植栽管理や樹木診断のご相談では、樹木の写真を「全体」「根元」「周りの様子」の3種類そろえてお送りいただくと、現地に伺う前に状況をつかみやすくなります。スマートフォンで撮るときの立ち位置と構え方、よくある失敗、写真の送り方を、樹木医がイラストで解説します。
お問い合わせのメールやフォームに、樹木の写真を添えていただくことが増えました。とてもありがたいのですが、写っているのが幹の一部や枝先だけで、樹木の高さも、根元の様子も、建物との距離も分からないことが少なくありません。結局、写真を撮り直していただくか、まず現地に伺って確かめることになり、お返事までに時間をいただいてしまいます。
どこを、どう撮っていただければ、樹木医が写真から状況を読み取れるのか。行政の点検マニュアルで定められている撮り方も参考にしながら、当社からのお願いとしてまとめました。特別な機材は要りません。お手持ちのスマートフォンで撮れる方法です。
なぜ「全体・根元・周りの様子」の3枚なのか──樹木医が写真から読み取っていること
樹木の写真を拝見するとき、私が見ているのは大きく3つです。1つ目は樹木そのものの姿で、高さ、枝の広がり、幹の傾き、枝先の枯れや葉の量です。2つ目は根元で、幹が地面に入る所(地際)や根の張り出し、キノコや空洞、割れ、土の盛り上がりがないかを見ます。3つ目は周りの環境で、建物や電線、道路、隣の敷地との距離です。
お客様にお願いしたい「全体・根元・周りの様子」は、こうした専門の撮り方を、スマートフォンで撮れる3枚に絞ったものです。中でもいちばん大切なのは、樹木と一緒に、周りの環境が分かることです。同じ高さの樹木でも、広い植え込みの真ん中に立っているのか、建物の窓のすぐ前や電線の下に立っているのかで、考えるべきことも作業の方法も変わります。
なお、写真だけで樹木診断はできません。幹の内部の腐朽や根の状態は、現地で樹木を叩いたり、機器で測ったりしなければ分からないからです。写真は、現地に伺う前に、作業の方法(高所作業車を使うか、ロープで樹上に登るか)、道路使用許可が要るかどうか、人数や道具、急いで対応したほうがよいかどうかの見当をつけるための材料として使わせていただいています。
1枚目 木の全体──周りに余白をとり、建物や地面と一緒に1本まるごと

樹木から離れて立ち、スマートフォンを縦向きに構えて、梢の先から根元の地面まで、周りの建物や植え込みと一緒に余白をとって入れる
1枚目は、樹木を1本まるごと写した写真です。梢の先(いちばん上)と根元の地面が両方とも入り、その周りに余白があることが大事です。樹木を画面いっぱいに大きく写すより、左右の建物の壁や窓、根元の植え込みや縁石、手前の歩道まで一緒に入っているほうが、樹木がどんな場所に立っているのかが伝わります。
そのためには、思っている以上に樹木から離れる必要があります。当社からのお願いの目安として、樹木の高さと同じくらいの距離まで下がっていただくと、たいていの樹木は縦長の画面に収まります。高さ10mほどの樹木なら、10mほど離れる感覚です。スマートフォンは縦向きにして、樹木が画面の6割ほどの大きさになり、上下左右に周りの様子が見えるくらいに構えてください。
撮る向きは、樹木の正面から1枚で構いませんが、横からもう1枚あると幹の傾きや枝の偏りが分かりやすくなります。正面だけでは、樹木がこちらに傾いているのか、奥に傾いているのかが読み取れないからです。
もうひとつ気をつけたいのが明るさです。空を背にした樹木は暗く写りやすく、東京国道事務所のマニュアルも、樹木がアンダー(暗すぎる状態)になりやすいので適切な明るさで撮るよう注意しています。画面の中の樹木を指で軽く触れると、多くのスマートフォンはそこに明るさを合わせてくれます。それでも黒くつぶれるときは、太陽を背にする位置に回り込むか、時間を変えて撮っていただくと見やすくなります。
2枚目 根元──地際と、幹の周り1mほどの地面まで

幹から1〜2mほど離れてしゃがみ、地際と根の張り出し、幹の周りの地面までを写す
2枚目は根元です。幹から1〜2mほど離れた所でしゃがみ、幹が地面に入る所(地際)と、根の張り出し(根張り)、その周り1mほどの地面までが入るように撮ります。真上から見下ろすより、しゃがんで斜め前から写したほうが、根張りの形が分かります。
根元は、樹木の健康や安全を考えるうえで見落とせない場所です。とくにベッコウタケ、ナラタケ、ナラタケモドキ、コフキタケといったキノコが出ている場合は、必ず写真を付けて説明を書くよう定めています。同じマニュアルは、キノコを、材を腐らせる菌(木材腐朽菌)が胞子を散らすための器官と説明し、腐朽が進むと倒木や落枝の原因となるおそれがあるとしています。根元に出たキノコは、写真で早めに知りたいものの一つです。
地面のほうも、舗装の割れや持ち上がり、土の盛り上がり、水たまりができていないかを写真から確かめます。落ち葉や下草はそのままで構いませんが、地際がすっかり隠れているときは、手の届く範囲で軽くよけてから撮っていただくと、根元の様子がよく分かります。
3枚目 周りの様子──建物・電線・道路との距離が分かるように

道の向かい側などからさらに引いて、樹木と建物・電線・道路・隣の敷地との位置関係が分かるように写す
3枚目は、樹木の周りまで入れた写真です。1枚目よりさらに下がるか、道の向かい側から、樹木と一緒に建物の外壁や窓、屋根、電柱と電線、歩道と車道、隣の家の塀などが入るように撮ります。この写真はスマートフォンを横向きにしていただいても構いません。
この1枚があると、枝が建物や電線にどのくらい近づいているか、作業のときに車をどこに停められるか、歩道や車道を使う必要があるかが見えてきます。剪定や伐採の方法、安全のための人の配置、道路使用許可の要否は、ここから考え始めることが多いです。沿道の状況や隣の樹木との関係を把握するためです。
気になる箇所があれば、もう1枚──大きさの分かる物を添えて

キノコや傷などは近づいて撮り、ボールペンや手を横に添えて大きさが分かるようにする
キノコ、幹の傷や割れ、空洞、樹皮がはがれた所、虫の穴や木くずなど、気になる箇所があれば、近づいてもう1枚撮っていただけると助かります。そのとき、ボールペンや手、名刺などを横に添えていただくと、大きさがひと目で分かります。写真だけでは、親指ほどのキノコなのか、手のひらより大きいのかが判断できないからです。
近づいて撮ったあとは、少し下がって、その箇所が樹木のどこにあるかが分かる写真も撮っておいてください。東京国道事務所のマニュアルも、樹木全体の中での位置と、箇所ごとの詳しい状況を撮ることとしています。アップの写真だけでは、根元の話なのか、高い所の枝の話なのかが分からなくなってしまいます。手の届かない高い所の枝は、ズームで撮っていただければ十分です。
よくある失敗と、撮り直しのコツ

左:近すぎて梢も根元も切れている。中:見上げて撮ったため根元と地面が写っていない。右:梢の先から根元の地面まで収まっている
いただいた写真でよく見かけるのは、次のような写り方です。
- 樹木に近すぎて、幹の中ほどしか写っていない(梢も根元も画面の外)
- 見上げて撮ったため、樹冠は写っているが根元と地面が切れている
- 空を背にして、樹木が黒い影のようになっている
- 葉や枝先のアップだけで、どの樹木のどこなのかが分からない
どれも、樹木から離れる、縦向きにする、明るさを合わせる、引きの写真を1枚足す、のどれかで撮り直せます。写真の枚数は多くなっても構いません。東京都のマニュアルも、写真の枚数が多くなることをいとわず、樹木ごとに整理するよう書いています。迷ったら多めに撮って、その中から送っていただくのが確実です。
撮影のときは、ご自身の安全を第一にしてください。車道に出て撮る、隣の敷地に入る、枯れ枝が落ちてきそうな樹木の真下に長く立つ、といったことは避けていただき、無理のない場所から撮れる範囲で十分です。
写真の送り方──お問い合わせフォームとメール
写真は、当社のお問い合わせフォームの「画像添付」欄から送っていただけます。添付できるのは3枚まで、形式はJPG・PNG・GIFです。
4枚以上になるときや、フォームにうまく添付できないときは、メール(info@toshilandscape.co.jp)に添付してお送りください。枚数が多い場合は、数通に分けていただいて構いません。
iPhoneは、設定によって写真がHEIFという形式で保存されます。フォームにうまく添付できないときは、メールで送っていただくか、iPhoneの「設定」→「カメラ」→「フォーマット」で「互換性優先」を選ぶと、以後に撮る写真がJPEGで保存されます(Apple サポート「Apple製のデバイスでHEIF/HEVCメディアを扱う」)。
写真と一緒に、次のことを書き添えていただけると、お返事がより具体的になります。
- 樹木のある場所(市区町村と物件名など)
- 樹種(分かれば。分からなければ空欄で構いません)
- 高さの目安(建物の何階くらいか)
- 気になっていることと、いつ頃からか
- ご希望の内容(剪定、樹木診断、伐採、年間の管理など)
3枚の写真があれば、最初のお返事の段階で、伺うときに何を確かめ、何を準備すればよいかをお伝えしやすくなります。樹木の状態を知っていただく最初の一歩として、気軽に写真を送っていただければと思います。
よくある質問(Q&A)
Q1. 樹木の相談で送る写真は、何枚あればよいですか?
A. 基本は「木の全体」「根元」「周りの様子」の3枚です。キノコや傷など気になる箇所があれば、近づいて撮った写真と、その箇所が樹木のどこにあるかが分かる写真を足してください。枚数は多くなっても構いません。
Q2. 写真だけで樹木診断はできますか?
A. できません。幹の内部の腐朽や根の状態は、現地で樹木を叩いたり、機器で測ったりしなければ分からないためです。写真は、現地に伺う前に作業の方法や準備、急いで対応したほうがよいかどうかの見当をつける材料として使わせていただいています。
Q3. 木が大きくて、全体が画面に入りません。
A. スマートフォンを縦向きにして、広角モードで撮影いただくか、樹木の高さと同じくらいの距離まで下がると、たいていは収まります。それでも入らないときは、上半分と下半分に分けて撮っていただいても構いません。
Q4. 逆光で樹木が黒く写ってしまいます。
A. 空を背にした樹木は暗く写りやすいので、画面の中の樹木に指で触れて明るさを合わせてください。それでも暗いときは、太陽を背にする位置に回り込むか、時間を変えて撮ると見やすくなります。
Q5. iPhoneの写真がお問い合わせフォームに添付できません。
A. フォームに添付できるのはJPG・PNG・GIFの3枚までです。うまく添付できないときは、info@toshilandscape.co.jp へメールで送ってください。iPhoneの「設定」→「カメラ」→「フォーマット」で「互換性優先」を選ぶと、以後に撮る写真がJPEGで保存されます。
Q6. 写真を撮るときに気をつけることはありますか?
A. ご自身の安全を第一にしてください。車道に出て撮る、隣の敷地に入る、枯れ枝が落ちてきそうな樹木の真下に長く立つ、といったことは避け、無理のない場所から撮れる範囲で十分です。
出典・参考情報
- 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅱ章 樹木点検について(p.10 写真撮影方法)、第Ⅲ章 街路樹診断について(p.16 写真撮影、p.28 キノコ(子実体))
- 国土交通省 関東地方整備局 東京国道事務所「街路樹点検マニュアル ~生命・財産への影響を回避するために~」令和5年3月(p.8 点検カルテ写真帳)
- Apple サポート「Apple製のデバイスでHEIF/HEVCメディアを扱う」
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