クビアカツヤカミキリの被害は、農林水産省のまとめで2026年8月現在22都府県に広がり、9月11日には国の対策本部が「防除戦略」を決めました。今年新たに確認された6県、関東の被害の数字、各地の自治体の取り組みを、一次情報をもとに樹木医の立場で整理します。
サクラ・ウメ・モモを内部から枯らす特定外来生物、クビアカツヤカミキリ。このところ、マンション管理組合や自治体のご担当者からのご相談が増えています。被害の広がりが速く、国や自治体の発表も毎月のように更新されています。そこで今月から、月に1回、全国の状況と国・自治体の取り組みをニュースの形でまとめていくことにしました。初回は、全国の被害の「いま」です。虫の生態や防除の考え方は、これまでの記事(クビアカツヤカミキリとは、被害と対策)に書いています。

今月の要点
- 発生を確認した都府県は、2026年8月現在で22都府県(農林水産省)。2026年だけで、岐阜・山梨・香川・長野・岡山・福井の6県が新たに加わりました。
- 国は7月31日に農林水産大臣と環境大臣を本部長とする「クビアカツヤカミキリ対策本部」を設け、9月11日に「防除戦略」を決めました。被害は300を超える市町村に及んでいます。
- 防除戦略は、2030(令和12)年度を目途に「被害地域の縮小への道筋をつける」ことを目標に掲げ、市町村ごとの被害の段階に応じて対策を分けています。
- 群馬県では令和7年度の被害本数が13,927本、埼玉県では1,391か所と、関東の数字は今も増え続けています。
- 成虫1匹あたりの報奨金、市民による発見調査、未発生県の緊急巡視など、自治体の取り組みも広がっています。
被害は22都府県に。2026年は6県で新たに確認
農林水産省が公表している発生確認の都府県は、令和8年8月19日の更新で22都府県になりました。茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、福井、山梨、長野、岐阜、愛知、三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、岡山、徳島、香川です。

2012年に愛知県で初めて被害が確認されてから、2025年までの14年間で16都府県。それが2026年は、8月までに6県増えました。県の発表をたどると、岐阜県は2月に海津市で幼虫、山梨県は7月7日に大月市で住民の方が成虫を捕獲、長野県は7月23日に佐久市で雌の成虫、岡山県は7月27日に岡山市の後楽園などでサクラのフラス(幼虫が出す木くずと糞の混ざったもの)、福井県は8月17日にサクラのフラス、翌18日に雄の成虫が見つかっています。
香川県の経緯は、私たちにとって他人事ではありません。小豆島町のサクラ並木で、樹木医が6月17日に県へ通報し、県の分析で7月7日にこの虫特有の DNA が検出され、翌8日に職員の現地調査で成虫が捕獲されました。フラスを見て「おかしい」と気づき、つなぐ人がいたから早く分かった例です。

国の防除戦略によると、被害は22都府県の300を超える市町村(特別区を含む)に広がっています。新しい被害地の多くは、すでに被害のある場所から3km以内で見つかっています。その一方で、40kmほど離れた場所に飛び地のように出る例もあります。すでに被害のある市町村と隣り合う、まだ被害のない市町村は、9月現在で234あります。
国の動き──対策本部と「クビアカツヤカミキリ防除戦略」
2026年7月31日、関係省庁の申し合わせで「クビアカツヤカミキリ対策本部」が置かれました。本部長は農林水産大臣と環境大臣で、林野庁、国土交通省、文部科学省のほか、全国知事会・全国市長会・全国町村会も加わっています。9月11日の第2回の本部で決まったのが「クビアカツヤカミキリ防除戦略」です。
目標は、長期的には国内根絶が可能となるよう、すぐに被害地域の拡大を防ぐ対策に取りかかり、2030(令和12)年度を目途に「被害地域の縮小への道筋をつける」ことです。そのうえで、市町村ごとの被害の段階に応じて、次の4つに分けて対策を示しています。
- 未被害地域: 巡視の徹底、ネットで覆うなどの予防、通報の体制づくり
- 飛び地的被害地域: 伐倒・伐根を基本に徹底して防除し、短期間で地域から根絶する
- 被害最前線地域: 伐倒・伐根に、薬剤の樹幹注入や幼虫の個別の駆除を組み合わせ、広がりを止める
- まん延地域: 樹木の状態をふまえ、伐倒・伐根を基本に薬剤などを組み合わせて、生息密度を下げる
防除の主体は、被害木や土地・施設の所有者・管理者が基本で、国と自治体は自らの施設で率先して行い、民有地には必要な支援をする、という整理です。果樹園、道路・河川・都市公園、学校、観光地、私有地と、施設ごとの対策も書かれています。第2回の本部では、都道府県に11月末までを目途とした緊急調査を働きかけること、分かりやすい広報の資料を10月末までに作ることも示されました。
予算の面では、令和9年度の概算要求で、環境省が外来生物対策の全体として6,715百万円(前年度633百万円)を求め、地方公共団体の防除への財政支援を広げるとしています。農林水産省は、重要病害虫の特別防除などに使う消費・安全対策交付金で5,665百万円(前年度1,896百万円)の内数を求めています。10月3日には、自民党のプロジェクトチームなどが、自治体を支えるため今年度中に使える財源を直ちに確保するよう国に求める決議をしたと報じられました(NHK)。
数字で見る関東──群馬・埼玉・栃木・東京
群馬県は、年度ごとの被害本数を公表しています。平成29年度の682本が、令和7年度は27市町村で13,927本(令和7年10月現在)。8年で約20倍です。樹種で見ると、令和7年度はサクラが11,898本で、ほかにウメ・モモ・スモモなどが続きます。

埼玉県は、県民の参加による「クビアカツヤカミキリ発見大調査」の結果を毎年まとめています。令和7年度は、県内63市町村のうち56市町村、1,391か所で被害が確認されました(成虫だけの確認を含む)。前の年度の931か所から約1.5倍、市町村の数も44から56に増えています。

栃木県では、公園や住宅地などで新たに被害を受けた木が、令和7年度に2,860本。令和8年度は塩谷町と那須町で新たに見つかり、9月18日現在で20市町になりました。東京都のまとめでは、これまでに8区10市2町で被害が確認されています。
関東の外でも数字は動いています。和歌山県では、モモ・スモモ・ウメの農地で、これまでの被害が11,045樹(令和8年6月末、伐採済みを含む概数)。京都府は令和8年9月10日現在で14市町・被害木364本、長野県は確認から3か月足らずの10月2日現在で10市町村・被害木299本です。
自治体の取り組み──報奨金、市民の目、未発生県の備え
成虫を減らす取り組みとして、報奨金を設ける自治体が出ています。埼玉県川島町は、成虫1匹につき100円の奨励金を6月1日から受け付け、7月16日までに7万匹(予算額700万円)に達して受付を終えました。群馬県高崎市は8月3日から、市内で成虫を捕殺した市民に1匹300円分の地域通貨「高崎通貨」を交付する「クビアカハンター報奨金」を始めています。
見つける目を増やす取り組みも続いています。茨城県の「いばらきカミキリみっけ隊」、岐阜県の「クビアカツヤカミキリ駆除大作戦」(8月7日〜9月7日)、群馬県や埼玉県の電子地図による被害情報の共有などです。大阪府は9月に防除推進計画を改めました。まだ発生していない福島県も、隣の栃木県那須町などでの確認を受け、10月中旬までに県有施設を巡視し、10月15日に対策会議を開くと報じられています(福島民友、10月1日)。
樹木医から見たこと
防除戦略を読んで、まず受け止めたのは「伐倒・伐根を基本に」という言葉の重さです。飛び地のように出た場所で短期間に根絶を目指すなら、被害木を残さないことが確実です。一方で、サクラの並木や団地の象徴木、寺社の古木のように、簡単に伐れない木もあります。戦略でも、まん延地域では樹木の状態をふまえて薬剤などを組み合わせる、と書き分けています。どの段階の地域にある、どの状態の木なのか。1本ずつ調べて記録し、段階に応じて手を選ぶという、防除計画の考え方がいっそう大事になると考えています。
もう一つは、所有者・管理者が防除の主体だと、国が改めてはっきり書いたことです。マンションの敷地、寺社の境内、企業の緑地にも、サクラやウメ、モモは当たり前に植わっています。どこに何本あるのかを一覧にしておくことが、備えの最初の一歩です。フラスは5〜9月に盛んに出され(森林総合研究所)、探すのは幹の下のほう、地際や根元です。日々の清掃や植栽の手入れで根元を見る機会がある方こそ、最初に気づける立場にいます。香川県の例のように、見つけた人から樹木医、行政へとつなぐ流れを、被害が出る前に決めておくことが大切だと考えています。


来月も、国の緊急調査の進み具合や、自治体の新しい動きを追っていきます。
よくある質問
Q1. クビアカツヤカミキリの被害は、いまどこまで広がっていますか。
農林水産省のまとめでは、2026年8月現在で22都府県です。国の防除戦略によると、被害は300を超える市町村に及び、2026年は岐阜・山梨・香川・長野・岡山・福井の6県で新たに確認されました。
Q2. 国の「クビアカツヤカミキリ防除戦略」とは何ですか。
2026年9月11日に国のクビアカツヤカミキリ対策本部が決めた全国の方針です。2030(令和12)年度を目途に被害地域の縮小への道筋をつけることを目標に、市町村ごとの被害の段階を未被害地域・飛び地的被害地域・被害最前線地域・まん延地域の4つに分けて、対策を示しています。
Q3. まだ被害のない地域でも、備えは必要ですか。
必要です。新しい被害地の多くはすでに被害のある場所から3km以内で見つかり、40kmほど離れて飛び地のように出る例もあります。敷地のサクラ・ウメ・モモの場所を把握し、5〜9月は根元のフラスを見回り、見つけたときの連絡先を決めておくことが備えになります。
Q4. 成虫やフラスを見つけたら、どうすればよいですか。
特定外来生物のため、生きたまま持ち運ぶことはできません。成虫はその場で捕殺し、お住まいの都府県・市区町村の窓口へ連絡します。窓口は環境省のリンク集にまとめられています。木の被害の程度を確かめたいときは、樹木医が調べてお伝えできます。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
出典・参考情報
・農林水産省「クビアカツヤカミキリに関する情報」(令和8年8月19日更新)、「クビアカツヤカミキリの確認状況(令和8年8月時点)」
・クビアカツヤカミキリ対策本部「クビアカツヤカミキリ対策本部」、「クビアカツヤカミキリ防除戦略」(令和8年9月11日)、第2回本部の資料(令和9年度概算要求など)
・環境省「クビアカツヤカミキリの関連情報のリンク集」
・岐阜県の発表資料(令和8年7月1日)、山梨県の発表資料(令和8年7月7日)、香川県「クビアカツヤカミキリ(特定外来生物)の県内初確認について」、長野県の発表資料(令和8年7月23日)・「クビアカツヤカミキリについて」、岡山県の確認状況の資料(令和8年9月29日現在)、福井県の病害虫発生予察特殊報 第2号(令和8年8月20日)
・群馬県「特定外来生物クビアカツヤカミキリに注意してください」、埼玉県「サクラ等の外来害虫クビアカツヤカミキリによる被害拡大」(令和8年6月8日)、栃木県「クビアカツヤカミキリにご注意ください」・発表資料(令和8年6月)、東京都環境局「クビアカツヤカミキリの被害が発生・拡大しています!」
・和歌山県「クビアカツヤカミキリの侵入防止及び防除対策」、京都府の確認状況の資料(令和8年9月10日現在)、大阪府「特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」警戒中!!」
・埼玉県川島町「クビアカツヤカミキリ駆除奨励金の申請受付について」、群馬県高崎市「クビアカハンター報奨金について」、茨城県「「いばらきカミキリみっけ隊」を募集します!」、岐阜県の発表資料(クビアカツヤカミキリ駆除大作戦)
・NHK「クビアカツヤカミキリ対策 自民プロジェクトチームが緊急決議」(2026年10月3日)、福島民友「樹木に被害、クビアカツヤカミキリ 福島県内全域で生息調査へ」(2026年10月1日)
・森林総合研究所「クビアカツヤカミキリの防除法」(2022年)
・図の地図は「地球地図日本」(国土地理院)を加工して作成
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