霊木のケヤキを診断させていただいた際、許可をいただき、ドローンを使って樹冠を上空から確認しました。樹高20m弱のケヤキの頂部に、太い枝を切った痕から腐朽と枯れが進んでいる様子を確かめることができました。

ドローンで樹冠の上から全体を確認する
樹高20m弱のケヤキ、地上からも樹上からも見えにくい場所がある
レーザー距離計で測った樹高は18.6m、幹周は467cm、枝張は13.0mほどあります。当日は、目視と木槌での打診で外観全体を見て、過去に主幹が切られて本来の樹形が崩れていること、枯れ枝や太い枝を切った痕が目立つこと、幹の上部に口を開けた空洞があることを確かめました。その上のほうを、さらに近くで見るためにドローンを使いました。

手元の画面で樹冠の様子を見ながら操縦する
地上から見上げると、樹冠の上のほうは手前の枝葉に隠れてしまいます。ロープワークで樹上に登れば近くで見られますが、登った位置から見渡せる範囲には限りがあります。幹の内部に傷みを抱えた樹木では、登ること自体が負担になる場合もあります。
外観診断は、まず目で見て状態を読む作業です。見えない場所が残ると、読めない部分も残ります。
ドローンで見えたこと──幹の頂部の、太い枝を切った痕
ドローンを上げると、そうした場所を真上から細かく見ることができます。今回は、幹の頂部に太い枝を切った痕がいくつも残っていて、その切り口から腐朽や枯れが進んでいることを確かめられました。地上からの観察だけでは、ここまではっきりとはつかめなかったと思います。

太い枝を切った痕が残る幹。切り口のまわりから細い枝が出ている
診断全体の流れは、山梨県都留市・西涼寺様 樹木医による霊木ケヤキの樹木診断にまとめています。
ドローンの所見を、機器診断で幹の中につなげる

樹冠の確認に使ったドローン
外観とドローンで立てた見立てを確かめるために、機器診断に進みました。使ったのは、ピカス、ツリートロニック、レジの3つです。ピカスの断面図では、健全な材は外周に帯のように残り、内部には空洞や腐朽が広がった、ストローのような状態でした。
この結果は、外観で見た枝を切った痕から進む腐朽とも、つながるものでした。

ドローンで樹冠を真上から撮影した写真
ドローンの撮影を「記録」として残す意味
樹木診断にドローンを使う良さは、見える範囲が広がることだけではないと考えています。真上から撮った画像は記録として残せるので、数年後に同じ位置から撮れば、枝の枯れ方や樹冠の広がりの変化を見比べることができます。
一度きりの診断ではその時点の状態しか切り取れませんが、記録が重なっていくと、樹木がどう変わってきたかを読めるようになります。
西涼寺様には、剪定、ケーブリング、土壌改良・施肥の3つを組み合わせて霊木を残す方法をご提案しました。対策のあとは、芽吹きのあとに葉の量や枝枯れを確かめ、台風の時期の前にケーブルの状態を点検します。診断の記録は、そのときに変化を読むための起点です。ドローンで上から撮った画像も、その起点のひとつになります。
高所の枯れ枝と経過の記録──国土交通省の指針が示す考え方
国土交通省の「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」(平成29年9月策定、令和8年3月30日改訂)は、高所に発生した枯枝について、落下すれば衝撃も大きくなり、人身事故の原因となりやすいため、点検で重要な項目だとしています。樹冠の上のほうの枯れ枝や枝の切り口は、まさに地上から見落としやすい場所です。
同じ指針は、変状や異常があっても経過を観察すると判断した樹木については、次回の点検時期と点検の種類を定めること、経過観察に必要な情報を記録として残し、散逸しないよう管理することが重要だとしています。都市公園の樹木を対象にした指針ですが、記録を重ねて変化を読むという考え方は、お寺の霊木のように長く診ていく樹木にも通じます。
ドローンで分かるのは外から見える部分、幹の中は診断機器で
ドローンで分かるのは、外から見える部分です。幹の中の状態は、ピカス(音響トモグラフ)やツリートロニックなどの診断機器で確かめ、上からの所見とあわせて判断しています。
なお、ドローンを飛ばす場所によっては、航空法の許可や承認、土地の管理者の許可が必要になります。国土交通省は、空港等の周辺、150m以上の上空、人口集中地区の上空で飛行させるときは、あらかじめ国土交通大臣の許可が必要としています。人口集中地区に当たるかどうかは、国土地理院の地理院地図などで確認できます。今回も、お寺の許可をいただいたうえで行いました。
引き続きどうぞよろしくお願いします。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくある質問(Q&A)
Q1. 樹木診断にドローンを使うと何が分かりますか?
A. 地上や樹上からは見えにくい樹冠の上のほうを、真上から細かく確認できます。西涼寺様のケヤキ(樹高20m弱)では、幹の頂部に太い枝を切った痕がいくつも残っていて、その切り口から腐朽や枯れが進んでいることを確かめられました。
Q2. なぜ地上から見るだけでは樹冠の上のほうが分からないのですか?
A. 地上から見上げると、樹冠の上のほうは手前の枝葉に隠れてしまうためです。高い木ほど、見上げる角度と枝葉の重なりで、上部の状態を細かく読むのが難しくなります。
Q3. 木に登って調べるのではだめなのですか?
A. ロープワークで樹上に登れば近くで見られますが、登った位置から見渡せる範囲には限りがあります。幹の内部に傷みを抱えた樹木では、登ること自体が負担になる場合もあります。そのため、上空から確認する方法を組み合わせています。
Q4. ドローンの画像は診断の記録になりますか?
A. はい。真上から撮った画像は記録として残せます。数年後に同じ位置から撮れば、枝の枯れ方や樹冠の広がりの変化を見比べることができ、樹木がどう変わってきたかを読めるようになります。
Q5. 一度の診断だけでは分からないことは何ですか?
A. 一度きりの診断では、その時点の状態しか切り取れません。記録が重なっていくことで、時間をかけた変化が読めるようになります。ドローンの画像は、その記録を残す手段のひとつです。
Q6. ドローンで幹の内部の腐朽や空洞も分かりますか?
A. 分かりません。ドローンで分かるのは、外から見える部分です。幹の中の状態は、ピカス(音響トモグラフ)やツリートロニックなどの診断機器で確かめ、上からの所見とあわせて判断しています。
Q7. ドローンで樹木を診るとき、許可は必要ですか?
A. 場所によっては必要です。国土交通省は、人口集中地区の上空などで無人航空機を飛行させる場合、あらかじめ国土交通大臣の許可が必要としています。西涼寺様では、お寺の許可をいただいたうえで樹冠を確認しました。
Q8. 高所の枯れ枝は、なぜ点検で重要なのですか?
A. 国土交通省の指針(案)は、高所に発生した枯枝は落下すれば衝撃も大きくなり、人身事故の原因となりやすいため、重要だとしています。樹冠の上のほうは地上から見落としやすい場所なので、上空から確認する意味があります。
Q9. 西涼寺様のケヤキでは、ドローンのあとにどのような診断をしましたか?
A. ピカス、ツリートロニック、レジの3つの機器で幹の中を調べました。ピカスの断面図では、健全な材が外周に残り、内部に空洞や腐朽が広がった状態でした。外観で見た、枝を切った痕から進む腐朽ともつながる結果でした。
Q10. ドローンと診断機器は、どう使い分けていますか?
A. ドローンは外から見える樹冠や頂部の状態を確かめ、診断機器は幹の中の状態を確かめます。この2つの所見をあわせて、判断しています。
出典・参考情報
- 国土交通省 航空局「無人航空機の飛行ルール」(航空法第132条の85。人口集中地区の上空などでの飛行には、あらかじめ国土交通大臣の許可が必要)
- 国土交通省「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」(平成29年9月策定、令和8年3月30日改訂。高所の枯枝の重要性、経過観察の記録の管理)





















