クビアカツヤカミキリの薬剤防除について、2026年10月16日に農林水産省の農薬登録情報提供システムで確かめた「さくらに使える薬剤」を、使い方ごとに一覧にしました。成虫への散布、食入孔への注入、樹幹注入、伐った木のくん蒸のやり方と、散布の時期・かけ方・住宅地での注意を、樹木医が行政と研究機関の手引きに沿って解説します。
「クビアカに効く薬は何ですか」と聞かれることが増えました。答えは一つではありません。木の外を飛ぶ成虫、幹の中にいる幼虫、伐ったあとの木。相手がどこにいるかで、使う薬も使い方も変わります。農研機構のマニュアルも、万能な単一の防除技術は無く、いくつもの方法を組み合わせるよう書いています。この記事では、薬剤でできることとできないことを、順に整理します。

クビアカツヤカミキリの薬剤防除は「誰をねらうか」で4つに分かれる
森林総合研究所の「クビアカツヤカミキリの防除法」は、薬剤による防除を4つに分けています。幼虫をねらう食入孔(フラスの出る孔)への注入・樹幹注入・くん蒸と、成虫をねらう散布です。登録のある薬剤を使い方ごとに並べると、次の図のようになります。

使い分けの目安は、森林総合研究所の資料にあります。排糞孔(フラスの出る孔)が1本の木に1〜3か所なら軽度、4〜9か所なら中等度、10か所以上なら重度とし、サクラの並木では、軽度は幼虫の掘り取りか食入孔への注入、中等度は樹幹注入、重度は伐倒を勧めています。散布は、その年に脱出してくる成虫が卵を産むのを防ぐための手段です。
薬は、どれもラベルどおりに使うことが前提です。東京都の手引は、樹種ごとに「クビアカツヤカミキリ」か「カミキリムシ類」の登録があるものしか使えないと書いています。サクラに登録がある薬でも、ウメやモモには登録が無いことがあります。
本日現在、さくらに使える薬剤の一覧(2026年10月16日確認)
農薬登録情報提供システムで「クビアカツヤカミキリ」を検索すると、失効したものを除いて47件の製品が出てきます(2026年10月16日)。同じ有効成分で販売元の違う製品が多いので、さくらについて使い方と有効成分ごとにまとめました。
| 使い方 | 有効成分(製品の例) | 倍数・量 | 使用時期・回数 |
|---|---|---|---|
| 散布 | MEP (スミチオン乳剤 各社) |
1000倍 | 成虫発生初期 6回以内 |
| 散布 | イソキサチオン (カルホス乳剤) |
1000倍 | 成虫発生初期 6回以内 |
| 散布 | シペルメトリン (アグロスリン水和剤 各社) |
1000倍 | 成虫発生初期 6回以内 |
| 散布 | アラニカルブ (オリオン水和剤40) |
1000倍 | 成虫発生期 5回以内 |
| 散布 | カルタップ (パダンSG水溶剤 各社) |
1500倍 | 成虫発生期 3回以内 |
| 散布 | クロチアニジン (ダントツ水溶剤 各社・ベニカ水溶剤) |
2000倍 | 成虫発生初期 5回以内 |
| 散布 | アセタミプリド (マツグリーン液剤2) |
200倍 | 成虫発生初期 5回以内 |
| 樹幹散布 | アセタミプリド (マツグリーン液剤2) |
20倍 | 成虫発生初期 5回以内 |
| 散布 | アセタミプリド (モスピラン顆粒水溶剤 各社) |
2000倍 | 発生初期 5回以内 |
| 散布 | メタフルミゾン (アクセルフロアブル) |
1000倍 | 成虫発生直前〜成虫発生期 6回以内 |
| 主幹から株元に散布 | メタフルミゾン (アクセルフロアブル) |
200倍 | 成虫発生直前〜成虫発生期 6回以内 |
| 散布 | インドキサカルブ (トルネードエースDF 各社・ファイントリムDF) |
1000倍 | 成虫発生初期 4回以内 |
| 散布 | シクラニリプロール (ダブルトリガー液剤) |
2000倍 | 発生初期 2回以内 |
| 散布(原液のスプレー) | クロチアニジン・ペルメトリンほかの混合 (ベニカXネクストスプレー) |
原液 | 成虫発生初期 6回以内 |
| 散布(原液のスプレー) | ペルメトリン (花木用ハンドスプレー) |
原液 | 発生初期 6回以内 |
| 噴射(エアゾール) | フェンプロパトリン (ベニカカミキリムシエアゾール・ロビンフッド) |
– | 成虫発生初期 6回以内 |
| 噴射(エアゾール) | クロラントラニリプロール・ビフェントリン (ケムシジェット) |
– | 記載なし 6回以内 |
| 食入孔に注入 | アセタミプリド (マツグリーン液剤2) |
50倍 | 発生初期 5回以内 |
| 食入部に差し込んで噴射 | ペルメトリン (園芸用キンチョールE) |
食入部から流れ出るまで | 発生初期 6回以内 |
| 木屑排出孔を中心に注入 | メタフルミゾン (アクセルフロアブル) |
100倍(薬液が滴るまで) | – 6回以内 |
| 樹幹注入 | チアメトキサム (アトラック液剤) |
胸高直径に応じて(図2) | 幼虫発生前〜幼虫発生期 3回以内 |
| 樹幹注入 | ジノテフラン (ウッドスター) |
注入部の直径に応じて | 新葉展開後〜落葉前まで 3回以内 |
| 樹幹注入 | エマメクチン安息香酸塩 (リバイブ) |
胸高直径に応じて(図2) | 発生前〜発生初期 1回 |
| くん蒸(伐倒木・枯損木) | カーバムナトリウム塩 (キルパー40) |
被覆内容積1m³当たり原液750〜1500ml・14日間以上 | 成虫羽化脱出前 1回 |
出典: 農林水産省「農薬登録情報提供システム」の適用表(2026年10月16日に確認)。散布の使用液量は多くが10aあたり200〜700L。同じ有効成分を含む農薬の総使用回数にも上限があります。使うときは、最新のラベルと登録情報で倍数・時期・回数を確かめてください。
表から外したものが2つあります。1つは伐倒木のくん蒸に長く使われてきたカーバム剤の「NCS」「ヤシマNCS」で、2026年6月30日に登録が失効しました。少し前の手引きには載っていることがあります。もう1つは微生物農薬の「バイオリサ・カミキリ」で、登録は残っていますが、農研機構のマニュアル(2026年3月)によると2025年に生産を終えています。
うめ・もも・すももなど果樹に登録のある薬剤
果樹は作物ごとに登録が別で、収穫前日数の決まりがあります。主なものを製品名と使い方だけ挙げます。倍数・収穫前日数・回数は製品と作物で違うので、必ずラベルで確かめてください。
| 作物 | 登録のある主な製品(使い方) |
|---|---|
| もも | スミチオン乳剤・アグロスリン水和剤・オリオン水和剤40・パダンSG水溶剤・アクタラ顆粒水溶剤・ダントツ水溶剤・ベニカ水溶剤・ハチハチフロアブル・モスピラン顆粒水溶剤・テッパン液剤(いずれも散布)、アクセルフロアブル(もも類 散布・樹幹散布) |
| うめ | スミチオン乳剤・アグロスリン水和剤・オリオン水和剤40・アクタラ顆粒水溶剤・ダントツ水溶剤・ベニカ水溶剤・モスピラン顆粒水溶剤・アクセルフロアブル(いずれも散布) |
| すもも | アグロスリン水和剤・パダンSG水溶剤・ダントツ水溶剤・モスピラン顆粒水溶剤(散布)、アクセルフロアブル(散布・樹幹散布) |
| 伐倒木・枯損木(核果類) | キルパー40(くん蒸) |
出典: 同上(2026年10月16日に確認)。ネクタリン・おうとう・小粒核果類にも、アグロスリン水和剤・アクタラ顆粒水溶剤・モスピラン顆粒水溶剤・テッパン液剤などの登録があります。樹幹注入剤は、さくらにしか登録がありません。
成虫への散布──時期・回数とかけ方のポイント
散布や注入の前に、ブラシでフラスを払い、孔に針金を通しておく
散布や注入の前に、樹皮についたフラス(幼虫が出す木くずと糞)をブラシで払い、見つかったカミキリの穿孔の孔に針金を刺して、詰まったフラスを掻き出しておきます。東京都の手引も、ブラシでフラスを除きながら孔を探し、千枚通しや針金で掻き出して孔の向きを確かめるよう書いています。フラスを払っておくと、食入孔が見つけやすくなり、散布や注入のあとに新しいフラスが出たかどうかも確かめやすくなります。

時期は6〜8月、成虫が出る初めから盛りにかけて複数回
散布でねらうのは、幹から脱出して樹皮にとまる成虫と、これから卵を産みに来る成虫です。登録の使用時期は多くが「成虫発生初期」で、成虫が出始めるころに1回目をかけます。
回数は、資料によって書き方が違います。森林総合研究所は、羽化脱出の最初期・最盛期・終盤に各1回、計3回を勧めています。大阪府の手引書(改訂第6版)は、成虫の多い6月中旬〜7月中旬を中心に合計2〜3回、農研機構のマニュアルは、少なくとも発生の初期から盛期にかけての処理が望ましいとしています。どの資料も、1回で終わらせない点は同じです。回数はラベルの使用回数の範囲で決めます。
地際から幹を中心に、樹皮の割れ目まで滴るくらいに
成虫は樹皮の割れ目に卵を産みます。森林総合研究所の資料は、地際から噴霧器の届く高さまで薬液が滴るくらいに散布し、とくに産卵の多い胸の高さから下の幹は、割れ目に撒き残しが無いよう丁寧にかけるよう書いています。農研機構のマニュアルは、サクラでは地上に出ている根にもかかるようにとしています。

現場での経験から、私たちは幹と太い枝を中心にかけています。散布ざおのノズルを樹皮に近づけ、地際から上へ、割れ目の奥まで薬液が入るように動かします。サクラの葉は薬剤で傷むことがあると感じているので、狙いは幹と枝です。ただし、農研機構のマニュアルは「葉・幹・枝・根」に十分散布するよう書いていますし、製品によって「散布」と「樹幹散布」で倍数が違います(マツグリーン液剤2は散布200倍、樹幹散布20倍)。どちらの使い方で使うのかを、ラベルで確かめてから倍数を決めます。

食入孔への薬剤の注入
天候も効き方を左右します。森林総合研究所は、雨で流れたり日光で分解したりするのを避けるため、薄曇りで無風の日が最適としています。農研機構のマニュアルも、雨天とその直後、強風時の散布を避けるよう書いています。
ネット巻きと組み合わせるときは、ネットの上が手薄になります。大阪府の手引書は、ネットを巻いていない高い所に産卵されたら、翌年から成虫の時期にネットより上の幹に散布するよう勧めています。ネットの巻き方は「クビアカツヤカミキリ対策に予備費約32億円」で紹介しました。

クビアカツヤカミキリの成虫
幼虫への食入孔注入──フラスの孔に薬を満たす
幹の中の幼虫には、散布の薬は届きません。フラスが出ている孔(食入孔・排糞孔)を見つけ、孔の中に薬を満たします。農研機構のマニュアルと東京都の手引にある手順は次のとおりです。
- 株元と孔のまわりのフラスを、金属ブラシで払い落とす(孔を見つけやすくし、あとで新しいフラスが出たか分かるようにする)
- 千枚通しや竹ひごで、孔に詰まったフラスを掻き出し、孔の向きを確かめる
- ノズルを差し込み、薬が孔から逆流してあふれるまで注入する(エアゾールは、ノズルが詰まらないよう噴射しながら差し込む)
- 孔の近くにピンを刺して目印にし、下にたまったフラスは掃き取る
- 数日〜1週間後に、新しいフラスが出ていないか確かめる。出ていれば、使用回数の範囲でもう一度注入する

使う時期は、東京都の手引が幼虫の活動期の概ね4〜10月、大阪府の手引書が4〜11月としています。ただ、限界もはっきり書かれています。森林総合研究所は、この個別の駆除の成功率を「5割くらい」としていて、幼虫が奥へ進んだり坑道がつながったりすると薬が届きにくくなります。東京都の手引は、1本の木の排糞孔が5か所未満の、被害の小さい木で効果的としています。幼虫は一時的にフラスを出さなくなることもあるので、数週間は見回ります。
樹幹注入──被害の初期のサクラに、地際から
樹幹注入は、幹に小さな孔をあけ、殺虫剤を木の水の流れに乗せて幹の中に行き渡らせる方法です。クビアカツヤカミキリでは、さくらにだけ登録があります(アトラック液剤・ウッドスター・リバイブ)。薬液が外に飛ばないので、散布が難しい場所でも使えます。

やり方は、製品ごとの説明書が細かく決めています。メーカーの資料から、クビアカツヤカミキリに使うときの要点を抜き出しました。
| 項目 | ウッドスター(サンケイ化学) | リバイブ(シンジェンタ ジャパン) |
|---|---|---|
| 注入する位置 | 主幹部の地際部を標準とする | 地際部〜高さ1mの幹(枝の分かれ目・剪定の跡・節・こぶの直下は避ける) |
| 孔のあけ方 | ドリルで斜め下45度、直径5〜10mm、深さ6〜7cm | ドリルで斜め下に、孔径5〜6mm程度、深さ5cm程度 |
| 孔の数 | 専用注入器で1孔に4mlずつ(注入部の直径20〜30cmなら24〜36mlで6〜9孔) | 胸高直径に応じた量(図2)を注入する |
| 孔の並べ方 | 記載なし | 孔が複数のときは幹のまわりに等間隔に分散させる |
| 量の決め方 | 注入部の直径 | 胸高直径 |
| 注入のあと | 孔を癒合剤などでふさぐ(地際部では雨で土などが入るおそれがあるため必ず) | 孔を癒合剤や木栓でふさぐ |
| 使わない木 | 小径木・樹勢の弱った木・空洞や腐朽がある木・極端な老齢木 | 胸高直径6cm未満の木・移植してまもない木・空洞や腐朽がある木・強い剪定で弱った木・極端な老齢木 |
| 被害木での注意 | フラスが多い木は薬が広がりにくい場合があるので、食入孔を避けて注入する | 幼虫が幹の中に広く入った木では効果が劣る可能性があり、幼虫発生前〜発生初期の処理が望ましい |
| 時期 | フラスの無い木は落花後の6月下旬〜9月、フラスの出ている木は落花後の5月〜10月(開花期はミツバチに影響するため落花後に) | 発生前〜発生初期(開花期は避ける) |
出典: サンケイ化学「ウッドスター」製品資料と技術情報、シンジェンタ ジャパン「リバイブ」パンフレット(2024年7月現在)。表は要点の抜き出しです。使うときは、製品のラベルと説明書のとおりに行ってください。
孔の並べ方は、東京都の手引(ウッドスターの例)が10cm間隔で1つずつ、横一列ではなく上下交互にあけるとしています。木へのダメージを軽くするためです。森林総合研究所の資料も、同じ高さに並べず上下に交互にずらすよう書いています。2回目以降は前回の孔と位置をずらします(東京都)。注入したあとの孔は、癒合剤でふさぎます。
どの資料にも共通するのは、薬は孔から上へ吸い上げられ、下へは行き渡らないことです(東京都・大阪府・農研機構)。だから、孔はできるだけ地際に近くあけます。腐朽した所は薬が入らないので避け、生きている幹にあけます。注入のあとは、1〜2週間後から1か月後をめどに、フラスが止まったかを確かめます(森林総合研究所・農研機構)。
量は木の太さで決まります。胸高直径で量が決まるアトラック液剤とリバイブを並べると、次のとおりです。

樹幹注入は、どの木にも効く方法ではありません。大阪府の手引書は、被害が進んだ木や樹勢の悪い木は避け、被害の初期に使うよう書いています。注入した所の真上で水の通り道がふさがった事例があるため、繰り返しの処理も避けた方がよいとしています。森林総合研究所は、未被害の木すべてに予防として注入することは勧めていません。樹幹注入剤は予防剤ではなく、たくさんの孔は木にとって負担になるためです。フラスが止まっても、蛹室で休んでいる幼虫が残ることがあるので、翌年の成虫の時期にはネット巻きなどと組み合わせます。
時期は、大阪府の手引書が4月下旬〜9月(幼虫が蛹室をつくる前の6月までが最適)としています。製品の説明書の時期(上の表)と、登録の使用時期とあわせて決めます。繰り返しの処理は、大阪府の手引書が避けた方がよいとする一方、ウッドスターの技術情報は、幹の中の幼虫を残らず駆除するには複数年の連続処理が効果的としています。木の状態を見て、ラベルの回数の範囲で判断します。
伐った木のくん蒸──シートで密閉して14日間以上
被害が重い木は、伐るのがもっとも確かな方法です。ただ、伐った幹や枝をそのまま置くと、中の幼虫が育って翌年に成虫が出ます。国の防除戦略(2026年9月11日)は、伐倒木を成虫の発生時期(4月ごろ)までに、破砕・焼却・くん蒸のいずれかで処理するとしています。

くん蒸は、焼却や破砕ができないときの方法です。いまさくらの伐倒木・枯損木に登録があるのはキルパー40で、シートで覆った内側の容積1m³当たり原液750〜1500mlを散布し、ただちに密閉して14日間以上置きます。森林総合研究所の資料は、丸太を1m程度に切って腰より低く積み、シートの端をすべて土で覆うよう書いています。大阪府の手引書は、低温期や日陰では期間を長くするよう添えています。
住宅地・公園・通学路の近くで散布するときに守ること
都市では、街路や公園、マンションのサクラにも被害が出ています。人の暮らしのすぐそばで薬を使うことになります。農林水産省と環境省の通知「住宅地等における農薬使用について」(2013年4月26日)は、公園・街路樹などで農薬を使うときの決まりを次のように定めています。
- 被害の有無にかかわらず定期的に散布することはやめ、早めの発見と、捕殺などの物理的な防除を優先する
- やむを得ず使うときは、樹幹注入など散布以外の方法を活用し、散布するときも最小限の部位・区域にとどめる
- 無風か風の弱い天候・時間帯を選び、飛散を抑えるノズルを使う
- 周辺の住民に、目的・日時・農薬の種類・連絡先を、時間に余裕をもって知らせる。学校や通学路が近いときは、時間帯に最大限配慮する
- 立て看板や立入を制限する範囲を設けて、散布中と直後に人が入らないようにする
- 日付・場所・植物・農薬名・倍数を記録して保管する

東京都の手引は、道路や公園では少なくとも散布の当日は縄囲いや立札で人が入らないようにし、子どもへの影響は大人より大きいとしています。森林総合研究所は、街路では早朝の散布も検討するよう書いています。大阪府の手引書は、河川や水路に接する場所では散布しないとしています。作業する人も、ゴーグル・マスク・ゴム手袋・防除衣を着けます。
樹木医から見たこと──当社で使ってきた3つの薬剤
当社が現場で使ってきた薬剤の一例が、次の3つです。成虫にはダントツ水溶剤(クロチアニジン、2000倍)を幹と枝に散布し、幼虫にはフラスの出ている孔にマツグリーン液剤2(アセタミプリド、50倍)を注入して、カミキリムシ用のスプレー剤園芸用キンチョールE(ペルメトリン)も孔に差し込んで使います。現場の様子は「クビアカツヤカミキリの被害と対策」で書きました。

3つを組み合わせているのは、相手のいる場所が違うからです。散布で守れるのは樹皮の上まで、孔への注入で届くのは孔からたどれる範囲までです。どちらも、幹の奥へ進んだ幼虫には届きにくいところが残ります。だから、薬をかけた日で終わりにせず、数日後、数週間後と、新しいフラスが出ていないかを見に行きます。現場での経験から、薬剤防除の手間の多くは、実はこの見回りです。
同じ系統の薬を使い続けないことも、農研機構のマニュアルが求めています。表の有効成分には系統の違うものが並んでいるので、毎年同じ薬にせず、ラベルの回数の範囲で組み合わせを考えます。
薬は、残せる木を守るための道具です。フラスが10か所を超え、幹の中が広く食べられている木は、薬で救うのが難しくなります。そうした木は伐って確実に処理し、周りのサクラを守る方へ力を移します。どこまで薬で守り、どこから伐るか。その線を、木ごとに確かめて引くことが、私たちの仕事だと考えています。
よくある質問(Q&A)
Q1. クビアカツヤカミキリに効く薬剤はありますか?
A. あります。さくらには、成虫への散布剤、幼虫の食入孔に入れる注入剤やエアゾール、幹に入れる樹幹注入剤、伐った木のくん蒸剤が登録されています(2026年10月16日に確認)。ねらう相手が成虫か幼虫かで使う薬と使い方が違うので、ラベルの作物名・使い方・倍数・回数を確かめて使います。
Q2. 散布の時期と回数はどのくらいですか?
A. 成虫が出る6〜8月に、出始めから盛りにかけて複数回かけます。森林総合研究所は羽化脱出の最初期・最盛期・終盤の計3回を、大阪府の手引書は6月中旬〜7月中旬を中心に2〜3回を勧めています。回数はラベルの使用回数の範囲で決めます。
Q3. フラスが出ている木は、どうすればよいですか?
A. フラスを払って孔を探し、詰まりを掻き出してから、薬が孔からあふれるまで注入します。数日〜1週間後に新しいフラスが出ていないかを確かめ、出ていればもう一度注入します。孔が多い木は樹幹注入、10か所を超える重い被害の木は伐倒も考えます。
Q4. 樹幹注入をすれば、予防になりますか?
A. 予防のために被害の無い木すべてに注入することは勧められていません。森林総合研究所は、樹幹注入剤は予防剤ではなく、たくさんの孔が木の負担になるとしています。被害の初期の木に使い、翌年の成虫の時期はネット巻きなどと組み合わせます。
Q5. マンションや公園で散布するとき、何に気をつければよいですか?
A. 農林水産省と環境省の通知に沿って、散布は必要な部位と区域にとどめ、風の弱い時間帯を選びます。周辺の住民に目的・日時・農薬の種類・連絡先を前もって知らせ、立て看板や囲いで散布中と直後に人が入らないようにし、使った記録を残します。
マンション・施設・行政のご担当者様へ
当社は、年間の植栽管理、樹木診断、高木の剪定・特殊伐採を承っています。管理の進め方や診断の流れは、資料ダウンロードのページでご覧いただけます。ご相談はお問い合わせフォームからお待ちしています。
出典・参考情報
・農林水産省「農薬登録情報提供システム」(2026年10月16日に確認)
・農研機構ほか「日本の果樹と樹木を守る 外来カミキリムシ総合対策マニュアル ver.1.0」2026年3月(組み合わせの考え方 p.1・p.23、技術一覧 p.36、微生物農薬 p.34、同じ系統を使い続けない p.62、散布 p.65、ノズル注入 p.66、樹幹注入 p.67〜68)
・森林総合研究所「クビアカツヤカミキリの防除法(防除法)」2022年3月(化学的防除の4タイプ p.13、個別駆除 p.13〜14、樹幹注入 p.15〜16、くん蒸 p.17、散布 p.18)、「地域での総合防除への提言」(被害程度と対策 p.25)
・大阪府立環境農林水産総合研究所「クビアカツヤカミキリ被害対策の手引書(改訂第6版)」2026年4月(樹幹散布 p.12、樹幹注入 p.14、フラス排出孔への注入 p.15、伐倒・くん蒸 p.17)
・東京都環境局「クビアカツヤカミキリ防除の手引」2026年3月(使える農薬 p.25、エアゾール p.30、樹幹注入 p.31、散布と注意 p.32)
・農林水産省・環境省「住宅地等における農薬使用について」2013年4月26日
・サンケイ化学「ウッドスター 製品資料」「ウッドスター 技術情報」(2026年10月16日に閲覧)
・シンジェンタ ジャパン「リバイブ」パンフレット(2024年7月現在)
・クビアカツヤカミキリ対策本部「クビアカツヤカミキリ防除戦略」2026年9月11日(p.7〜9)
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