丘の上のタブノキ
このタブノキに一目惚れされて
新居を建てられた素敵なお客様から
現状の樹木の状態の診断と、今後の育成管理のご相談を頂きました。
神奈川県横浜市の丘の上に立つ高木のタブノキを、樹木医が外観診断とレジによる機器診断で調べ、周りに生えた実生木を整理した記録です。タブノキという木の性質、鳥が運ぶ実生木、幹に巻きつくキヅタについても、公的な資料をもとに書き添えます。
第一弾の作業──実生木の整理と、樹木医による診断
第一弾として、下記の作業を行いました。
・実生木の整理
周辺に鳥のフンなどから自然に生えてきてしまったトウネズミモチやムクノキなど
実生木の剪定と間引き伐採
・樹木医による外観診断と機械診断
今現在の状態を、樹木医が外観診断、機械診断(レジPD-500)での
腐朽(幹や根元の腐れ)の具合を診断
- 樹木医 診断 レジ
タブノキとは──海岸近くから山地に育つ常緑の高木
タブノキはクスノキ科の常緑の高木で、イヌグスとも呼ばれます。林野庁の資料では、海岸近くの低地から山地に生育し、葉は互生で革質、両面とも無毛の楕円形と説明されています。資料にある特徴を並べると次のとおりです。
| 項目 | 林野庁の資料にあること |
|---|---|
| 学名・科名 | Machilus thunbergii、クスノキ科 |
| 別名 | イヌグス |
| 育つ所 | 海岸近くの低地から山地 |
| 葉 | 互生で革質、長さ8〜15cm・幅3〜7cmの楕円形、裏面は灰白色 |
| 実 | 径約1cm、緑色から黒紫色に熟す |
| 分布 | 本州、四国、九州、沖縄、朝鮮南部 |
出典: 林野庁 九州森林管理局 西表森林生態系保全センター「タブノキ」(植物の解説資料)
鳥が運ぶ実生木──トウネズミモチは防除推進外来種
根元で整理した実生木のうち、トウネズミモチは中国中南部原産の外来の樹木です。環境省の「生態系被害防止外来種リスト」(第2版、2026年9月11日)では防除推進外来種とされ、明治初年に渡来して関東〜九州に分布していること、日本では大量に熟す果実が鳥によって散布され、河川などに広く逸出していること、在来種のネズミモチとの競合や駆逐が懸念されることが書かれています。
記事にあるとおり、この木の周りの実生木は、鳥のフンなどから自然に生えてきたものでした。2年後に再び訪れたときも、根元には鳥の糞などで自然発生したムクノキやネズミモチなどの実生木があり、タブノキに今後悪影響を与えないよう伐採して、周辺の環境を整えています。
外観診断と機器診断──レジで幹の中の腐朽を測る
東京都の街路樹診断等マニュアルでは、機器診断は、外観診断で機器診断が必要とされた樹木に対して行う診断で、機器診断で得られる腐朽空洞率は、総合判定を出す際の参考値として使用するとされています(p.50)。まず樹木医が外から見て、気になる所があれば機器で中を確かめる、という順番です。
同じマニュアルは、街路樹の機器診断は「貫入抵抗測定器(商品名:レジ)」によるものを基本とし、細いキリを回転させながら幹に貫入させ、そのときの抵抗の高低から材の腐朽や空洞の状態を把握する機器と説明しています(p.51)。

レジ(Resi PD)による穿孔抵抗の測定

図: 健全・腐朽・空洞で波形はこう変わる(模式図。実測ではない。レジの画面と同じく、右端が深さ0で右から左へ読む)(出典: 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」p.51〜52 の波形の読み方をもとに当社作成)
上の図は、レジの画面と同じく右端が樹皮の側(深さ0)で、右から左へ読みます。このタブノキの診断の数値は、この記事には載せていません。
キヅタは気根で幹をよじ登る
根元で直径15cmくらいにもなるキヅタが、
タブノキの上部まで巻きついていたので次回剪定と合わせてキヅタの除去を行います。
キヅタの締めつけは強力で、樹木の幹や枝を変形させる程なので注意が必要です。
キヅタはウコギ科キヅタ属の日本在来のつる性の樹木で、常緑で冬も葉が青々としているため、フユヅタとも呼ばれます。千葉県野田市の植物の資料では、つるにびっしりと生えた気根で体を支えながら、壁や幹などをよじ登っていき、つるは年を重ねるごとに太くなって、ときに直径5cm以上にもなると説明されています。
この木のキヅタは、その後の剪定のときにロープワークで根元から枝先まで取り除きました。除去のときには、巻きついていた所が強く締め付けられ、枝や幹に痕が残るほどでした。2年後の確認では、その痕はほぼ消えていて、樹冠の枝葉の密度も増えていました。

図: 丘の上のタブノキ──当社の記録でたどる3回の手入れ(出典: 当社のブログ記事3本の記録から作成)
ご依頼ありがとうございました。
引き続き次回第二弾の剪定、土壌改良作業もよろしくお願い致します。
株式会社トシ・ランドスケープ
よくある質問
Q1. 機器診断は、どんな木に行いますか。
東京都の街路樹診断等マニュアルでは、機器診断は、外観診断で機器診断が必要とされた樹木に対して行う診断とされています。この記事のタブノキでは、樹木医が外観診断を行い、レジで幹や根元の腐朽の具合を診断しました。
Q2. 庭木の根元に生えてきたトウネズミモチは、どうすればよいですか。
トウネズミモチは、環境省の生態系被害防止外来種リスト(第2版)で防除推進外来種とされ、果実が鳥によって散布されて広がることが書かれています。この記事の現場では、タブノキの周りに生えた実生木として、剪定と間引き伐採で整理しました。
出典・参考情報
・東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」p.50(機器診断の対象と腐朽空洞率の扱い)・p.51(貫入抵抗測定器)
・林野庁 九州森林管理局 西表森林生態系保全センター「タブノキ」(学名・科名・別名・生育地・葉・実・分布)
・環境省「生態系被害防止外来種リスト(植物)」第2版(2026年9月11日)トウネズミモチ(防除推進外来種、原産地・渡来・分布・鳥による散布・ネズミモチとの競合)
・千葉県野田市の植物の資料「キヅタ(木蔦)」(科名・気根でよじ登る性質・つるの太さ)
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※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。






















