剪定による枝の切り口を早く回復させるベストな剪定位置は、枝と幹の境(ブランチカラー)で行う事が必要となります。
一見して幹ギリギリで剪定したほうがスッキリ綺麗に見えると思われがちですが、実は幹の組織まで傷つけてしまっているのです。それをフラッシュカットと呼びます。
幹の組織まで傷つき、かつ切り口も大きくなってなかなか傷口(剪定箇所)を塞ぐことができず、病原菌も侵入しやすくなってしまいます。
少しの剪定の気遣いで樹木を健全に生育させることが可能になります。
この記事では、枝の付け根のつくりと、切る位置による違いを、イラストと、アメリカの樹木学者アレックス・シャイゴの研究、国や自治体の基準をもとに説明します。
先に答え
- 剪定で枝を切る位置は、枝と幹の境にあるブランチカラー(枝の付け根の下側の膨らみ)の直前です。幹側のバークリッジとブランチカラーを残し、傷つけないように切ります。
- 幹ギリギリで切るフラッシュカットは、幹の組織まで傷つけ、切り口も大きくなって塞がりにくくなります。東京都の計画書は、ブランチカラーを切り落とすと腐朽が生じる場合があるとしています。
- 枝を切り残すスタブカットは、切り残した枝が将来枯れ枝になり、樹皮の巻き込みが遅くなります。
- 東京都建設局の街路樹維持管理計画書(令和3年12月)は、ブランチカラーには腐朽をくい止める働きをする防御帯が形成されるため、ここを残して切るとしています。
- 傷を受けた木が腐朽を囲い込む仕組みは、シャイゴらが CODIT(樹木における腐朽の区画化)として整理しています。付け根を残して切ることは、木がもともと持つこの守りを生かすことです。
- 太い枝は3段階に分けて切り、木に残る最後の切り口だけを、バークリッジとブランチカラーのすぐ外側に入れます。
枝を切った跡が残る幹。切り口の木部が見えている
枝を切った跡が残る幹。切り口の面はこの角度からは見えない
枝の付け根のつくり──ブランチカラーとバークリッジ
切る位置を決める手がかりは、枝の付け根にある2つの膨らみです。この形がなぜできるのかを、アメリカ農務省森林局の研究者だったアレックス・シャイゴ(Alex L. Shigo)が、木を切り開いて確かめてきました。日本でもこの考え方は行政の基準に取り入れられていて、横浜市道路局の「街路樹維持業務委託共通仕様書」(令和8年2月)は、剪定の方法の図に、シャイゴの著書を日本樹木医会が訳・編集した『現代の樹木医学 要約版』の図を引いています。ここからは、原典にあたって紹介します。
ブランチカラーとバークリッジは、どうやってできるのか
シャイゴは1985年の論文「How tree branches are attached to trunks(枝は幹にどのようにつながっているか)」で、枝の付け根の組織を調べています。論文によると、成長期の初めには枝の組織が幹の組織より先に育ち始め、枝の木部は付け根で下向きに伸びて付け根を囲み、襟(カラー)をつくります。成長期の後半になると、その枝の襟を、幹の木部の襟が外から包みます。枝は、毎年重なっていくこの幹の襟によって幹に構造的につながっている、というのが論文の結論です。
付け根の下側の膨らみ(ブランチカラー)は、この重なりが外から見えている部分です。横浜市の共通仕様書も、カラーを「枝の付け根の枝組織と幹組織が混じり合っている」部分と説明しています。
上側のバークリッジは、枝と幹が太るにつれて股の部分の樹皮が押し合い、枝の両脇の幹の上へ押し出されてできる樹皮の盛り上がりです(同じ1985年の論文)。シャイゴは1982年の解説「A Pictorial Primer for Proper Pruning」で、このバークリッジを正しい剪定の道しるべと書き、鋏や鋸をバークリッジの手前に当てて、下へ、やや外向きに切るように書いています。米国森林局の「How to Prune Trees」(2012年改訂)も、適切な切り口はバークリッジのすぐ外側から始まり、幹から離れる向きに斜めに下りる、と説明しています。次の章に載せた「適切な切る位置」のイラストで、破線が幹と平行ではなく、下ほど枝の側へ傾いているのは、このためです。アメリカの剪定の規格 ANSI A300(2001年版)も、枝を付け根から除く切り口は、バークリッジやカラーに切り込まず、切り残しも作らずに、幹の近くで切ると定めています。
付け根の守り──防御帯と、腐朽の区画化(CODIT)
ブランチカラーを残す理由は、見た目ではなく、木の内部の守りの仕組みにあります。
シャイゴと共同研究者のマークス(H. G. Marx)は、1977年に米国森林局の資料「Compartmentalization of Decay in Trees(樹木における腐朽の区画化)」をまとめました。頭文字をとってCODIT(コーディット)と呼ばれる考え方です。傷を受けた木は、傷のまわりの材を区画として囲い込み、腐朽の広がりを抑えます。資料は、その区画の壁を4つに分けています。

- 壁1: 区画の上と下。傷のあと縦方向の管が詰まってできる壁で、最も弱い
- 壁2: 区画の内側。年輪の最後の数層の細胞がつくる壁で、2番目に弱い
- 壁3: 区画の左右。放射組織がつくる壁で、比較的強い
- 壁4: 傷を受けたあとに形成層がつくる壁(バリアゾーン)。傷の前にできた材と、後にできる材を分ける、最も強い壁
同じ資料は、壁1、壁2、壁3の順に破られることがあり、多くの場合は壁4が持ちこたえるものの、十分な時間がたてば壁4も破られうる、と述べています。区画化は傷を治す働きではなく、腐朽を閉じ込める働きです。


枝の付け根には、この守りがもともと備わっています。シャイゴの1985年の論文は、付け根の中に、広葉樹ではフェノール系、針葉樹ではテルペン・樹脂系の抗菌物質を含む保護帯(protection zone)があり、腐朽菌はふつうこの保護帯を越えて広がらないという先行研究を紹介し、枝が枯れ始めると付け根の中に保護帯が発達すると述べています。東京都建設局の街路樹維持管理計画書(令和3年12月)が「ブランチカラーに腐朽をくい止める働きをする防御帯が形成される」と書いているのは、この働きのことです。
切る位置による3つの違い
剪定の切る位置は、次の3つに分けて考えられます。
・枝を切り残す位置(スタブカット): 切り残した枝が将来枯れ枝になり、樹皮の巻き込みが遅くなります。
・幹側のバークリッジとブランチカラー(枝の下の膨らんだ部分)を残し、傷つけない位置: 適切な切る位置です。
・幹ギリギリで切る位置(フラッシュカット): 幹の組織まで切ることになり、傷口が大きく塞がりにくくなります。
この3区分は、日本樹木医会神奈川県支部と横浜市がまとめた「名木古木保存事業に係る樹木管理基準」の解説図によるものです。次の3枚は、同じ枝で、破線の位置だけを変えて描いています。



フラッシュカットで起きること
シャイゴは1985年の論文で、ブランチカラーを取り去る切り方をフラッシュカットと呼んでいます。論文の要旨には、幹の襟が傷ついたり取り除かれたりした切り口では、切り口の上下の幹の材が速く、広く感染して腐朽が進み、幹の襟を傷つけず取り除かなかった切り口では、幹の材に感染は起きなかったと書かれています。

理由は、幹ぎりぎりの切り口が、枝ではなく幹の組織を切っていることにあります。1982年の解説は、バークリッジより内側で切ると幹を傷つけるだけでなく、付け根の内部にある化学的な保護層を取り去ってしまい、幹の上下の材に微生物が入りやすくなること、強い切り方からは内部に割れが生じることもあると書いています。シャイゴらが1979年に発表したクルミ(ブラックウォルナット)の調査では、13年前に幹ぎりぎりで切られた枝の跡17か所のうち14か所に、年輪に沿った割れ(目回り)と濃い変色の帯が見られました。目回りは、傷の前にできた材と後にできた材を分けるバリアゾーン(壁4)に沿ってできていました。
東京都建設局の「令和三年度 街路樹診断等マニュアル」の事例集も、ブランチカラーやブランチバークリッジを含めて剪定すると幹の一部を切除することになり、幹の腐朽が進行するおそれがあるとして、剪定箇所から空洞化した事例の写真を載せています。
切り口の大きさにも差が出ます。ニーリー(D. Neely)が1988年に発表した、ピンオーク・アメリカスズカケノキ・ノルウェーカエデでの4年間の比較では、直径25〜35mmの枝で、カラーの外で切った切り口の幅は枝の直径より4〜6%広い程度だったのに対し、カラーを切り込んだ切り口は32〜51%広くなりました。一方で、カラーを切り込んだ切り口のほうが巻き込みの伸びは速く、2成長期のあとに完全にふさがった数はそちらのほうが多かった、とも報告しています。
ニーリーの比べを、表にすると次のとおりです。
| 項目 | カラーの外で切る | カラーを切り込んで切る |
|---|---|---|
| 切り口の幅(枝の直径との比べ) | 4〜6%広い | 32〜51%広い |
| 巻き込みの伸び(1年目) | 8.1mm | 14.8mm |
| 巻き込みの伸び(2年目) | 12.6mm | 17.8mm |
| 2成長期のあとに完全にふさがった数 | 少ない | 多い |
ピンオーク・アメリカスズカケノキ・ノルウェーカエデ、直径25〜35mmの枝。巻き込みが速くふさがっても、幹の中の守りの層を切り取った跡は残る(本文の次の段落)。出典: Dan Neely「Closure of Branch Pruning Wounds with Conventional and ‘Shigo’ Cuts」Journal of Arboriculture 14(11): 261–264、1988年
つまり、フラッシュカットの問題は、表面の傷がふさがるかどうかだけでなく、幹の中で何が起きているかにあります。外から見てふさがっていても、幹の守りの層を切り取った跡は、内部の変色や腐朽として残ることがある。シャイゴらのクルミの調査は、13年後にそれを確かめたものです。
スタブカットで起きること
反対に、枝を途中で切り残すスタブカットでは、切り残した部分の枝の組織がやがて枯れます。米国森林局の「How to Prune Trees」は、傷を覆う組織(巻き込み)は幹の組織からできるため、切り残しの上まで覆わなければならず、そのぶん傷がふさがるのが遅れること、切り残しは胴枯れ性の病原菌の入口にもなりうることを挙げています。
東京都建設局の街路樹診断等マニュアルは、幹から出た枝を10数cm程度残して切る剪定が見られるとしたうえで、切り残しがあると樹皮の巻き込みができないばかりか、やがて切り残しに生じる腐朽が幹にまで達して大きな腐朽になるとしています。「剪定による枯れを見越して」意図的な切り残しを勧める剪定方法もあるが、これは誤りである、とも書いています。
都の街路樹診断では、スタブカットは外観診断で有無を確かめる項目の一つです。腐朽・枯死した切り残しが落ちるおそれと、腐朽が大枝や幹に及ぶおそれがあるため、見つけた場合は速やかに切除するのが望ましいとされ、直径3cm以上か長さ20cm以上の切り残しは「著しい被害」と判定します。国土技術政策総合研究所の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」も、長い横枝は途中で切らずに枝ごと切ること、途中で切った枝は数年後に枯れて落ちる危険が高いことを挙げています。
すでに枯れている枝でも、考え方は同じです。シャイゴの1982年の解説は、生きている枝・枯れかけた枝・枯れた枝のいずれでも、ブランチカラーを傷つけたり取り除いたりしないこと、枯れた枝では枝を囲む幹の組織を傷つけずに切ることを、写真で示しています。
数年後の巻き込みの形

上のイラストは、切ってから数年後の切り口を並べたものです。米国森林局の「How to Prune Trees」は、適切な切り口からは傷を覆う組織(woundwood。カルスとも呼ばれます)が同心円の輪のようにできること、フラッシュカットの切り口では左右に巻き込みが目立って発達し、上下にはほとんどできないことを図で示しています。シャイゴの1982年の解説にも、オークで正しく切った枝が2年後に輪のようにふさがった写真と、幹ぎりぎりで切った枝の2年後に、傷ついた幹に厚い巻き込みができた写真が並んでいます。幹ぎりぎりで切ってから1年後のサクラの縦断面では、切り口の上と下から割れが生じ始め、辺材が変色していました。
現場での経験から言えば、古い剪定痕の巻き込みの形を見ると、その枝がどの位置で切られたかがおおよそ分かります。丸く均等に巻き込んでいれば付け根を残して切った跡、縦長で左右だけが盛り上がっていれば幹ぎりぎりで切った跡、枯れた枝の短い残りが突き出していれば切り残しの跡です。
太い枝の切り方と、切り口の処理
太い枝は3段階で切る
切る位置が分かっていても、太い枝を一度で切ると、切り終わる前に枝の重みで裂け、付け根の下の樹皮が幹まで剥がれます。主枝を一回で切ろうとすると、枝の重さで幹の付け根の下方部の樹皮が裂けてしまう。そのため、切除位置の上部でいったん短く切り詰めて枝を軽くし、そのあと適切な位置で切り戻す。東京都建設局の街路樹維持管理計画書が示す手順です。横浜市道路局の共通仕様書も、太枝は切断予定箇所の数十センチ上をあらかじめ切って軽くしてから切り返す「二段切り」を定めています。
国総研の手引きと米国森林局の「How to Prune Trees」は、いずれも次の3段階を示しています。
- ブランチカラーより外側で、枝の下側に浅く切り込みを入れる(樹皮が裂けて幹まで走るのを止めるため)
- 1の切り込みより外側で、枝を上から切り落とす(短い切り残しができる)
- 残った短い枝を、バークリッジとブランチカラーのすぐ外側で切る
木に残る切り口になるのは、3回目だけです。1回目と2回目は、その最後の切り口をきれいに入れるための準備です。
大枝や主幹を、分かれた枝のところまで切り下げる場合は、残す枝の太さにも目安があります。横浜市の名木古木の管理基準は、切る枝と残す枝の直径の比を1/3以下にし、切断する角度は残す枝と平行にする、としています。国総研の手引きは、残す枝は切断する主幹の直径の最低でも1/3の太さが必要とし、米国森林局の資料も、分かれ目で幹の直径の少なくとも3分の1ある横枝のところで切るよう勧めています。
ブランチカラーが見えにくい枝
ブランチカラーがはっきり膨らんでいない枝もあります。アイスナー、ギルマン、グラボスキーが2002年に発表した研究では、アメリカハナノキ(レッドメープル)とライブオークの枝を切って4か月後の幹の変色を調べ、幹に対して枝が太いほど(枝と幹の直径の比が、ライブオークで0.39、アメリカハナノキで0.59を超えると)幹に強い変色が生じたこと、ブランチカラーがあることは区画化の力が強いことの目印だったことを報告しています。カラーは、幹に比べて細い枝に多く見られました。ギルマンとグラボスキーの2006年の研究でも、幹に比べて細い枝を除いたときより、同じくらいの太さで競り合う幹(コドミナント)を除いたときのほうが、変色が多くなりました。
カラーが見えないときの切る位置について、国総研の手引きは、明瞭なブランチカラーがない場合、バークリッジの終点から幹の伸びる方向に平行な線を引き、その角度を倍にした線を適切な剪定位置とする方法を図で示しています。同じくらいの太さの幹が分かれるコドミナントの分岐では、バークリッジの先端と、稜線の終点から枝の伸びる方向に直交した端部を結んだ線を剪定位置とし、樹皮のしわを残すとしています。
太い枝ほど守りの組織が育ちにくく、切ったあとの傷も大きくなります。シャイゴらの1979年の報告も、剪定は木が若いうちに行うこと、成木で切るときは枯れかけた枝や枯れた枝のまわりにできるカラーを残すことを勧めています。太くなってから切るより、細いうちに整えておくほうが木への負担は小さい、というのが、これらの研究から読み取れることです。
切り口に薬剤を塗るかどうか
切り口の処理は、国内の行政の資料と海外の研究とで、書き方が分かれる点です。
国内では、東京都建設局の街路樹維持管理計画書が、切り残しを切り取った直径3cm以上の切り口に防菌と癒合促進の処理を、同じく東京都の街路樹診断等マニュアルが、枯枝や支障枝の剪定で直径5cm以上の切り口に癒合剤の塗布を、横浜市の名木古木の管理基準が、直径5cm以上の切り口に殺菌剤や癒合材の塗布を、横浜市道路局の共通仕様書が、おおむね直径15cm以上の太い枝の切り口に必要に応じて殺菌・癒合促進剤の塗布を定めています。国総研の手引きも、大きな切り口には腐朽防止のための殺菌剤を塗り、特にカルスの発達が遅く癒合組織の形成に時間がかかる樹種では丁寧に塗るとしています。
一方、シャイゴと共同研究者のショートル(W. C. Shortle)は、13年間にわたる研究で塗布剤を試した275本の木を解剖し、腐朽を防いだ材料はなく、処理の違いより木そのものの個体差のほうが傷への影響が大きかったと、1983年に報告しています。米国森林局の「How to Prune Trees」も、多くの場合塗布剤は不要でかえって害になることもあり、腐朽を止めたり感染症を治したりはしない、と明記しています。例外として挙げているのは、ナラ類の萎凋病やニレ類の立枯病が広がる時期の、ナラ・ニレの新しい傷です。
本文に挙げた資料の書き方を、並べると次のとおりです。
| 資料 | 対象 | 塗る切り口 | 書き方 |
|---|---|---|---|
| 東京都建設局 街路樹維持管理計画書(令和3年12月)p.4 | 街路樹の切り残しの切除 | 直径3cm以上 | 防菌及び癒合促進処理を施す |
| 東京都建設局 街路樹診断等マニュアル(令和3年度)p.70 | 街路樹の枯枝・支障枝の剪定 | 直径5cm以上 | 癒合剤を塗布する |
| 横浜市 名木古木保存事業に係る樹木管理基準(令和4年11月)p.4 | 名木古木の指定木 | 直径5cm以上 | 殺菌剤や癒合材を塗布する |
| 横浜市道路局 街路樹維持業務委託共通仕様書(令和8年2月)第41条 | 街路樹 | 太い枝(概ね直径15cm以上) | 必要に応じて殺菌・癒合促進剤を塗布する |
| 国総研 街路樹の倒伏対策の手引き 第2版 Ⅱ1-85 | 街路樹 | 大きな切り口 | 腐朽防止のための殺菌剤を塗布する、カルスの発達が遅い樹種は丁寧に |
| Shigo・Shortle(1983) | 13年間の試験で傷を付けた木(解剖275本) | 大きさの決まりは無い | 腐朽を防いだ材料は無かった、木の個体差のほうが影響が大きい |
| 米国森林局 How to Prune Trees(2012年改訂) | 樹木の剪定 | 大きさの決まりは無い | 多くの場合不要で害になることもある、例外はナラの萎凋病・ニレの立枯病が広がる時期の新しい傷 |
どの資料も、正しい位置で切ることを前提にしています。公共の樹木では、それぞれの管理者が定める基準や仕様書に沿って処理します。出典: 表の各資料(本文の「出典・参考情報」と同じ)
どちらの資料も、正しい位置で切ることを前提にしています。薬剤は、ブランチカラーを切り取ってしまった切り口の代わりにはなりません。公共の樹木では、それぞれの管理者が定める基準や仕様書に沿って処理します。
よくある質問
Q1. ブランチカラーとは何ですか。
枝の付け根の下側にある膨らみのことです。東京都建設局の街路樹維持管理計画書(令和3年12月)では、ここに腐朽をくい止める働きをする防御帯が形成されるため、ブランチカラーを残してその直前で切り落とすとしています。
Q2. 剪定で枝を切る正しい位置はどこですか。
幹側のバークリッジ(枝の付け根の上側)とブランチカラー(枝の付け根の下側の膨らみ)を残し、傷つけない位置です。枝を切り残す位置でも、幹ギリギリの位置でもなく、その間で切ります。
Q3. フラッシュカットは、なぜ避けるのですか。
幹ギリギリで切ると、すっきり見えても幹の組織まで傷つけ、切り口が大きく塞がりにくくなるためです。東京都の計画書も、ブランチカラーを切り落とすと防御帯の形成が妨げられ、腐朽が生じる場合があるとしています。
Q4. スタブカット(切り残し)は何が問題ですか。
切り残した枝が将来枯れ枝になり、樹皮の巻き込みが遅くなります。東京都の計画書は、切り残しに生じる腐朽が幹まで達して大きな腐朽になる場合があるため、切り残しを作らないように剪定するとしています。
Q5. 太い枝を切った切り口には、何か塗りますか。
横浜市の「名木古木保存事業に係る樹木管理基準」(令和4年11月)は、切り口の直径が5cm以上なら殺菌剤や癒合材を塗るとしています。東京都の計画書は、切り残しを切り取った切り口が直径3cm以上の場合に、防菌と癒合促進の処理を施すとしています。
Q6. CODIT(樹木における腐朽の区画化)とは何ですか。
傷を受けた木が、傷のまわりの材を区画として囲い込み、腐朽の広がりを抑える仕組みを、シャイゴとマークスが1977年に整理した考え方です。区画の上下・内側・左右の壁と、傷のあとに形成層がつくるバリアゾーン(壁4)の4つの壁で説明され、壁4が最も強いとされています。
Q7. 太い枝は、どうやって切りますか。
3段階に分けて切ります。ブランチカラーより外側で枝の下側に浅く切り込みを入れ、その外側で枝を切り落としてから、残った短い枝をバークリッジとブランチカラーのすぐ外側で切ります。一度で切ると、枝の重みで裂けて付け根の下の樹皮が幹まで剥がれるためです。
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出典・参考情報
・名木古木保存事業に係る樹木管理基準 令和4年11月(日本樹木医会神奈川県支部・横浜市環境創造局) 「指定木の枝木の剪定」(4ページ)。切る位置の3区分、直径比1/3以下、5cm以上の切り口への処理は、この資料の記載によるもので、名木古木の指定木を対象とした基準です。
・街路樹維持管理計画書 令和3年12月(東京都建設局公園緑地部) 「2.街路樹剪定時の留意点」(4〜5ページ)。ブランチカラーの保全と防御帯、スタブカットの防止、枝を切除する順番、直径3cm以上の切り口の防菌・癒合促進処理は、この資料の記載によるもので、街路樹を対象とした計画書です。
・令和三年度 街路樹診断等マニュアル(東京都建設局) スタブカットの判定基準(27ページ)、剪定と癒合剤(70〜72ページ)。フラッシュカットの事例は同マニュアル第Ⅶ章 参考資料の事例集(130ページ)。
・街路樹維持業務委託共通仕様書(令和8年2月、横浜市道路局) 第41条(剪定の方法。19ページ)、図2 剪定の方法(バークリッジとカラー。23ページ)。
・街路樹の倒伏対策の手引き 第2版(国土技術政策総合研究所資料 第1059号、2019年2月) 「剪定する位置」(Ⅱ 1-84〜1-85ページ、図-3.3)。
・A Pictorial Primer for Proper Pruning(Alex L. Shigo、Forest Notes、1982年春号、18〜21ページ) 米国森林局 北東部森林試験場の主任研究員による解説。バークリッジの外側から下へやや外向きに切ること、正しく切った切り口が2年後に輪のように巻き込まれる様子(Figure 11)、幹ぎりぎりで切った切り口の巻き込み(Figure 12)と上下の割れ(Figure 10)は、イラストの参考にしたものです。
・How tree branches are attached to trunks(Alex L. Shigo、Canadian Journal of Botany 63: 1391–1401、1985年) 枝の襟と幹の襟の重なり、保護帯、フラッシュカット後の感染。
・Compartmentalization of Decay in Trees(Alex L. Shigo・Harold G. Marx、USDA Forest Service Agriculture Information Bulletin 405、1977年) CODIT の4つの壁(12〜18ページ)。
・Internal defects associated with pruned and nonpruned branch stubs in black walnut(Shigo ほか、USDA Forest Service Research Paper NE-440、1979年) フラッシュカットの跡17か所中14か所の目回りと変色。
・Closure of Branch Pruning Wounds with Conventional and ‘Shigo’ Cuts(Dan Neely、Journal of Arboriculture 14(11): 261–264、1988年) 切り口の幅と巻き込みの比較。
・Branch Morphology Impacts Compartmentalization of Pruning Wounds(Eisner・Gilman・Grabosky、Journal of Arboriculture 28(2): 99–105、2002年) 枝と幹の直径の比と変色、カラーの有無。
・Branch Union Morphology Affects Decay Following Pruning(Gilman・Grabosky、Arboriculture & Urban Forestry 32(2): 74–79、2006年) コドミナントの除去と変色。
・How to Prune Trees(Bedker・O’Brien・Mielke、USDA Forest Service NA-FR-01-95、2012年改訂) 切る位置、切り残し、3段階の切り方、巻き込みの形、塗布剤。
・ANSI A300 (Part 1)-2001 Pruning(米国規格協会)5.3.2 枝を付け根から除く切り口の位置。
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