛り上がった状態。右:コブラはホースをかぶせたロープを巻き、金具を使わない
3つ目は、金具を使わないことです。古い部材を付け替えるときの処分がしやすく、ポリプロピレンはリサイクルもできます。金属ではないので錆びることもありません。
3つの使い分け──ダイナミック、スタティック、重量サポート
コブラのマニュアルでは、ケーブリングを目的によって3つに分けています。どれを選ぶかは、その木のどこに、どんな弱点があるかで決まります。
ダイナミック(伸縮)ケーブリング──枝折れ・倒木を防ぐ
強風で枝や幹が大きく揺れて折れるのを防ぐための、もっとも基本の使い方です。ロープの中にショックアブソーバーを入れ、揺れを止めずに、行き過ぎた揺れと突風の衝撃だけを受け止めます。
取り付ける高さは、守りたい枝の付け根から、枝の長さの3分の2の所です。ここは風の力がかかる樹冠の中心に近く、てこの力が小さく、ロープにかかる力も少なくて済みます。これより低い位置に付けるときは、さらに大きな力を見込まなければなりません。マニュアルは季節による張り方の違いも示していて、夏は張りすぎず緩めすぎず、冬はわずかに緩めて付けると、葉が茂った夏にずっと力がかかったままの状態を避けられる、としています。

ダイナミックケーブリング。2本の幹を、枝の長さのおよそ3分の2の高さで結び、ロープの中にショックアブソーバーを入れる
スタティック(低伸縮)ケーブリング──亀裂の広がりを抑える
二又の分かれ目にすでに亀裂が入っている木で、その亀裂が広がるのを抑えるための使い方です。ロープが伸びると亀裂が開いてしまうので、ショックアブソーバーは入れません。設置の高さは、亀裂のある所から幹・枝の長さの3分の2の位置です。
亀裂が大きい場合は、伸びがほとんど無いウルトラスタティックというロープを、専用のループと組み合わせて使うことを検討します。ロープの規格も、ダイナミックより大きな強度を見込んで選びます。

スタティックケーブリング。又の亀裂(点線の円)から3分の2の高さで結ぶ。ショックアブソーバーは入れない
重量サポート(荷重分散)ケーブリング──折れた枝を落とさない
付け根に傷みのある大枝が、万一折れても下に落ちないよう、上の太い幹から吊っておく使い方です。ロープはできるだけ垂直に近く、緩みなく張ります。こうしておくと、枝が折れても落ちる勢いが付く前にロープに吊られます。
大事なのは、吊る側の幹の強さです。落ちる枝の衝撃は、ロープを通して吊っている側の幹に伝わるので、その幹がその重さに耐えられることを確かめてから付けます。歩道や駐車場、ベンチの上に張り出した枝で検討することが多い使い方です。

重量サポートケーブリング。付け根に傷み(点線の円)のある大枝を、上の幹からほぼ垂直に吊る
国総研の手引きは、支柱やケーブリングの位置が不適切だと、かえって幹折れや枝折れにつながることがあるため、支持が確実にできることと、設置する位置の近くに腐朽部が無いことを確かめるよう求めています。どの使い分けでも、付ける前の樹木診断が欠かせない理由です。
取り付け方と設置の目安
コブラの取り付けは、地上でロープを準備してから木に登り、樹上で仕上げます。マニュアルの手順を、要点だけまとめます。
- ロープの端から90cm以上(8tは125cm以上)の所に、ロープの網目を開いてインサート板を差し込む
- 幹に当たる長さに切ったコブラホースを、インサート板を入れた部分にかぶせる
- 幹に巻き、エンドキャップで処理した端をロープの元に差し込む。ロープとロープの角度は45度以下にする。幹との接点から差し込む所までを、幹の直径の1.2倍にするとおよそ45度になる
- ロープの中を通して約20cm先(8tは約50cm)から引き出し、余剰輪を作って再び差し込み、約10cm先(8tは約15cm)からエンドキャップが見えるまで引き出す
- 反対側との間の適当な位置に、ショックアブソーバーを差し込む
- 反対側も同じように取り付ける

幹への取り付け部。ホースをかぶせたロープを巻き、45度以下の角度で1本にまとめる。余剰輪で締め付けを調整できる

組み立てを終えたダイナミックケーブリング1本の全体。両端の輪で幹を巻き、中央にショックアブソーバーが入る
マニュアルは注意点として、ロープが枝やほかのロープに触れると破断の原因になるので、必要なら剪定してから付けること、ロープどうしをつないで使わないことも挙げています。ロープを足りない長さでつなぐより、余裕をもった長さで付けるのが基本です。
規格の選び方は、守りたい枝・幹の直径が目安になります。
| 規格 | ダイナミック(枝折れ防止) | スタティック(亀裂の広がり抑制・落枝防止) |
|---|---|---|
| ミニ | 若木・小高木・新植の樹木・果樹など | |
| 2t | 直径40cmまで | 直径30cmまで |
| 4t | 直径60cmまで | 直径40cmまで |
| 8t | 直径80cmまで | 直径60cmまで(ダブルで80cmまで) |
※ 販売元のマニュアル(2025年版)の「設置の目安」。メーカー推奨の適用範囲です。
結び方は、2本を結ぶ単純な形のほか、3本以上の幹を三角形・四角形・輪の形につなぐ方法があります。どの形にするかは、幹の本数と並び方を見て決めます。

設置例(真上から見た図)。左上から単純接続、トライアングル、左下からスクエアー、リング
当社の施工から──スダジイ、御神木のスギ、コブラ以外の資材
目黒区のマンションのスダジイ(2022年)
マンションの植栽の高木スダジイです。隣の敷地で建物の工事があり、敷地側に伸びていた根が切られることになったため、この木をそのまま残せるかを診断していました。診断にもとづいて、樹冠を小さくする軽減剪定と、8tのコブラによるケーブリングで支えることにしました(高木樹木へのケーブリング支柱 東京都目黒区)。

地上で、ロープにかぶせるコブラホースとインサート板の長さを合わせる

樹上で、コブラロープの中にショックアブソーバーを差し込む
御神木のスギ
樹齢1000年を超えるといわれ、樹高40mを超える御神木のスギに、ケーブリングと枯れ枝の除去を行いました。若手の職人に、樹木医と一緒に実際の御神木で施工する経験を積んでもらう機会にもなりました(御神木杉 樹木医管理業務)。

御神木のスギの根元で、ケーブリングのロープを扱う
コブラ以外の資材──モンキーテールなど
ケーブリングの資材は、コブラだけではありません。当社では、モンキーテール(Monkey Tail)という、同じくダイナミックケーブリングに使う別の製品も使っています。2019年10月に都内のイチョウで行ったケーブリングは、このモンキーテールです。製品の説明動画は、高木・特殊伐採&ケーブリングのページで、コブラの動画と並べて紹介しています。

都内のイチョウの樹上で、モンキーテールのロープを取り付けているところ(2019年10月)

同じイチョウの樹上。右の幹に巻いた黒いロープがモンキーテール(2019年10月)
また、2023年に行った区の保存樹木のイチョウでは、樹木医3名がロープワークで登って行った高所外観診断の結果をもとに、強化ポリエステル製のロープを使いました(保存樹木イチョウ 樹木医・ケーブリング支柱施工)。ロープの種類によって強さや伸び方が違うので、木と部位に合わせて使い分けています。
付けた後の点検と、付け替え
ケーブリングは、付けたら終わりではありません。国総研の手引きは、成長した木に付けた支柱やケーブリングについて、材の欠損や緩み、固定した部位への食い込みがないかを定期的に確かめ、調整するよう求めています。
点検では、地上から双眼鏡で、ロープの緩みや張りすぎ、ホースのずれ、ロープが枝に触れていないか、取り付け部の近くに新しい傷や腐朽が出ていないかを見ます。気になる所があれば木に登って確かめます。エンドキャップの色と年の表示で、いつ付けたロープかもすぐに分かります。マニュアルが示す適用年数(8年以上)も、付け替えを考える目安になります。

地上から双眼鏡で、取り付け部(点線の円)のロープの緩みやホースのずれを確かめる
そして、ケーブリングを付けた木も、木そのものの状態は変わっていきます。手引きにあるとおり、ケーブリングは弱点を消すものではないので、点検のたびに、剪定で樹冠を軽くするか、このまま支え続けるか、いずれ更新するかを考え直します。残したい木を、安全を確かめながら残していく。そのための道具のひとつが、ケーブリングだと考えています。
当社では、樹木診断で弱点の場所と程度を確かめたうえで、高木・特殊伐採&ケーブリングの作業として、ツリークライミングで樹上に入り、ケーブリングの取り付けと点検を行っています。マンションの植栽、寺社の御神木、区の保存樹木など、残したい木の支え方でお困りのことがあれば、お問い合わせからご相談ください。
よくある質問(Q&A)
Q1. ケーブリングとは何ですか?
A. 大きく育った樹木の樹冠の中で、幹と幹、幹と枝をロープでつないで支える方法です。地面に支柱を立てないので、通路や駐車場の上に枝を広げた木でも使えます。強風による枝折れや倒木、亀裂の広がり、折れた枝の落下を防ぐ目的で使います。
Q2. コブラ・ツリーケーブリングシステムの特徴は?
A. ドイツで開発された、ポリプロピレン製の中空のロープを使うシステムです。ボルトや金具を使わず、ロープの中に部材を差し込み、端をロープの中に通して留めます。中に入れるゴムのショックアブソーバーが突風の衝撃をやわらげ、余剰輪で取り付けた後も締め付けを調整できます。
Q3. 金属ワイヤーのケーブリングとの違いは?
A. 軽さと、木への食い込みにくさが違います。カタログの比較では、直径12mmの被覆ワイヤーロープが100mあたり38.3kg、同じくらいの強さのコブラロープ(4t)は12.0kgです。金属のワイヤーは取り付け後の調整が難しく樹皮に食い込むことがありますが、コブラは余剰輪で調整できます。
Q4. ケーブリングをすれば、弱った木でも安全になりますか?
A. ケーブリングは危険を下げる方法で、弱点そのものを治すものではありません。国土技術政策総合研究所の手引きも、将来の剪定や伐採の検討が必要としています。付ける前に樹木診断で弱点の場所と程度を確かめ、付けた後も緩みや食い込みを定期的に点検することが前提です。
Q5. ケーブリングはどのくらいもちますか?
A. 販売元のマニュアルでは、コブラロープの適用年数は8年以上とされています。ただし木の成長や風の当たり方で状態は変わるため、定期的に点検し、緩み・すれ・食い込みがあれば調整や付け替えを行います。エンドキャップの色と年の表示で、付けた年が分かります。
出典・参考情報
- レイ・ソーラデザイン株式会社「コブラ ツリーケーブリング システム」マニュアル(2025年版。販売元のオンラインストア コブラツリーケーブリングシステムのページからダウンロード)。組立て方法 p.2〜3、ケーブリングの種類 p.4、設置例 p.5、設置の目安と諸元 p.7
- 樹木サポート協会「コブラツリーケーブリングシステム 樹脂製樹木サポートシステム」カタログ(2019年6月)。部材の説明、特長、重さの比較
- 国土交通省「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」(平成29年9月、令和8年3月30日改訂)p.14
- 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引 第2版」(国総研資料 第1059号、2019年2月)第3章 倒伏・落枝に配慮した維持管理方法 Ⅱ/1-87、第5章 異状又は兆候に対する改善的措置 Ⅱ/1-123〜124
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株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊



























