環境省は2026年10月13日、クビアカツヤカミキリの確認・被害情報を全国から集めて地図で公開する「クビアカ発見・通報ネット」(仮称)の試行を始めました。長野県・愛知県などの動き、国の防除戦略と東京都の手引にある切株の処理、和歌山県のネットの研究を、樹木医が一次情報で整理します。
月に1回お届けしているクビアカツヤカミキリのニュース、今回は第3回です。第2回(10月6日)では、予備費約32億円と、ここ1〜2年の防除の研究をまとめました。今回は、通報の仕組みと、伐った後の切株やネットについての新しい知見を中心にお伝えします。
今月の要点
- 環境省は10月13日、全国の確認・被害情報を集めて地図で公開する「クビアカ発見・通報ネット」(仮称)の試行を始めました。試行は11月30日まで、本格運用は2027年4月をめざしています。
- 国の第3回対策本部が10月15日に開かれ、交付金の11月中の内示、新宿御苑など国の施設での点検、11月の専門家向け講習会の予定などが報告されました。
- 長野県では10月6日に上田市で初めて被害が確認され、県は9月30日から、薬剤を提供する地域を上伊那・長野地域へ広げています。
- 国の防除戦略と東京都の手引は、伐った後の切株を抜くか、モルタルなどで固めるか、厚手のシートで覆うよう求めています。
- 和歌山県果樹試験場の研究で、白く目の細かいネットを樹皮から約10mm離して巻くと、産卵をより抑えられることが分かりました。
最新情報──全国の情報を集める「クビアカ発見・通報ネット」
環境省が通報ネットの試行を開始
環境省は10月13日、「クビアカツヤカミキリに係る情報収集システムの試行開始について」を発表しました。9月11日に国の対策本部が決めた「クビアカツヤカミキリ防除戦略」に基づく取り組みで、全国の確認・被害情報を幅広い主体から速く効率よく集め、リアルタイムで公表する仕組みのあり方を確かめるためのものです。仮の名前は「クビアカ発見・通報ネット」。試行期間は10月13日から11月30日までで、試行中に寄せられた意見をもとにフォームと公開ページを直し、2027年(令和9年)4月の本格運用をめざすとしています。
仕組みは、発見した地点や被害の状況を情報収集フォームから送り、環境省が誤った情報を除いたうえで、確認済みの情報を地図(Webマップ)に点で公開する流れです。試行の間は、自治体から意見を照会し、一般の人からはメールで意見を受け付けます。

通報するときに大切なのは、何を、どこで見たかが後から確かめられることです。長野県は県民への呼びかけで、成虫やフラス(幼虫が出す木くずと糞の混ざったもの)を見つけたら、できる範囲で写真を撮り、発見した日時、場所、周りの状況を知らせるよう求めています。10月は成虫が飛ぶ時期ではないので、これから冬までに見つかるのは主にフラスです。当社の現場での目安として、根元にたまったフラスと、それが出ている孔の写真に、木の全体がわかる写真を添えておくと、確かめる側が判断しやすくなります。

成虫が見られるのは初夏から夏で(大阪府の手引書では6〜8月)、森林総合研究所によると体長は3〜4cmがほとんどです。黒い光沢のある体に、前胸(首の部分)の赤さが目立ちます。

第3回対策本部(10月15日)で報告されたこと
国のクビアカツヤカミキリ対策本部は10月15日に第3回の会合を開き、環境省と農林水産省が、9月11日に防除戦略を決めてからの取り組みと今後の予定を報告しました。会合の資料から、樹木を管理する側に関係の深いものを挙げます。
- 環境省の交付金の追加公募は11月6日までで、11月中に内示する予定です。自治体が行うフラスの探索、薬剤による駆除、冬の伐倒・伐根などの対策を支援するとしています。
- 環境省が管理する国民公園などでも、被害の点検が進んでいます。新宿御苑では、苑内のサクラやウメなどバラ科の樹木1,040本を対象に年4回の調査を行っていて、これまでに22本の被害木が確認されていますが、今年度の直近の調査では新たな被害木は見つかっていません。点検は11月中を目途に行い、結果は通報ネット(情報収集システム)に集める予定です。
- 自治体や地域の人に助言できる専門家を育てるため、環境省は「エキスパート向け講習会」を11月6日に大阪市、11月13日に栃木県足利市で開く予定です。見分け方と防除の座学に加え、ネット巻きや樹幹注入などの野外講習を行うとしています。
- 農林水産省は、都道府県向けの説明会を10月6日の東海から23日の九州・沖縄まで7回の予定で開いていて、関東(10月7日)には約600人が参加しました。説明会にあわせて、全果樹園を対象とする発生状況の緊急調査を都道府県に働きかけています。
発生を確認した都府県は、農林水産省のまとめでは8月19日更新の22都府県のままです。
自治体の動き
府県の主な発表は次の表のとおりです。長野県の上田市では、周辺の調査で今のところ新たな被害は見つかっていません。県のフラス孔に入れる薬剤の無償提供は10月30日までで、散布用と樹幹注入用の薬剤は対象外です。
| 府県 | 最新の発表 | 時点 |
|---|---|---|
| 長野県 | 上田市で初めて確認(サクラ類1本)、薬剤を提供する地域を辰野町・箕輪町・長野市・千曲市の一部へ広げた | 10月6日、9月29日発表 |
| 愛知県 | 24市町村で確認、そのうち20市町村で街路樹のサクラを中心に被害 | 2026年10月現在(10月8日更新) |
| 京都府 | 2026年に亀岡市・長岡京市・笠置町・井手町・京丹波町の5市町で初めて被害木を確認 | 9月14日更新 |
| 兵庫県 | 13市町で確認、未然防止の「桜の木を守ろうプロジェクト」を秋ごろに始める予定 | 2026年9月現在 |
出典: 各府県の公式ページ(下の「出典・参考情報」)
河川沿い・道路沿いの並木は重点的に見る
防除戦略は、被害が広がる道すじにも触れています。クビアカツヤカミキリは車などに付いて遠くへ運ばれる可能性があるため、すでに被害のある地域から伸びる主要な道路の沿線を「侵入・拡大警戒ライン」として重点的に見るよう求めています。サクラが続けて植えられた河川沿いも、被害が広がる経路になるおそれがあるとして、同じように重点的な監視と防除を求めています。

最新の防除の知見──伐った後の切株と、ネットの仕様
伐るのは9月から翌4月。切株は抜く、固める、覆う
東京都環境局の「クビアカツヤカミキリ防除の手引」(2026年3月)は、被害木の伐採を、原則として成虫が出ない9月から翌4月までの間に行うとしています。伐った後に運んだり置いたりしている幹や枝から、成虫が出て広がるのを避けるためです。
手引が続けて注意しているのが、切株です。幼虫は幹や枝だけでなく根にも入り込むため、伐った後の切株から成虫が出ることがあります。そこで伐採後は「極力抜根」し、抜くのが難しい場合は、切株全体をモルタルやコーキング剤などで覆うか、成虫にかみ切られないよう厚手や何重にも重ねたビニールシートで覆う、としています。シートで覆うときは、成虫が出る隙間ができないよう、端を盛り土で埋めるなどしてしっかりふさぐ必要があります。
国の防除戦略も同じ考え方です。被害木は「伐倒・伐根等」を基本とし、伐るときには、根株と根を取り除くこと、資材で根を覆うこと、モルタルなどで根を固めることもあわせて行うとしています。幼虫が好む、地表に出た根も、取り除くか覆うことが大切だと書かれています。
| 切株の処理 | やり方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 抜根する | 根株と根を掘り起こして取り除く | 手引は「極力抜根」としている |
| 固める | 切株全体と地表に出た根を、モルタルやコーキング剤などで覆う | 地表に出た根も覆う |
| 覆う | 厚手や多重のビニールシートで覆う | 成虫にかみ切られない厚さにし、端は盛り土で埋めて隙間をふさぐ |
出典: 東京都環境局「クビアカツヤカミキリ防除の手引」(2026年3月)p.36、クビアカツヤカミキリ対策本部「クビアカツヤカミキリ防除戦略」(2026年9月11日)


伐った幹や枝は、そのまま置いておくと中で幼虫が育って成虫が出ることがあります。防除戦略は、成虫が出る時期(4月ごろ)までに、破砕・焼却・くん蒸のいずれかで処理するとしています。チップにする大きさは、東京都の手引が「長辺2cm以下又は繊維状」、第2回で紹介した農研機構のマニュアルが「チップの厚さ1cm以下」と、資料によって書き方が違います。処分を頼む先の決まりもあわせて確かめておくと安心です。
ネットは白く目の細かいものを、樹皮から離して巻く
和歌山県果樹試験場かき・もも研究所は、令和7年度の研究成果として、産卵を防ぐネットの仕様を調べた結果をまとめています。目合い0.3mm(白)、0.4mm(白)、0.4mm(黒)のネットをモモの枝に巻いて比べたところ、どのネットも巻かない枝より産卵数がはっきり減り、白いネットは黒いネットより産卵を抑えました。さらに、樹皮との間に10mmの隙間を空けると、隙間を空けない場合より産卵数が減りました。

第2回で紹介した大阪府の手引書(改訂第6版)も、木が太ってネットとの隙間が1cm以下になったら張り直すとしていました。ネットは巻いたら終わりではなく、隙間を保てているかを見回りで確かめるものだと考えています。
同じ研究では、殺虫成分(ペルメトリン、エトフェンプロックス)を繊維に練り込んだネットの効果も調べられています。室内と網室の試験で、ペルメトリンを練り込んだネットは巻いて3か月後も産卵を9割抑えたと報告されています。ただし、資料自身が書いているとおり、これらのネットは2026年現在、農薬登録がありません。薬剤による産卵抑制や殺虫の目的では使えず、現地での実証試験が続いている段階です。
農薬の登録と、秋の見回り
農薬については、第2回で書いたNCSの失効とキルパー40の適用拡大のあと、新しい動きは見当たりませんでした。国の資料のとおり、樹幹注入の登録があるのはサクラだけで、ウメやモモなど果樹への使い方とは分けて考える必要があります。フラスの出ている孔に入れる薬剤は、幼虫が活動している間の作業です。どの薬剤も、使う前に最新のラベルと農薬登録情報提供システムで、対象の樹木、使う時期、回数を確かめる必要があります。

東京都の手引は、見回りの時期についても書いています。幼虫によってフラスを出す時期に違いがあり、夏にフラスが見つからなかった木でも、秋にフラスが出ていることがあります。秋に、育った幼虫が木の中心部に蛹室(さなぎになるための部屋)をつくるときは、おが屑のようなフラスになるとしています。すでに被害の出ている地域では、6〜7月と8月下旬〜9月の2回点検するのが望ましく、防除の後も少なくとも2〜3年は、その木と周りの見回りを続ける必要があるとしています。
樹木医から見たこと
通報の仕組みが全国で一つにまとまれば、どこまで被害が来ているかを、自治体の境を越えて見られるようになります。それが役に立つかどうかは、寄せられる情報の確かさにかかっています。香川県で初めて確認されたときは、サクラの調査をしていた樹木医がフラスに気づいて県に通報し、県の研究機関がフラスからクビアカツヤカミキリのDNAを検出し、翌日に成虫が捕まりました。見つけた人の通報が、確認と防除につながった例です。フラスは、ほかのカミキリムシやコスカシバでも出ます。通報する側が場所と写真をそろえて伝えれば、確かめる側の手間はそれだけ減ります。
伐採が進むこれからの季節に気になるのは、切株の扱いです。木を伐ると、作業が終わったように見えます。ただ、根に入った幼虫は切株の中で育ち続けることがあります。抜根できない場所は少なくありませんが、そこで覆いや固めを省くと、伐った木から次の成虫が出ることになります。現場での経験から、抜根の可否は、根の張り方や周りの舗装、埋設物によって大きく変わります。伐る前に、切株をどう処理するかまで決めておくことが、伐採を防除として終わらせる条件だと考えています。
来月は、通報ネットの試行の結果、交付金の内示、都道府県の緊急調査の進み具合などを追っていきます。
よくある質問
Q1. 「クビアカ発見・通報ネット」とは何ですか。
環境省が2026年10月13日から11月30日まで試行している、クビアカツヤカミキリの確認・被害情報を集める仕組み(仮称)です。発見した地点や被害の状況をフォームで集め、誤った情報を除いたうえで、確認済みの情報を地図に公開します。2027年4月の本格運用をめざしています。
Q2. 伐ったサクラの切株は、そのままでよいですか。
そのままにはしません。幼虫は根にも入り込むため、切株から成虫が出ることがあります。東京都の手引は、伐採後は極力抜根し、難しい場合はモルタルやコーキング剤などで覆うか、厚手や多重のビニールシートで覆って端を盛り土で埋めるとしています。
Q3. 被害を防ぐネットは、どんなものを巻けばよいですか。
和歌山県果樹試験場の研究では、目合い0.3mmの白いネットが試した中で最も産卵を抑え、樹皮から約10mm離して巻くと効果が高まりました。大阪府の手引書は、木の成長で隙間が1cm以下になったら張り直すとしています。殺虫成分を練り込んだネットは2026年現在、農薬登録がありません。
Q4. 夏にフラスが無かったサクラは、もう安心ですか。
安心とは言えません。東京都の手引によると、幼虫によってフラスを出す時期が違い、夏に見つからなかった木でも秋にフラスが出ていることがあります。被害の出ている地域では、6〜7月と8月下旬〜9月の2回の点検が望ましいとされています。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
出典・参考情報
・環境省「クビアカツヤカミキリに係る情報収集システムの試行開始について」(2026年10月13日)、別添
・クビアカツヤカミキリ対策本部「第3回対策本部 資料」(令和8年10月15日)、農林水産省「クビアカツヤカミキリ対策本部」
・クビアカツヤカミキリ対策本部「クビアカツヤカミキリ防除戦略」(令和8年9月11日)、「クビアカツヤカミキリ対策についての政府の対応状況」(令和8年7月)
・農林水産省「クビアカツヤカミキリに関する情報」
・長野県「上田市においてクビアカツヤカミキリ(特定外来生物)による被害が初確認されました」(2026年10月6日)、「クビアカツヤカミキリ防除のための薬剤の提供を上伊那・長野地域において9月30日(水曜日)から開始します」(2026年9月29日)
・愛知県「クビアカツヤカミキリの駆除や被害発見にご協力ください!」(2026年10月8日更新)
・京都府「特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」について」(2026年9月14日更新)
・兵庫県「ひょうごの環境 クビアカツヤカミキリに関するお知らせ」
・香川県「クビアカツヤカミキリ(特定外来生物)の県内初確認について」(2026年7月10日)
・東京都環境局「クビアカツヤカミキリ防除の手引」(2026年3月)
・和歌山県果樹試験場かき・もも研究所「クビアカツヤカミキリの産卵防止に有効なネット資材の仕様と薬剤含有ネットの効果検証」(令和7年度 研究成果情報)
・農研機構「日本の果樹と樹木を守る外来カミキリムシ総合対策マニュアル」(2026年3月)、大阪府立環境農林水産総合研究所「クビアカツヤカミキリ被害対策の手引書(改訂第6版)」(2026年4月)
・森林総合研究所「クビアカツヤカミキリの防除法」(2022年)
・農林水産省「農薬登録情報提供システム」(2026年10月14日に確認)
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