金原塾 第2弾 in 新宿御苑
東京都新宿区の新宿御苑で開かれた、樹木医有志の散策勉強会に参加した記録です。園内で見た不定根誘導のケヤキや菊花壇展、造園技能士の「判断等試験(旧・要素試験)」について、公的な資料をもとに書き添えます。
樹木医有志と歩く勉強会──金原塾
樹木医有志による散策しながらの勉強会になります。
弊社からも樹木医を目指す若手社員4名、こども4名も参加しました。
- 樹木医 勉強会
私、中村もコロナ禍でずっとお会いすることが出来なかった
樹木医同期にお会いすることができ、大変嬉しく思いました。
- 樹木医 勉強会
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天気も良く散策日和で、若手メンバーも先輩樹木医にたくさんの質問をし、
お話を伺ったり、一生懸命メモを取ったり、
普段の業務としての植栽管理とはまた違う視点での考察を行うことが出来、
素晴らしい時間を過ごせたようです。
新宿御苑のあらまし──約10,000本の樹木がある庭園
新宿御苑は、環境省が管理する国民公園です。環境省の案内によると、広さは58.3ha、周囲は3.5kmで、園内の樹木は約10,000本を数えます。ユリノキ、プラタナス、ヒマラヤシーダー、ラクウショウなどの巨樹が景観をつくり、整形式庭園・風景式庭園・日本庭園の3つの庭園を組み合わせた、日本有数の近代西洋庭園とされています。
歩んできた道のりを、環境省の年表から主なものを抜き出して並べます。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1590年 | 徳川家康が内藤家に土地を与える(のちの内藤家の屋敷) |
| 1872年(明治5年) | 大蔵省が「内藤新宿試験場」を設ける |
| 1906年(明治39年) | 庭園の改修工事が終わり「新宿御苑」となる(今の庭園の原型) |
| 1929年(昭和4年) | 観菊会を初めて新宿御苑で開く |
| 1949年(昭和24年) | 国民公園として一般に公開される |
出典: 環境省「新宿御苑の歴史」「概要」(2026年10月12日に確認)
園内で見た不定根誘導(ケヤキ)
- 不定根誘導 ケヤキ 樹勢回復
- 不定根誘導 ケヤキ 樹勢回復
写真は、園内のケヤキで見た不定根誘導の様子です。東京都の「街路樹診断等マニュアル」の用語集では、根の先端付近から出る根を定根(ふつう根と呼んでいるもの)、葉・枝・幹など根以外の器官から二次的にできる根を不定根と呼んでいます。同じ用語集には、幹の腐朽箇所などから出た不定根を育てて新たな根として活かす方法が試みられていること、ケヤキ・イチョウ・サクラなどでは幹の腐朽箇所からよく不定根が発達することが書かれています。
国土交通省 国土技術政策総合研究所の「街路樹再生の手引き」では、不定根育成を、根の生育不良で樹勢が衰えたり倒れる危険が出たりしている木に対し、幹から出た不定根を育てて土壌まで導き、樹勢の回復と木を支える力を高める目的で行うものとしています。同じ手引きは、不定根育成の効果が出る時期を「長期」(3〜5年程度が目安)としています。

図: 不定根誘導の手順(模式図。出典: 国土技術政策総合研究所「街路樹再生の手引き」「景観重要樹木の保全対策の手引き」をもとに当社作成)
こどもたちとイチョウの実
こどもたちも樹木医の方々と交流しながら、新宿御苑の芝生の広場で走り回ったり、
実を集めたり、虫を観察したり、銀杏の実が臭い臭いと大笑いしたり、とても楽しんでいました。
イチョウには雄の木と雌の木があり(雌雄異株)、秋に実をつけるのは雌の木だけです。林野庁の樹木の解説では、外側の黄色い肉質の部分は臭いが強く、触るとかぶれるとされています。北海道大学の解説記事によると、ぎんなんの臭いの成分は、おもに酪酸とエナント酸の2つです。こどもたちが「臭い」と笑った臭いにも、もとになる成分があります。
新宿御苑の菊花壇展
- 菊花壇展
- 菊花壇展
勉強会の日は、菊花壇展の時期にあたりました。環境省の案内によると、菊花壇展は毎年11月1日から15日まで日本庭園で開かれ、回遊式の庭園の中の上家(うわや)に菊を飾り、順路に沿って見て回る形です。
- 1878年(明治11年): 宮内省が、皇室を中心に菊を観賞する初めての「菊花拝観」を赤坂離宮で開く
- 1929年(昭和4年): 観菊会の会場が新宿御苑に移る
- 1949年(昭和24年)以降: 国民公園となり、皇室の伝統を受け継ぐ菊花を毎年一般に公開している
樹名板と、造園技能士の判断等試験
新宿御苑内の樹木には、樹名板がついているものが多く、
若手のスキルアップには最適です。
特に造園技能士を目指す方の勉強には最適な場所です。
造園技能士には学科試験と実地試験があります。
その実地試験の中に要素試験といわれる試験があります。
長さ40~50cm程度に剪定された枝葉をみて樹種名を特定する試験です。
2級造園技能士は115種類の中から15問が出題されます。
1級造園技能士はそれに加えて46種類の中から5種類が出題されます。
あらかじめリストになって決まっている中から選ぶ試験ですが、
ここで不合格となる若い職人さんを何人も見てきました。
造園技能士は国の技能検定の一つで、厚生労働省が定める試験科目では、1級・2級の実技試験に「樹種の判定ができること」が挙げられています。この試験は、今は「判断等試験」と呼ばれています(埼玉県花と緑の振興センターの案内では「判断等試験(旧要素試験)」)。令和7年度の試験問題では、2級は115種から15本、1級は20本で、そのうち5本は1級だけの46種から出題されています。

図: 造園技能士の判断等試験(旧・要素試験)の出題の数(出典: 中央職業能力開発協会 技能検定試験問題〈令和7年度〉、埼玉県花と緑の振興センター、厚生労働省の資料をもとに当社作成)
樹種の一覧が決まっていても、試験で見るのは枝葉の一部だけです。樹名板の付いた木が多い庭園は、名前と枝葉を見比べながら覚えられる場所です。
まとめ
新宿御苑での金原塾には、樹木医を目指す若手社員4名とこども4名で参加しました。先輩樹木医の話を聞いてメモを取り、不定根誘導のケヤキや菊花壇展を見て、植栽管理の業務とは違う視点で樹木を考える時間になりました。樹名板の多い園内は、造園技能士の判断等試験に向けて樹種を覚える場としても役立ちます。
いつも子供を含めた参加を快く快諾してくださる金原樹木医、
そして企画調整してくださった川瀬樹木医ありがとうございました。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
樹木医 髙尾聡司
よくある質問
Q1. 不定根誘導とは、どんな方法ですか。
幹など根以外の所から出た根(不定根)を育てて土壌まで導き、樹勢の回復と木を支える力を高める方法です。国の研究機関の手引きでは、効果が出るまでに3〜5年程度かかるとされています。
Q2. 造園技能士の「要素試験」とは何ですか。
実技試験のうち、枝葉を見て樹種名を答える試験です。今は「判断等試験」と呼ばれています。令和7年度の試験問題では、2級は115種から15本、1級は20本(うち5本は1級だけの46種から)が出題されています。
出典・参考情報
・環境省「新宿御苑の歴史」「概要」「菊花壇展」(2026年10月12日に確認)
・東京都建設局「令和三年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅶ章 用語集 p.120
・国土交通省 国土技術政策総合研究所「街路樹再生の手引き」(国総研資料 第885号、平成28年3月)p.1-52・p.1-107、「景観重要樹木の保全対策の手引き」(同 第565号)p.241
・林野庁 北海道森林管理局「イチョウ」
・北海道大学 CoSTEP「ぎんなん」(いいね!Hokudai、2023年11月16日)
・厚生労働省職業能力開発局「造園技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目」(平成21年3月)
・中央職業能力開発協会 技能検定試験問題公開サイト(造園 1級・2級、令和7年度)
・埼玉県花と緑の振興センター「技能検定(造園)実技試験のうちの『判断等試験』対象樹木の園内展示状況」
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