屋上テラスの人工地盤上の桜(サクラ)です。
今年を含め4年連続で樹木医による樹勢回復の為の土壌改良を行っています。
この記事は、人工地盤の上で弱っていたサクラに、割竹挿入法・施肥・水圧穿孔法を組み合わせて続けている土壌改良の記録と、その考え方の説明です。
お客様からは土壌改良を行ってから、明らかに花つきが良くなり、開花時期が本当に楽しみだと嬉しいお言葉をいただきました。
4年前の状態と、サクラの再生計画
4年前の状態は、これまでの成長により大きくなり過ぎ、上部の大きさと土の中の根の張りのバランスが崩れ、
梢端(枝先の方)から枯れてきてしまい、部分的に太い枝まで枯れている状況でした。
しかし、幹のあたりから新たな胴ぶき枝が多数出てきており太く生育しているので、
活力のある胴ぶき枝を中心に残しながら、衰退した枝を剪定することで
サクラの樹形を整えなおす再生計画で手入れ管理しています。
東京都建設局の「街路樹診断等マニュアル」は、樹木の点検の「先端枝の枯れ」で、枝先の伸びの量、梢端の枯損、枝の枯れ下がり、当年枝の伸び具合を見て、全体の枝や周りの同じ樹種と比べて判断するとしています。
胴ぶき枝(胴吹き枝)は、幹から直接出てくる小枝です。埼玉県の「街路樹剪定マニュアル」の用語集は、胴吹き枝を「樹木の衰弱が原因で、幹から発生した小枝」と説明し、ふつうは切除の対象としています。一方で同じマニュアルの本文は、樹形を作り直すときなどには、胴吹き枝などを正常な枝として仕立て直すために残すこともあるので、安易にすべてを取り除かないようにと書いています。このサクラで活力のある胴ぶき枝を中心に残しているのも、同じ考え方です。
人工地盤の上の木は、使える土の量が限られる
屋上やテラスの人工地盤では、木の根が伸びられるのは、床の上に入れた土の中だけです。国土交通省の「緑化施設整備計画の手引き」(2001年)は、建物の上の緑化に使う土を3種類に分け、潅水装置がある場合に必要な土の厚さの目安を次のように示しています。
| 植えるもの | 自然土壌・改良土壌 | 人工軽量土壌 |
|---|---|---|
| 芝生 | 15cm | 8cm |
| 低木 | 30cm | 15cm |
| 中木(約2m) | 45cm | 25cm |
| 高木(約4m) | 60cm | 40cm |
出典: 国土交通省「緑化施設整備計画の手引き」(2001年)。香川県「屋上緑化に関する参考資料」p.125 に掲載された表による。いずれも潅水装置がある場合の目安
同じ資料は、建物の上の植栽基盤は土の厚さが限られ、地下からの水の補給が期待できないため乾きやすいとしています。自然土壌では、根詰まりや土の固結を防ぐ管理が要るとされています。表の高木の欄は、高さ約4mの木の目安です。このサクラは、記事の冒頭のとおり、成長して大きくなり過ぎ、上部の大きさと土の中の根の張りのバランスが崩れていました。
- 割竹挿入 土壌改良法 樹木医
今年の施工──割竹挿入法・施肥・水圧穿孔法
毎年「割竹挿入法」を含む土壌改良(樹勢回復)を実施していましたが、今回も位置を変えて割竹挿入法と、緩効性肥料による施肥を行います。
合わせて、マルヤマ製・背負式動噴とポアノズルを使用した「水圧穿孔法」で根が張って掘りにくい場所も水圧の力で土をほぐしていきます。
割竹挿入法──縦の穴に竹を挿して、空気と水の通り道を残す
割竹挿入法は、根元のまわりに縦の穴を掘って竹を挿し、土の中に空気と水の通り道を作る方法です。国土技術政策総合研究所の「景観重要樹木の保全対策の手引き」は、日常の管理で行う土壌改良の例として、直径20cm程度の縦穴を1m程度掘り、長さ1m程度の竹を半割りにして節を除いて組み合わせ、中に炭やモミガラなどを詰めたものを挿して、周りを完熟堆肥で埋め戻す方法を示し、実施時期を12〜2月、年1回としています。当社の現場での手順は「樹木医 土壌改良施工 東京都内個人邸」でくわしく説明しています。
緩効性肥料による施肥
東京都建設局の「街路樹診断等マニュアル」は、植栽基盤の改善の処置として「樹勢回復のための緩効性肥料の混入」を挙げ、葉が小さくなる、葉の色が黄色くなるといった樹勢の低下には、緩効性肥料の施肥などが考えられるとしています。「景観重要樹木の保全対策の手引き」も、肥料には速効性・緩効性・遅効性のものがあり、多量の肥料を一度に施すと土の中の液の濃度が高まって生育に悪影響を及ぼす場合があるので、生育の時期や木の大きさに応じて適量を施すとしています。
水圧穿孔法──根の張った所は、水の力でほぐす
NPO法人樹木生態研究会の堀大才氏は、既存の木があって土が固まっている場合、根元近くの耕耘や有機物の混入は根系を切って傷める可能性が高いとし、通気性・透水性を改善する方法として、割竹挿入縦穴式土壌改良法と水圧穿孔法を挙げています。水圧穿孔法は、土に差し込んだノズルの先から水を噴き出させ、その力で固い土に穴をあけてほぐす方法です。なお、当社代表の中村雅俊は樹木生態研究会の会員です。

水圧穿孔法(イラスト)。ノズルの先から噴き出す水で、まわりの固い土をほぐす
- 水圧穿孔法 液肥 土壌改良 樹木医
- 水圧穿孔法 液肥 土壌改良 樹木医
- 水圧穿孔法 液肥 土壌改良 樹木医
樹木医を目指す若手スタッフにレクチャーをしながら、今後のサクラの元気さを衰えにくくする施工を行いました。
2年前の割竹の中に、細かい根が集まっていた
2年前に施工した割竹は上部が朽ちて、筒状に中が覗き込める状態になっていました。
空気と水分が地中深くまで行き渡りやすい状態と
なっている為、筒の中にサクラの細かい根が集まってきていて効果を確認することができました。

また定期的に経過観察を行いながら、今後の管理方法をご提案をさせて頂きます。
まとめ
人工地盤の上のサクラは、使える土の量が限られ、大きく育つと上部と根のバランスが崩れやすくなります。この現場では、活力のある胴ぶき枝を残して樹形を作り直しながら、毎年場所を変えて割竹挿入法と施肥を行い、根が張って掘りにくい所は水圧穿孔法でほぐしています。
よくある質問
Q1. 人工地盤の上のサクラには、どんな土壌改良をしていますか。
この現場では、毎年場所を変えて割竹挿入法を含む土壌改良を行い、今回は緩効性肥料による施肥と、根が張って掘りにくい場所を水の力でほぐす水圧穿孔法もあわせて行いました。
Q2. 幹から出る胴ぶき枝(胴吹き枝)は、切ったほうがよいですか。
ふつうは切除の対象ですが、樹形を作り直すときなどには、正常な枝として仕立て直すために残すこともあります(埼玉県「街路樹剪定マニュアル」)。このサクラでは、活力のある胴ぶき枝を中心に残しています。
今年もご依頼をいただきありがとうございました。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
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出典・参考情報
・東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度)p.8(先端枝の枯れ)、p.69 表Ⅳ-1・2(施肥)、p.82(施肥)
・埼玉県「街路樹剪定マニュアル」(令和2年12月)p.5-6、用語集 p.8-2(胴吹き枝)
・国土交通省「緑化施設整備計画の手引き」(2001年)。香川県「屋上緑化に関する参考資料」p.125〜126 に掲載されたもの
・国土技術政策総合研究所「景観重要樹木の保全対策の手引き」(国総研資料第565号、2010年)p.215 表5-11(縦孔の簡易改良・施肥)
・堀大才「土壌改良の考え方と基本」(NPO法人樹木生態研究会のサイト、2025年10月1日掲載)
























