昨日までの暖かさとうって変わりとても寒い一日でした。
高さ約30mのユリノキで、枯れ枝と忌み枝を中心に剪定した記録です。高圧電線に近い枝を、ロープで吊り上げて木の内側へ引き込んでから切った作業のほか、ユリノキという木の性質と、枯れ枝・忌み枝を取る理由を、行政や研究機関の資料をもとに書き添えます。
約30mのユリノキの枯枝・忌み枝を剪定
30mほどあるユリノキの枯枝と忌み枝を中心にした剪定を行いました。

ツリークライミング 高木剪定 樹木医

ツリークライミング 高木剪定 樹木医

ツリークライミング 高木剪定 樹木医
ユリノキとは──北米東部から明治に来た高木
ユリノキは、モクレン科の落葉高木です。英国キュー王立植物園の植物の分布のデータでは、自生地はカナダ南東部から米国東部にかけての北米東部とされています。日本へは明治の初めに入り、環境省の新宿御苑の資料によると、栽培試験場だった時代の新宿御苑に日本ではじめて植えられ、都内にあるユリノキの多くはその子孫とされています。チューリップのような黄緑色の花が、5月の連休のころに咲きます。
ユリノキについて、資料で確かめられることを表にまとめます。
| 項目 | 資料にあること |
|---|---|
| 学名・科 | Liriodendron tulipifera、モクレン科 |
| 自生地 | 北米東部(カナダのオンタリオ州から、米国東部の各州) |
| 日本への導入 | 明治の初め、栽培試験場だった新宿御苑に日本ではじめて植えられた |
| 花 | チューリップのような黄緑色の花、5月の連休のころ |
| 新宿御苑のユリノキの大きさ | 樹高35m、幹周り491cm、樹齢120年以上(推定) |
| 樹形のタイプ(街路樹の資料) | 卵円型、望ましい樹高と枝張りの比の目安は0.6 |
出典: 環境省 生物多様性センター「巨樹・巨木林観察コースガイド 新宿御苑」、Royal Botanic Gardens, Kew「World Checklist of Vascular Plants」(GBIF で公開されているデータ)、埼玉県「街路樹剪定マニュアル」(令和2年12月)表3-1
枯れ枝と忌み枝を取る理由
国土技術政策総合研究所の「街路樹の倒伏対策の手引き」は、枝葉が密になると日の届かない樹冠の内側の枝が枯れやすくなること、枯れた枝は生きている組織との境目のあたりで折れること、枯れた枝は生きた枝に比べて、強い風が無くても落ちる危険が高いことを挙げています。

枯れ枝とぶら下がった枝(点線の円。当社の説明用イラスト)
忌み枝は、ほかの枝と交差するからみ枝、内側や下へ向かう逆さ枝、真上へ勢いよく伸びる徒長枝、幹から出る胴吹き、根元から出るひこばえなど、木の形や育ちを乱す枝をまとめた庭師の呼び名です。埼玉県の街路樹剪定マニュアルも、はじめに切除の対象となる枝(不要枝)を除き、その後に残す枝で形を整えていく順番を示しています。忌み枝の見分け方と、あえて残す枝については「忌み枝とは──切る枝の見分け方と、あえて残す枝」で詳しく書いています。

忌み枝のある木。破線は切る位置(当社の説明用イラスト)
高圧電線に近い枝は、吊り上げて内側へ引き込んでから切る
高圧電線に接触しそうな枝がありましたが、
枝をリフトアップし内側に引き込み安全に剪定しました。

電線と枝の干渉(点線の円。当社の説明用イラスト。この現場の様子ではありません)
この現場では、切る前に枝をロープで吊り上げ(リフトアップ)、電線から離れる木の内側へ引き込んでから切っています。
電線の近くでの作業について、労働安全衛生規則 第349条は、架空電線に近い場所で工作物の建設・点検・塗装などの作業や、移動式クレーンなどを使う作業を行うとき、作業する人の身体などが電線に触れたり近づいたりして感電の危険が生じるおそれがあれば、電線の移設、囲いの設置、絶縁用防護具の装着、それが著しく困難なときは監視人を置いて作業を監視させること、のいずれかを事業者に求めています。電線と枝の関係は、木を手入れする側だけでは決められないことが多く、建物・電線・道路に囲まれた高木の手入れの難しさは「都市の高木は、なぜ手入れできなくなるのか」でも書いています。
ロープワークで、枝先まで細かく手を入れる
ツリークライミング・ロープワーク技術を使用することにより、
枝先まできめの細かい管理が行え美しい樹形と健全な樹体を維持することが出来ます。
枝を切る位置にも決まりがあります。埼玉県の街路樹剪定マニュアルは、枝の付け根の、枝の組織と幹の組織が混じり合うブランチカラーを傷つけない位置で切ること、幹に接して切るフラッシュカットは切り口をふさぐ防御の組織を壊し、腐朽菌が入りやすくなることを示しています。太い枝を一度に切ると、枝の重さで付け根の下側が裂けるため、先に枝を短く切って軽くしてから、正しい位置で切り戻す「二段切り」を行うこととしています。切る位置の考え方は「剪定の切る位置はブランチカラー」にまとめています。
都心部の住宅街でこれだけの大きさの樹木が大切に自然樹形のまま
管理されてきている事に大変嬉しく感じました。
ご依頼ありがとうございました。
まとめ
高さ約30mのユリノキで、枯れ枝と忌み枝を中心に剪定しました。高圧電線に接触しそうな枝は、吊り上げて木の内側に引き込んでから切り、ロープワークで枝先まで手を入れています。枯れ枝は強い風が無くても落ちやすく、忌み枝は木の形と育ちを乱す枝です。どちらも、自然樹形を保ちながら取り除くことができます。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
樹木医 髙尾聡司
よくある質問
Q1. ユリノキはどこから来た木ですか。
北米東部(カナダ南東部から米国東部)に自生するモクレン科の落葉高木です。日本へは明治の初めに入り、栽培試験場だった新宿御苑に日本ではじめて植えられたとされています(環境省の資料)。
Q2. 枯れ枝は、風の強い日でなければ落ちませんか。
国土技術政策総合研究所の手引きは、枯れた枝は生きた枝に比べて、強い風が無くても落ちる危険が高いとしています。
Q3. 電線に近い枝は、どうやって切るのですか。
この現場では、切る前に枝をロープで吊り上げ、電線から離れる木の内側へ引き込んでから切りました。
出典・参考情報
・環境省 生物多様性センター「巨樹・巨木林観察コースガイド 新宿御苑」
・Royal Botanic Gardens, Kew「World Checklist of Vascular Plants」(GBIF の Liriodendron tulipifera)
・国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」国総研資料 第1059号(2019年2月)Ⅱ p.1-21〜1-22
・埼玉県 県土整備部道路環境課「街路樹剪定マニュアル」(令和2年12月)表3-1、p.4-10、p.5-9〜5-10
・労働安全衛生規則 第349条(e-Gov 法令検索)
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・剪定の切る位置はブランチカラー フラッシュカットとスタブカットを避ける、樹木にやさしい剪定
※ 「ツリークライミング」は、株式会社ツリークライミングワールドの登録商標です。当社の記事では、ロープとハーネスで樹木に登って作業する技術を指す言葉として使っています。






















