マンションの灌水設備と猛暑対策──灌水タイマー交換の記録と、耐用年数の考え方を樹木医が図解(東京都港区)

灌水タイマー 交換 配管 保温チューブ マンション 港区

港区のマンションで2020年に行った灌水タイマーと配管の交換工事の記録に、東京の猛暑日の増え方、高温と乾燥が樹木に与える影響、灌水設備の耐用年数の考え方(法定耐用年数・修繕周期・メーカーの交換目安の違い)を加えて、樹木医が一次情報をもとに図解します。

この記事は、植栽の年間管理の一環として行った工事を、2020年11月に記録したものです。2026年10月に、猛暑と灌水設備の関係、設備の年数の見方を書き加えました。

先に答え──猛暑の夏ほど、灌水設備の点検が効いてくる

  • 東京の猛暑日(最高気温35℃以上)は2025年に29日で、1875年からの統計で最も多くなりました。全国の夏の平均気温も、2023年から3年続けて記録的な高さでした。
  • 乾燥が強まると、樹木は幹の中の水の通り道が途切れ、気孔を閉じて光合成が落ち、長引けば枯れます。夏に灌水設備が止まると、この影響がまともに出ます。
  • 灌水設備の「年数」には、税法上の法定耐用年数(散水用配管を含む緑化施設は20年)、長期修繕計画の修繕周期の目安、メーカーの交換目安(タイマーの電池は約1年)があり、どれも部品の寿命そのものではありません。
  • 部品ごとの寿命を示す公的な資料は無く、当社の現場での目安(灌水タイマー3〜10年程度、電磁弁5〜10年程度、点滴チューブ7〜10年程度、配管15〜20年程度)も設置環境で大きく変わります。電池の交換と作動の点検を続け、交換の記録を残すことが、計画的な更新の土台になります。

 

港区のマンションで行った灌水タイマーと配管の交換(2020年11月の記録)

植栽の年間管理をご依頼頂いているマンションの灌水タイマーと配管交換工事です。

■既存の灌水タイマーの経年劣化・故障
■配管からの水漏れ
の為、新たに設置場所を変更し施工しました。

交換前──植込みの中に置かれていたタイマーと配管

灌水タイマー 交換前 配管 植込み 灌水設備 港区

交換前の灌水タイマー。植込みの地際に5台が並び、塩ビの配管と黒いホースがつながっている

灌水タイマー 交換前 配管 継手 ホース 港区

交換前の配管の近景。塩ビの配管から分かれた管が、蛇腹の金属管でタイマーにつながっている

屋外に設置されている事が多く、紫外線や雨が当たる環境の為、劣化も早いです。

設置場所を軒下に移し、配管に保温チューブを巻く

今回新たに設置場所を変更し、軒下の場所に設置できた為、故障、劣化のリスクは軽減出来ます。

配管にはエスロン保温チューブを巻いて、耐劣化性、凍結防止等に効果を発揮します。

灌水タイマー 新設 保温チューブ 配管 グレーチング 港区

交換後の灌水タイマー5台。金属の台に載せ、保温チューブを巻いた配管から給水する。黒いホースはグレーチングの上を通る

灌水タイマー 設置場所 軒下 配管 灌水設備 マンション

新しい設置場所の全景。上に金属のダクトが通り、空調の室外機が並ぶ一角にタイマーを置いた

灌水タイマー カバー カクダイ ホース 灌水設備 港区

タイマーにはカバーを掛け、緑の継手で黒いホースをつないでいる

灌水タイマー 設置完了 保温チューブ 配管 交換工事 港区

設置を終えたところ。保温チューブの上からテープを巻いた配管が、5台のタイマーに分かれる

交換した灌水タイマーと、選んだ理由

今回交換をした灌水タイマーの製品紹介

既存の灌水タイマー セフティ-3 自動水やり器 SAW-1
交換後の灌水タイマー カクダイ 移動コンピューター

どちらも一般的に良く使用される灌水タイマーです。今回、加工や建物躯体への固定をしない設置方法にする為、地面に安定的に設置できる製品(カクダイ 移動コンピューター)を選択しました。

近年、屋上緑化や壁面緑化が増えてきていますが、灌水設備が必須になり、夏場の故障は植栽に致命的なダメージや枯損に繋がります。

設置環境や部材等により経年劣化の程度は変わってきます。定期的な点検、交換の実施を推奨します。

ご依頼頂きありがとうございました。

 

猛暑の夏と灌水設備──東京の猛暑日は2025年に29日

この工事から6年がたち、東京の夏の暑さは、記録の上でもはっきり変わりました。灌水設備は、雨の少ない時期に植栽を枯らさないための設備です。その役割が、ここ数年で大きくなっていると感じています。

データで見る東京の夏

気象庁の観測(地点「東京」)では、日最高気温35℃以上の猛暑日が、2025年に29日ありました。1875年からの統計で最も多く、2位は2023年の22日、3位は2024年の20日です。2010年代は、多い年でも13日(2010年)でした。

年 猛暑日(最高35℃以上) 真夏日(最高30℃以上) 日最低気温25℃以上の日
2016 3 57 10
2017 2 51 18
2018 12 68 42
2019 12 55 28
2020(この工事の年) 12 54 27
2021 2 52 19
2022 16 66 27
2023 22 90(過去最多) 57(過去最多)
2024 20 83 47
2025 29(過去最多) 88 55
2026(年の途中) 12 57 16

出典: 気象庁「過去の気象データ検索」東京の年ごとの値・観測史上1〜10位の値(2026年10月10日に確認)。2026年は年の途中の値

東京 猛暑日 日数 2016年 2025年 29日 過去最多 気象庁 棒グラフ
図: 東京の猛暑日(最高気温35℃以上)の日数。2026年は年の途中の値(出典: 気象庁「過去の気象データ検索」東京 年ごとの値をもとに当社作成)

東京の観測場所は、2014年12月に大手町から北の丸公園へ移りました。気象庁の比較観測では、北の丸公園は大手町より年平均気温が約0.9℃低く、猛暑日も少なく出ます。2023〜2025年の記録は、涼しい側の場所に移った後に出たものです。

全国でも、日本の夏(6〜8月)の平均気温は、2025年に平年(1991〜2020年の平均)より2.36℃高く、1898年の統計開始以降で最も高くなりました。2023年と2024年はともに平年より1.76℃高く、3年続けて記録的な高温でした。2025年8月5日には、群馬県伊勢崎で国内の観測史上最高の41.8℃を記録しています。気象庁の異常気象分析検討会は、2025年夏の高温の要因に地球温暖化を挙げ、速報的な評価として、温暖化が無いと仮定した場合「今夏の高温はほぼ発生し得ない」としています。

夏 平均気温 偏差 2023年 2024年 +1.76℃ 2025年 +2.36℃ 気象庁 猛暑 グラフ
図: 日本の夏(6〜8月)の平均気温の基準値からの偏差。2025年は+2.36℃で、統計を開始した1898年以降で1位(出典: 気象庁「2024年夏(6月〜8月)の天候」「2025年夏(6月〜8月)の天候」をもとに当社作成)

当社のフランス出身のスタッフ、加藤バンジャマンも、社員インタビューで「植物ですら苦労している日本の夏の猛暑」と話しています(社員インタビュー(加藤バンジャマン正拓))。

高温と乾燥が樹木に与える影響

植物を育てる条件 乾燥 雨が降らない 土壌 樹勢 イラスト

樹木の生育を妨げる条件。雨が降らないこと、土の乾燥もその1つ(当社イラスト)

水分ストレス: 樹木は、葉から水を蒸散させる力で、根から吸った水を幹の中の細い管(道管・仮道管)を通して引き上げています。森林総合研究所の解説によると、渇きが強くなると管の中の水の柱に空気が入り込んで途切れ(キャビテーション)、水が通らなくなります(エンボリズム)。これが多くの箇所で起こると、樹木は枯れます。森林総合研究所と京都大学などの研究では、乾燥の初めに枝の水の通りが悪くなって、葉の気孔の開きと光合成が落ち、乾燥が続くと蓄えた糖を使い果たして枯死に至ることが示されています。暑さと乾きが強まると樹木が気孔を閉じていく様子は、「葉の生理状態を測る機器「LI-600」のデモンストレーション」でも触れました。

枝枯れ: 国土交通省の「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」の参考資料は、樹冠の縁の高い位置の枝が枯れている場合の多くは、根から吸った水を高い所まで上げられなくなっていることを示し、原因に土壌の乾燥または過湿などが考えられるとしています。国総研の「街路樹再生の手引き」にも、イチョウの生育不良の原因として、土壌の乾燥による水分ストレスが考えられた事例が載っています。

葉焼け・幹焼け: 樹木の葉焼けだけを扱った研究機関の資料は見つけられませんでしたが、福岡県の花木の高温対策の資料は、土が乾きすぎると葉焼けや落葉が起き、樹勢が落ちるとしています。幹については、東京都建設局の「街路樹診断等マニュアル」が、樹皮の薄い樹種で樹勢が弱っている場合、強い日差しや高温が続くと形成層が壊死し、樹皮が溝状に腐朽・枯死することがあるとしています。

マンションの植栽が乾きやすい理由

国総研の「景観重要樹木の保全対策の手引き」は、水は樹木の生命活動の基本で、日本は降水に恵まれているものの、真夏には厳しい乾燥に見舞われることも少なくないとし、雨水を確保しにくい場所や乾燥期には人の手で灌水を行う必要があるとしています。現場での経験から、マンションの植栽には、建物の陰で雨が当たりにくい植え込み、舗装に囲まれた狭い植栽帯、地下駐車場の上などの人工地盤と、土の量が限られた場所が多くあります。東京都建設局のマニュアルも、植栽基盤が狭いことによる土の水分不足(乾燥害)を、樹勢が落ちる原因の1つに挙げています(「土が原因で樹木が弱るとき」)。

国土交通省の調査では、2000年から2024年までの25年間に、全国で屋上緑化が約633ha、壁面緑化が約131ha施工され、2024年の1年間でも屋上緑化が約14.5ha、壁面緑化が約4.6ha新たにつくられています。私の感覚では、土の層が薄い屋上や壁面の緑は、灌水設備が止まると、地面の植栽より早く水切れの症状が出ます。

過湿 乾燥 水はけ 砂質の盛土 乾燥害 イラスト

水がたまる土と、水が抜けてしまう土。同じ水やりでも、土によって効き方が変わる(当社イラスト)

ただし、水は多ければよいわけではありません。水はけの悪い土に水やりを重ねると、過湿で根が傷みます。同じ手引きも、土の乾き具合に応じて灌水し、低い所に水がたまらないよう配慮するとしています。灌水の量や回数を決める前に、土の水はけを確かめておくと、設定の根拠がはっきりします。水はけの測り方は「長谷川式簡易現場透水試験器で水はけを測る」、植栽基盤の考え方は「植栽基盤の4つの条件」でご説明しています。

マルチング 乾燥対策 木材チップ 植栽管理 イラスト

根元に木材チップを敷くマルチング。幹のまわりは空けておく(当社イラスト)

灌水とあわせて、根元にバークや木材チップを敷くマルチングも、土の表面からの水分の蒸発を防ぎ、根を乾燥から守る方法として、同じ手引きに挙げられています。

 

灌水設備の耐用年数を図解──「何年」には性質の違う数字がある

灌水設備の年数を調べると、出てくる数字には性質の違う3種類があります。税法上の法定耐用年数、マンションの長期修繕計画で使う修繕周期の目安、メーカーが示す消耗品の交換目安です。どれも「その年数で部品が壊れる」という意味ではありません。タイマー本体・電磁弁・配管・点滴チューブといった部品ごとの物理的な寿命を年数で示した公的な資料やメーカーの資料は、2026年10月に調べた範囲では見つかりませんでした。そこで図の下の段に、当社の現場での交換の目安を、ほかの年数と並べて示します。どの部品も設置環境で大きく変わるため、定期的な点検で状態を見て交換することが前提です。

確かめられた年数を、性質ごとに並べると次のようになります。

項目 年数
0年10203040年
灌水タイマーの電池(メーカーの交換目安) 約1年
工場緑化施設(法定耐用年数) 7年
建物附属設備の給排水・衛生設備(法定耐用年数) 15年
緑化施設及び庭園(散水用配管を含む、法定耐用年数) 20年
マンションの給水ポンプ(修繕周期の例) 補修5〜8年
取替14〜18年
マンションの附属施設(「植樹 整備」を含む、修繕周期の例) 取替・整備24〜28年
マンションの給水管(修繕周期の例) 更生19〜23年
取替30〜40年
灌水タイマー 簡易な蛇口直結型(当社の現場での目安) 3〜5年程度
灌水タイマー 業務用の据置制御盤(当社の現場での目安) 10年程度
電磁弁(当社の現場での目安) 5〜10年程度
点滴チューブ 厚肉・常設型(当社の現場での目安) 7〜10年程度
配管 塩ビ管・ポリエチレン管の灌水用の主管(当社の現場での目安) 15〜20年程度
スプリンクラーヘッド・雨センサーなど 設置環境で大きく変わる 点検で状態を見て交換

色の見方: 茶=メーカーの交換目安、灰=税法上の法定耐用年数、緑=国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインの修繕周期の例(薄い緑は補修・更生、濃い緑は取替)、青=当社の現場での交換の目安。出典: セフティ-3 自動水やり器 SAW-1 取扱説明書 p.6、減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一、耐用年数の適用等に関する取扱通達 2-3-8の2、国土交通省「長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン・同コメント」(令和6年6月改定)p.84 と、当社の現場での目安をもとに当社作成

法定耐用年数は「税法上の年数」

減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一では、構築物の「緑化施設及び庭園」の法定耐用年数は、工場緑化施設が7年、その他の緑化施設及び庭園が20年です。国税庁の耐用年数の取扱通達(2-3-8の2)は、緑化施設には並木や生垣だけでなく、緑化の用に供する散水用配管や排水溝などの土工施設も含まれるとしています。

ただし、法定耐用年数は、減価償却の計算に使う年数です。国税庁は、法定耐用年数を、標準的な資産を通常の維持補修をしながら通常の条件で使った場合の「効用持続年数」を基礎に定めたものと説明しており、実際に使える期間が著しく短い資産には、耐用年数を短くする制度も設けています。灌水設備が20年もつという意味ではありません。

長期修繕計画の修繕周期は「計画の目安」

国土交通省の「長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン・同コメント」(令和6年6月改定)の様式には、灌水設備・散水栓・電磁弁という項目はありません。いちばん近いのは、外構・附属施設のうち附属施設に入っている「植樹 整備」で、修繕周期の例は24〜28年です。同じ表では、給水ポンプが補修5〜8年・取替14〜18年、給水管が更生19〜23年・取替30〜40年とされています。ガイドラインは、こうした周期を「おおよその目安であり、立地条件等により異なることがある」としています。

長期修繕計画で緑の部分が「植樹 整備」の一行にとどまりやすいことは、「マンション植栽の老朽化は、まず現状評価から」でも書きました。灌水設備は、建物の設備と植栽のあいだにあって、どちらの計画からも抜け落ちやすい設備だと私は考えています。

メーカーの交換目安──タイマーの電池は約1年

今回の工事で交換前に使っていたセフティ-3 自動水やり器 SAW-1の取扱説明書は、電池の寿命を約1年とし、1年に1度の電池交換を求めています。国総研の「景観重要樹木の保全対策の手引き」も、自動灌水の制御器が電池式の場合は、定期的に電池切れなどを点検するとしています。

同じ取扱説明書は、本体を「耐光、防滴型」としながら、軒下など雨がかからない日陰に設置するよう求めています。今回、植込みの中にあったタイマーを軒下へ移したのは、この考え方とも合っています。配管の塩ビ管も、屋外に露出すると紫外線で表面が白くなり、伸びが落ちて割れやすくなります。公益財団法人 水道技術研究センターは、防護カバーや塗装で劣化を防げるとしています。

部品ごとの点検の目安

国土交通省の官庁施設の保全の仕様書(建築保全業務共通仕様書 令和5年版)は、屋上緑化の灌水設備・散水設備について、損傷の有無と作動状態の点検を、特記が無ければ3か月ごとに行うとしています。部品ごとに見ることを、当社の現場での目安とあわせて表にまとめます。

部品 点検で見ること 当社の現場での交換の目安
灌水タイマー(コントローラー) 電池の残り、時刻と散水の設定、作動するか 電池は約1年(メーカーの目安)、本体は簡易な蛇口直結型で3〜5年程度、業務用の据置制御盤で10年程度
電磁弁 開け閉めが作動するか、止まったあとに水が漏れていないか 5〜10年程度を更新検討の目安
配管(塩ビ管・ホース)・継手 水漏れ、紫外線による白化やひび、保温材の傷み 灌水用の主管で15〜20年程度(管と継手を含めて判断)
点滴チューブ・ドリップ 詰まり、破損、水の出方のむら 厚肉・常設型で7〜10年程度
スプリンクラーヘッド 破損、向きのずれ、水のかかり方 設置環境で大きく変わるため、点検で状態を見て交換
雨センサー 雨のときに散水が止まるか 設置環境で大きく変わるため、点検で状態を見て交換

出典: 国土交通省大臣官房官庁営繕部「建築保全業務共通仕様書 令和5年版」表8.4.2(屋上緑化)、国総研「景観重要樹木の保全対策の手引き」表5-14、セフティ-3 自動水やり器 SAW-1 取扱説明書と、当社の現場での目安をもとに当社作成

表の交換の目安は、当社の現場での目安として、次のように考えています。

  • 灌水タイマーは、簡易な蛇口直結型と業務用の据置制御盤を分けて考えます。
  • 電磁弁の寿命は、型式・開け閉めの回数・水質などで変わるため、機種ごとの確認が必要です。
  • 配管は、材質・施工・埋設の条件で差が大きいため、管と継手を含めて判断します。
  • 点滴チューブは、破損だけでなく、目詰まりや水の出る量のばらつきも判断の材料です。
  • どの部品も設置環境で大きく変わります。年数だけで決めず、定期的な点検で状態を見て交換します。

 

マンションの年間管理と長期修繕計画の中で、灌水設備をどう扱うか

部品ごとの寿命は設置環境で大きく変わるため、灌水設備は「何年で交換」と一律に決めるより、点検と記録で状態を追うほうが実態に合います。年間の植栽管理の中でタイマーの電池と設定、散水の様子を確かめ、交換した部品と年を記録しておけば、次の交換の時期も、長期修繕計画に載せる金額の根拠も見えてきます。

植栽を新しくしたときは、なおさらです。植えたばかりの植物は根が土になじんでおらず、最初の夏越えがとくに大切なことを「マンションの植栽リニューアルの進め方」でご紹介しました。年間の作業の全体は「マンションの植栽管理とは」にまとめています。

乾燥で弱った樹木は、樹冠の縁の枝から枯れていくことがあります。枯れ枝は落ちれば事故につながるため、灌水設備の不調で樹勢を落とした木は、枝の状態も確かめておく必要があります。敷地の樹木の点検の考え方は「マンション・施設の倒木対策」と、マンションでの調査の記録「樹木医がマンション植栽の危険木調査を行いました」でご覧いただけます。

 

樹木医から見たこと──夏に止まる設備は、植栽の弱点になる

灌水設備は、ふだんは目立たない設備です。植込みの奥や設備スペースに置かれ、動いているあいだは誰も気にかけません。ところが、止まったときの影響がいちばん大きく出るのは、雨が少なく気温が高い真夏です。2020年にこの工事をしたときより、東京の夏は記録の上でも厳しくなりました。夏場の故障が植栽の枯損につながるという、この記事の当時の一文は、いまの方がずっと重く読めます。

一方で、灌水は多ければよいものではありません。水はけの悪い土では、水やりがかえって根を傷めます。灌水設備の点検と、土の水はけ・植栽基盤の確認は、組にして考えるのがよいと私は考えています。設備を直すときは、土と植物の状態まで一緒に見ることが、樹木医としての役割だと思っています。

植栽管理、造園工事だけでなく、外構エクステリアなど景観に関わる工事も対応可能です。地域密着で丁寧な提案、施工を心がけております。

 

よくある質問

Q1. 灌水設備(自動灌水)の耐用年数は何年ですか。

A. 部品ごとの物理的な寿命を年数で示した公的な資料は見当たりません。税法上の法定耐用年数では、散水用配管を含む緑化施設は20年(工場緑化施設は7年)ですが、これは減価償却の計算に使う年数で、設備がその年数もつという意味ではありません。当社の現場での目安としては、灌水タイマーが3〜5年程度(簡易な蛇口直結型)から10年程度(業務用の据置制御盤)、電磁弁が5〜10年程度、厚肉の点滴チューブが7〜10年程度、配管の主管が15〜20年程度ですが、設置環境で大きく変わるため、定期的な点検で状態を見て交換します。

Q2. 灌水タイマーの電池は、どのくらいで交換しますか。

A. 当社が交換前に使っていたセフティ-3 自動水やり器 SAW-1 の取扱説明書は、電池の寿命を約1年とし、1年に1度の交換を求めています。国総研の手引きも、電池式の制御器は定期的に電池切れなどを点検するとしています。

Q3. 灌水設備は、どのくらいの頻度で点検すればよいですか。

A. 国の官庁施設の保全の仕様書(建築保全業務共通仕様書 令和5年版)は、屋上緑化の灌水設備・散水設備について、損傷の有無と作動状態の点検を、特記が無ければ3か月ごとに行うとしています。電池式のタイマーは、電池切れの点検も欠かせません。

Q4. 猛暑の年に灌水設備が止まると、樹木はどうなりますか。

A. 乾燥が強まると、幹の中の水の通り道に空気が入って水が通らなくなり、葉の気孔が閉じて光合成が落ちます。森林総合研究所などの研究では、乾燥が続くと蓄えた糖を使い果たして枯死に至ることが示されています。樹冠の縁の高い枝の枯れは、水を上げられなくなったサインであることが多いとされています。

Q5. 灌水タイマーは、どこに設置するのがよいですか。

A. 交換前の機種の取扱説明書は、耐光・防滴型でも、軒下など雨がかからない日陰に設置するよう求めています。この記事の現場では、植込みの中にあったタイマーを軒下へ移し、配管に保温チューブを巻きました。塩ビ管は屋外に露出すると紫外線で劣化し、割れやすくなります。

Q6. マンションの長期修繕計画に、灌水設備は入っていますか。

A. 国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインの様式には、灌水設備・散水栓・電磁弁の項目はありません。いちばん近いのは附属施設の「植樹 整備」で、修繕周期の例は24〜28年です。点検と交換の記録を残しておくと、計画に載せる根拠になります。

 

株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊

出典・参考情報

・気象庁「過去の気象データ検索 東京 年ごとの値」「東京 観測史上1〜10位の値」「歴代全国ランキング」(いずれも2026年10月10日に確認)
・気象庁「日本の季節平均気温(夏)」、報道発表「2025年の梅雨入り・明け及び夏(6〜8月)の記録的高温について」(2025年9月1日)、「令和7年夏の記録的な高温と7月の少雨の特徴およびその要因等について」(異常気象分析検討会、2025年9月5日)
・気象庁観測部「「東京」の観測地点の移転について」(2014年11月14日)p.11・p.13
・森林総合研究所「森林総研だより(森)」No.76「樹木の渇きのシグナルを捕らえる」(1999年)p.1、プレスリリース「乾燥を受けた樹木が枯死に至る生理過程を解明」(2019年1月23日)
・国土交通省「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案) 参考資料」p.9
・国土技術政策総合研究所「街路樹再生の手引き」(平成28年3月)p.2-17、「景観重要樹木の保全対策の手引き」(平成22年1月)p.213〜214・p.219〜220
・東京都建設局「令和三年度 街路樹診断等マニュアル」p.21
・福岡県「高温対策」花き(高温対策)(2026年6月29日更新)
・国土交通省「全国屋上・壁面緑化施工実績調査の結果」(令和7年12月12日)
・減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一、国税庁「耐用年数の適用等に関する取扱通達 第3節 構築物」2-3-8の2、「耐用年数の短縮制度について」(平成19年4月)p.1
・国土交通省「長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン・同コメント」(令和6年6月改定)p.8・p.14・p.84
・国土交通省大臣官房官庁営繕部「建築保全業務共通仕様書 令和5年版」表8.4.2 屋上緑化システム(p.196)
・公益財団法人 水道技術研究センター「硬質塩化ビニル管を露出配管する上での注意点と対策」(水道技術ジャーナル 2016年10月)
・藤原産業「セフティ-3 自動水やり器 SAW-1」取扱説明書 p.6〜7

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