植栽基盤には、広がり・深さ・物理性・化学性の4つの条件があります。連載「土壌調査と土壌改良」の第1回では、樹木医・植栽基盤診断士の立場から、それぞれの条件が根にとって何を意味するのか、都市の植栽地ではどこが欠けやすいのかを、国の手引きの目安とあわせて解説します。
当社の土壌調査のページには、植栽基盤の条件、土が原因で樹木が弱る理由、4つの調査の方法、判定の目安、3つの土壌改良の方法を並べています。ただ、1ページに並べると、1項目あたりの説明はどうしても短くなります。この連載では、その項目を1回に1つずつ取り上げ、ページでは書ききれなかった中身を書いていきます。植栽基盤と調査の器具の全体像は、先に公開した「植栽基盤診断士とは」にまとめています。
第1回は、植栽基盤の4つの条件です。土壌調査で測る土の硬さや水はけ、pHやECは、どれもこの4つの条件のどこが欠けているかを確かめるための数字です。国土技術政策総合研究所(国総研)の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」も、植栽基盤としての適性を知るには土壌調査が必要だとしています。条件を先に知っておくと、調査の結果が何を意味しているのかが読みやすくなります。
植栽基盤とは──4つの条件と、2つの層
一般社団法人日本造園建設業協会(日造協)は、植栽基盤を、植物の根が支障なく伸びて水分や養分を吸収できる条件を備え、ある程度以上の広がりがあり、植物を植えるために使われる土層と定義しています。協会の植栽基盤診断士のパンフレットは、その条件を4つに分けて図にしています。
- 広がり: 植物の根が十分に伸びることのできる面積がある
- 深さ: 植物の根が十分に伸びることのできる土層の厚さがある(有効土層)
- 物理性: 適正な硬度、良好な保水性、良好な透水性
- 化学性: 有害物質を含まない、適正な酸度、適度な養分
同じ図には、有効土層の下に「余剰水を排出できる下層地盤」が描かれています。国総研の手引きも、植栽基盤を、根が支障なく伸びられる有効土層と、その底に水が停滞しないようにする排水層の2つの層で説明しています。

植栽基盤とは(イラスト)。根が伸びる広がりと深さを持つ有効土層と、その下で余分な水を逃がす排水層からなる
私は、広がりと深さを「土の量」、物理性と化学性を「土の質」と分けて考えるようにしています。量が足りていても、硬く締まった土や強いアルカリ性の土であれば、根はその中へ伸びていけません。反対に、質の良い土でも量が足りなければ、大きく育った樹木を地下で支えきれなくなります。この連載で取り上げる調査は、4つのうちどの条件が欠けているのかを、1つずつ確かめていく作業だと考えています。
条件1 広がり──根は、枝張りより広く伸びることがある
根はどこまで伸びるのでしょうか。国総研の手引きは、植栽桝などで植栽基盤が制約を受けていない自然な状態では、根系は樹冠の幅と同じ程度まで伸びるのが一般的だとしています。手引きに載っている根の掘り取りの例では、樹冠幅10mのイチョウの根が幅12m・深さ2mまで、樹冠幅8mのケヤキの根が幅10m・深さ1.5mまで、樹冠幅9mのクスノキの根が幅12m・深さ2mまで広がっていました。地上で見えている枝張りよりも、根のほうが広く張っていた例です。
植栽基盤の広さの目安も、この根の広がりから決められています。手引きの表では、根が株元の近くに集まる型や、中くらいまで広がる型の樹木で、樹冠の投影面積(枝張りと同じ直径の円)。根が浅く遠くまで広がる型の樹木では、枝張りの1.5倍の直径の円です。
では、広がりが足りないと何が起こるのか。手引きは、植栽基盤が制約されていると、根は伸びられる空間を探しながら狭い空間にも入り込み、太ることで成長を保とうとすると説明しています。そして、狭い植栽基盤の外側に根が伸びられないまま植えると、根の伸びが悪くなって樹木を支える力が落ち、倒れやすくなるとともに、根上がりや縁石との競合が起こりやすくなる。樹勢の低下や枝枯れにつながる場合もある、としています。

根の広がり(イラスト)。制約の無い場所では根が枝張りの幅ほどまで広がり(左)、植樹桝の中では縁石や舗装の下へ入り込む(右)
街路樹では、樹冠と同じ広がりの植栽基盤を取ることが、そもそも難しい場合が多くあります。手引きも、植栽基盤を長さ方向にできるだけ長く取ることや、歩道の地下の隙間を活かすことで、少しでも広く確保するよう求めています。マンションや施設でも、建物と通路に挟まれた細長い植栽帯や、舗装に囲まれた植樹桝は、広がりが最初から限られた場所です。土の量を増やせない場所ほど、限られた土の質を保つことが大事になると考えています。
条件2 深さ──有効土層の厚さと、根の伸び方の違い
深さの条件は、根が十分に伸びられる土層の厚さ、つまり有効土層の厚さです。手引きは有効土層を上層と下層に分け、樹高と根の伸び方ごとに目安を示しています。
| 樹高 | 上層(浅根性・中間型) | 上層(深根性) | 下層(浅根性・中間型) | 下層(深根性) |
|---|---|---|---|---|
| 3〜7m | 40cm | 60cm | 20〜40cm | 40〜60cm |
| 7〜12m | 60cm | 80cm | 20〜40cm | 60〜80cm |
| 12m以上 | 60cm | 80cm | 40〜90cm | 80〜100cm |
(国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」表-2.5 から。排水層の厚さは、地盤の土質や勾配によって決めるとされています)
樹高12m以上の深根性の樹木なら、上層と下層を合わせて160〜180cmです。大きく育つ樹木を植えるには、それだけの厚さの土が地下に要るということになります。
根の伸び方は樹種によって違います。手引きは、太い垂下根を地中深くまでまっすぐ伸ばす深根性のものから、水平方向や斜め下へ、あまり太くならない多数の根を広げる浅根性のものまであるとし、浅根性の例にハナミズキ、深根性の例にタイワンフウの写真を挙げています。そのうえで、植栽基盤を深くできないが広がりは取れる場所では水平に広がる浅根型を、近くに埋設物がある場所ではできるだけ深さを取ったうえで深根型を、中間の形の植栽基盤には斜めに根を出す型を選ぶ、という考え方を示しています。土の条件に樹種を合わせる、という順番です。

根の伸び方と有効土層(イラスト)。浅根性は上層を横へ、深根性は下層の深くまで根を伸ばす。その下に排水層がある
深さは、土を入れた厚さだけでは決まりません。有効土層の下で水が抜けなければ、その深さまで根は使えないからです。手引きは、施工のときに植栽基盤が締め固められて根が伸びにくくなった状態や、地下水位が高い場合を、根株や根の腐朽・衰弱につながる要因に挙げています。当社の調査でも、土を調べている途中で水が湧いてきたことがありました(植栽基盤調査のご紹介)。図面の上では十分な厚さがあっても、根が実際に使える深さはそれより浅いことがあります。
条件3 物理性──硬さ、水はけ、水もち
物理性は、土の硬さや水はけといった物理的な性質です。手引きは、植物の生育に必要な酸素や水分の供給と、根の伸びやすさに関わる性質だと説明し、条件として、透水性(通気性)が良く下の層との境で水が停滞しないこと、硬さが適当であること、適度な保水性があることを挙げています。
土は、土の粒(固相)、水(液相)、空気(気相)の3つでできていて、その割合を「三相組成」と呼びます。土の粒と粒のすき間に、水と空気がどれだけ入っているか、ということです。根が水を吸い、酸素を得られるのは、このすき間があるからです。締め固められて粒どうしが詰まった土では、すき間が減り、根は入り込めず、水も空気も通りにくくなります。

土の粒と、水と空気のすき間(イラスト)。締め固められた土ではすき間が少なく根が入り込めない(左)。根が伸びやすい土では、粒の集まりのあいだに、水(グレーの部分)と空気(白いすき間)が入る(右)
水はけと水もちは、反対の性質に見えます。以前このブログで、樹木が好む土を「柔らかくフカフカで、水もちが良いけど水はけも良い」と書いたことがあります(樹木の生育不良とその原因について)。余分な水は下へ抜け、根が使う水は土の中に残る、という状態です。手引きは、大きさの違う粒の混じり具合(土性)を、通気性や透水性、水分や養分を保つ力に関わる重要な性質としています。同じ手引きは、灰色を帯びた土層や粘性土では透水性の不良が、砂質土では保水性の不良が考えられるとしています。
都市の植栽地で物理性が損なわれやすいのは、土が締め固められるからです。建物にとって良い地盤は、固く締まって建物を支える地盤です。樹木が求める土はその逆で、同じ敷地の中で正反対の条件が求められています(植栽基盤調査とは?)。手引きも、植栽の施工では、埋め戻しを重機で基盤造成のように締め固めないこと、土が締まり過ぎないようにすることを求めています。さらに、植栽地の多くは植えた後も次第に固まっていき、とくにマサ土や粘土は耕しても再び固まる性質があるため、バーク堆肥などの改良材を混ぜたり、地被植物を植えたりして固まるのを防ぐ対策が望ましい、としています。
土の硬さは長谷川式土壌貫入計で、水はけは長谷川式簡易現場透水試験器で測ります。水もちは、検土杖で採った土の手ざわり(指触による土性)と観察から見当をつけます。それぞれの測り方と数字の読み方は、第3回から第5回で取り上げます。
条件4 化学性──有害物質、酸度、養分
化学性は、養分や酸度などの化学的な性質です。手引きは、有害物質の有無、養分の量、養分を保つ力に関わる性質としています。条件は、樹木の生育に障害を及ぼす有害物質を含まないこと、酸度(pH)が適当であること、養分がある程度以上含まれていることです。
pHは土の酸性・アルカリ性を表す指標で、0〜14の範囲で7.0が中性、それより小さいと酸性、大きいとアルカリ性です。手引きの判定の目安では、5.6〜6.8が「良」とされています。
都市の植栽地で気をつけたいのは、アルカリ性に傾いた土です。手引きは、固まった土やコンクリート塊など土以外の物が混じった土、アルカリ性の土を、改良しないまま植栽に使うことを、施工段階の問題として挙げています。周りの路盤材に再生コンクリート砕石が使われている場合は、土がアルカリ性を示す可能性があるため、pHを測る必要があるとも書かれています。当社の調査でも、建設ガラがたくさん出てきたり、pHが極端なアルカリ性を示したりしたことがありました(植栽基盤調査のご紹介)。

都市の植栽地の土の中(イラスト)。コンクリート片や締め固められた層、路盤の砕石に囲まれると、根は浅い所にとどまる
さらに手引きは、強い石灰処理を受けた土(ヘドロ)のように極度に強いアルカリ物質を含む土、pH3以下になるような強い酸性の土、海水を含む地域の浚渫土のように塩類を多く含む土は、土の入れ替え(客土)を含めた大がかりな改良が必要になることがある、としています。
有害物質の目安には、土に溶けている塩類の量を表す電気伝導度(EC)を使います。手引きの判定の目安では、砂土で0.5dS/m以上、その他の土で1.0dS/m以上が「不良」、0.2dS/m以下は不良ではないものの養分の乏しい土とされています。土の変色や植物の侵入が見られないときには、ハツカダイコンなどの種をまいて育ち方を見る発芽試験も紹介されています。養分は、土の色(マンセル土色帳)や手ざわり、その場所の植物の育ち方から見当をつけ、詳しく知る必要があれば土壌分析をします。pHとECの測り方は、第6回で取り上げます。
どの条件が欠けているかで、直し方が変わる
4つの条件は、それぞれ別の数字で確かめ、別の方法で直します。手引きの表-2.7は、改善の目標と整備の方法を次のように整理しています。
| 確かめる項目 | 改善の目標 | 整備の方法 |
|---|---|---|
| 排水性 | 良好な排水状況 | 排水層工、通気工 |
| 透水性(現場透水試験) | 毎時100mmを超える | 土層改良工、土壌改良工、盛土工、客土置換法 |
| 硬度(S値) | 1.5〜4.0cm/drop | 土層改良工、土壌改良工、盛土工、客土置換法 |
| 保水性 | 良好に水分を保つ状態 | 土壌改良工、盛土工、客土置換法 |
| 養分 | 阻害要因がない状態 | 土壌改良工、盛土工、客土置換法 |
| 有害物質(EC) | 砂土で0.5dS/m以下、その他の土で1.0dS/m以下 | 土壌改良工、盛土工、客土置換法 |
| 酸度(pH) | 5.6〜6.8 | 土壌改良工、盛土工、客土置換法 |
(国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」表-2.7 から)
植える前であれば、こうした工事で土そのものを整えることができます。難しいのは、すでに樹木が育っている場所です。根を傷めずに土を入れ替えることはできないため、当社では、縦穴に竹の筒を挿す割竹挿入法、水圧で土をほぐす水圧穿孔法、圧縮空気で孔をあけるエアレーション法を、調査の結果を見て使い分けています。
どの条件が欠けているのかが分からないまま手を入れると、効かないだけでなく逆効果になることもあります。水はけの悪い土に水やりを重ねれば過湿が進み、肥料分の濃い土に肥料を足せば濃度はさらに上がります。原因を確かめてから手当てをする、という順番を、当社では大切にしています(植栽基盤調査とは?)。3つの方法は、第8回から第11回で取り上げます。
植栽基盤の条件を、土壌調査で確かめる
株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医と植栽基盤診断士(当社には2名が在籍しています)が、土の硬さ、水はけ、土の層、pH・ECを調べ、その結果をもとに改良の方法をご提案しています。数字は大切な判断の材料ですが、それだけで決めることはしていません。植えられたときの状況、管理の頻度や内容、周りの環境、灌水装置の設定、土のにおいや感触も合わせて考えます(マンション 植栽基盤(土壌)調査 神奈川県川崎市)。
「植えて数年たつのに樹木が大きくならない」「雨の後、植栽地にいつまでも水が残る」。こうしたご相談の原因が、足元の土にあることは少なくありません。土壌調査のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
次回は、土が原因で樹木が弱っていくときの道筋を、東京都のマニュアルが挙げる4つの原因と、樹木の衰退原因の図をもとに取り上げます。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくある質問(植栽基盤の条件について)
Q1. 植栽基盤の4つの条件とは何ですか?
A. 広がり、深さ、物理性、化学性の4つです。日本造園建設業協会は、根が十分に伸びられる面積(広がり)と土層の厚さ(深さ)があること、硬さ・保水性・透水性が適正であること(物理性)、有害物質を含まず酸度と養分が適度であること(化学性)を、植栽基盤の条件として示しています。
Q2. 植栽基盤の広さは、どれくらい必要ですか?
A. 国総研の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、樹冠の投影面積(枝張りと同じ直径の円)を目安にし、根が浅く遠くまで広がる樹木では枝張りの1.5倍の直径としています。制約の無い自然な状態では、根は樹冠の幅と同じ程度まで伸びるのが一般的だからです。街路樹など広さを取れない場所では、長さ方向に長く確保するなどの工夫が求められています。
Q3. 有効土層とは何ですか?深さの目安はありますか?
A. 根が支障なく伸びられる土の層のことです。国総研の手引きは上層と下層に分けて目安を示しており、樹高3〜7mの浅根性・中間型の樹木で上層40cm・下層20〜40cm、樹高12m以上の深根性の樹木で上層80cm・下層80〜100cmです。その下には、水が停滞しないようにする排水層が要ります。
Q4. 樹木が育ちやすい土とは、どんな土ですか?
A. 柔らかく、水はけが良いのに水もちも良い土です。国総研の手引きは物理性の条件として、透水性が良く水が停滞しないこと、硬さが適当なこと、適度な保水性があることを挙げています。土の粒のすき間に水と空気が入っていることで、根は水を吸い、酸素を得られます。
Q5. コンクリートのガラが混じった土は、樹木に影響しますか?
A. 影響することがあります。国総研の手引きは、コンクリート塊などが混じった土やアルカリ性の土を改良しないまま植栽に使うことを問題として挙げ、周りの路盤材に再生コンクリート砕石が使われている場合は、土がアルカリ性を示す可能性があるため、pHの測定が必要としています。
Q6. 4つの条件は、どうやって確かめますか?
A. 土壌調査で確かめます。当社では、長谷川式土壌貫入計で硬さを、長谷川式簡易現場透水試験器で水はけを測り、長谷川式大型検土杖で深さ1mまでの土を採って層の状態を見て、採った土のpHとECを測ります。数字だけで決めず、植えたときの状況や管理の内容も合わせて判断します。
出典・参考情報
- 一般社団法人日本造園建設業協会「植栽基盤診断士」パンフレット(図「植栽基盤とは」)
- 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」国総研資料第1059号、2019年2月(p.1-28、1-32、1-37、1-40、1-53〜1-58、1-65。表-2.5〜2.7 は同書が「植栽基盤整備マニュアル」国土交通省監修・日本緑化センター、2009年を基に作成したもの)
































