長谷川式土壌貫入計は、2kgのおもりを50cmの高さから落とし、先端のコーンが土に入った深さから、地表から深さ1mまでの土の硬さを調べる器具です。連載「土壌調査と土壌改良」の第3回では、測り方、S値の求め方、判定の目安、グラフの読み方を、取扱説明書と国の手引きをもとに解説します。
第1回では植栽基盤の4つの条件を、第2回では土が原因で樹木が弱るときの道筋を取り上げました。第3回から第6回までは、当社の土壌調査で行っている4つの調査を、1回に1つずつ書いていきます。最初は、土の硬さを測る硬度調査です。
締め固められた土では、根が伸びられず、水も空気も入りにくくなります(第2回)。硬さを測るのは、その締め固めが、どの深さに、どれくらいの厚さであるのかを確かめるためです。
長谷川式土壌貫入計とは──掘らずに、深さ1mまでの硬さを測る
取扱説明書によると、長谷川式土壌貫入計は、土の表面から深さ100cmまでの硬さを、続けて簡単に測れるように開発された、土壌調査用の小型の動的貫入試験機です。2kgのおもり(落錘)を50cmの高さから落とし、その力で先端の円錐形のコーンを土の中に押し込み、そのときの入りにくさから、土の相対的な硬さを知ります。土の断面を掘らなくても測れることが、この器具の大きな特長です。
仕様は、コーンの直径が20mmで先端の角度が60度、読み取りの精度は1mmです。説明書は、山中式土壌硬度計との相関が高いこと、レキ(小石)の混じった土や固結した土の層でも測れること、1人でも測れることを特長に挙げています。

長谷川式土壌貫入計の各部(イラスト)。おもり(落錘)を落とすと、貫入ロッドの先のコーンが土に入り、その深さをガイドポールの目盛りで読む
東京都建設局の「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度)は、土の硬さの測り方として2つの器具を挙げています。山中式土壌硬度計は、穴を掘って土の断面を出し、その断面の土の層ごとに硬さを測る器具。長谷川式土壌貫入計は、土の断面を掘らずに硬さを測る器具です。樹木の根元のまわりを大きく掘り返さずに済むため、長谷川式は、すでに樹木が育っている植栽地の調査に向いています。

建物の脇の植栽地に立てた長谷川式土壌貫入計(奥。手前は簡易現場透水試験器。当社撮影)
測り方──おもりを落とし、1回ごとに目盛りを読む
測り方は、取扱説明書に沿って次のように進めます。
- 測る地点で、ガイドポールが垂直になるように支持プレートの角度を合わせ(平らな所では90度)、プレートの四隅を足で軽く踏んで地表に固定する
- 始める前のガイドリングの目盛りを読んで記録する
- おもりをガイドリングに当たるまで持ち上げ、手を離して自然に落とす
- コーンが土に入ったら、ガイドポールの目盛りを読んで記録する
- これを、目的の深さまで繰り返す

おもりをガイドリングまで持ち上げる(当社撮影)

長谷川式土壌貫入計の使い方(イラスト)。おもりを落としてコーンを土に入れ、1回ごとに入った深さを読んで記録する
説明書には、測るときの注意もいくつか書かれています。最初の20〜30cmほどは、貫入ロッドがガイドリングを支点にして首を振るように揺れやすいため、ガイドリングにしっかり手を添えて、垂直を保ちながらおもりを落とします。記録は1回落とすごとに取るのが基本で、測る人と書く人の2人で行うか、1人のときは小さなボイスレコーダーを使うと便利だとされています。

測る人と記録する人の2人で、長谷川式土壌貫入計で土の硬さを測る(当社撮影)
硬い土、レキに当たったとき
土がとても硬いときや、レキに当たっているときは、1回落としても0.1cmも入らないことがあります。説明書は、こうしたときは5回か10回落としてから目盛りを読んで記録するとしています。また、硬いレキなどにぶつかって止まった場合、そのまま打ち続けるとコーンがつぶれるなど器具が壊れることがあるため、0.2cm以下が10回以上続いたら測るのをやめ、別の地点で測り直すよう求めています。

レキに当たったコーン(イラスト)。土の中の石に当たると、土そのものが硬くなくてもコーンが進まなくなる
石に当たって止まったときの数字は、土の硬さを表していません。止まった地点の数字をそのまま使わず、近くで測り直すのはそのためです。
軟らかすぎる土のとき
反対に、1回で4cm以上入るほど軟らかい土では、測る精度が粗くなります。その場合は、おもりを落とす高さを25cmにして測ることもできます。ただし説明書は、その場合は次に書く判定の目安を使えない、としています。
S値とは──1回の打撃で、何cm入ったか
測った数字から求めるのがS値です。説明書は「軟らか度」と呼び、SOFTNESS、またはS値(cm/drop)とも表すとしています。1回おもりを落としたときに、コーンが入った深さのことです。
求め方は、記録した深さから、1回前の深さを引くだけです。説明書の記入例では、1回目が1.8cm、2回目が3.3cm、3回目が5.0cmでした。この場合のS値は、1回目が1.8、2回目が1.5(3.3−1.8)、3回目が1.7(5.0−3.3)です。
| 打撃の回数 | 目盛りから求めた深さ | S値(cm/drop) |
|---|---|---|
| 1回目 | 1.8cm | 1.8 |
| 2回目 | 3.3cm | 1.5 |
| 3回目 | 5.0cm | 1.7 |
| 4回目 | 6.0cm | 1.0 |
| 5回目 | 7.0cm | 1.0 |
(長谷川式土壌貫入計 取扱説明書 Ver.5.5 の記入例から)
S値は、大きいほど軟らかく、小さいほど硬い土です。「硬度」という言葉から、数字が大きいほど硬いと思われがちですが、逆になります。結果を読むときは、まずここを押さえておくと迷いません。
判定の目安──2つの基準と「連続」の見方
取扱説明書は、一般社団法人日本造園建設業協会の「植栽基盤整備ハンドブック」第6版の基準を、判断の目安として載せています。
| S値(cm/drop) | 硬さの表現 | 根の侵入 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 0.7以下 | 固結 | 多くの根が侵入困難 | 極不良 |
| 0.7を超え1.0以下 | 硬い | 根系発達に阻害あり | 不良 |
| 1.0を超え1.5以下 | 締まった | 根系発達に阻害樹種あり | 可 |
| 1.5を超え4.0以下 | 軟らか | 根系発達に阻害なし | 良 |
| 4.0を超える | 膨軟過ぎ | 阻害なし(支える力が低い、乾燥) | − |
(長谷川式土壌貫入計 取扱説明書 Ver.5.5 表-1 から。出典は日本造園建設業協会「植栽基盤整備ハンドブック」第6版)
国土技術政策総合研究所(国総研)の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、S値1.5〜4.0を「良」、1.0〜1.5を「可」、1.0未満を「不良」としています。日造協の基準が1.0以下を「不良」と「極不良」の2段階に分けているのに対し、国総研の手引きは1つにまとめている、という違いです。「良」の範囲は、どちらも1.5〜4.0です。
表の下の段にも目を向けておきたいところです。S値が4.0を超える土は「膨軟過ぎ」とされ、根の伸びは妨げないものの、樹木を支える力が低く、乾燥しやすい土とされています。軟らかければ軟らかいほど良い、というわけではありません。
1点ではなく、「連続」で見る
説明書には、もう1つ大事な表があります。S値0.7以下が5cm以上続く場合、または1.0以下が10cm以上続く場合を、「固結による不良地盤」と判定するというものです。
1回だけ小さなS値が出ても、小石に当たっただけかもしれません。同じように硬い値が、ある厚みをもって続いているかどうか。根の伸びを止める層があるかどうかは、そこで判断します。
グラフの読み方──硬い層は、どの深さに、どれだけの厚さであるか
測った結果は、横軸にS値、縦軸に深さをとったグラフにします。説明書は、メーカーのサイトから無料で入手できるパソコン用のソフト「ペネトロダイヤグラフ」を使えば、数字を入れるだけでグラフが作れるとしています。手で描く場合も、深さとS値を1回ごとに点で打ち、線で結ぶだけです。

硬い層と根、S値のグラフ(イラスト。グラフは説明のための例で、実測ではない)。S値が小さい(左に寄る)深さに硬い層があり、根はその上で横に広がる
グラフの線が左に寄っている深さが、硬い層です。読むときは、次の3つを見ています。
- 硬い層が始まる深さ: 根が伸びられる土の厚さ(有効土層)が、実際にはどこまでかが分かる
- 硬い層の厚さ: 薄い層なら、その下に軟らかい土が残っていることもある
- 硬さの程度: 「可」の締まった層なのか、「極不良」の固結した層なのか
たとえば、表面の20〜30cmは軟らかいのに、その下から硬い値が続く場合は、植えたときに入れた土の下に、造成のときに締め固められた地盤が残っている、という見立てもできます。ただし、これはグラフだけで決めることではなく、次回以降の透水調査や土層調査とあわせて確かめます。
硬度調査で分かること、分からないこと
長谷川式土壌貫入計で分かるのは、深さごとの土の入りにくさ、つまり根が伸びやすいかどうかです。一方で、水はけの良し悪し、土の層の中身(色、においやガラの混じり方)、pHや塩類の濃さは、この器具だけでは分かりません。硬くない土でも、水が抜けなかったり、アルカリ性が強かったりすれば、樹木は弱ります(第2回)。
当社では、硬度調査を、透水調査、土層調査、pH・EC測定と組み合わせて行っています。これから樹木を植える場所でも、植える前に透水性と硬さを数値で調べることがあります(これから樹木を植える前の植栽基盤診断)。数値で示せることは、お客様と同じものを見ながら話ができるという点で大きな利点です。そのうえで、植えられたときの状況、管理の内容、周りの環境、灌水装置の設定、土のにおいや感触も合わせて考えます(マンション 植栽基盤(土壌)調査 神奈川県川崎市)。
次回は、長谷川式簡易現場透水試験器で水はけを測る透水調査を取り上げます。
土の硬さが気になったら
株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医と植栽基盤診断士が、長谷川式の器具で土の硬さや水はけを調べ、結果をグラフにしてご説明しています。「樹木が大きくならない」「植える前に土の状態を確かめておきたい」といったご相談がありましたら、土壌調査のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくある質問(長谷川式土壌貫入計について)
Q1. 長谷川式土壌貫入計とは何ですか?
A. 2kgのおもりを50cmの高さから落とし、先端のコーンが土に入った深さから、地表から深さ100cmまでの土の硬さを続けて調べる、土壌調査用の小型の貫入試験機です。土の断面を掘らずに測れるため、樹木が育っている植栽地の調査に向いています。
Q2. S値とは何ですか?
A. おもりを1回落としたときに、コーンが土に入った深さ(cm/drop)です。取扱説明書では「軟らか度」と呼ばれています。記録した深さから1回前の深さを引いて求めます。S値は大きいほど軟らかく、小さいほど硬い土を表します。
Q3. S値がいくつなら良い土ですか?
A. 日本造園建設業協会の植栽基盤整備ハンドブックの基準でも、国総研の街路樹の倒伏対策の手引き 第2版でも、1.5〜4.0が「良」です。日造協の基準では0.7以下が「極不良」、0.7を超え1.0以下が「不良」、4.0を超える土は「膨軟過ぎ」で支える力が低く乾燥しやすいとされています。
Q4. 1か所だけ硬い値が出たら、その土は不良ですか?
A. 1回の値だけでは決めません。取扱説明書は、S値0.7以下が5cm以上、または1.0以下が10cm以上続く場合を、固結による不良地盤としています。小石に当たっただけでも硬い値は出るため、どの深さにどれだけの厚さで続いているかを見ます。
Q5. 石に当たって進まなくなったら、どうしますか?
A. 取扱説明書は、0.2cm以下が10回以上続いたら測るのをやめ、別の地点で測り直すよう求めています。打ち続けるとコーンがつぶれるなど器具が壊れることがあるうえ、そのときの数字は土の硬さを表していないためです。
Q6. 山中式土壌硬度計とは、どう違いますか?
A. 東京都建設局の街路樹診断等マニュアルでは、山中式は穴を掘って出した土の断面で、層ごとに硬さを測る器具、長谷川式は断面を掘らずに硬さを測る器具とされています。長谷川式の取扱説明書は、山中式との相関が高いとしています。
出典・参考情報
- ダイトウテクノグリーン株式会社「長谷川式土壌貫入計 取扱説明書」Ver.5.5(p.3、4、6〜9、11〜12、14。表-1 の出典は一般社団法人日本造園建設業協会「植栽基盤整備ハンドブック」第6版)
- 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」国総研資料第1059号、2019年2月(p.1-57 表-2.6)
- 東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」令和3年度(p.79 表Ⅳ-1・4)































