東京都「街路樹診断等マニュアル」の要点と、国土交通省の点検・診断の指針(案)──大型化・老木化する街路樹・公園樹木の管理を樹木医が解説

根元 キノコ センサー アーボソニック3D 根株診断

現場の感覚では、東京都内の多くの自治体で、樹木点検・診断・管理のガイドラインの整備が進んでいます。

これらの多くは、東京都建設局の「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」と、国土交通省の「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」などをベースに、地域事情に合わせて上乗せ・具体化したものだと見ています。例えば港区の「樹木管理マニュアル」(令和5年4月)は、東京都のマニュアルを一部準用して、樹木点検・診断の決まりを定めています。国土交通省の指針(案)は令和8年3月に改訂され、都市公園や街路樹の多くの樹木で老齢化・大径木化が進み、倒伏や落枝による事故のリスクが高まっていると記しています。

東京都建設局は、ホームページ「東京の街路樹」で、このマニュアルの本編・参考資料・正誤表と、樹木点検表・診断カルテの様式を公開しています(東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」のページ)。
東京国道のマニュアル(案)は、強剪定が腐朽誘発や緑陰喪失につながる課題を明記し、
「腐朽しにくい管理(透かし剪定・切り詰め剪定の組合せ)」、撤去・更新や周知ルール化、掘削時の支持根配慮などの原則を体系化しています。

東京 都市景観 都市緑地 高層ビル 街路樹マネジメント

先に答え

  • 現場の感覚では、東京都内の多くの自治体の樹木点検・診断・管理のガイドラインは、東京都建設局の「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」と、国土交通省の「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」などがベースになっています。港区の樹木管理マニュアル(令和5年4月)のように、都のマニュアルを一部準用している例もあります。
  • 流れは、樹木点検→外観診断→機器診断→処置→フォローアップです。事故予防と健全育成の両立を狙っています。
  • 外観診断はA/B1/B2/Cの4区分です。東京都建設局のマニュアルでは、B2は1〜3年後にフォローアップ診断を行い、Cは更新(撤去・植替え)とされています。
  • 機器診断には、レジ、アーボソニック3D、ピカスがあります。国土交通省の指針(案)は、診断に使う機器は、測る樹木の診断内容や測定条件に適したものを選ぶことが望ましいとしています。

東京都「街路樹診断等マニュアル」の実務ポイント(抜粋・要約)

東京都建設局マニュアルは、樹木点検→外観診断→機器診断→処置→フォローアップの一連プロセスを明確化し、事故予防と健全育成の両立を狙います。
以下は自治体運用で押さえたい要点です。

街路樹診断 流れ 樹木点検 外観診断 機器診断 総合判定 フォローアップ診断 東京都

図: 街路樹診断の流れと、総合判定ごとの処置と次回診断(出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」p.1・p.11・p.67 をもとに当社作成)

  • 対象の考え方:東京都のマニュアルでは、樹木点検(任意の点検)は基本的に3m以上の高木すべてが対象で(p.5)、そこから外観診断、機器診断へと段階的に詳しく調べます。外観診断の対象は、原則として幹周60cm以上の樹木です(p.12)。港区の樹木管理マニュアルは、区の樹木点検の対象を「すべての高木」としています(p.13)。

  • 判定と再点検:外観診断はA/B1/B2/Cの4区分、機器診断で数値化します。東京都建設局の街路樹診断等マニュアルでは、B2は被害状況に応じて1〜3年後にフォローアップ診断を行い、Cは更新(撤去・植替え)とされています。

  • 頻度と時期:東京都のマニュアルでは、樹木点検は葉が茂っている着葉期(5月から10月の間)に行うのが望ましいとされ、点検の頻度は管理者が定めます(p.5)。再診断の時期は、判定がA・B1の樹木は5〜10年後、B2の樹木は1〜3年後です(p.67)。港区の「樹木管理マニュアル」(令和5年4月)は、初夏(5月〜6月)が最も効果的と考えられるとしています(p.13)。

  • 処置の準用:港区の樹木管理マニュアルは、診断後の処置に都のマニュアルの「樹木の処置について」(都マニュアル p.68)を準用しています(港区 p.13)。都のマニュアルでは、剪定・支柱・植栽基盤の改善・更新などの標準的な処置を総合判定ごとに示し(p.68)、診断カルテに次回の診断時期を記入します(p.67)。

東京都のマニュアルが総合判定ごとに定めている処置の方針と、次回の診断を、1つの表にまとめると次のとおりです。

総合判定 A 健全か健全に近い B1 注意すべき被害が見られる B2 著しい被害が見られる C 不健全
腐朽空洞率の参考基準値 10%未満 10%以上30%未満 30%以上50%未満 50%以上
処置の方針 日常的観察を行い、状態の変化に応じ、適宜対応 職員による日常的観察、その他の委託作業での点検行為、各種の適切な処置を行う 職員による日常的観察、その他の委託作業での点検行為、各種の適切な処置を行う、必要に応じて植替え(撤去)も検討する 更新
観察 長期周期の適宜の観察 長期周期の適宜の観察、異常や危険性が認められた場合は適宜報告 短期周期の適宜の観察、異常や危険性が認められた場合は適宜報告、歴史的価値ある樹木などの処置後の観察 −
剪定 − 枯枝剪定、支障枝剪定、風圧軽減剪定、スタブカット切除、巻き根切除 −
樹体保護 − 支柱設置 −
植栽基盤の改善 − 客土・土壌改良、過湿障害対策、乾燥害対策、踏圧防止、施肥 −
根上がり S.S.M工法(根系誘導耐圧基盤)による根の誘導、防根シートによる根の伸長制御、植栽用エッジングによる根の伸長防止、縁石を用いた根上がり防止措置、根系切除及び補修 −
病虫害防除 − 病虫害防除 −
更新 − 植替え(撤去)
次回の診断の内容 外観診断 外観診断(前回の被害状況を把握した上で、変化に注意しながら行う) フォローアップ診断(必要に応じて機器診断、5年以上続けた場合は外観診断) −
次回の診断の時期 5〜10年後 5〜10年後 1〜3年後(被害の状況に応じて決める) −(更新を行う)

(東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」表Ⅲ-4・1 総合判定基準(p.66)、表Ⅲ-4・3 次回の診断内容及び診断時期(p.67)、表Ⅳ-1・1 総合判定及び処置の方針・内容(p.68)から当社でまとめた。歴史的価値のある街路樹など特別な樹木は、これによらず別途対応できるとされる)

参考:国土交通省 関東地方整備局 東京国道事務所の「街路樹管理マニュアル」(令和4年2月)は、強剪定の弊害(緑陰が確保できない、腐朽菌が入りやすい)を写真で示し、目標管理樹形の設定、透かし剪定と切り詰め剪定を組み合わせた剪定、点検の頻度(5年ごとを原則に、被害の程度により1〜3年後に短縮)、掘削時に支持根を切らない配慮、撤去・更新とその周知の方法を解説しています(東京国道事務所「街路樹管理マニュアル」(PDF))。


「大型化・老木化」リスクに対する診断戦略

東京都のマニュアルは外観診断から機器診断へ、国土交通省の指針(案)は点検から診断へと、段階を踏んで詳しく調べる構成です。機器診断は、「切る・残す・更新する」の線引きを説明するときの根拠になると考えています。

外観診断(目視・非破壊の一次スクリーニング)

  • 東京都のマニュアルでは、外観診断は樹木の外観を目視と診断用具で調べるもので、樹形から活力を見る活力診断と、根元・幹・大枝を見る部位診断から成ります(p.11・p.15)。空洞の兆候、腐朽菌の痕跡、樹皮の亀裂、剪定痕の巻き込みの不良、傾斜、根返りなどを、現場での経験も踏まえて見ていきます。

  • 判定はA/B1/B2/Cの4区分で、現場の感覚では実務で広く使われています。東京都のマニュアルでは、B2は1〜3年後にフォローアップ診断、Cは更新(撤去・植替え)です(p.11・p.67)。外観診断 開口空洞 根張り 公園 樹木診断

機器診断(数値・画像化による合意形成の要)

  • レジ(Resi PD):キリを幹に回転させながら差し込み、貫入抵抗の変化から、空洞・腐朽の有無と広がりを1本の線の上で数値にします。キリは軸径1.5mm・先端幅3.0mmと細く(東京都のマニュアル p.51)、外観診断で疑いのある断面を確かめるのに使います。

  • アーボソニック3D(Fakopp):幹周にセンサーを配置し応力波(音波)の伝播時間から2D/3Dの内部マップを生成。空洞・腐朽の位置と相対的な進行度を可視化でき、伐採・保存の判断材料として市民説明にも強い。

  • ピカス(PiCUS Sonic Tomograph):音速差を利用した断層画像で空洞・腐朽の形状を表示。根元・分岐部・大径木の評価に有効で、写真的な図示が合意形成に役立つ。

東京都のマニュアルの機器の表(表Ⅲ-3・1)と参考資料から、当社が使う3つの機器を並べると次のとおりです。

項目 レジ(Resi PD) アーボソニック3D ピカス
マニュアルでの名称 貫入抵抗測定器(レジPD型) 多点式応力波速度測定器 弾性波樹木診断装置
機材の出自(マニュアルの表記) ドイツ IML社 ハンガリー FAKOPP社 ドイツ ARGUS社
測るしくみ 細いキリを回転させながら貫入させ、抵抗の高低から腐朽・空洞をみる 幹の外周に複数のセンサを設置し、センサ間の応力波の到達時間を測る 幹周に応じて12〜30個のセンサを設置し、センサ間を通る弾性波を測る
出てくる結果 横軸に深さ、縦軸に抵抗値の波形 内部の異常部の形を図にした断面(多断面で上下方向の広がりも推定できる) 弾性波の到達時間から求めた内部の断層画像(カラー表示)
測れる幹の大きさ 直径200cm(最大、IML-RESI PD1000 で対角の2方向から測定) 幹周9.6mまで(プロブ間30cm、プロブ32個の想定) 幹周1.8〜15m
樹木に与える影響 若干の破壊、樹皮・形成層・木部がわずかに傷付く(専用キリは軸径1.5mm、先端幅3mm) 樹皮・形成層がわずかに傷付く(専用釘を6〜32個打設) 樹皮・形成層がわずかに傷付く(汎用鉄釘を12〜30個打設)

(東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」p.51〜52、表Ⅲ-3・1(p.53)、第Ⅶ章 参考資料 p.108・p.111 から当社で作成。どの機器も得意とする腐朽や空洞の形が違うため、診断部位や木の状況に応じて選ぶ)

研究知見:杉本ら(2015)は、ピカス、ドクターウッズ、アーボソニック3Dの3機種で同じ木を測り、伐採後の実際の断面と比べています。3機種が示す腐朽率には差があり、実際の断面との差は-16〜+18%でした。入り皮があると腐朽率を大きく示す傾向もあり、木の条件に合わせて機器を選ぶと効率的だとしています(杉本ら(2015)「音波を用いた精密診断機器の比較」樹木医学研究 19(4))。

杉本ら(2015)が示した数値を、調査木ごとに並べると次のとおりです。

調査木 測った高さ(樹幹高) 3機種が示した腐朽率 伐採断面との差
クスノキ(ロータリー内) 120cm 43〜64% −12〜9%
クスノキ(ロータリー内) 70cm 50〜69% −16〜3%
クスノキ(ロータリー内) 20cm 65〜79% −5〜9%
ソメイヨシノ(街路樹) 20cm 57〜71% −3〜11%
ソメイヨシノ(公園樹) 20cm 54〜69% 3〜18%

(杉本弥和ほか(2015)「音波を用いた精密診断機器の比較」樹木医学研究 19(4):216〜217 の本文から当社で作成。3機種はピカス、ドクターウッズ、アーボソニック3D。3機種とも腐朽率50%を超えていた。実断面の腐朽率は、腐朽断面積を伐採断面積で割って求めている)


これからの街路樹・公園樹木の管理に向けた提案

1)点検から処置・フォローアップまでを一つの流れにする

  • 定期の樹木点検で対象を広く拾い、外観診断で優先度を付け、重点木を機器診断し、処置とフォローアップにつなげます。強風や地震の後の臨時点検と、市民から通報を受けたときの手順も、別に文書にしておくのがよいと考えています。

  • 目標管理樹形の考え方を取り入れ、強剪定を避けて、切り返し剪定と透かし剪定を基本にします。掘削工事での支持根の保護と、更新(植替え)の決まりを定めておくことで、腐朽しにくい管理に移っていけると考えています。

2)診断の見える化と合意形成

  • A/B1/B2/Cの色分け地図、次回点検時期、処置メニューをGIS台帳に集約。B2(1〜3年後フォロー)/C(速やか更新)は意思決定期限も併記。
    港区の「樹木管理マニュアル」(令和5年4月)は、都のマニュアルを一部準用したうえで、3年に1度、樹木医による樹木点検を行い、A・B1は3年後に樹木点検、B2は1年後にフォローアップ診断、Cは速やかに伐採・更新(地元の要望などで物理的な処置をする場合あり)としています(港区「樹木管理マニュアル」(PDF))。こうした準用の仕方は、区民への説明の型にも応用できると考えています。

    東京都のマニュアルと港区の準用の仕方を、判定ごとに並べると次のようになります。

    項目 東京都「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」 港区「樹木管理マニュアル」(令和5年4月)
    定期の点検 樹木点検は任意で頻度は管理者が定める、外観診断の対象木は5年から10年のサイクルで外観診断を行う(p.5) 街路樹、公園等樹木とも3年に1度、樹木医による樹木点検(p.13)
    点検の対象 樹木点検は3m以上の高木全て、外観診断は原則として幹周60cm以上(p.5・p.12) すべての高木(中木、低木は含まない)(p.13)
    A 5〜10年後に外観診断(p.67) 3年後、再度樹木点検を実施(p.13)
    B1 5〜10年後に外観診断、前回の被害状況の変化に注意する(p.67) 3年後、再度樹木点検を実施(p.13)
    B2 1〜3年後にフォローアップ診断、時期は被害状況に応じて決める(p.67) 1年後、フォローアップ診断を実施(p.13)
    C 更新(撤去・植替え)を行う(p.67) 次回の樹木点検を待たず、速やかに伐採及び更新(地元要望等で物理的処置を施す場合あり)(p.13)
    時期 維持管理の処置が要る木の抽出なら、着葉期(5月から10月の間)が望ましい(p.5) 初夏(5月〜6月)が最も効果的と考えられる(p.13)
    処置 総合判定に基づき、処置の方針・内容に従って処置を施す(p.68) 都マニュアル p.68 を準用(p.13)

    (東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」p.5・p.12・p.67・p.68、港区「樹木管理マニュアル」(令和5年4月)p.13 から当社で作成。国道では、東京国道事務所「街路樹管理マニュアル」(令和4年2月)が、点検を5年毎を原則とし、被害の程度により1〜3年後に短縮するとしている(p.4・p.41)。国道の点検の区分は都・区とは名前と段階が異なるので、この表には並べていない)

3)機器診断の標準オプション化

  • 伐採や大きな剪定を決める前に、レジ(Resi PD)・アーボソニック3D・ピカスなどの機器診断で確かめることを、手順に組み込むのがよいと考えています。
    高さを変えて複数の断面を測り、必要に応じて別の機器の結果とも照らし合わせます。1台の機器の結果だけで判断しないようにしています。

4)更新計画と樹種・基盤の再設計

  • 大型化のリスクが高い列植は段階的に更新し、植えられている場所の広さに合う樹種・樹形に替えていくことを考えています。東京国道事務所の街路樹管理マニュアルも、植樹帯の幅が十分に確保できない場所では大径化しない樹種を選ぶとしています(p.34)。
    根域容量の確保・透水通気性舗装・根域制限などの基盤改良も、あわせて行うのがよいと考えています。同じマニュアルは、更新時に有効土層厚を概ね0.9m確保し、横断・縦断方向とも2.0mの範囲を土壌改良することや(p.34)、根系誘導耐圧基盤・防根シートなどで根上がりを抑えることを挙げています(p.36〜37、東京国道事務所「街路樹管理マニュアル」(PDF))。

    街路樹 更新 植栽基盤 有効土層厚 0.9m 土壌改良 2.0m 断面 平面 模式図 東京国道事務所

    図: 街路樹を更新するときの植栽基盤の確保。有効土層厚は概ね0.9m、横断・縦断方向とも2.0mの範囲を土壌改良する(出典: 国土交通省 関東地方整備局 東京国道事務所「街路樹管理マニュアル」(令和4年2月)p.34・図10-2 をもとに当社作成)


株式会社トシ・ランドスケープの取り組み

樹木診断・管理マニュアル策定について、都内の自治体からご相談をいただくことが増えました。
現場での外観診断→機器診断→合意形成の一連を、制度・仕様書に落とし込むお手伝いをしています。
樹木医・街路樹・都市樹木診断士による診断のサービスは、「樹木診断」のページで紹介しています。

東京都建設局の街路樹の資料と、当社の解説記事

東京都建設局は、街路樹の診断・剪定・維持管理について、次の資料を公開しています。当社の記事では、資料の内容を現場の写真やイラストとあわせて解説しています。

令和3年度 街路樹診断等マニュアル(本編・参考資料)

樹木点検から外観診断、機器診断、総合判定、処置、フォローアップ診断までの流れと様式を定めた資料です。

・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(前編) 東京都の街路樹診断等マニュアルの流れで、樹木点検と外観診断の18項目を解説
・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(後編) 機器診断のt/R率と腐朽空洞率、総合判定、処置、フォローアップ診断
・街路樹のそばで工事をするとき、根をどう守るか 東京都の街路樹診断等マニュアル「工事配慮エリア」と10の配慮事項を樹木医が解説
・レジ(Resi PD)の診断カルテの読み方 実際のカルテで、9つの欄を樹木医が1つずつ解説
・レジ(Resi PD)の根株診断カルテの読み方 俯角40度・補正直径・未測定部分を、実際のカルテで樹木医が解説

街路樹維持管理計画書(令和3年12月)

主要な13樹種について、剪定の時期・手法と、目標の樹形に合わせた剪定のタイプ(維持・縮小・拡大・再生)を定めた資料です。

・都市の高木は、なぜ手入れできなくなるのか──建物・電線・道路に囲まれた大きな木と、強剪定の繰り返しを樹木医が解説|高木・特殊伐採とケーブリング 第1回
・剪定の切る位置はブランチカラー フラッシュカットとスタブカットを避ける、樹木にやさしい剪定
・透かし剪定とは──日本の庭師が「抜いて整える」剪定の考え方|樹木医が解説(Sukashi: Japanese Thinning Pruning)

街路樹等維持標準仕様書(緑地管理編、平成25年4月)

剪定・支柱・施肥など、街路樹の維持作業の仕様を定めた資料です。

・日本の樹木支柱の種類と歴史──鳥居・八ツ掛・布掛・やぐら、竹と杉丸太としゅろ縄の手仕事|樹木医が解説(Japanese Tree Staking: Torii, Yatsugake and Nunokake)
・忌み枝とは──切る枝の見分け方と、あえて残す枝|樹木医が図解(Imi-eda: Branches Japanese Gardeners Remove)

まとめ

大型化・老木化が進むなかで、「診断に基づく計画的な更新」と「若いうちからの良い育成」の両方が欠かせないと考えています。

  • 東京都の標準(街路樹診断等マニュアル)で骨格を合わせ、

  • 東京国道事務所の街路樹管理マニュアルの考え方(強剪定を避ける/目標管理樹形/根系への配慮)を運用に取り入れ、

  • 機器診断(レジ・アーボソニック3D・ピカス)で木の内部を見える形にし、判断の理由を説明できるようにする。
    この3つを組み合わせることで、事故の予防と景観と、長い目で見た管理費用のつり合いを取りやすくなると考えています。

株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊

よくある質問

Q1. 東京都の街路樹診断等マニュアルとは何ですか。

東京都建設局の「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」のことです。樹木点検→外観診断→機器診断→処置→フォローアップの流れを示し、事故予防と健全育成の両立を狙っています。現場の感覚では、都内の多くの自治体のガイドラインのベースにもなっています。港区の樹木管理マニュアル(令和5年4月)のように、区のマニュアルが一部準用している例もあります。

Q2. 外観診断のA・B1・B2・Cとは何ですか。

外観診断の4区分です。東京都建設局のマニュアルでは、B2は被害状況に応じて1〜3年後にフォローアップ診断を行い、Cは更新(撤去・植替え)とされています。再診断の時期は、A・B1の樹木は5〜10年後です。

Q3. 樹木の点検や診断は、いつ行いますか。

東京都建設局のマニュアルでは、樹木点検は着葉期(5月から10月の間)に行うのが望ましいとされています。再診断の時期は、判定がA・B1の樹木は5〜10年後、B2の樹木は1〜3年後で、診断カルテに次回の診断時期を記入します。港区の樹木管理マニュアルのように、初夏(5〜6月)が最も効果的とする例もあります。

Q4. なぜ外観診断のあとに機器診断を行うのですか。

外観診断は目視・非破壊の一次スクリーニングです。疑わしい木を機器診断で数値化・画像化することで、根拠のある判断ができます。東京都のマニュアルでは、機器診断の結果を外観診断の結果と併せて総合的に判断するとされています(p.11)。「切る・残す・更新する」の線引きを説明するときの根拠にもなると考えています。レジは、外観診断で疑義のある断面の確認に有効です。

Q5. 機器診断には、どのような機器がありますか。

レジ、アーボソニック3D、ピカスがあります。レジは貫入抵抗の変化から空洞・腐朽の存在や拡がりを把握し、アーボソニック3Dとピカスは応力波(音波)の伝播時間や音速差から内部を画像化します。国土交通省の指針(案)は、測る樹木の診断内容や測定条件に適した機器を選ぶことが望ましいとしています。

樹木診断・根系調査と樹木医の学びの記事

当社の樹木診断・根系調査の記録と、樹木医の研修の記録を、公開の新しい順に並べました。

樹木診断の考え方

・街路樹診断士が「街路樹・都市樹木診断士」へ 名称変更の背景と樹木医との違い、資格の取り方を樹木医が解説
・樹木医として緑を維持管理してきた経験から考える都市の価値
・都市部の街路樹・公園樹における老齢化と樹木医による樹木診断の重要性
・樹木医とは? 仕事内容・資格の条件・診る内容を、都市部の植栽管理を担う樹木医が解説

外観診断・診断後の判断の記録

・公園樹木診断 樹木医・外観診断 東京都
・公園の桜を樹木医が外観診断 打音・鋼棒・目視で確かめること
・区保存樹木イチョウ 樹木医・高所外観診断 東京都
・樹木医診断 腐朽樹木・伐採工事
・腐朽樹木の診断から伐採、伐採後の答え合わせまで マンションの木を樹木医が診断し、切り株で診断結果を確かめる 東京都世田谷区
・樹木診断~伐採作業 東京都目黒区

根系調査・移植適性度診断の記録

・歩道の切り下げ工事に伴う樹木移植適性度診断(移植可否診断) 東京都
・樹木医による樹木根系調査業務
・無電柱化に伴う樹木保全 樹木医による夜間根系試掘調査の重要性 東京都
・街路樹の移植可否診断(移植適性度診断) 東京都
・樹木医 電柱設置掘削工事 根系調査立ち合い 東京都大田区
・樹木医・街路樹掘削工事立ち合い 根系調査・移植適性度診断
・樹木医 掘削工事立会い診断 東京都板橋区・国道沿い
・樹木 移植適性度診断 東京都
・街路樹の近くの掘削工事に樹木医が立ち会う理由 根を切ってよいかを判断する立会い診断

研修・学会

・樹木医学会 第30回大会 参加報告 都市樹木管理の未来を考える
・樹木医の金原さんに学ぶ金原塾・バラ講座 神奈川県座間市
・いばらき樹木医会研修会 茨城県つくば市
・松保護士研修講師補助として 髙尾樹木医
・樹木医勉強会 新宿御苑
・樹木医勉強会 神代植物公園 生物多様性センター
・バイオネスト NPO法人樹木生態研究会

マンション・施設・行政のご担当者様へ
当社は、年間の植栽管理、樹木診断、高木の剪定・特殊伐採を承っています。管理の進め方や診断の流れは、資料ダウンロードのページでご覧いただけます。ご相談はお問い合わせフォームからお待ちしています。

関連記事

・行政・公共施設のご担当者様(街路樹・公園・学校の樹木診断)
・TBSテレビ「THE TIME,」 砧公園での倒木事故について樹木医として取材をいただきました
・レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か。樹木医がレジ(Resi PD)で幹の中を「針」で診る機器診断を、一般の方向けに解説します
・街路樹診断士が「街路樹・都市樹木診断士」へ 名称変更の背景と樹木医との違い、資格の取り方を樹木医が解説
・都市部の街路樹・公園樹における老齢化と樹木医による樹木診断の重要性

「樹木診断」のサービス内容と、ご相談の窓口であるお問い合わせのページはこちらです。

※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。

人気の記事
最新の記事
おすすめ記事
  1. 登録されている記事はございません。
  1. 社殿 屋根 新緑 枝 鎮守の森 樹木の時間 樹木医 随想

    熊楠が守ろうとした森 樹木の時間 第7回

  2. アーボソニック3D ArborSonic 3D 音響トモグラフ センサー アンプボックス 樹木診断 樹木医

    アーボソニック3D(ArborSonic 3D)の仕組みと得られる結果──センサーの数、測れる太さ、断面画像と安全率の読み方を樹木医が解説

  3. AI 樹木診断 車載レーザー 街路樹 台帳 樹木医

    AI樹木診断は海外でどこまで進んでいるか──シンガポール・英国・米国の事例と論文を樹木医が一次情報で読み解く

  4. アーボソニック3D 風荷重 樹冠 写真 撮り方 樹高 離れて撮る 樹木医

    アーボソニック3Dの風荷重解析 強風で幹は折れないか、安全率の出し方と読み方を樹木医が解説

  5. クレーン 伐採 ブーム 建物 高木 特殊伐採 樹木医

    クレーンと高所作業車を使う伐採──ロープワークとの分担、運転と玉掛けの資格、建物越しの作業を樹木医が解説|高木・特殊伐採とケーブリング 第4回

  6. ファコップ Fakopp アーボソニック3D 樹木診断機器 メーカー ハンガリー ショプロン 樹木医

    ファコップ社とは──アーボソニック3Dをつくるハンガリー・ショプロンの樹木診断機器メーカーと、製品の全体像を樹木医が解説

  7. マンション 植栽 コンサルティング 流れ 管理組合 理事会 樹木医 中庭 ケヤキ

    マンションの植栽コンサルティングは、どう進むのか──管理組合と樹木医が歩く8つの段階と、3つの入口

  8. 巨木 御神木 大径木 樹木診断 樹木医

    日本人は子どものころから御神木に特別な思いを持っているのか 御神木・霊木と日本人の関係、歴史、文化を樹木医がたどる

  9. ハーネス 各部の名前 ウエストベルト レッグループ アタッチメントブリッジ リング サイドD環 ギアループ アーボリスト イラスト

    ハーネス ― 各部の名前と役割|アーボリストの基礎 第4回

  10. 3級造園技能士 実技試験 竹垣 縁石 敷石 植栽 模式図

    3級造園技能士の試験 竹垣・縁石・敷石の実技と樹種判定60種、学科の範囲を1級の樹木医が解説

  1. 登録されている記事はございません。

関連記事