お客様のお庭に、杉の皮を張った杉皮垣と、竹の細い枝を束ねた黒穂垣をつくった記録です。材料の下ごしらえ、木材の防腐防虫、材料の選び方を順にご紹介し、2つの竹垣のつくりと、木材を長持ちさせる考え方を、日本建築の用語辞典や研究機関の資料をもとに書き添えます。
下ごしらえ──木材の加工と竹の磨き
事前に木材の加工や、竹の磨きをしておきます。
- 竹 磨き
写真の柱材は、ほぞの加工をしたところです。組み立ての前に、柱材の加工と竹の磨きを済ませておきます。
木材に防腐防虫剤を塗る
- 木材 防腐剤 塗布
- 木材 防腐剤 塗布
屋外の木材は、木材腐朽菌やシロアリなどによって傷んでいきます。北海道立総合研究機構 林産試験場の『林産試だより』は、こうした生物劣化を防ぐために木材保存剤で処理すること、屋外の構造物に使う保存処理木材の多くは、圧力をかけて薬剤をしみ込ませる加圧注入処理であることを紹介しています。同じ記事によると、加圧注入に使う保存剤は時代とともに移り変わり、最近は銅を含む系統のものの割合が高くなっています。この現場で行ったのは、加圧注入とは別の、塗って表面から木材にしみ込ませる方法です。
キシラデコールは、製造元の大阪ガスケミカルが屋外の木部用の木材保護塗料としている製品で、木材の内部にしみ込み、内部から防腐・防カビ・防虫の効果を出し、表面に余分な塗膜をつくらないと説明されています。塗り替えの目安は、メーカーの業務用の案内で1回目が2〜3年後、その後は5年ごとです(期間を保証するものではないとされています)。
杉皮と黒穂、材料を選ぶ
杉皮垣と黒穂垣のつくり
竹垣は、生きた木を仕立てる生垣とは違い、切って乾かした竹や木の皮などでつくる垣です。日本建築・美術の用語辞典 JAANUS は、刈り取った材料でつくる垣に、竹の杭と竹の穂(竹の細い枝)を使う垣があることを挙げ、桂離宮の「桂垣」をその例としています。また、杉の皮の板を縦に並べ、細い竹を横に渡して押さえる塀を「大和塀」として紹介しています。
この現場の2つの垣も、表に横向きの丸竹(押縁)を渡して、面の材料を押さえています。完成の写真から、2つの垣のつくりを並べると次のとおりです。
| 比べる点 | 杉皮垣 | 黒穂垣 |
|---|---|---|
| 面の材料 | 杉の皮を縦に並べて張る | 竹の細い枝(穂)を縦にぎっしり束ねる |
| 面の見え方 | 平らで、杉皮の筋が縦に通る | ふさふさとして厚みがある |
| 押縁 | 青竹の丸竹を横に数段 | 細い青竹を2本1組にして横に3段 |
| 柱 | 両端に焦げ茶色の角柱 | 黒い丸柱で区切る |
出典: この記事の完成の写真(当社の施工の記録)。用語は JAANUS「kaki 垣」「hei 塀」
建仁寺垣・御簾垣・四つ目垣との違い
当社が手がけたほかの竹垣と比べると、面を何でつくり、どちら向きに並べるかで、垣の姿が大きく変わることが分かります。JAANUS の説明では、建仁寺垣は幅3cmほどの割竹を縦にすき間なく並べ、丸竹の押縁を4〜5段渡す垣、御簾垣は細い竹を横に重ねて柱に留める垣、四つ目垣は青竹を縦横に組んで縄で結ぶ、向こうが透けて見える格子の垣です。
| 竹垣 | 面の材料と向き | 当社の記事 |
|---|---|---|
| 杉皮垣 | 杉の皮を縦に張る | この記事 |
| 黒穂垣 | 竹の細い枝を縦に束ねる | この記事、8140(建仁寺垣の裏の穂垣) |
| 建仁寺垣 | 割竹を縦にすき間なく並べる | 8140、3520(人工竹垣) |
| 御簾垣 | 細い竹を横に重ねる | 4538 |
| 四つ目垣 | 青竹を縦横に組み、向こうが透ける | ― |
出典: JAANUS「kenninjigaki 建仁寺垣」「misugaki 御簾垣」「yotsumegaki 四目垣」、当社の記事

杉皮垣(左)と黒穂垣(右)。どちらも横向きの丸竹の押縁で面の材料を押さえている(当社イラスト)
- 黒穂
- 杉皮 垣根
- 杉皮 垣根
- 杉皮 垣根
- 杉皮 垣根
- 黒穂垣 垣根
まとめ
お客様のお庭に、杉皮垣と黒穂垣をつくりました。事前に木材の加工と竹の磨きを済ませ、木材にはキシラデコールを塗って防腐防虫をしています。杉皮と黒穂は、国産品と輸入品で質感やコストが違うので、お客様とイメージを共有しながら材料を選び、品川区の竹屋・山十さんにご相談して購入しました。杉皮垣は平らな面に縦の筋が通る落ち着いた垣に、黒穂垣は穂の束がふさふさと厚みのある垣に仕上がり、同じお庭に、表情の違う2つの竹垣ができました。
よくある質問
Q1. 杉皮垣と黒穂垣は、何が違いますか。
面の材料が違います。杉皮垣は杉の皮を縦に並べて張った平らな垣、黒穂垣は竹の細い枝(穂)を縦に束ねた厚みのある垣です。どちらも表に横向きの丸竹(押縁)を渡して押さえます。
Q2. キシラデコールは、どのくらいで塗り替えますか。
メーカーの業務用の案内では、1回目の塗り替えは2〜3年後、その後は5年ごとが目安とされています。置かれた環境で変わるので、期間を保証するものではないとされています。
Q3. 竹垣にはどんな種類がありますか。
面の材料と向きで分かれます。割竹を縦に並べる建仁寺垣、細い竹を横に重ねる御簾垣、青竹を縦横に組む四つ目垣のほか、この記事の杉皮垣・黒穂垣のように、竹以外の材料や竹の枝で面をつくる垣もあります。
出典・参考情報
・JAANUS(Japanese Architecture and Art Net Users System)「kaki 垣」「hei 塀」「kenninjigaki 建仁寺垣」「misugaki 御簾垣」「yotsumegaki 四目垣」
・宮内輝久・森満範「加圧注入用木材保存剤の移り変わり」北海道立総合研究機構 林産試験場『林産試だより』2009年4月号
・大阪ガスケミカル「キシラデコール」製品ページ
個人のお宅では、大きく育った高木の剪定や特殊伐採、樹木医による樹木診断を承っています。お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
関連記事
・焼杉板の外壁と植栽の相性 日本の美意識(このテーマのまとめ)
・竹垣工事 建仁寺垣 穂垣
・タカショー製の人工竹垣(建仁寺垣)をバルコニーに設置 港区マンションの茶庭作庭
・御簾垣
・アパート外構リニューアル工事 品川区西中延
・マンションの灌水設備と猛暑対策──灌水タイマー交換の記録と、耐用年数の考え方を樹木医が図解(東京都港区)
































