重機の入らない環境でのロープワークのみでの伐採(特殊伐採)のご相談を受け、出張で静岡県熱海市の別荘地での伐採作業をいたしました。
隣の住まいに接する樹高30m前後の木を、根元から倒さずに上から少しずつ降ろした伐採の記録です。高い木を倒すときに要る広さの決まりも書きます。
伊豆の別荘地で、隣地の住居に接する高木を伐る
熱海駅からもほど近い別荘地「伊豆エメラルドタウン」で、静岡県伊豆の国市と函南町にまたがる伊豆半島において一番大きな別荘地です。
とても静かで見晴らしも良く自然豊かな環境です。
今回は隣地住居と接する、樹高30m前後のヒノキやクスノキなど数本を、樹木医兼空師の髙尾の陣頭指揮の元、ロープワークで対応しました。
- ロープワーク 特殊伐採 ツリークライミング 樹木医 別荘地
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樹高30mの木を、根元から倒せない理由──立入禁止は半径60m
木を根元の近くで切り、一度に倒す伐り方を伐倒(ばっとう)といいます。労働安全衛生規則 第481条第2項は、伐木の作業を行うときは、伐倒しようとする立木を中心として、その立木の高さの2倍に相当する距離を半径とする円の内側に、ほかの作業従事者が立ち入ることを禁止しなければならないと定めています。
今回の木は樹高30m前後でした。この決まりに当てはめると、円の半径は60m、広さはおよそ11,300㎡になります。隣り合う木を続けて伐倒する場合は、厚生労働省のガイドラインで、それぞれの木の高さの2.5倍を半径とする円の内側に、伐倒する人以外を立ち入らせないこととされています。
木の高さごとに、立入禁止の円の大きさを並べると次のとおりです。
| 木の高さ | 1本を伐倒するとき(高さの2倍) | 隣り合って伐倒するとき(高さの2.5倍) |
|---|---|---|
| 15m | 半径30m(約2,800㎡) | 半径37.5m(約4,400㎡) |
| 20m | 半径40m(約5,000㎡) | 半径50m(約7,900㎡) |
| 30m(この記事の木) | 半径60m(約11,300㎡) | 半径75m(約17,700㎡) |
出典: 労働安全衛生規則 第481条第2項、厚生労働省「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」7(2)ウ(宮崎労働局の資料「チェーンソーを用いた基本的伐倒作業について」の引用で確認)。円の面積は当社の計算で、百の位で丸めた。

図: 木の高さと、根元から倒すときの立入禁止の円。高さ30mの木なら半径60m(出典: 労働安全衛生規則 第481条第2項をもとに当社作成)
条文が守るのはほかの作業従事者ですが、倒れる木の危険が及ぶ範囲という意味では、隣の家や道を通る方にも同じことが言えると考えています。この現場の木は隣地の住居に接していて、重機も入れない場所でした。そのため、木を立てたまま、ロープワークで上から少しずつ切って降ろす特殊伐採で対応しています。

伐倒と特殊伐採の比べ(イラスト)。広い場所では根元から倒す(左)。住宅地では、木を立てたまま上から少しずつ切って降ろす(右)
ロープワークによる特殊伐採の考え方
当社でいう特殊伐採は、木の上から枝や幹を少しずつ切り、ロープなどで吊り降ろしていく伐り方です。まず枝を払い、次に幹を上から短く切っていくので、木は最後まで立ったまま、少しずつ低くなっていきます。
樹上で切る人の真下と、降ろした枝や幹を受ける場所には、作業のたびに立入禁止の範囲を決めます。作業の手順の細部は、この記事では書きません。法令では、チェーンソーを用いて行う立木の伐木は特別教育が必要な業務とされ(労働安全衛生規則 第36条第8号)、高さが2m以上の箇所で作業床を設けることが難しいときは、要求性能墜落制止用器具を使わせるなど、墜落による危険を防ぐ措置が求められています(同 第518条)。
特殊伐採とは何か、なぜ住宅地では木を倒せないのかは、「特殊伐採とは──住宅地で大きな木を根元から倒せない理由」でくわしく書いています。
出張ならではの時間
静岡県内でハンバーグで有名な「さわやか」での美味しいご飯を食し、温泉に入り、仲間と遅くまで樹木の事、造園業の事を語り合え、
東京では中々見ることの出来ない伊豆の山から満天の星を見て自然の雄大さを感じ、出張ならではの素晴らしい機会をいただけたことに感謝いたします。

さわやか ハンバーグ
帰路に訪ねた來宮神社の大楠と、箱根神社
帰路の途中では、來宮神社(きのみやじんじゃ)の大楠(幹周り約24m、樹齢は2千年を超える巨樹)や、
箱根神社の樹齢1200年と伝えられる矢立杉など、荘厳な雰囲気を感じながら樹木医として想いを馳せました。

來宮神社の大楠。注連縄を張った幹と、脇の木道

大楠の幹の近景。苔とシダに覆われた幹に注連縄

注連縄を張った大楠の太い幹と、その上に広がる樹冠

高い位置から見た大楠と、周りの木道

來宮神社の社殿

下から見上げた大楠の樹冠と幹
來宮神社の公式の案内にある、御神木の大楠の情報を並べると次のとおりです。
| 項目 | 來宮神社の案内にあること |
|---|---|
| 文化財 | 国指定天然記念物 |
| 幹周り | 約24m |
| 樹齢 | 2千年を超える |
| 巨樹の調査 | 平成4年度の環境省の調査で全国2位の巨樹と認定 |
出典: 來宮神社 公式サイト(2026年10月12日に確認)
写真のとおり、大楠の周りには木道が巡らされています。大勢の参拝者が根元の土を踏み固めないよう、根を守る工夫だと受け止めました。この大楠を訪ねたときの記録は「來宮神社の大楠(静岡県熱海市)」にも残しています。

箱根神社
箱根神社の公式の境内の案内では、矢立の杉と安産杉が御神木として紹介されています。安産杉は「樹齢千年を超える」大杉とされています。
ご依頼をいただきありがとうございました。
弊社では他社様で対応できないと言われるような巨樹巨木の対応も全国各地に出張で伺っております。
樹木医目線での巨樹巨木の管理提案のご依頼も多くいただいておりますのでご相談をお待ちしています。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
樹木医 髙尾聡司
よくある質問
Q1. 重機が入らない場所の高い木は、どうやって伐採しますか。
木を根元から倒さず、ロープワークで上から枝や幹を少しずつ切り、吊り降ろしていく特殊伐採で対応します。この記事の熱海市の別荘地では、隣地の住居に接する樹高30m前後のヒノキやクスノキなど数本を、この方法で伐採しました。
Q2. 高さ30mの木を根元から倒すには、どれくらいの広さが要りますか。
労働安全衛生規則 第481条第2項は、伐倒する木の高さの2倍を半径とする円の内側に、ほかの作業従事者を立ち入らせないよう定めています。高さ30mの木なら半径60mで、広さはおよそ11,300㎡になります。
出典・参考情報
・労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第36条第8号・第481条第2項・第518条(e-Gov 法令検索で原文を確認)
・宮崎労働局「チェーンソーを用いた基本的伐倒作業について」(厚生労働省「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」7(2)ウ の、隣り合って伐倒するときの高さの2.5倍の記載)
・來宮神社 公式サイト(大楠の天然記念物の指定・樹齢・幹周り・環境省の調査の記載)
・箱根神社 公式サイト「境内のご案内」(御神木の矢立の杉・安産杉の記載)
「高木・特殊伐採&ケーブリング」のサービス内容と、ご相談の窓口であるお問い合わせのページはこちらです。
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※ 「ツリークライミング」は、株式会社ツリークライミングワールドの登録商標です。当社の記事では、ロープとハーネスで樹木に登って作業する技術を指す言葉として使っています。



























