保護樹木サクラ 伐採作業
夏に太い枝を剪定されてから衰えた保護樹木のサクラを、ロープワークとクレーンで伐採した記録です。サクラの剪定の時期と切り口の処理、根元の揺らぎの見方などを、行政のマニュアルと法令をもとに書き添えます。

伐採前(左)と伐採後(右)。道路沿いの生垣の奥に立っていたサクラ
夏の剪定のあと、樹勢が衰えたサクラ
地域の皆様に愛されシンボルとなっていたサクラですが、
数年前の夏場に、ご依頼した造園業者に太い枝を剪定されてしまい、
そこから樹勢が徐々に衰退してしまったそうです。
サクラの剪定時期──落葉期が基本、夏の強い剪定は避ける
サクラは剪定の時期や処置を間違うと衰退しやすい樹種ですのでご注意ください。
基本としては、葉を落としている落葉期の1~3月の剪定を推奨しております。
太めの枝の切り口には殺菌癒合剤(商品名:トップジンMペーストなど)を塗布します。
毎年小まめに剪定管理されてらっしゃる現場であれば開花後すぐの軽剪定などはご相談にのって対応しております。その際も適切な剪定管理が必要不可欠です。
埼玉県の街路樹剪定マニュアルは、樹木が活動している期間に剪定すると痛手が大きく、休眠期や生長の緩い時期に行えば痛手を最小限にできるという考え方から、落葉樹の剪定の適期を、晩秋から早春の芽出し前までの落葉期間としています。夏の強い剪定は、樹木の栄養をつくる緑の葉を切り取ることになり、健康と生理を著しく損ねるとして、避けるべき剪定に挙げています。マニュアルの考え方を表にまとめます。
| 時期・剪定 | マニュアルにあること |
|---|---|
| 冬期剪定(落葉期) | 落葉樹は休眠している冬に行い、樹木全体の骨格をつくる、強く切り詰めるときもこの時期 |
| 夏期剪定 | 枝の密度の調整や乱れた樹冠を整える剪定、葉の付いている時期なので切る量は全体の3分の1以下 |
| 避ける剪定 | 春の若葉の展開期の剪定、夏期の強い剪定、秋早い剪定、暖地性の常緑広葉樹の厳冬期の剪定 |
| 花木の剪定 | サクラ類などは冬期剪定の時期にはもう花芽ができている、街路樹の花木の中でサクラ類は剪定を厳禁とする扱い(資料で割れるところ) |
出典: 埼玉県 県土整備部道路環境課「街路樹剪定マニュアル」(令和2年12月)5.2 樹木の生育サイクルと剪定時期 p.5-3〜5-5
マニュアルがサクラ類を「剪定を厳禁とする」花木として扱っているのは、街路樹の花を見せる管理の説明の中です。当社では、この記事のとおり、落葉期の1〜3月の剪定を基本にしています。

サクラの冬の枝。短い枝の先に、ふっくらした花芽が束になり、中心に細い葉芽がある(点線の円。当社の説明用イラスト)
太い枝の切り口の処理
記事にあるトップジンMペーストは、農林水産省に登録された農薬(登録番号 第13411号、チオファネートメチルを3.0%含むペースト剤)です。登録の内容では、樹木類について「切り口及び傷口のゆ合促進」を目的に、剪定整枝のときなどに原液を塗ることが認められています。さくらについては、てんぐ巣病の病枝を切除した後に塗ることも登録されています。
切る位置も大切です。埼玉県のマニュアルは、幹に接して切るフラッシュカットは切り口をふさぐ防御の組織を壊すとし、人の腕より太い枝や、サクラのように腐朽しやすい樹種には適さないとしています。切り口に薬剤を塗るかどうかの考え方は「剪定の切る位置はブランチカラー」でも紹介しています。
根元から揺らぐ状態──外観診断の「根元の揺らぎ」
残念ながら今回は打ち合わせ時に樹木医が目視診断をした中で、
サクラを揺すると根元からグラグラ揺らいでしまう程に状態は悪くなってしまっていました。
東京都建設局の「街路樹診断等マニュアル」は、外観診断の項目の一つに「根元の揺らぎ」を挙げています。地面の地割れの有無を見て、診断する人が幹に両手をつき、体重をかけて数回強く押して確かめます。揺らぎがあるときは、根の範囲の狭さや根の腐朽などが原因と考えられるので、地際を掘り下げるなどして根の状態を確かめ、必要に応じて機器による根株診断を行うとしています。
マニュアルの判定の基準は次のとおりです。
| 根元の揺らぎ | 判定 | 処置の例(マニュアルの表記) |
|---|---|---|
| なし | 健全か健全に近い | (表に記載なし) |
| あり、揺れは小さい | 注意すべき被害 | 必要に応じて支柱設置 |
| あり、揺れは中程度以上 | 著しい被害 | 必要に応じて支柱設置等・根株診断 |
| あり、揺れが大きく支柱などによる対処が不可能 | 不健全 | 更新 |
出典: 東京都建設局「令和三年度 街路樹診断等マニュアル」第Ⅲ章 2 外観診断(サ)根元の揺らぎ p.36、表Ⅲ-2・14
外観診断で見るほかの項目は「樹木医は街路樹診断で何を見ているか(前編)」で紹介しています。
ロープワークとクレーンで伐採
ロープワークとクレーントラックで安全に伐採作業を完了致しました。

ベルトを掛けてクレーンで吊り上げるサクラの幹
根元から木を倒すことができない場所では、枝や幹を上から少しずつ切って吊り降ろす特殊伐採を行います。クレーンで幹を吊るときは、クレーン等安全規則により、クレーンを動かす人と、荷に吊り具を掛け外しする玉掛けの人に、機械のつり上げ荷重に応じた資格が要ります。

図: 移動式クレーンで重い物を吊るときに要る資格(出典: クレーン等安全規則・労働安全衛生法施行令をもとに当社作成)
保護樹木とは──区ごとに違う指定と手続き
保護樹木・保存樹木は、地域に残る大きな木を区市町村が指定し、所有者とともに残していく制度です。国の「都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律」は、指定された保存樹の所有者に枯損の防止などの保存に努めることを求め(第5条)、保存樹が滅失・枯死したときは市町村長への届け出を求めています(第6条第2項)。東京の区では条例による指定が多く、呼び名も伐採のときの手続きも区ごとに違います。区ごとの違いは「保存樹木・保護樹木とは」にまとめています。
まとめ
地域のシンボルだった保護樹木のサクラは、夏に太い枝を剪定されてから樹勢が衰え、揺すると根元から揺らぐほどになっていたため、ロープワークとクレーンで伐採しました。サクラは剪定の時期や処置を間違うと衰退しやすい樹種で、当社では落葉期の1〜3月の剪定を基本とし、太めの枝の切り口には殺菌癒合剤を塗布しています。
よくある質問
Q1. サクラの剪定は、いつ行うのがよいですか。
当社では、葉を落としている落葉期の1〜3月の剪定を基本としています。埼玉県の街路樹剪定マニュアルも、落葉樹の剪定の適期を落葉期間とし、夏の強い剪定を避けるべき剪定に挙げています。マニュアルの考え方を表にまとめます。
Q2. 保護樹木を伐採するときは、届け出が要りますか。
法律の保存樹は、滅失・枯死したときに届け出が要ります(第6条第2項)。区の条例による指定は、区ごとに手続きが違います。
出典・参考情報
・埼玉県 県土整備部道路環境課「街路樹剪定マニュアル」(令和2年12月)p.5-3〜5-5、p.5-9
・農林水産省「農薬登録情報提供システム トップジンMペースト」(登録番号 第13411号)
・東京都建設局「令和三年度 街路樹診断等マニュアル」p.36
・クレーン等安全規則、労働安全衛生法施行令(e-Gov 法令検索)
・都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律(e-Gov 法令検索)
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