樹齢1000年を超えるといわれる御神木の杉です。
樹齢1000年を超えるといわれる御神木のスギに、樹木医を中心として、金具を使わないロープ式のケーブリング支柱の取り付けと、枯れ枝の除去を行った記録です。スギという木の性質、ケーブリングの種類、枯れ枝を除く理由を、研究機関や行政の資料をもとに書き添えます。
樹齢1000年を超えるといわれる御神木のスギ
樹高40m超の御神木や、周囲の巨木に囲まれ荘厳な雰囲気です。
- 御神木 樹木医 診断 管理
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スギは、日本にしか自生していない固有種です(林野庁 東北森林管理局)。天然のスギは北海道にはなく、本州・四国・九州から屋久島までに分布しています(森林総合研究所 九州支所)。測定器具で測られた現存の木では、京都市の「花脊の三本杉」の1本が樹高62.3mで日本一とされています(林野庁 近畿中国森林管理局、2017年の測定)。
環境省の巨樹・巨木林調査は、地上1.3mの高さで幹周りが3m以上の木を巨樹として数えています。樹種別の本数では、スギがいちばん多い樹種です。
| 順位 | 樹種 | 巨樹の本数(2000年の調査) |
|---|---|---|
| 1 | スギ | 14,869本 |
| 2 | ケヤキ | 9,452本 |
| 3 | クスノキ | 5,926本 |
| 4 | イチョウ | 4,855本 |
| 5 | スダジイ | 4,830本 |
出典: 環境省 生物多様性センター「巨樹・巨木林調査」(第6回自然環境保全基礎調査)
同じ調査の報道発表では、全国の巨樹のうち57%が社寺の所有で、信仰・タブー・祭りのある巨樹が全体の25%を占めていました(環境省、2001年)。巨樹の多くが、社寺の境内で守られてきたことが分かります。
ケーブリング支柱と枯れ枝の除去
樹木医を中心として、御神木の杉へのケーブリング支柱と枯れ枝除去を行います。
今回は若手にOJTをしながらの施工となりました。
若い職人たちにとって樹木医とともに御神木に実際に触れ、施工できる機会は
きっと今後の大きな糧となると思います。

御神木の杉の幹の分かれ目に登った作業員。ロープとハーネスで体を確保している

ロープで杉の幹を登る作業員。樹冠の下から見上げた様子

杉の幹の分かれ目で作業する作業員

幹に足を掛けて登る作業員を、下から見上げた様子

杉の樹冠の高い位置に立つ作業員

杉の樹冠の中。2本のロープが垂れ、手前の枝に赤い帯が見える

スローラインの収納バッグを両手に持つ作業スタッフ。後ろに杉の幹と木の柵

樹冠の高さに組んだ足場の上の作業員。奥にもう1人

杉の幹に黒い帯状の資材を回す作業スタッフ3名
ケーブリングの3つの使い方
ケーブリングは、保全する幹や枝どうしを連結させ、強風などによる幹裂けや枝裂けを防ぐ方法です(国土技術政策総合研究所「巨樹・老樹の保全対策事例集」)。今回のコブラは、ワイヤーではなくロープで、樹冠の中の幹と枝を結びます。販売元のマニュアルでは、目的に応じて次の3つに分けています。
- ダイナミック(伸縮)ケーブリング: 樹木の破損・倒木の防止。保全する枝の付け根から、枝の長さの2/3の高さに付ける
- スタティック(低伸縮)ケーブリング: 亀裂の拡大の防止。緩衝材は使わない
- 重量サポートケーブリング: 幹や枝が折れたときの落下の防止。できるだけ垂直に、緩みなく付ける

ダイナミックケーブリングの設置位置(枝の長さの2/3の高さ)
マニュアルは2/3の高さにする理由を、樹冠にかかる荷重の中央に近く、てこの力をできるだけ小さくでき、ロープにかかる荷重も少ないためと説明しています。
枯れ枝を除く理由
東京都の「街路樹診断等マニュアル」は、中枝・大枝や長さ30cm以上の枯れ枝を、落枝の危険があるとして「著しい被害」に判定しています。
切り方にも決まりがあります。東京都の「街路樹維持管理計画書」は、枝の付け根の下にある膨らみ「ブランチカラー」を残し、その直前で切り落とすとしています。ブランチカラーには腐朽を食い止める防御帯ができ、ここを切り取ると腐朽が生じる場合があるためです。
今回使用した資材は、
▪️コブラケーブリング(ドイツ製)
になります。
耐久伸縮性のあるロープと緩衝材の効果で強風時などの
瞬間的にかかる強い負荷を低減します。
金属、金具類を一切使用しません。
更新時などに出る古い部材の処分が容易です。
販売元の資料では、緩衝材(ショックアブソーバー)はゴム製で、ロープの中に組み込んで突風などの瞬間的な負荷を和らげ、断裂を防ぐとされています。ロープの末端に付けるエンドキャップは年度ごとに色が変わり、いつ施工したかが一目で分かります。国の研究機関の手引きは、ケーブリングの点検を年1回、特に台風の前に行う目安を示しています。
材質はリサイクル可能なポリプロピレン(PP)製の為、
環境負荷の少ない資材です。
金属のワイヤーと異なりサビの心配がない為、
潮風の影響のある海に近い立地でもメリットがあります。
まとめ
樹齢1000年を超えるといわれる樹高40m超の御神木のスギに、樹木医を中心として、金具を使わないコブラケーブリングの支柱を取り付け、枯れ枝を除去しました。若手のOJTを兼ねた施工で、ロープの資材は強風時の瞬間的な負荷を和らげ、更新時の処分もしやすいものです。
今回このような機会をいただけ、
ご調整くださった皆様に感謝申し上げます。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 髙尾聡司
よくある質問
Q1. ケーブリングとは何ですか。
保全する幹や枝どうしを樹冠の中で連結させ、強風などによる幹裂けや枝裂けを防ぐ方法です。当社が使うコブラは、金具を使わずロープで結びます。目的によって、伸縮するダイナミック、伸びにくいスタティック、落下を防ぐ重量サポートの3つに分けられます。
Q2. 枯れ枝は、なぜ除去するのですか。
落ちて人や物に当たる危険があるためです。東京都のマニュアルでは、中枝・大枝や長さ30cm以上の枯れ枝を「著しい被害」としています。切るときは、枝の付け根の膨らみ(ブランチカラー)を残します。
Q3. スギはどれくらい大きくなりますか。
測定器具で測られた現存の木では、京都市の「花脊の三本杉」の1本の樹高62.3mが日本一とされています。環境省の調査では、幹周り3m以上の巨樹の数もスギがいちばん多い樹種です。
出典・参考情報
・林野庁 東北森林管理局「天然秋田スギの成り立ち」
・森林総合研究所 九州支所「スギ」
・林野庁 近畿中国森林管理局 京都大阪森林管理事務所「花脊の三本杉 樹高測定結果」(2017年11月28日)
・環境省 生物多様性センター「巨樹・巨木林調査」、環境省 報道発表「第6回自然環境保全基礎調査『巨樹・巨木林フォローアップ調査』について」(2001年10月4日)
・レイ・ソーラデザイン株式会社「コブラ ツリーケーブリング システム」マニュアル(2025年版)p.4、樹木サポート協会「コブラ ツリーケーブリングシステム」カタログ(2019年6月)
・国土交通省 国土技術政策総合研究所「巨樹・老樹の保全対策事例集」(2010年1月)p.4、「景観重要樹木の保全対策の手引き」(平成22年1月)表5-3
・東京都建設局「令和三年度 街路樹診断等マニュアル」p.26、「街路樹維持管理計画書」(令和3年12月)p.4
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