pH・EC測定は、採った土に水を加えて混ぜた液で、土の酸度と、土に溶けている塩類の濃さを測る調査です。連載「土壌調査と土壌改良」の第6回では、測り方と判定の目安、pHと養分の吸われやすさの関係、都市の植栽地で数値がずれやすい原因を、国の手引きをもとに樹木医が解説します。
第3回の硬度調査と第4回の透水調査は、土の硬さや水の抜け方という、土の「つくり」を測る調査でした。第5回の土層調査では、土そのものを抜き取って目と手で確かめました。今回のpH・EC測定は、その土が根にとってどんな「中身」なのかを数字で見る調査です。第1回で取り上げた植栽基盤の4つの条件でいえば、化学性にあたります。
pHとEC──何を測っているのか
pH(土壌酸度)は、土が酸性かアルカリ性かを示す指標です。0〜14の範囲で、7.0が中性、それより小さければ酸性、大きければアルカリ性です。国土技術政策総合研究所(国総研)の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、根が支障なく伸びられる土(有効土層)の化学的な条件として、有害な物質を含まないこと、酸度(pH)が適当であること、養分がある程度以上含まれていることの3つを挙げています。
EC(電気伝導度)は、土に溶けている肥料分や塩分などの塩類の濃さを、電気の通しやすさで測るものです。国総研の「景観重要樹木の保全対策の手引き」は、土の中で樹木の生育を妨げる物質のうち、一般に塩類による障害が最も多いため、その有無の目安としてECが広く使われていること、ECは肥料分の多い少ないを知る目安にも使われることを書いています。
pHは土の性質がどちらに傾いているか、ECは土にどれだけのものが溶けているかを示します。どちらも、土の色や手ざわりからは読み取れません。
測り方──土に水を加えて、液を測る
pHもECも、土に直接計器を差すのではなく、土に決まった量の水を加えて混ぜ、その液を測ります。景観重要樹木の保全対策の手引きに書かれている方法は次のとおりです。
- 採った土を自然に乾かし、2mmのふるいを通す(風乾細土)
- pHは、風乾細土に2.5倍の量の水を加えてかき混ぜ、その濁った液をガラス電極のpH計で測る
- ECは、風乾細土に5倍の量の水を加えてかき混ぜ、その上澄み液をECメーターで測る

pH・EC測定の流れ(イラスト)。土を乾かしてふるいにかけ、pHは2.5倍、ECは5倍の量の水を加えて混ぜた液を測る
水の量が変われば、液の濃さも変わります。pHとECで水の割合が違うことと、手引きの判定の目安がこうした方法で測った値をもとにしていることは、結果を読むときに覚えておきたい点です。pHの目安が「pH(H2O)」と書かれているのは、水を加えて測ったpHという意味です。
試料は、第5回で取り上げた長谷川式大型検土杖で採った土や、試掘で掘り出した土を使います。層ごとに分けて採っておけば、どの深さの土の値なのかが分かります。国総研の倒伏対策の手引きは、現地で硬さや水はけを測り、土性や土色を観察するとともに、必要に応じて試料を採って、室内の試験でpH・ECなどを測るとしています。東京都建設局の「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度)の土壌調査方法の表でも、pH(H2O)と電気伝導度は室内分析の項目です。

採った土を土色帳と見比べ、土の色を調べる(当社撮影)

土壌のpH・EC測定(イラスト)。採取した土と水を混ぜ、その液体を測定する
当社では、簡易な測定は携帯型のpH・EC計で自社で行い、詳しい分析が必要なときは専門の分析機関に依頼しています。

調査の道具一式(当社撮影)

採った土の試料に電極を差し、pH・EC計で測る(当社撮影)

pH・EC計と、電極を洗う洗浄瓶・試料の容器(当社撮影)
ECの単位の読み替え
ECの値は、計器や資料によって単位が違います。国の手引きの判定の目安はdS/m(デシジーメンス毎メートル)で書かれていますが、携帯型の計器ではμS/cm(マイクロジーメンス毎センチメートル)で表示されるものがあります。たとえば、販売元の資料に載っている携帯型のpH/EC計は、ECの測定範囲を0〜6000μS/cmとしています。
読み替えは、1dS/m=1mS/cm=1,000μS/cmです。手引きの目安の「1.0dS/m」は、μS/cmで表示する計器では「1,000μS/cm」にあたります。桁を一つ読み違えると、判定がまったく変わってしまいます。
判定の目安──国総研の手引きの表
国総研の倒伏対策の手引きは、植栽基盤の土壌調査の判定基準を、次のように示しています。
| 項目 | 1(良) | 2(可) | 3(不良) |
|---|---|---|---|
| pH(H2O) | 5.6〜6.8 | 4.5〜5.5、6.9〜8.0 | 4.5未満、8.0超 |
| EC(砂土) | 0.2〜0.5dS/m | − | 0.5dS/m以上 |
| EC(その他の土) | 0.2〜1.0dS/m | − | 1.0dS/m以上 |
(国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」p.1-57 表-2.6 から抜粋。ECが0.2dS/m以下は、不良ではないが養分の乏しい状態とされる)
手引きは、「良」を植栽基盤として望ましい状態、「可」をほかの要素と重なった場合などに樹種によっては影響を受けることがある状態、「不良」を明らかに樹木の生育などに悪影響を及ぼす状態としています。改善の目標は、pHが5.6〜6.8、ECが砂土で0.5dS/m以下、その他の土で1.0dS/m以下です。

pHの判定の目安と、酸性側・アルカリ側で起こりやすいこと(図)。判定の帯は国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」、養分の欄は新潟県「新潟県における土づくりのすすめ方」をもとに当社で作成
景観重要樹木の保全対策の手引きは、pH(H2O)が4.5〜8.0程度であれば問題がないとされている、と書いています。倒伏対策の手引きの「可」までの幅と同じです。「可」は、ほかの要素と重なった場合などに影響が出ることがある範囲なので、値だけでなく、ほかの調査の結果とあわせて読みます。
pHが傾くと、養分が吸われにくくなる
pHが大切なのは、土の中の養分が根に吸われやすいかどうかが、pHによって変わるからです。農作物の土づくりの資料ですが、新潟県の「新潟県における土づくりのすすめ方」(農林水産省のサイトに掲載)は、pHの違いで土の微生物の働きや養分の効き方が変わるとし、酸性・アルカリ性に傾いたときに起こりやすいことを次のように挙げています。
- pHが低い(酸性)とき: カルシウム・マグネシウム・カリウムが不足する、アルミニウムが溶け出して害になる、リン酸がアルミニウムと結び付いて吸われにくくなる、マンガンが多すぎて障害が出る、など
- pHが高い(アルカリ性)とき: リン酸がカルシウムと結び付いて吸われにくくなる、鉄・マンガン・ほう素・亜鉛などの微量要素が溶けにくくなって不足する、など
表にすると、次のようになります。
| pHが低い(酸性)とき | pHが高い(アルカリ性)とき | |
|---|---|---|
| 不足しやすいもの | カルシウム・マグネシウム・カリウム | 鉄・マンガン・ほう素・亜鉛などの微量要素 |
| 多すぎて害になるもの | アルミニウム、マンガン | − |
| リン酸 | アルミニウムと結び付き、吸われにくくなる | カルシウムと結び付き、吸われにくくなる |
| 都市の植栽地で考えられる原因 | 硫化鉄を含む土の酸化など | 再生コンクリート砕石の路盤、コンクリートのかけらの混入 |
| 直し方の例 | 石灰を含む資材などで中和する | ピートモスや保肥力の高い堆肥を混ぜ、下層の排水を良くする |
(起こりやすいことは新潟県「新潟県における土づくりのすすめ方」p.71〜72、原因は国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」p.1-65 と同資料 p.71、直し方は国総研「景観重要樹木の保全対策の手引き」p.239 から当社でまとめた)
土に養分があっても、pHが大きく傾いていれば、根がそれを使えないことがある、ということです。景観重要樹木の保全対策の手引きも、強い酸性やアルカリ性に傾いた土の改良を、中和する資材を混ぜて「植物が養分を吸収しやすい状態に」pHを整える作業として説明しています。
葉の色が薄い、育ちが悪いといった症状を見て、肥料が足りないと考えるのは自然なことです。ただ、原因がpHの傾きにあるなら、肥料を足しても根は吸えません。第2回で、原因を確かめずに手当てをすると逆効果になることがあると書いたのは、こういう場面のことです。

葉の色が悪いとき、肥料の前に土を測る(図)。pH・ECの結果によって、中和する、肥料を控える、施肥を考える、と手当ての向きが変わる
ECが高いとき、低いとき
高いとき──水が吸えなくなる
ECが高いのは、土に溶けている塩類が多い状態です。先の新潟県の資料は、土の中の液の塩類が濃くなると、根と土の液の濃さの差(浸透圧の差)が小さくなり、根が水を吸いにくくなるとしています。塩類が濃くなる原因には、肥料の与えすぎや、堆肥・石灰類の入れすぎを挙げています。東京都建設局のマニュアルも、pHや塩類濃度の異常によって養分や水分の吸収が妨げられることを、樹勢不良の原因の一つにしています。

土の液の塩類が濃くなると、根は水を吸いにくくなる(模式図)
国総研の倒伏対策の手引きは、海水を含む地域の浚渫土のように塩類を多く含む土は、土の入れ替えを含む大きな改良が必要になることがあるとしています。また、土の変色や植物の生え込みが見られないような場所では、ハツカダイコンなどの発芽試験で有害な物質の可能性を確かめ、問題があれば専門家の詳しい分析を行うとしています。
低いとき──養分が乏しい
反対に、ECが0.2dS/m以下と低い場合、倒伏対策の手引きは、不良ではないものの養分の乏しい状態としています。景観重要樹木の手引きが書いているように、ECは肥料分の多い少ないの目安にもなります。ECが低く、ほかの調査でも問題が見当たらず、葉の色や枝の伸びが弱いようであれば、施肥を考える手がかりになります。
ECの値ごとに整理すると、次のようになります。
| ECの値 | 手引きの判定 | 土の状態 | 考えること |
|---|---|---|---|
| 0.2dS/m以下 | 不良ではないが貧栄養 | 養分が乏しい | ほかの調査で問題がなく、葉の色や枝の伸びが弱ければ、施肥を考える |
| 0.2〜1.0dS/m(砂土は0.2〜0.5) | 良 | 植栽基盤として望ましい | − |
| 1.0dS/m以上(砂土は0.5以上) | 不良 | 塩類が多く、根が水を吸いにくい | 肥料を控え、原因を調べる(塩類の多い土は入れ替えを含む改良が要ることがある) |
(判定は国総研「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」表-2.6・p.1-58、土の状態と考えることは新潟県「新潟県における土づくりのすすめ方」p.97・99 から当社でまとめた)
ECが高いのか低いのかで、肥料を足すのか、控えるのか、向きが逆になります。施肥の前に測る理由はここにあります。
都市の植栽地で、数値がずれやすい理由
山や畑の土と違い、都市の植栽地の土は、工事のなかで運び込まれ、埋め戻され、まわりをコンクリートや舗装に囲まれています。国の手引きは、そうした場所で化学性がずれる原因をいくつか挙げています。

都市の植栽地でpH・ECがずれる原因(イラスト)。舗装の下の再生コンクリート砕石や、土に混じったコンクリートのかけらは、土をアルカリ性に傾けることがある。肥料の与えすぎは、塩類を濃くする
- 再生コンクリート砕石: 倒伏対策の手引きは、まわりの路盤に再生コンクリート砕石が使われていると、土がアルカリ性を示すおそれがあり、pHを測る必要があるとしています
- コンクリートのかけら(ガラ)が混じった土: 同じ手引きは、周辺の工事などでコンクリート塊が混じった土や、強いアルカリ性の土を、改良しないまま植栽すると、根が十分に伸びずに枯れることがあるとしています
- 強い石灰処理を受けた土・強酸性の土: 極度に強いアルカリ物質を含む土(強い石灰処理を受けたヘドロなど)や、pHが3以下になるような強酸性の土は、土の入れ替えを含む大きな改良が要ることがある、とも書かれています。先の新潟県の資料は、造成や客土のときに土に硫化鉄が含まれていると、酸化して硫酸ができ、土が酸性になることがあるとしています
- 肥料・資材の入れすぎ: 塩類が濃くなる原因です。良かれと思って続けた施肥が、ECを押し上げていることがあります
当社の調査でも、樹木の調子が悪いという相談で土を調べたところ、建設ガラがたくさん出てきたこと、pHが極端なアルカリ性を示したことがありました(植栽基盤調査のご紹介)。コンクリートガラが混じり、アルカリ化などの問題を抱えた、植栽用の土とはいえない環境があることは、以前このブログでも書きました(植栽基盤調査とは?)。

掘り上げた土に混じる石やガラ(当社撮影)
第5回の土層調査で土にガラが見つかったら、その層のpHを測っておく、というように、調査をつなげて使います。

歩道の植栽帯で、調査の器具を広げて土を測る(当社撮影)
数値だけで決めない
景観重要樹木の保全対策の手引きは、化学性の判断基準の値はあくまで一つの目安で、一部の項目で微妙な値が出たときに、それだけで良し悪しを決めず、いろいろな分析の結果を総合して判断するべきだ、と注意しています。
pHやECの数字は、それだけで原因を言い当てるものではありません。硬度調査で固い層が出ているか、透水調査で水が抜けているか、土層調査でどんな土が重なっているか。そこにpH・ECの数字を重ねて、はじめて「この木が弱っている理由は土のどこにあるのか」が絞れてきます。
次回は、第3回から今回までの4つの調査を組み合わせて、原因を絞り込む考え方と、調査結果の読み方を取り上げます。
植栽地の土の中身が気になったら
株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医と植栽基盤診断士が、土の硬さや水はけ、土の層に加えて、pH・ECを測り、結果をもとに改良の方法をご提案しています。「肥料をやっても葉の色が戻らない」「植栽地の土がアルカリ性になっていないか確かめたい」といったご相談がありましたら、土壌調査のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくある質問(土壌のpH・EC測定について)
Q1. 土壌のpHとECは、何を表していますか?
A. pHは土が酸性かアルカリ性かを示す指標で、7.0が中性です。EC(電気伝導度)は、土に溶けている肥料分や塩分などの塩類の濃さを示します。国総研の景観重要樹木の保全対策の手引きは、ECを塩類による障害の有無の目安として、また肥料分の多い少ないの目安として使うとしています。
Q2. pH・ECは、どうやって測りますか?
A. 採った土を乾かして2mmのふるいを通し、pHは2.5倍、ECは5倍の量の水を加えて混ぜた液を、pH計とECメーターで測ります(国総研 景観重要樹木の保全対策の手引き)。当社では、簡易な測定は携帯型のpH・EC計で自社で行い、詳しい分析が必要なときは専門の分析機関に依頼しています。
Q3. 樹木にとって、よいpHの目安はどのくらいですか?
A. 国総研の街路樹の倒伏対策の手引きは、pH(H2O)が5.6〜6.8を「良」、4.5〜5.5と6.9〜8.0を「可」、4.5未満と8.0を超えるものを「不良」としています。景観重要樹木の保全対策の手引きは、4.5〜8.0程度であれば問題がないとされている、としています。
Q4. ECの目安と、単位の読み替えを教えてください。
A. 国総研の街路樹の倒伏対策の手引きは、砂土で0.2〜0.5dS/m、その他の土で0.2〜1.0dS/mを「良」とし、それ以上を「不良」、0.2dS/m以下を不良ではないが養分の乏しい状態としています。1dS/m=1mS/cm=1,000μS/cmなので、μS/cmで表示する計器では、1.0dS/mは1,000μS/cmにあたります。
Q5. 都市の植栽地の土がアルカリ性になるのは、なぜですか?
A. 国総研の街路樹の倒伏対策の手引きは、まわりの路盤に再生コンクリート砕石が使われている場合や、工事でコンクリート塊が混じった土の場合に、土がアルカリ性を示すことがあるとしています。強いアルカリ性の土を改良しないまま植栽すると、根が十分に伸びずに枯れることがある、とも書かれています。
Q6. 葉の色が悪いとき、まず肥料を与えればよいですか?
A. 先に土を測ることをおすすめします。pHが大きく傾いていると、土に養分があっても根が吸いにくくなり、ECが高い土に肥料を足すと塩類がさらに濃くなって、根が水を吸いにくくなります。ECが低く、ほかの調査でも問題がなければ、施肥を考える手がかりになります。
出典・参考情報
- 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」国総研資料第1059号、2019年2月(p.1-55〜1-58 表-2.6・表-2.7、p.1-65)
- 国土技術政策総合研究所「景観重要樹木の保全対策の手引き」国総研資料第565号、2010年1月(p.121 表3-17、p.144 表3-23、p.239)
- 東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」令和3年度(p.79 表Ⅳ-1・4、p.81 表Ⅳ-1・5)
- 新潟県「新潟県における土づくりのすすめ方」平成17年2月(p.71〜72「酸性の改良」、p.97「塩類集積の改良」。農林水産省「都道府県施肥基準等」に掲載)
- ダイトウテクノグリーン株式会社 カタログ「ポータブル式 pH/EC(導電率)計」(ECの測定範囲と単位)
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