長谷川式大型検土杖は、おもりを落として金属の筒を打ち込み、深さ1mまでの土を3回に分けて抜き取る器具です。連載「土壌調査と土壌改良」の第5回では、採り方と、採れた土の色・手ざわり・混じりもの・層の境目の見方を、取扱説明書と国の手引きをもとに樹木医が解説します。
第3回の硬度調査では土の硬さを、第4回の透水調査では水の抜け方を、それぞれ数字で測りました。今回の土層調査は、数字ではなく土そのものを抜き取って、目と手で確かめる調査です。硬い層や水の止まる層が「何でできているのか」は、実際の土を見ないと分かりません。当社の土壌調査で、硬度調査・透水調査と組み合わせて行っている調査です。
長谷川式大型検土杖とは──土を、抜き取って見る
検土杖は、細い筒を土に差し込んで、筒の中に入った土を抜き取って調べる道具です。長谷川式大型検土杖の取扱説明書とメーカーの製品ページは、その特長として次の点を挙げています。
- 人の力で押し下げる従来の検土杖と違い、おもり(落錘)を落として打ち込むので、硬い土層や礫の混じる層でも、少ない労力で土を採れる
- 直径17mmの土の柱(土柱)を、自然の状態のまま採れる
- 土を採る部分(採土部)の長さが35cmなので、深さ1mまでの土を3回で採れる
- サンプラーが大きいので、pH・ECなどの簡易な分析用の試料も採れる
- 本体を3つに分けられ、持ち運びやすい
全長は167cm、落錘の重さは2kg、採土部の寸法は直径17mm×長さ350mmです。3つに分けると長さ70cm、ケースに入れて70×17×5cm、重さ5.4kgになり、植栽地まで手で運べます。

長谷川式大型検土杖の各部(イラスト)。落錘をノッキングヘッドに落として、先のサンプラーを土に打ち込む
上から、落錘止め、ランマーガイド(落錘を通す棒)、落錘、ノッキングヘッド(落錘を受ける部分)までがひとつながりで、その下にロッド、サンプラーとねじでつながります。落錘をランマーガイドに沿って持ち上げて落とすと、ノッキングヘッドを打ち、その力でサンプラーが土に入ります。サンプラーは、筒の片側が全長にわたって縦に開いた溝になっていて、抜き取った土をこの溝の中で見ます。溝の土を削ったり取り出したりするのが、先が平たい刃になったハンドル(ヘラ付きハンドル)です。
なぜ「掘らずに」見るのか──試掘との違い
土の層を見る方法には、検土杖のほかに、穴を大きく掘って土の断面を出す試掘(土壌断面調査)があります。東京都建設局の「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度)は、試掘による土壌断面調査を、問題となる土層や原因を具体的にとらえられ、土壌改良の幅や広がりを考える基礎資料になる調査としています。
ただ、断面を出すには大きな穴が要ります。国土技術政策総合研究所(国総研)の「景観重要樹木の保全対策の手引き」は、断面調査は多くの労力がかかるうえ、掘るときに根を傷めるおそれがあるため、深刻な問題が予想される場合を除いて、簡易な方法で行うことが多いとしています。同じ手引きは、検土杖による土層の観察を標準的な調査に入れ、樹木の根元のまわりの3〜4か所程度で行うことが望ましいとし、断面調査は1本につき1か所としています。

検土杖と試掘の違い(イラスト)。検土杖は細い穴で土を抜き取るので、根を避けて何か所も調べられる。試掘は断面を広く見られるが、根を切ることがある
検土杖の採土部の直径は17mmで、試掘の穴に比べれば、ごく小さな穴で済みます。すでに育っている樹木の足元でも、根の間を縫うようにして何か所か調べられます。国総研の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」も、植栽地の中で土の様子が違うと見られる場所ごとに、検土杖で簡易に調べるとしています。検土杖で広く当たりを付け、それでも分からないことがあれば、場所を絞って試掘する、という順番になります。

植栽地を試掘して、土の深さを測る(当社撮影)
採り方──同じ穴で、35cm、70cm、100cm
取扱説明書に沿うと、採り方は次のとおりです。
- 持ち運びのときに落錘を留めている固定ピンを外し、なくさないように本体の保管穴に入れる
- 採る地点で、落錘止めに手を添えて本体をできるだけ垂直に立て、落錘を落としてサンプラーを打ち込む。土が硬いときは、軽く叩くように落とす
- 1回目は深さ35cmまで打ち込んだら、ヘラ付きハンドルをノッキングヘッドか落錘止めの穴に挿し、本体を時計回りに1〜2回まわしてから引き上げる
- サンプラーの溝に入った土の表面をヘラで削り、状態を野帳(記録用の帳面)に書く。必要なら土を取ってビニール袋に入れ、分析用の試料にする
- サンプラーの中を清掃し、同じ穴で2回目は70cmまで、3回目は100cmまで打ち込んで、同じように見る

長谷川式大型検土杖の使い方(イラスト)。深さ35cm・70cm・100cmの3回に分けて土を採取する
引き抜くときに時計回りにまわすのは、逆にまわすとつなぎ目のねじが緩み、サンプラーが土の中に残って回収できなくなるおそれがあるためです。
入らないときは、無理をしない
取扱説明書は、落錘を2〜3回落としても入らない場合は、サンプラーが壊れるおそれがあるので中止し、少しずらした地点で採り直すよう求めています。硬い土では、打ち込んだ後の引き抜きも難しくなるため、10〜15cmずつ引き抜くこと。引き抜くときに、土の中で礫がサンプラーに挟まると、まわそうとしても回らず押し戻されるような手応えになり、無理にまわすとサンプラーがねじれることがあるので、まわる所まで垂直に引き上げることも書かれています。
打ち込めなかったことも、その深さに硬い層や石があることを示す手がかりになります。第3回の硬度調査のグラフで、同じ深さに硬い層が出ていないかを見比べます。落錘とノッキングヘッドの間に指を挟まないこと、軍手などで手を守ることも、説明書の注意に挙がっています。
採れた土の、何を見るか
検土杖で採れるのは、直径17mmの土の柱です。製品ページは、採れた土で土色・土性・水湿の状況などを判断しやすいことを挙げています。層の重なり方、色、手ざわり、湿り具合、混じっているものを、この土から読み取ります。景観重要樹木の保全対策の手引きが土壌断面調査の項目として挙げているものから、検土杖の土で見るものを順に書きます。

採れた土の見方(イラスト。説明のための例で、実際の調査の結果ではない)。3回分の土を深さの順に並べ、色や混じりものが変わる所を層の境目として読む

試掘で掘り出した土を手に取って確かめる(当社撮影)
層位──どこで土が変わるか
人の手が加わっていない土の断面は、上から、落ち葉などの有機物の層(O層)、腐植で黒くなった表土(A層)、その下のB層、土のもとになった材料のC層と重なっています。一方、造成や工事で人の手が入った土では、この自然の層が崩れています。手引きは、そうした土では、まず何層に分かれるかを見て、上から順にⅠ層、Ⅱ層と数えるとしています。都市の植栽地の土の多くは、こちらの数え方になります。
層の境目は、色や手ざわり、混じりものが変わる所です。35cmごとに抜き取った土を、深さの順に並べて見ると、どの深さで土が切り替わっているのかが分かります。
土色──黒さは腐植、灰色は水の手がかり
土の色は、標準土色帳(マンセル表色系の色見本)と見比べて、色相・明度・彩度で記録します。手引きは、土の色が腐植(落ち葉や根などが分解してできた、黒っぽい有機物)の量や水分の状態を映しており、層を分けるときに最も分かりやすく重要な目安だとしています。表土が黒いのは、主に腐植によるものです。国総研の倒伏対策の手引きも、土色と指でさわって見た土性、植物の育ち方から、土の養分の状態を推し量るとしています。
気を付けたいのは、灰色を帯びた層です。倒伏対策の手引きは、灰色を帯びた土層や粘り気の強い土では透水性の不良が考えられるため、透水性を調べる必要があるとしています。景観重要樹木の手引きには、湿った状態と乾いた状態を繰り返して酸化と還元が起きる土に、まだら模様(斑紋)がよく見られることも書かれています。
土性と湿り具合──指でさわって確かめる
土性は、砂・シルト・粘土の混じり具合のことです。正確には専門機関で分析しますが、現場では土を指でこすり、ざらざら(砂が多い)か、ぬるぬる(粘土が多い)かの感触で、砂土・砂壌土・壌土・埴壌土・埴土の5段階に分けます(指頭法)。一般に、粘土が多い土ほど水や養分を保つ力は高い一方、空気や水の通りは悪くなり、砂の多い土はその反対です。倒伏対策の手引きは、砂質の土では保水性の不良が考えられるため、保水性を調べる必要があるとしています。
湿り具合(水湿)は、土を手のひらで握ったときの感触で、乾・半乾・半湿・湿・潤の5段階に分けます。
混じりもの──礫、コンクリート片、根
手引きは、直径2mm以上の粒を石礫とし、石礫が多すぎると、根が水や養分を吸える土の量が実質的に減り、根の伸びも妨げられるとしています。都市の植栽地では、石だけでなく、建設工事のコンクリートのかけら(ガラ)が出てくることがあります。倒伏対策の手引きは、周辺の工事などでコンクリート塊が混じった土や強いアルカリ性の土を、改良しないまま植栽すると、根が十分に伸びずに枯れることがあるとしています。周りの路盤に再生コンクリート砕石が使われていると、土がアルカリ性を示すおそれがあり、土壌酸度(pH)を測る必要がある、とも書かれています。
当社の調査でも、樹木の調子が悪いという相談で土を調べたところ、建設ガラがたくさん出てきたこと、pHが極端なアルカリ性を示したことがありました(植栽基盤調査のご紹介)。建物を建てるときに、土が締め固められすぎたり、コンクリートガラが混じったりと、植栽のことまで考慮しきれていない植栽地が多いことは、以前このブログでも書きました(植栽基盤調査とは?)。
根が入っているかどうか、どの深さまで細い根が見られるかも、採れた土で確かめます。
におい
数字に表れないものもあります。川崎市のマンションで植栽基盤調査を行ったときには、器具の測定値だけに頼らず、植えられたときの状況、管理の頻度、灌水装置の設定、そして土のにおいや感触まで含めて考えることが大切だと伝えながら作業を行いました(マンション 植栽基盤(土壌)調査 神奈川県川崎市)。検土杖は土そのものを手に取れるので、においを確かめられるのも利点です。
野帳の付け方──取扱説明書の記入例
取扱説明書には、野帳の記入例が載っています。深さ1mまでを4つの層に分け、層ごとに土性・土色・水湿・その他を書く形です。
| 深さ(おおよそ) | 層位 | 土性 | 土色 | 水湿 | その他 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0〜35cm | Ⅰ | L(壌土) | 黒 | 潤 | 黒土 |
| 35〜75cm | Ⅱ | HC(重埴土) | 褐 | 潤 | 礫・砂混じり |
| 75〜85cm | Ⅲ | S(砂土) | 褐 | 潤 | 山砂 |
| 85〜100cm | Ⅳ | − | − | − | 礫 |
(長谷川式大型検土杖 取扱説明書 Ver.3.4 の野帳記入参考事例から。深さは図から読んだおおよその値。土性の略号の読みは当社で補った)
L・HC・Sは、粘土・シルト・砂の割合で土性を分けるときの略号で、Lは壌土、HCは粘土の多い重埴土、Sは砂土です。層をⅠ〜Ⅳのローマ数字で数えているのは、先に書いた、人の手が入った土の数え方と同じです。この例では、上から黒土、礫と砂の混じった粘りの強い土、山砂、礫と、性質のまったく違う土が1mの中に重なっています。

調査の記録を書く(当社撮影)
このように層ごとに書き分けておくと、後で硬度調査のグラフや透水調査の値と、深さをそろえて見比べられます。
分析用の試料にする
土の酸度(pH)や、肥料分・塩類の濃さを示す電気伝導度(EC)は、採った土を使って測ります。倒伏対策の手引きは、現地で硬さや水はけを測り、土性や土色を観察するとともに、必要に応じて試料を採って、室内の試験で化学性(pH、EC等)を測るとしています。景観重要樹木の手引きでは、ECは自然に乾かして2mmのふるいを通した土に5倍の量の水を、pHは2.5倍の量の水を加えて混ぜた液で測ります。大型検土杖の製品ページも、採った土柱でpH・ECなどの簡易な土壌分析ができるとしています。
検土杖の土は、層ごとに分けて試料にできます。どの深さの、どの層の土を測ったのかが分かっていれば、数値を層と結び付けて読めます。pH・EC測定の中身は、次回で取り上げます。
土層調査で見えてくること
土層調査の結果は、ほかの調査と深さをそろえて読みます。第3回の硬度調査で固い層が出た深さに、検土杖で粘りの強い土や礫・ガラの層があれば、その層が根を止めている、という見立てができます。第4回の透水調査で水が抜けなかった場所で、灰色を帯びた層が見つかれば、水がそこで止まっている手がかりになります。数字だけでは、硬さの原因が締め固めなのか、ガラなのか、粘りの強い土なのかまでは分かりません。原因が違えば、土の直し方も変わります。
次回は、検土杖などで採った土で、土の酸度と塩類の濃さを測るpH・EC測定を取り上げます。
植栽地の土の中が気になったら
株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医と植栽基盤診断士が、長谷川式の器具で土の硬さや水はけを測り、検土杖で採った土の層を確かめたうえで、改良の方法をご提案しています。「植えた木が何年たっても大きくならない」「植栽地の土にガラが混じっていないか確かめたい」といったご相談がありましたら、土壌調査のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくある質問(長谷川式大型検土杖について)
Q1. 長谷川式大型検土杖とは何ですか?
A. おもり(落錘)を落として、長さ35cmの金属の筒(サンプラー)を土に打ち込み、筒の中に入った土を抜き取って調べる器具です。同じ穴で35cm、70cm、100cmと3回に分けて、深さ1mまでの土を採れます。人の力で押し下げる従来の検土杖より、硬い地盤にも入れやすいのが特長です。
Q2. 検土杖で、何が分かりますか?
A. 土の層の重なり方と境目の深さ、土の色、土性(砂と粘土の混じり具合)、湿り具合、礫やコンクリート片などの混じりもの、根の有無などです。数字で測る硬度調査や透水調査に対して、土そのものを目と手で確かめる調査です。
Q3. 試掘(土壌断面調査)とは、どう違いますか?
A. 試掘は大きな穴を掘って土の断面を出すので、層の様子を広く詳しく見られますが、労力がかかり、根を傷めるおそれもあります。検土杖は直径17mmの筒で土を抜き取るので穴が小さく、育っている樹木の足元でも何か所か調べられます。国総研の景観重要樹木の保全対策の手引きは、検土杖による観察を標準的な調査とし、根元のまわりの3〜4か所程度で行うことが望ましいとしています。
Q4. 土の色から、何が分かりますか?
A. 土の色は、腐植の量や水分の状態を映しています。黒い表土は主に腐植によるものです。国総研の街路樹の倒伏対策の手引きは、灰色を帯びた土層や粘り気の強い土では透水性の不良が考えられるため、透水性を調べる必要があるとしています。
Q5. 硬くて打ち込めないときは、どうしますか?
A. 取扱説明書は、落錘を2〜3回落としても入らない場合は、サンプラーが壊れるおそれがあるので中止し、少しずらした地点で採り直すとしています。硬い土では、10〜15cmずつ引き抜きます。打ち込めなかった深さは、硬度調査の結果と見比べます。
Q6. 採った土は、ほかの調査にも使えますか?
A. 使えます。取扱説明書は、サンプラーの土をヘラで取ってビニール袋に入れ、分析用の試料にするとしています。層ごとに分けて採れば、土の酸度(pH)や電気伝導度(EC)を、どの層の値なのかが分かる形で測れます。
出典・参考情報
- ダイトウテクノグリーン株式会社「長谷川式大型検土杖 取扱説明書」Ver.3.4(p.2〜8)
- ダイトウテクノグリーン株式会社 製品ページ「長谷川式 土壌貫入計・透水試験器・検土杖・鋼棒など」(大型検土杖の特徴と製品仕様)
- 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」国総研資料第1059号、2019年2月(p.1-56、p.1-57 表-2.6、p.1-65)
- 国土技術政策総合研究所「景観重要樹木の保全対策の手引き」国総研資料第565号、2010年1月(p.118〜121、p.128〜129 表3-19)
- 東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」令和3年度(p.79 表Ⅳ-1・4)
- 北海道立総合研究機構 中央農業試験場「土壌・作物栄養診断のための分析法2012 正誤表」(土性の区分と略号)
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