昨年に土間コンクリート施工をご依頼頂きました
目黒区のお客様のお宅へ植栽工事に伺いました。
山採りのコハウチワカエデを主木にした植栽工事の記録です。土づくりの資材、植えた植物の性質、バーク堆肥のマルチングについて、行政や研究機関の資料をもとに書き添えます。
土間コンクリートに残した植え桝
既に高木を植栽する場所は、植え桝として位置を決めて
土間コンクリートを施工してあります。

植栽工事の前。土間コンクリートに植え桝の位置を丸く残してある
前の年の工事で、型枠で植栽のスペースを仕切ってからコンクリートを流し込んだときの断面の模式図です。

図: 土間コンクリートの層の重なりと、残した植栽スペース(前年の工事の記事 3488 の図)
山採りのコハウチワカエデ
今回はお客様より山採りの様な樹木の植栽イメージのご要望を頂いておりましたので、
植木の生産者様に何度もご相談と確認をさせて頂きながら、
希望に合ったコハウチワカエデと出会う事が出来ました。
「山採り」とは山に自生している自然木を掘り起こしてきたものをいいます。
1本1本厳しい自然の中で育ってきた非常に魅力的な樹形をしています。

山採り モミジ コハウチワカエデ
他にない1点ものになりますので良い植木に出会えるかは
本当に奇跡的な出会いなのかもしれません。
コハウチワカエデ(学名 Acer sieboldianum)は、ムクロジ科のカエデの仲間です。英国キュー王立植物園の分布のデータでは、自生地は日本だけとされています。
植木の大きさは「H3.2m」のように記号で表します。国の「公共用緑化樹木の品質寸法規格基準(案)」の決め方です。
| 記号 | 名前 | 基準での決め方 |
|---|---|---|
| H | 樹高 | 樹冠のいちばん上から根鉢の上端までの垂直の高さ、一部の飛び出した枝は含まない |
| C | 幹周 | 根鉢の上端から1.2m上で測る幹の周りの長さ、幹が2本以上の木は各幹の周りの長さの合計の70% |
| W | 枝張 | 四方に伸びた枝の幅、方向で長短があれば最長と最短の平均 |
出典: 建設省都市局都市緑地対策室長通達「「公共用緑化樹木の品質寸法規格基準」(案)の改訂及び運用等について」(平成8年2月15日、建設省都緑対発第一号)別添の定義

樹高・幹周・枝張の測り方(当社の説明用イラスト。描いている木はコハウチワカエデではありません)
植え穴を深く掘り、土を整える
実際に植える深さよりも深く掘り、
土を柔らかくし根が伸びやすい環境を整えます。
樹木にとって土の環境を整えることは最も重要な事ですので、
必要に応じて、パーライトや炭、完熟堆肥などを混ぜて植栽します。
パーライトや木炭、バーク堆肥は地力増進法の「政令指定土壌改良資材」で、袋に表示する「主たる効果」の言葉が国の基準で決まっています。
| 資材 | 表示する主たる効果 | 表示する施用上の注意(要点) |
|---|---|---|
| パーライト(真珠岩を砕いて高温で加熱した物など) | 土壌の保水性の改善 | 地表に出ると風雨で流れ出ることがあるので、十分に土をかぶせる |
| 木炭 | 土壌の透水性の改善 | 地表に出ると流れ出ることがあり、土の中で層になると効果が出ないことがあるので、十分に土と混ぜる |
| バークたい肥(樹皮を主な原料にして堆積・腐熟させた物など) | 土壌の膨軟化 | 多く入れると、入れた当初は土が乾きやすくなるので、適宜水やりをする |
出典: 農林水産省「土壌改良資材品質表示基準」(昭和59年農林水産省告示第2002号、最終改正 平成12年)。原料の例は同じ基準の表示例から
木の向きは、お客様と一緒に決める
個人のお客様のお宅の植栽の場合には、
お客様にも樹木の向き等を実際にご覧になって頂き
植栽することが弊社では多いです。
一度そこで決めたら樹木はもう移動できませんし、
その後何十年もそこの環境で生育しますので非常に重要です。
我々プロの感性もお伝えさせて頂きながら
ご一緒に決めていくのも楽しみの一つではないでしょうか。
植えた植物
■H3.2m程の山採り・コハウチワカエデ を主木に、
■アオダモ
■クロモジ
■ノシラン
■ヒメシャガ
■エゴポデューム 和名:イワミツバ(岩三葉)
■マホニアコンフューサ
■ローズマリー
■クリスマスローズ
■斑入りフッキソウ
などを植栽致しました。
植えた植物の学名・科・自生地を、キュー王立植物園の分布のデータで確かめました。日本に自生する木と下草に、ヨーロッパや地中海、中国の植物を組み合わせています。
| 植物(記事の表記) | 学名 | 科 | 自生地 |
|---|---|---|---|
| コハウチワカエデ | Acer sieboldianum | ムクロジ科 | 日本 |
| アオダモ | Fraxinus lanuginosa の仲間 | モクセイ科 | 日本、千島列島 |
| クロモジ | Lindera umbellata | クスノキ科 | 日本 |
| ノシラン | Ophiopogon jaburan | キジカクシ科 | 日本、朝鮮半島、南西諸島 |
| ヒメシャガ | Iris gracilipes | アヤメ科 | 日本 |
| エゴポデューム(イワミツバ) | Aegopodium podagraria | セリ科 | ヨーロッパから西シベリア・朝鮮半島など(日本では外から入った植物) |
| マホニアコンフューサ | Berberis eurybracteata(Mahonia confusa はこの種の別名) | メギ科 | 中国の中南部・南東部 |
| ローズマリー | Salvia rosmarinus | シソ科 | 地中海沿岸 |
| クリスマスローズ | Helleborus(クリスマスローズの仲間) | キンポウゲ科 | ヨーロッパから西アジア、中国の一部 |
| 斑入りフッキソウ | Pachysandra terminalis の斑入りの品種 | ツゲ科 | 日本、中国、サハリン |
出典: Royal Botanic Gardens, Kew「World Checklist of Vascular Plants」(GBIF で公開されているデータ、2026年10月12日に確認)。科の名前は同じデータの分類による
仕上げはバーク堆肥のマルチング
植栽後に、根元にバーク堆肥でマルチングを行います。
バーク=樹皮のことになります。
木材を製材する時に剥ぎ取った樹皮の中に、
有機物などを混ぜ、堆肥化したものをバーク堆肥といいます。
マルチングには下記の様な効果があります。
・雑草の繁茂の抑制
・地面の乾燥予防
・雨水の地表面の流出の軽減
・美観の向上
国土交通省の「緑化施設整備計画の手引き」(建物の上の緑化の資料)も、マルチング材には乾燥の防止、冬の保温、雑草が増えるのを抑える効果、土の飛散を防ぐ効果があるとしています。

マルチングの作業(当社の説明用イラスト。描いているのは木材チップで、この現場のバーク堆肥とは違います)
まとめ
土間コンクリートに残した植え桝に、山採りのコハウチワカエデを主木として植え、アオダモやクロモジ、下草を合わせました。植え穴は深く掘って土を整え、木の向きはお客様と一緒に決め、仕上げに根元をバーク堆肥でマルチングしています。
昨年に引き続きご依頼頂きありがとうございました。
よくある質問
Q1. 「山採り」の木とは何ですか。
山に自生している自然木を掘り起こしてきたものです。1本1本が厳しい自然の中で育ち、同じ形のものが無い1点ものです。
Q2. パーライトや炭は、何のために土に混ぜるのですか。
国の品質表示基準では、パーライトの主たる効果を「土壌の保水性の改善」、木炭を「土壌の透水性の改善」として表示することになっています。どちらも地表に出ると流れ出ることがあるため、土とよく混ぜます。
出典・参考情報
・Royal Botanic Gardens, Kew「World Checklist of Vascular Plants」(GBIF で公開されているデータ)
・建設省「「公共用緑化樹木の品質寸法規格基準」(案)の改訂及び運用等について」(平成8年2月15日)
・農林水産省「土壌改良資材品質表示基準」(昭和59年告示、最終改正 平成12年)
・国土交通省「緑化施設整備計画の手引き」(2001年。香川県「屋上緑化に関する参考資料」p.125 に収録)
個人のお宅では、大きく育った高木の剪定や特殊伐採、樹木医による樹木診断を承っています。お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
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