東京都内の多くの自治体で、樹木点検・診断・管理のガイドライン整備が進んでいます。
これらの多くは、東京都建設局の「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」と、国土交通省の「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」などをベースに、地域事情に合わせて上乗せ・具体化したものです。
東京都建設局は公式ページで当該マニュアル(本編/参考資料)の公開窓口を示しており、自治体が参照可能な実務標準として位置づけられています。kensetsu.metro.tokyo.lg.jp
東京国道のマニュアル(案)は、強剪定が腐朽誘発や緑陰喪失につながる課題を明記し、「腐朽しにくい管理(透かし剪定・切り詰め剪定の組合せ)」、撤去・更新や周知ルール化、掘削時の支持根配慮などの原則を体系化しています。

東京都「街路樹診断等マニュアル」の実務ポイント(抜粋・要約)
東京都建設局マニュアルは、樹木点検→外観診断→機器診断→処置→フォローアップの一連プロセスを明確化し、事故予防と健全育成の両立を狙います。
以下は自治体運用で押さえたい要点です。
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対象の考え方:街路樹の樹木点検で要注意木を拾い上げ、段階的に診断の点検項目を詳細化しています(外観診断→機器診断)。自治体によっては対象の大きさ・範囲を拡張し、「すべての高木」を点検対象にする例もあります。
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判定と再点検:外観診断はA/B1/B2/Cの4区分、機器診断で数値化します。B2は1年後フォロー、Cは速やかな更新(又は物理的措置)という運用例が示されています。
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頻度と時期:初夏(5–6月)を基本に、落葉樹は生理フェーズに応じて最適時期を指示。3年に1度の点検と、判定に応じた臨時・再診断を義務付ける自治体運用が定着しています。
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処置の準用:剪定・支柱・腐朽対応・更新などの標準的な処置は都マニュアル該当章を準用し、台帳(カルテ)と次回点検時期の明記でPDCAを回します。
参考:東京国道の**街路樹管理マニュアル(案)**は、強剪定の弊害(腐朽・緑陰喪失)を写真・図で提示し、目標管理樹形の設定、透かし+切り返し剪定、点検の原則/短縮、掘削時の根系配慮、撤去・更新の判断を実務的に解説しています。国土交通省 中部地方整備局
「大型化・老木化」リスクに対する診断戦略
外観診断→機器診断の段階適用が東京都・国交省ともに基本です。特に機器診断は「切る・残す・更新する」の線引きと説明責任に不可欠です。
外観診断(目視・非破壊の一次スクリーニング)
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空洞兆候・腐朽菌の痕跡・樹皮亀裂・剪定癒合の不良・傾斜・根返り等を、経験則に基づき系統的に観察。
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判定はA/B1/B2/Cの4区分運用が実務で広く用いられ、B2→1年後フォロー、C→速やかに更新が標準的。

機器診断(数値・画像化による合意形成の要)
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レジ(RESI PD / レジストグラフ):貫入抵抗の変化から空洞・腐朽の存在や拡がりを線状プロファイルで把握。穿孔径が極細で侵襲を最小化しつつ数値化でき、外観診断で疑義のある断面の確認に有効。
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アーボソニック3D(Fakopp):幹周にセンサーを配置し応力波(音波)の伝播時間から2D/3Dの内部マップを生成。空洞・腐朽の位置と相対的な進行度を可視化でき、伐採・保存の判断材料として市民説明にも強い。
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ピカス(PiCUS Sonic Tomograph):音速差を利用した断層画像で空洞・腐朽の形状を表示。根元・分岐部・大径木の評価に有効で、写真的な図示が合意形成に役立つ。最新機(PiCUS 3)は剪定痕や枝分かれ部の診断にも有用とされます。
- 樹木医 樹木診断 機器診断 アーボソニック3D 多点式音響波
- 樹木医 樹木診断 街路樹 高木 レジPD-500 レジストグラフ ベッコウタケ
研究知見:音波計測系(PiCUS/ArboSonic/)は、外観診断を補完する診断として用いられ、非破壊・視覚化の長所が報告されています。機器ごとの表現差や誤差特性を理解し、複数機器の併用が望ましいとされています。J-STAGE
これからの「東京型」運用デザイン(提案)
1)リスクベース×ライフサイクルの体系化
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面的な抽出点検(定期)→外観診断(優先度付け)→機器診断(重点木)→処置→フォローアップ。強風・地震後の臨時点検と市民通報プロトコルを別紙で明文化。
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目標管理樹形の考え方を導入し、強剪定の回避と切り返し・透かしを基調に。掘削時の支持根保護と**更新(植替え)**のルール化で、腐朽しにくい管理へ移行。
2)診断の見える化と合意形成
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A/B1/B2/Cの色分け地図、次回点検時期、処置メニューをGIS台帳に集約。B2(1年後フォロー)/C(速やか更新)は意思決定期限も併記。
港区の準用運用は、区民説明のテンプレにも応用可能。city.minato.tokyo.jp
3)機器診断の標準オプション化
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伐採・大型剪定の意思決定手前で、RESI PD/ArboSonic 3D/PiCUS等を必須確認項目に。
断面×高さを変えた多層測定と複数機器のクロスチェックで偽陰性・偽陽性を低減しています。J-STAGE
4)更新計画と樹種・基盤の再設計
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大型化リスクの高い列植は段階更新し、空間制約に適合する樹種・樹形へ転換。
根域容量の確保・透水通気性舗装・根域制限など基盤改良をセットに。国土交通省 中部地方整備局
弊社(トシ・ランドスケープ)の実務対応と支援パッケージ
樹木診断・管理マニュアル策定のご相談を、都内各自治体から多数いただいています。
現場での外観診断→機器診断→合意形成の一連を、制度・仕様書に落とし込むお手伝いをしています。
樹木医・街路樹診断士としての診断のサービス概要は自社ページにも掲載しています。toshilandscape.co.jp
まとめ:安全・景観・コストの最適点へ
大型化・老木化が進む今、「診断に基づく計画的更新」と「若齢期からの良質な育成」は不可避です。
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東京都の標準(街路樹診断等マニュアル)で骨格を合わせ、
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東京国道の実務原則(強剪定回避/目標管理樹形/根系配慮)で運用を磨き、
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機器診断(RESI/ArboSonic 3D/PiCUS)で見える化と説明責任を強化する。
この三位一体で、事故予防・景観・ライフサイクルコストの同時最適化が実現できます。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医・街路樹診断士 中村雅俊
弊社ウェブサイト内にも樹木医診断や過去の事例について
詳しく情報を公開しています。
コンサルティング業務・樹木医診断・治療 施工実績一例をご紹介いたします。
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