植栽年間管理のご契約を頂いている都内マンションの植樹桝とその周囲のインターロッキング舗装が、植栽されているサクラの根上がり(根が成長してくる事で舗装を持ち上げてしまう現象)によって舗装が不陸(でこぼこ)になってしまっておりました。
先に答え
根上がりとは、樹木の根が成長して、縁石や舗装を持ち上げてしまう現象です。国総研の「街路樹再生の手引き」は、樹木の大きさに対して植栽桝や植栽帯が狭いと、根が生育空間を求めて隣接する縁石や歩道の下にも伸び、縁石や舗装を持ち上げる場合があるとしています。東京都建設局のマニュアルは、多くの場合、根上がりは樹勢の良い健全な木が、生育環境のキャパシティを超えて成長したときに見られるとしています。
- 根上がりは、成長した根が舗装を持ち上げる現象です。都内マンションのサクラでは、植樹桝とその周りのインターロッキング舗装がでこぼこになり、歩くとつまずきそうな状態でした。
- 植樹桝のブロックを外すと、根が桝の形に目いっぱい詰まり、下部では無数の細根が桝の外へ伸びていました。この細根が、舗装を押し上げた主な原因でした。
- 再舗装にあわせて細根を整理し、やむを得ない太根を処理しました。根から腐朽菌が感染するのを防ぐため、有機銅塗布剤を塗布しています。
- 根が下の方へ深く伸びるよう土壌注入器と動力噴霧器で土の通気透水性を改善し、植樹桝を拡張して黒土を客土しました。

根の盛り上がりと圧で形がゆがんだ植樹桝のブロックと、でこぼこになった周りのインターロッキング舗装

施工前。カラーコーンとバーで囲った植樹桝のサクラ
植樹桝のコンクリートブロックも根の盛りあがりと圧によって、
歪な形になってしまっています。
周囲のインターロッキングもでこぼこになってしまい歩いていても躓きそうな状況でした。

植樹桝のブロックを外した断面。太い根の下に、無数の細根が広がっている
植樹桝のコンクリートブロックを撤去した状態です。
根が桝の形に目いっぱい詰まっていました。
植木鉢での根詰まりと同じような状態で、樹木には良くありません。
また下部には細根が無数に桝の外に伸びていました。
この根が主にインターロッキングの根上がりの原因となっています。
太い根が舗装を押し上げているイメージがあるかと思いますが、
この様な無数の細根が舗装を押し上げていることが多くあります。
植物の力にはいつも驚かされます。
再舗装に伴い、細根の整理とやむを得ない太根の処理を行いました。
根から腐朽菌(樹木を腐らせる原因の菌)の感染を防止する為に、
バッチレート[有機銅塗布剤] を塗布します。

整理した根と、切り口に塗る有機銅塗布剤(バッチレート)
新たな植樹桝の施工前に、
根上りを少しでも防止する為、根を少しでも下の方へ深く伸びる様に土壌改良を行いました。
土壌注入器と動噴(背負い式動力噴霧器)による水圧で土壌の通気透水性を改善します。
液肥を混入している為、施肥の効果もあります。
この土壌注入器で80cmほどの深さまで注入することが可能です。

背負い式の動力噴霧器と土壌注入器で、水圧で根元の土の通気透水性を改善する

広げた植樹桝の縁石を据え付ける

水平を確かめながら縁石を据え付ける
サクラの根の上に敷かれていた石灰砕石砂利を撤去し、
拡張した部分に良質の黒土を客土、敷き均しをして完了致しました。

植樹桝の施工前(上)と施工後(下)

広げた植樹桝に黒土を客土し、敷き均して完了
数十年前に植栽されたサクラなどの樹木によって、
根上がり被害は多くの場所で発生しています。
今回の様に植樹桝を拡張し、周囲の舗装を敷きなおせれば
また何年も人と樹木の共存が可能になります。
その植栽環境によりどこでも施工できるわけではありませんが、
根上がりによる問題が御座いましたら、ご相談をお待ちしています。
根上がりの原因
根上がりは、一つの原因だけで起こるとは限りません。国総研と東京都建設局の資料に書かれていることを、次の4つに整理します。いずれも街路樹を対象とした資料の記述です。
1. 植栽桝が狭い
国総研の「街路樹再生の手引き」は、街路樹の大きさに対して植栽桝や植栽帯が狭いと、根が生育空間を求めて、隣接する縁石や歩道の下にも伸びるとしています。東京都建設局のマニュアルも、街路樹は根の伸びられる地下空間が限られるため、表層に根を伸ばすことが少なくなく、この場合に根上がりが起こるとしています。

2. 土が硬い、水や空気が通りにくい
国総研の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、植栽基盤の条件として、透水性が良好で、下層との境界などで水が停滞しないこと、土の硬さが適当であることを挙げ、土が硬いと根を伸ばすことができないと説明しています。この記事の現場でも、根が下の方へ深く伸びるように土壌改良を行いました。植栽基盤の考え方は「植栽基盤調査とは?」でも説明しています。
3. 樹種の根の形
同じ手引きは、樹木の根の形は樹種によって異なり、太い根を地中深くまっすぐ伸ばす深根性のものから、水平方向や斜め下方向に多数の根を広げる浅根性のものまであるとしています。手引きの分類では、ソメイヨシノは、その中間にあたる斜出根型です。浅根性の樹種は、狭小な植栽桝などとあわせて、根返りの発生要因の一つにも挙げられています。

手引きの図-2.7が挙げる根の型ごとの代表的な樹種(本州から九州)を、表にすると次のとおりです。
| 根の型 | 代表的な樹種(本州〜九州地域) |
|---|---|
| 垂下根型(深根性) | マテバシイ、クロマツ、スダジイ |
| 垂下根・水平根型(深根性) | イチョウ、プラタナス類、ユリノキ |
| 斜出根型(中間) | ソメイヨシノ、トウカエデ、サルスベリ |
| 水平根型(浅根性) | ケヤキ、ハナミズキ、クスノキ |
| ひも状放射型(浅根性) | ワシントンヤシ、カナリーヤシ |
出典: 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」(2019年)p.1-40 図-2.7「樹木の根系形態と代表的な樹種例」(参考文献は苅住曻「最新樹木根系図説」2010年など)
4. 太い根と細い根
東京都建設局のマニュアルは、支持根のような太い根が根上がりの原因になっている場合は、試掘などで根の広がりを把握したうえで、方法を選ぶのが望ましいとしています。一方、この記事の現場では、植樹桝の下部から外へ伸びた無数の細根が、舗装を押し上げた主な原因でした。
根上がり対策の考え方
対策は、根上がりの程度、木の状態、周りの空間によって変わります。東京都建設局のマニュアルが、根上がり対策として挙げている方法は、次のとおりです。
- S.S.M工法(根系誘導耐圧基盤): 歩道の路床に、直径30〜40mmの単粒度の骨材をかみ合わせて耐圧構造をつくり、骨材の間の空隙に土を詰めて、根を誘導する工法
- 防根シート: 根の伸びる範囲を制御して、根上がりなどを防ぐ
- 植栽用エッジング: 根の伸長を防ぐ
- 縁石: 通常より鉛直方向に長い縁石を設置し、根の伸長を抑えて、縁石の破壊や歩道舗装部への根上がりを防ぐ
- 根系切除及び補修: 縁石や歩道舗装が壊れたり持ち上げられたりしている場合に、根を切除して、縁石や舗装面を補修する

根を切る場合
国総研の「街路樹再生の手引き」は、根が縁石や舗装を大きく持ち上げていて、その原因の根を除く必要がある場合に、根を切っても木への負荷が少なく、切ったあとの良好な生育が期待できるときは、根の切除が有効としています。短所としては、根の切断で木の活力が衰えたり、腐朽などが発生したりする場合があることを挙げています。切る根の量が多いときは、根が吸う水分と枝葉から出ていく水分のバランスを取るために、葉の量を減らす剪定を行うこともあります。木の勢いが衰えていたり、根を多く切ると良好な生育が望めなかったりする場合は、同じ樹種を植え直す方法が示されています。
根の伸びる場所を広げる
同じ手引きは、根の切除や再植栽をするときは、根上がりが再発しないように、根が十分に伸びられる範囲まで植栽基盤を拡げ、あわせて根系遮断シートなどの敷設や、構造物の補強による予防を行うことが効果的としています。大規模な場合は工事が大がかりになり、施工期間が長くなることがある点も、短所として書かれています。
「根を切る場合」と「根の伸びる場所を広げる」で触れた対策を、手引きの表から並べると次のとおりです。
| 対策 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| 根系の切除 | 根を切って除くことで、舗装のでこぼこが改善できる | 根の切断で木の活力が衰えたり、腐朽などが起きたりする場合がある |
| (根の切除にあわせた)剪定 | 木全体の生育のバランスを良く保てる | 樹形などに影響が出る場合がある |
| 植栽基盤の整備・改良(根系遮断シート、構造物の強化、植栽基盤の拡幅) | 健全な生育や、隣の場所への根の伸び、根上がりを防げる | 大規模な場合は植栽桝や舗装の改良工事を伴い、施工期間が長くなる |
| 同じ樹種の再植栽 | 小さい規格の木を植えれば、当面は根上がりが起きにくい | 短い間、景観などの道路緑化の働きが損なわれる場合がある |
出典: 国土技術政策総合研究所「街路樹再生の手引き」(国総研資料第885号、2016年3月)p.1-57 表-3.21「根上りに対応した保全対策工(例)」から抜粋(街路樹を対象とした手引き)
土の通気性や透水性が悪くなっているときの改善として、東京都建設局のマニュアルは、堆肥や土壌改良資材を入れて耕す方法や、土壌灌注器で液肥や活力促進剤を土に混ぜ入れる方法を挙げています。
植える樹種を選ぶ
国総研の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、樹種を選ぶときの考え方として、植栽基盤を深くできないが広がりを確保できる場合は水平に広がる浅根型を、近くに埋設物などがある場合はできるだけ深さを確保したうえで深根型を、中間タイプの植栽基盤には斜出根型を検討するとしています。
点検で早めに気づく
東京都建設局のマニュアルは、街路樹の点検項目に「根上がり・舗装クラック」を挙げ、根上がりで舗装や縁石を持ち上げていないか、舗装にクラックがないか、根が縁石に乗り上げていないか、つまずきなどの通行障害が起きていないかを確かめるとしています。この項目に当てはまる場合は補修が必要で、根上がりが続く場合には、更新も検討するとしています。外観診断でも、根上がりによる舗装や縁石の破壊の有無を「その他の事項」として見ます。
この記事の現場で行ったこと
この記事の現場では、植樹桝の下部から外へ伸びた細根が、舗装を押し上げた主な原因でした。再舗装にあわせて細根を整理し、やむを得ない太根を処理したことは、上の「根を切る場合」にあたります。根が下の方へ深く伸びるよう土壌注入器と動力噴霧器で土の通気透水性を改善し、植樹桝を拡張して黒土を客土したことは、「根の伸びる場所を広げる」考え方に沿った内容です。
「樹木診断(外観診断・機器診断)」のサービス内容と、ご相談の窓口であるお問い合わせのページはこちらです。
株式会社トシ・ランドスケープ
よくある質問
Q1. 根上がりとは何ですか。
根が成長することで、舗装を持ち上げてしまう現象です。国総研の「街路樹再生の手引き」(平成28年3月)は、樹木の大きさに対して植栽桝が狭いと、根が生育空間を求めて歩道の下にも伸び、縁石や舗装を持ち上げる場合があるとしています。
Q2. 舗装を押し上げるのは太い根ですか。
太い根が押し上げているイメージがありますが、今回の現場では、植樹桝の下部から外へ伸びた無数の細根が主な原因でした。現場での経験からも、このような細根が舗装を押し上げていることが多くあります。
Q3. 根上がりの工事では、根をどう処理しましたか。
再舗装にあわせて細根を整理し、やむを得ない太根を処理しました。根から腐朽菌が感染するのを防ぐため、有機銅塗布剤を塗布しています。国総研の手引きも、根を切った切断面に殺菌剤等を塗るとしています。
Q4. 根上がりの再発を防ぐため、何をしましたか。
根が下の方へ深く伸びるよう、土壌注入器と動力噴霧器の水圧で土の通気透水性を改善しました。液肥を混ぜているので施肥の効果もあります。そのうえで植樹桝を拡張し、根の上の石灰砕石砂利を撤去して、良質の黒土を客土しました。
Q5. 根上がりは、植樹桝の拡張でどこでも直せますか。
植栽環境によって、どこでも施工できるわけではありません。国総研の手引きは、根上りへの対策として、根系の切除、植栽基盤の拡幅、根系遮断シートの設置や構造物の強化、同じ樹種の再植栽などを挙げ、樹勢や、根を切ったときの木への負荷に応じて選ぶとしています。
Q6. 根上がりは、なぜ起こりますか。
国総研の「街路樹再生の手引き」は、樹木の大きさに対して植栽桝や植栽帯が狭いと、根が生育空間を求めて縁石や歩道の下にも伸び、縁石や舗装を持ち上げるとしています。東京都建設局のマニュアルも、根の伸びられる地下空間が限られるため、根が表層に伸びて根上がりが起こるとしています。
Q7. 根上がりを放置すると、どうなりますか。
国総研の「街路樹再生の手引き」は、舗装などが壊れるとともに、歩く人がつまずいて転倒しやすくなるなどの危険が生じる可能性があるとしています。東京都建設局のマニュアルも、根上がりは通行者の安全を妨げるため、発生したときは速やかに対策を取る必要があるとしています。
Q8. 根を切ると、木は弱りませんか。
根の切断で、木の活力が衰えたり、腐朽などが発生したりする場合があります。国総研の「街路樹再生の手引き」は、根の切除は、切っても木への負荷が少なく、切ったあとの良好な生育が期待できる場合に有効とし、切る量が多いときは葉の量を減らす剪定を行うこともあるとしています。
Q9. 根上がりの対策には、どんな方法がありますか。
東京都建設局のマニュアルは、根を誘導するS.S.M工法、防根シートや植栽用エッジングによる根の伸長の制御、鉛直方向に長い縁石の設置、根系の切除と舗装の補修を挙げています。国総研の手引きは、再発を防ぐため、根が十分に伸びられる範囲まで植栽基盤を拡げることも効果的としています。
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出典・参考情報
・街路樹再生の手引き(国総研資料 第885号、平成28年3月、国土交通省 国土技術政策総合研究所) 「1.1(3)根上り」(1-2ページ)、「表-3.21 根上りに対応した保全対策工(例)」(1-57ページ)と図-3.19の説明(1-58ページ)、「根系切除の方法」(1-113ページ)。根上りの起こり方と対策の種類、根の切断面に殺菌剤等を塗ることは、この資料の記載によるもので、街路樹を対象とした手引きです。
加筆にあたり、次の資料を確認しました(2026年10月3日)。いずれも街路樹を対象とした資料です。
- 東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度) 第Ⅱ章(p.8)、第Ⅲ章(p.17)、第Ⅳ章(p.68〜69、p.83〜87)
- 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」(国総研資料第1059号、2019年2月) 第1章(p.1-7〜1-9、図-1.7、写真-1.5)、第2章(p.1-40 図-2.7、p.1-55〜1-56)
- 国土技術政策総合研究所「街路樹再生の手引き」(国総研資料第885号、2016年3月) 「1.1(3)根上り」(p.1-2)、「表-3.21 根上りに対応した保全対策工(例)」(p.1-57)、「図-3.19」と説明(p.1-58)





















