長谷川式簡易現場透水試験器は、直径15cmほどの穴に水を張り、水位が下がる速さから、植栽地の水はけをその場で調べる器具です。連載「土壌調査と土壌改良」の第4回では、測り方、最終減水能の求め方、判定の目安を、取扱説明書と国の手引きをもとに樹木医が解説します。
第2回で書いたように、水が抜けない土では、土のすき間が水でふさがり、根が必要とする空気が足りなくなります。前回の硬度調査では土の硬さを測りました。今回は、その土が水をどれだけ通すのかを測る透水調査です。当社の土壌調査で、硬度調査と組み合わせて行っている調査です。
長谷川式簡易現場透水試験器とは──現場で、少ない水で測る
長谷川式簡易現場透水試験器は、植栽地に掘った小さな穴(試験孔)に水を張り、水位が下がっていく速さを測る器具です。取扱説明書は、この器具を使った透水試験の特長として、次の点を挙げています。
- 土を採って室内で測るのではなく、現場で透水性を測れるため、植栽の設計のときや施工の直前の確認に向いている
- 従来の植穴透水試験と違い、少ない水量で測れる
- 試験孔の掘削が簡単で、少ない労力で行える
- 測定は1穴あたり1時間40分で終えられる
東京都建設局の「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度)も、土壌調査の方法の1つとして、長谷川式簡易現場透水試験で現場の透水性を測り、適否を評価することを挙げています。

透水試験器のしくみ(イラスト)。試験孔に水を張り、水面に浮かぶフロートの位置を、穴にかぶせたプレートの上のスケールで読む
器具は、試験孔にかぶせる透明な円盤(ホールカバープレート)、目盛りの付いた棒(スケール)、水面に浮かぶフロート、スケールをまっすぐに支えるスケールガイド、プレートを地面に留める固定ピンでできています。水位が下がるとフロートが下がり、スケールの目盛りの読みが変わります。測れる深さは最大80cmです。ホールカバープレートは、穴に土や石が落ちるのを防ぎ、測り直しや誤差を減らすためのものと説明されています。

植栽地に設置した透水試験器(当社撮影)
試験孔の深さ──「植える穴の底」で測る
試験孔は、複式ショベル(ダブルスコップ)で、直径15cm前後の円柱形に掘ります。取扱説明書は、穴の深さを、測りたい深さ、つまり設計で決めた植穴の底までとしています。目安は、中低木で20〜40cm程度、高木で40〜80cm程度です。掘り終えたら、穴の底を傷めないように平らにし、穴の中の土を丁寧に取り除きます。

試験孔の深さ(イラスト)。植える樹木の植穴の底の深さで水はけを測る。中低木は20〜40cm程度、高木は40〜80cm程度
表面の水はけが良くても、植穴の底の土が水を通さなければ、植えた樹木の根鉢の下に水がたまります。以前このブログで書いた、雨の後も植桝の水がまったくしみ込まない「鉢底穴の無い植木鉢」のような状態です(樹木の生育不良とその原因について)。

試験孔に器具をセットする(当社撮影)
測り方──予備注水、再注水、20分後と40分後
器具を穴にセットしたら、取扱説明書に沿って次のように測ります。
- スケールの目盛り(h0)を読んで記録する。スケールはフロートの下の面が0になるように作られていて、h0から200mmを引いた値が穴の深さになる
- 予備注水: サイフォンポンプで、プレートの注水用の穴から、水深が約100mmになるまでゆっくり水を入れ、目盛りと時刻を記録する。穴の側面に水がかかって崩れないように、スケールの棒に水を沿わせるようにして入れる
- 再注水: 予備注水からおよそ1時間おいて、もう一度、水深が約100mmになるまで水を足し、目盛り(h2)と時刻を記録する
- 再注水の20分後に目盛り(h3)を読む。水が無くなっていれば、ここで終わる
- 水が残っていれば、さらに20分後(再注水から40分後)に目盛り(h4)を読んで終わる

サイフォンポンプで試験孔に水を入れる(当社撮影)
予備注水の後に待つ時間は、取扱説明書では約1時間です。NEXCO(旧日本道路公団)と都市再生機構の基準では30分とされていることも、説明書に書かれています。

長谷川式簡易現場透水試験器の使い方(イラスト)。試験孔に水を注ぎ、水位が下がっていく時間を計る
なぜ、先に一度水を入れておくのか
乾いた土に水を入れると、はじめは土に吸い込まれるようにして水位が速く下がります。取扱説明書は、予備注水で穴のまわりの土を飽和に近い状態にしてから測ること、そして水位の変化は、多くの場合、約40分後にはほぼ安定した値に落ち着くことを説明しています。その安定した値が、次に書く最終減水能です。乾いた土で最初の数分だけを測ると、実際よりも水はけが良く見えてしまいます。
最終減水能とは──1時間あたり、何mm水位が下がるか
最終減水能は、水位が下がる速さを、1時間あたりの深さ(mm/hr)に直した値です。20分間に下がった深さを3倍すれば、1時間あたりになります。
取扱説明書の記入例では、再注水のときの目盛りが600mm、その20分後が645mm、40分後が655mmでした。
| 時点 | 目盛り | その20分間の減水能 |
|---|---|---|
| 再注水(11時00分) | 600mm | − |
| 20分後(11時20分) | 645mm | (645−600)÷20×60=135mm/hr |
| 40分後(11時40分) | 655mm | (655−645)÷20×60=30mm/hr |
(長谷川式簡易現場透水試験器 取扱説明書 Ver.4.1 の記入例から)
この例では、最初の20分は135mm/hrでしたが、次の20分は30mm/hrまで下がっています。40分後まで水が残っているので、最終減水能は後の方の30mm/hrです。最初の20分の値だけを見ていたら、4倍以上も水はけの良い土だと読み違えていたことになります。

水位の下がり方(イラスト)。再注水から20分後、40分後と、水面とフロートが下がった深さを目盛りで読む
水が無くなったときの決め方
取扱説明書は、最終減水能の決め方を3つの場合に分けています。
- 再注水から20分後に、もう水が無い場合: 最終減水能は300mm/hr以上とする
- 20分後には水があり、40分後に無い場合: 20分後の減水能を最終減水能とする
- 40分後まで水がある場合: 40分後の減水能を最終減水能とする
判定の目安──100mm/hrを超えれば「良」
取扱説明書は、一般社団法人日本造園建設業協会の「植栽基盤整備ハンドブック」第6版の基準を、判定の目安として載せています。
| 最終減水能(mm/hr) | 減水速度の換算(cm/sec) | 予想される障害 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 10以下 | 2.8×10-4以下 | 湿け枯れ | 不良 |
| 10を超え30未満 | 2.8×10-4〜8.3×10-4 | 枯れ枝などの湿害 | やや不良 |
| 30以上100未満 | 8.3×10-4〜2.8×10-3 | − | 可 |
| 100以上 | 2.8×10-3以上 | − | 良 |
(長谷川式簡易現場透水試験器 取扱説明書 Ver.4.1 から。出典は日本造園建設業協会「植栽基盤整備ハンドブック」第6版)
国土技術政策総合研究所(国総研)の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、100mm/hrを超えるものを「良」、30〜100mm/hrを「可」、30mm/hr未満を「不良」としています。日造協の基準が30未満を「やや不良」と「不良」の2段階に分けているのに対し、国総研の手引きは1つにまとめている、という違いです。同じ手引きは、植栽基盤を整えるときの改善の目標も、透水性100mm/hrを超えることとしています。
先ほどの記入例の30mm/hrは、どちらの基準でも「可」の下限にあたります。日造協の基準では、これを少しでも下回れば、枯れ枝などの湿害が予想される「やや不良」の区分に入ります。
測った値を、どう読むか
透水調査の値は、硬度調査の結果と並べて読みます。土が硬く締まっている深さと、水が抜けない深さが重なっていれば、締め固めが水はけを悪くしている、という見立てができます。土は軟らかいのに水が抜けない場合は、さらに下に水を通さない層があったり、地下水が高かったりすることも考えられます。当社の調査でも、土を調べている途中で水が湧いてきたことがありました(植栽基盤調査のご紹介)。
国総研の手引きは、灰色を帯びた土層や粘性土の場合は透水性の不良が考えられるため、透水性の調査が必要としています。土の色や手ざわりは、次回の土層調査で採った土で確かめます。透水調査と土層調査を合わせると、水が「どこで」止まっているのかが見えてきます。
これから樹木を植える場所でも、植える前に透水性と硬さを数値で調べておけば、植えた後に枯れたり衰えたりするおそれを小さくできます(これから樹木を植える前の植栽基盤診断)。水はけの悪い場所が分かれば、植える前に排水や土壌改良の手当てを考えられるからです。
次回は、長谷川式大型検土杖で深さ1mまでの土を採り、土の層を見る土層調査を取り上げます。
植栽地の水はけが気になったら
株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医と植栽基盤診断士が、長谷川式の器具で水はけや土の硬さを調べ、結果をもとに改良の方法をご提案しています。「雨の後、植栽地にいつまでも水が残る」「これから植える場所の水はけを確かめたい」といったご相談がありましたら、土壌調査のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくある質問(長谷川式簡易現場透水試験器について)
Q1. 長谷川式簡易現場透水試験器とは何ですか?
A. 植栽地に直径15cm前後の試験孔を掘って水を張り、水面に浮かべたフロートの下がり方から、現場で土の水はけ(透水性)を測る器具です。取扱説明書は、従来の植穴透水試験より少ない水量で測れること、1穴あたり1時間40分で測定を終えられることを特長に挙げています。
Q2. 最終減水能とは何ですか?
A. 水位が下がる速さを、1時間あたりの深さ(mm/hr)に直した値です。予備注水で土を湿らせてから、再注水の20分後と40分後の水位を読み、20分間に下がった深さを3倍して求めます。多くの場合、約40分後には値がほぼ安定し、その値を最終減水能とします。
Q3. 最終減水能がいくつなら水はけが良いのですか?
A. 日本造園建設業協会の植栽基盤整備ハンドブックの基準では、100mm/hr以上が「良」、30以上100未満が「可」、10を超え30未満が「やや不良」、10以下が「不良」です。国総研の街路樹の倒伏対策の手引き 第2版も、100mm/hrを超えるものを「良」、30mm/hr未満を「不良」としています。
Q4. なぜ予備注水をするのですか?
A. 乾いた土では、はじめは水が土に吸い込まれて水位が速く下がり、水はけが実際より良く見えるためです。取扱説明書は、予備注水で穴のまわりの土を飽和に近い状態にしてから測るとしています。予備注水の後に待つ時間は約1時間で、NEXCOと都市再生機構の基準では30分です。
Q5. 試験孔は、どのくらいの深さに掘りますか?
A. 測りたい深さ、つまり植穴の底の深さまで掘ります。取扱説明書の目安は、中低木で20〜40cm程度、高木で40〜80cm程度です。器具で測れる深さは最大80cmです。
Q6. 透水調査だけで、水はけの悪い原因が分かりますか?
A. 透水調査で分かるのは、その深さで水がどれだけ抜けるかです。原因を絞るには、硬度調査で締め固めの深さを、土層調査で土の色や層の重なりを確かめ、結果を組み合わせて読みます。
出典・参考情報
- ダイトウテクノグリーン株式会社「長谷川式簡易現場透水試験器 取扱説明書」Ver.4.1(p.3〜10。判定基準の出典は一般社団法人日本造園建設業協会「植栽基盤整備ハンドブック」第6版)
- 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」国総研資料第1059号、2019年2月(p.1-57 表-2.6、p.1-58 表-2.7、p.1-65)
- 東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」令和3年度(p.79 表Ⅳ-1・4)
































