ケーブリングは、二又や入り皮、大枝の落枝のおそれなど、弱い所がはっきりしている木に、支える先の幹が健全だと診断で確かめたうえで付ける方法です。連載「高木・特殊伐採とケーブリング」の第6回では、選ぶときの見方と剪定との組み合わせ、付けた後の点検と交換を解説します。
前回の第5回では、伐るか残すかを決める前に、外観診断と機器診断で何を確かめるかを書きました。樹木医が診断して、伐らずに残せるかもしれないと分かった木に、次に考えるのが支え方です。当社の高木・特殊伐採&ケーブリングのページのうち、第6回はケーブリングの項目を掘り下げます。
ケーブリングの仕組みと資材は、すでに3本の記事に書きました(コブラ・ツリーケーブリングとは、国内で買える資材とワイヤー支柱の比較、海外の資材と支柱の考え方)。この回では、どんな木に、どう判断して付けるかと、付けた後の見守り方に絞ります。

都内のイチョウの樹上で、ダイナミックケーブリングのロープ(モンキーテール)を取り付けているところ(2019年10月)。ケーブリングは、樹冠の中で幹と幹、幹と枝をつなぐ
ケーブリングは、危険を下げて残すための選択肢のひとつ
国土技術政策総合研究所(国総研)の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、樹木に不完全な結合や亀裂のような小さな弱点がある場合は、幹や枝をワイヤーケーブルで連結することで危険性を下げられる、と書いています。同じ箇所で、弱点を根本から解消できるものではないので、将来は剪定や伐採の検討が必要になることを認識しておき、弱点の状況や枝葉の繁り方、障害の対象を、折にふれて観察することが大切だともしています。
米国のパデュー大学の普及資料(2017年)も、同じ姿勢で書かれています。支持の装置で減らせない危険があること、補強できない木があることを断ったうえで、補強で欠点を和らげられるのに、大きな枝や木そのものが不要に伐られている場面が多い、とも指摘しています。支えるかどうかの最初の問いは、支えることで、管理者や所有者が受け入れられる程度まで危険を下げられるか、だとされています。
サービスページには、「危ないから伐りたい」というご相談でも、木の中の状態によっては、枝を減らす剪定やケーブリングで、危険を下げて残せる場合があると書きました。私も、ケーブリングは、答えになる木とならない木がある選択肢だと考えています。
どんな木の、どんな所に付けるか
二又・双幹と、入り皮
枝や幹が分かれる所の内側に、樹皮が入り込んだ状態を「入り皮」といいます。国総研の手引きは、入り皮のある分岐部は通常の分岐部(分かれた部分に樹皮の隆起がある)に比べて脆く、枝折れなどが起こりやすいとしています。双幹や多幹の樹形も、入り皮になりやすいとされています。手引きは、分岐部の点検・診断の項目に、外観の目視、木づちによる打診、鋼棒による貫入抵抗を挙げています。

入り皮と健全な分岐の比べ(イラスト。街路樹診断の記事 13867 で使った絵)
パデュー大学の資料は、二又(V字の分岐)が樹木の倒壊の最も多い原因だとしています。幹どうしを結ぶ組織が足りないことと、幹の間の入り皮が弱さの理由で、二又の幹が長いほど、とくに大きな木で壊れる可能性が高いと書いています。最善は、枝ぶりのよい木を選ぶか、若いうちの剪定で二又を避けることですが、年を経て構造のよくない木では、ケーブリングなどの補強が弱い所を強くする唯一の手段になることがある、とも書いています。
大枝の落枝のおそれ
パデュー大学の資料は、枝が長くて重く、葉が先に集まっている「張り出しすぎた枝」は、枝の付け根で折れやすいとしています。風や雪、氷の重さがかかったときに起こりやすく、ケーブリングや支えを使えば、大きな剪定の切り口を作らずに済むことがある一方、早い時期の矯正剪定が最善だとも書いています。
国土交通省の「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」(令和8年3月30日改訂)は、すぐには対応できない変状や異常があって、倒伏や落枝の危険が高い場合は、樹木を仮支柱やケーブリングで支持したり、立入防止柵を設置したりするとしています。
樹高20mを超えるような保存樹木クラスの木になると、地上からだけでは上部の枝や幹の腐れ・傷みを確認できない箇所が出てきます。当社が手がけた区の保存樹木のイチョウでは、樹木医3名が木に登って高所外観診断を行い、その結果をもとに、大枝の枝折れ・落枝のリスクを下げるためにケーブリングを施工しました。使ったのは、強化ポリエステル製の耐久伸縮性のあるロープで、金属や金具の部材は使っていません(保存樹木イチョウ 樹木医・ケーブリング支柱施工)。なお、枝が折れても下に落ちないよう上の幹から吊っておく使い方を、コブラのマニュアルは「重量サポート」と呼んでいます(3つの使い分け)。
すでに亀裂がある又
又にすでに亀裂が入っている木では、広がりを抑えるためにケーブリングを使います。亀裂はロープが伸びると開いてしまうので、緩衝材を入れない「スタティック」の使い方になります。国総研の手引きの改善的措置の例(表-6.6)でも、幹の亀裂には「剪定、ケーブリング等」が、不完全な結合などで危険性が非常に高い場合には「詳細診断、断幹、剪定、ケーブリング等」が挙がっています(別冊 p.1-74。街路樹の手引きなので、考え方の参考として読んでいます)。
ここまでの付ける木と、次の節で書く付けない木を、2列に並べました。

ケーブリングを付ける木と、付けない木(図。木の絵は模式図)。左は2本の幹が健全な木、右はロープを掛ける幹の中に腐朽がある木。1〜3の付ける目的は、コブラのマニュアルの3つの使い分け(ダイナミック・スタティック・重量サポート)に当たる。出典: 国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」Ⅱ/1-20・Ⅱ/1-124、「街路樹の点検・診断」(別冊)表-6.6(p.1-74)、国土交通省「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」p.14、レイ・ソーラデザイン株式会社「コブラ ツリーケーブリング システム」マニュアル(2025年版)p.4
付けられない木と、付ける前に確かめること
ケーブリングは、付ければ必ず効く方法ではありません。国総研の手引きは、支柱やケーブリングの設置位置が不適切だと、かえって幹折れや枝折れにつながることがあるので、支持が確実にできることと、設置位置の近くに腐朽部がないことを確認するよう求めています。コブラのマニュアルも、落枝を防ぐ使い方では、ロープを掛ける支点と、それに影響される樹冠の一部の強さが、支える枝を吊るのに十分でなければならないとしています。
パデュー大学の資料は、健康状態が悪い木や、腐朽した材の木、種類や場所のうえで残す価値の小さい木は、ケーブリングもブレーシング(穴を開けてロッドを通す補強)もできないことがあるとしています。付ける前の問いとして、装置を付けられるだけの健康さがあるか、点検を続けられるか、などを挙げています。
幹や枝の付け根の中の腐朽は、外から見えないことがあります。疑いがあるときは、レジ(Resi PD)やピカスなどの機器診断で内部を確かめます。機器の結果だけで決めず、樹勢、樹種、腐朽菌の種類、根元の環境、人や建物との距離を合わせて判断します。腐朽がロープを掛ける幹の中にあれば、ケーブリングは付けず、剪定で荷重を減らす、立入を制限する、伐採を検討する、といった別の方法を考えます。判断の仕方は、前回の第5回に書きました。

ケーブリングを付けられない例(イラスト)。ロープを掛ける幹の中に腐朽があると、支える先の幹が力を受け止められない。腐朽の位置と大きさは模式

ケーブリングを付けるまでの判断の流れ(図)。ロープを掛ける幹と付ける位置の近くに腐朽が無いことが前提になる。出典: 国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」Ⅱ/1-87・1-123・1-124、Purdue Extension FNR-550-W(2017年)をもとに当社が流れに整理した
軽減剪定との組み合わせ
軽減剪定は、樹冠を小さくして、風や枝の重さの負担を減らす剪定です。国総研の手引きは、落枝の危険には、枯れ枝や折れる可能性の高い危険枝を切ることやケーブリングなどの樹体保護が有効、倒伏の危険には、原因となる構造上の異状が小さい場合などに、風圧を減らすための樹冠縮小などが有効としています。国土交通省の指針(案)も、剪定は強風による倒伏の危険を下げる効果があるとしたうえで、剪定後の成長や傷口の腐朽しにくさを考え、量・位置・方法に気をつけるよう求めています。強剪定との違いは、第1回(都市の高木は、なぜ手入れできなくなるのか)に書いたとおりです。
順番は、剪定が先です。パデュー大学の資料は、剪定は設置の前に終えておくとしています。コブラのマニュアルも、ロープが枝やほかのロープに触れると破断の原因になるので、必要に応じて剪定をしてから付けるよう求めています。国総研の手引きの表-2.4(台風などの前に、すでに分かっている異状へ取る応急的な対策)から、剪定と支え方の組み合わせを並べました。
| 弱点 | 剪定でする | ケーブリング・支柱でする | 伐採になる条件 |
|---|---|---|---|
| 幹の腐朽・空洞 | 倒伏に直結するほどでなければ、風圧による負荷を減らす剪定 | 支柱を確実に設置 | 著しく、倒伏や幹折れにつながるおそれがある場合 |
| 大枝の腐朽・亀裂・結合 | 落枝につながるおそれがある場合は剪定 | 幹と大枝の不完全な結合があって亀裂に至る可能性がある場合は、ケーブリング | (表に記載なし) |
出典: 国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」「街路樹の点検・診断」(別冊)表-2.4 異常時における事前の緊急対策(予防的措置)(p.1-24)。表の文を、当社が要約した
表では、ケーブリングが受け持つのは樹冠の中の結合や亀裂、大枝の落枝で、幹の腐朽は剪定と支柱が受け持ちます。樹冠の中の弱い所には、先に剪定で負担を減らし、そのうえでケーブリングを加えます。

軽減剪定で風を受ける樹冠を小さくし、そのうえで又をケーブリングでつなぐ(イラスト)
ダイナミック型のケーブリングと、従来の支柱の違い
丸太や竹、金属のワイヤーで地面から幹を支える支柱について、国総研の手引きは、基本的には木が植栽直後から根を伸ばして十分に根づくまでの仮設物と位置づけ、植栽時の仮設支柱の撤去の目安を3〜5年程度としています(恒常的な強風を受ける木や、植栽基盤が狭く根が十分に伸びない木には、恒久的な支柱が必要ともしています)。ケーブリングは、大きく育った木の樹冠の中の弱い所のための方法で、使う場面が違います。要点だけを並べます。詳しい比較は、前の2本の記事に書きました(国内の資材とワイヤー支柱の比較、海外の資材と支柱の考え方)。
| 項目 | ダイナミック型のケーブリング | 地上の支柱(丸太・竹・ワイヤー) |
|---|---|---|
| 支える場所 | 樹冠の中(幹と幹、幹と枝) | 幹と地面(杭やアンカー) |
| 主な目的 | 大きく育った木の枝折れ・幹裂け・落枝の危険を下げる | 主に、植えた木が根づくまで倒れないようにする仮設物 |
| 地上 | 何も立たない | 杭やワイヤーが地面に出る |
| 付けた後 | 緩みや食い込みを定期的に確認し、調整する | 根づいたら撤去する(植栽時の目安は3〜5年程度) |
出典: 国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」Ⅱ/1-87・1-123・1-124、レイ・ソーラデザイン株式会社「コブラ ツリーケーブリング システム」マニュアル(2025年版)p.4
ケーブリングの中でも、金属のケーブルとボルトを使う方法と、合成繊維のロープを使うダイナミック型では、木への傷が違います。パデュー大学の資料は、鋼のケーブルは木に穴を開けて通したボルトに取り付けるのに対し、ダイナミック(ソフト)型は穴を開けずに合成繊維のロープを取り付け、木への損傷が少なく、金具を付けられない所でも使えるとしています。
付けた後の点検と、付け替え
国総研の手引きは、成長した木に設置した支柱やケーブリングについて、材の欠損、緩み、固定した部位への食い込みがないかを定期的に確認して調整するよう求めています。ケーブリングが緩んでいると枝折れによる落枝につながる可能性があり、調整せずに放置すると木と癒着して食い込み、折れることもあるとしています。点検で見るところの一覧は、コブラの記事に書きました(付けた後の点検と、付け替え)。間隔の目安を資料ごとに並べると、次の図のとおりです。

ケーブリングの点検と交換の目安(図)。資料が数字で書いている範囲だけを並べた。資料ごとに対象の資材が違い、あくまで目安。国総研の手引きは年数を示さず、定期的に確認し、食い込む前に調整するか新しい部品に交換するとしている。出典: Purdue Extension FNR-550-W(2017年)、レイ・ソーラデザイン株式会社「コブラ ツリーケーブリング システム」マニュアル(2025年版)p.7、国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」Ⅱ/1-87
当社の記事にも、付けた後に再び登った例があります。区の保存樹木の大きなイチョウでは、4年前に樹木医3名が登って高所外観診断、剪定管理作業、ケーブリングを行っていました。その後の経過観察として、再診断とケーブリングの点検・調整、枯れ枝の除去のために、もう一度登っています(区保存樹木イチョウ 樹木医・高所外観診断 東京都)。

区の保存樹木のイチョウの樹冠で、ケーブリングのロープを扱う(再び登ったときの記事 8470 の写真。既存メディア 8450)
点検で見直すのは、ロープの状態だけではありません。手引きにあるとおり、ケーブリングは弱点を消さないので、弱い所の亀裂や腐朽が進んでいないか、付けた後に樹冠がどれだけ育ったかを見て、剪定を足すか、付け替えるか、伐採を考えるかを決め直します。
当社では、診断で弱点の場所と程度を確かめたうえで、ケーブリングの取り付けと点検まで行っています。マンションの植栽、学校や社寺、公共の施設の高木、区の保存樹木のほか、個人のお客様の高木も承っています。お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
次回(第7回)は、伐採した木の切り株の断面で、診断が合っていたかを確かめることを取り上げます(切り株は答え合わせ)。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくある質問(ケーブリングについて)
Q1. ケーブリングは、どんな木に付けるのですか?
A. 二又や入り皮のように分岐部が弱い木、又に亀裂がある木、大枝が折れて落ちるおそれのある木が中心です。付ける前に、樹木医が診断で弱点の場所と程度を確かめます。
Q2. ケーブリングを付ければ、危ない木でも伐らずに済みますか?
A. そうとは限りません。国土技術政策総合研究所の手引きは、ケーブリングは弱点を根本から解消するものではなく、将来は剪定や伐採の検討が必要になるとしています。支えることで危険を受け入れられる程度まで下げられるかを、診断の結果から判断します。
Q3. ケーブリングを付けられない木はありますか?
A. あります。ロープを掛ける幹や、付ける位置の近くに腐朽がある木では、支持が確実にできず、かえって幹折れや枝折れにつながることがあると手引きは指摘しています。健康状態が悪い木や、腐朽した材の木は付けられないことがあると、米国の普及資料も書いています。
Q4. ケーブリングと剪定は、どちらを先に行いますか?
A. 剪定を先に行います。米国の普及資料は、剪定は設置の前に終えておくとしています。コブラのマニュアルも、ロープが枝に触れると破断の原因になるので、必要なら剪定してから付けるとしています。樹冠を小さくする軽減剪定で風や重さの負担を減らし、そのうえでケーブリングを付けます。
Q5. ケーブリングと、丸太や竹・ワイヤーの支柱は何が違いますか?
A. 支える場所と目的が違います。ケーブリングは大きく育った木の樹冠の中で幹と幹、幹と枝をつなぎ、地上には何も立てません。丸太や竹、ワイヤーの支柱は、主に植えた木が根づくまで地面から支える仮設物で、国総研の手引きは撤去の目安を植栽後3〜5年程度としています。
Q6. 付けた後の点検と交換は、どのくらいの間隔ですか?
A. 国総研の手引きは「定期的に」とだけ書いています。米国の普及資料は、地上からの点検を毎年、木に登っての点検を通常は3年ごとにし、7〜10年後に交換を考えるとしています。コブラのマニュアルの適用年数は「>8年」(8年を超える)です。木の成長や風の当たり方で変わるので、点検のたびに状態を見て決めます。
出典・参考情報
- 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」(国総研資料 第1059号、2019年2月)第1章 Ⅱ/1-20(脆弱な分岐部・入り皮)、第3章 Ⅱ/1-87、第5章 Ⅱ/1-123〜124(樹体保護)、「街路樹の点検・診断」(別冊)表-2.4(p.1-24)・表-6.6(p.1-74)・第6章 p.1-78
- 国土交通省「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」(平成29年9月策定、令和8年3月30日改訂)p.14
- Purdue Extension, FNR-550-W “Large Tree Cabling and Bracing”(Lindsey Purcell、2017年9月。PDF。2026年10月11日に原文を確認)
- レイ・ソーラデザイン株式会社「コブラ ツリーケーブリング システム」マニュアル(2025年版)p.2・p.4・p.7
伐採・ケーブリングの記事
- 都市の高木は、なぜ手入れできなくなるのか|高木・特殊伐採とケーブリング 第1回
- 特殊伐採とは|高木・特殊伐採とケーブリング 第2回
- コブラ・ツリーケーブリングとは
- 国内で買えるケーブリング資材とワイヤー支柱を比べる
- 海外のケーブリング資材と樹木支柱
- 保存樹木イチョウ 樹木医・ケーブリング支柱施工
- 区保存樹木イチョウ 樹木医・高所外観診断 東京都
- 樹木医は街路樹診断で何を見ているか(前編)
連載「高木・特殊伐採とケーブリング」のすべての回は、連載の一覧からご覧いただけます。




















