樹木診断で使われる「t/R=0.3」は、幹の半径に対して残っている健全な材の厚さの割合の目安です。1963年の Wagener の報告、マテック氏らの論文、東京都と国総研の基準を原典で確かめ、半径30cm・健全材12cmの計算例で、数字の意味と使い方を樹木医が読み解きます。
マテック博士の研究と VTA(Visual Tree Assessment)をたどる連載の第6回です。第3回で見たように、VTA は樹木の形と症状を読む方法で、症状から幹の中の傷みが疑われたときに、残っている材の厚さを測る段階へ進みます。そのとき日本の街路樹診断でもよく出てくるのが「t/R」という比です。レジ(Resi PD)の記事や、街路樹診断で何を見ているか(後編)でも短く触れてきました。今回は、この 0.3 という数字がどこから来て、何を意味し、何を意味しないのかを、原典と計算で確かめます。
先に答え
- t/R(残存壁厚÷半径)は、幹の中が腐朽や空洞になったとき、外側に残っている健全な材の厚さ(t)を、幹の半径(R)で割った比です。半径30cmの幹に健全材が12cm残っていれば、t/R は 0.4 です。
- 空洞が幹の中心にある円だと考えると、t/R=0.3 は空洞の半径が幹の半径の70%、面積で49%にあたります。東京都のマニュアルが「腐朽空洞部面積の割合が断面積の約50%以上」と言い換えているのはこのためです。
- 同じ水準の数字は、それより前の1963年に、米国森林局の報告で Wagener 氏が示しています。直径の70%が空洞なら強さはおよそ3分の1下がるとし、それを針葉樹の「最低安全基準」としましたが、本人が「研究に基づく限界ではない」と書いています。
- マテック(Mattheck)氏らは、折れた木と立っている木を調べた野外調査をもとに、1993年の論文で臨界の値を「t/R ~ 0.3」とし、同じ論文で「t/R<0.32 で破壊が起こる」とも書いています。この残存壁厚の基準をめぐっては、のちに批判と応答が交わされました。
- 東京都・国総研・景観重要樹木の手引きは、いずれも 0.3 を境に使いますが、t の取り方や区分は資料ごとに違います。どの資料も、この数値だけで判定を決めず、外観診断や樹木全体と合わせて判断するよう書いています。

t/R は、外側に残っている健全な材の厚さ(t)を幹の半径(R)で割った比。どちらも樹皮を含めない(東京都 街路樹診断等マニュアル p.57 の定義による。当社作成の図)
t/R とは──残っている健全材の厚さを、半径で割る
東京都建設局の「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」は、t/R 率を「各測定方向の半径に対して残っている健全材の厚さの割合」と定め、4方向それぞれで t÷R を出すとしています(p.57)。R も t も樹皮の部分を含めません。貫入抵抗測定器(当社ではレジ)は、針が進むときの抵抗から、健全な材と腐朽した材の境を読む機器です。マニュアルは、この機器が直接測っているのは健全材の厚みで、そこから t/R 率が出る、と説明しています(p.56)。
もうひとつよく使われるのが腐朽空洞率で、断面に占める腐朽・空洞の面積の割合です。レジの測定では、断面も腐朽の広がりもほぼ円だと仮定し、異常のあった長さの合計を測定した直径の合計で割って2乗します(p.57)。こちらは面積に直した参考値で、t/R の方が測った値に近い、という関係になります。
半径30cm・健全材12cmで計算してみる
半径30cm(直径60cm)の幹で、4方向とも外側に健全材が12cm残り、空洞が中心にある円だとします。
| 求めるもの | 式 | この例の値 |
|---|---|---|
| t/R | t÷R | 12÷30=0.40 |
| 空洞の半径 | R-t | 30-12=18cm(幹の半径の60%) |
| 腐朽空洞率 | (空洞の半径÷R)² | 0.6²=0.36(36%) |
| 東京都の式 | {(A+B)÷(a+b)}² | {(36+36)÷(60+60)}²=0.36 |
| t/R=0.3 になる厚さ | 0.3×R | 9.0cm(あと3.0cm) |
| t/R=0.32 になる厚さ | 0.32×R | 9.6cm(あと2.4cm) |
計算は当社。式と検算は社内の調査メモに残しています。

半径30cm・健全材12cm の計算例。空洞の半径は18cm、t/R は0.4、腐朽空洞率は36%。破線は t/R=0.3(健全材9.0cm)の位置(当社作成の図)
この 0.4 という値をどう読むかは、あとで日本の3つの資料に当てはめて見ます。先に、t/R と腐朽空洞率がどう対応しているかを表にしておきます。空洞が中心にある円の場合の、純粋な計算です。
| t/R | 空洞の半径÷幹の半径 | 腐朽空洞率(面積) |
|---|---|---|
| 0.5 | 0.5 | 25% |
| 0.4 | 0.6 | 36% |
| 0.35 | 0.65 | 約42% |
| 0.32 | 0.68 | 約46% |
| 0.3 | 0.7 | 49% |
| 0.2 | 0.8 | 64% |
腐朽空洞率=(1-t/R)²。当社の計算。

t/R と腐朽空洞率の換算(空洞が中心にある円の場合)。t/R 0.3 は面積で49%にあたる(当社の計算。当社作成の図)
0.3 の出発点──Wagener の「直径の70%」(1963年)
t/R という書き方が広まるより前に、同じ考え方を数字にした報告があります。米国森林局の Wagener 氏が1963年にまとめた、カリフォルニアのレクリエーション地での危険木の判断の手引きです。
Wagener 氏はまず、中空の円柱では圧縮の強さは直径の比の2乗で、曲げの強さは4乗で下がることを図で示し(p.4)、腐朽や空洞による幹の弱まりは、両方をあわせて「幹の直径と空洞の直径の3乗の比におおよそ近い」とまとめています(p.3)。直径の半分が空洞でも、空洞が中心にあって壁が一様なら、強さの低下は約12.5%にとどまる、という例も挙げています(0.5³=0.125)。
そのうえで、現場の経験として、針葉樹はほかの欠陥を伴わない心材腐朽であれば、強さの3分の1の低下、つまり樹皮の内側の直径の約70%の損失までは安全に大きな影響が無いとし、それを「欠陥木の最低安全基準」として、幹の直径ごとに必要な外側の健全材の厚さの表にしました(p.24〜25)。0.7³=0.343 で、ほぼ3分の1です。表の値を当社で割り算すると、直径のおよそ15%、半径で言えば t/R 0.3 にあたります(直径40インチで6.0インチなど。表は半インチ単位に丸めた値で、Wagener 氏自身は t/R という言葉を使っていません)。

空洞の直径の割合と強さの低下。面積(2乗)、Wagener の近似(3乗)、曲げの強さ(4乗)の3本。空洞の直径が70%のとき、それぞれ49%・34%・24%(Wagener 1963 の図2・図3の式をもとに当社が計算して描いた)
Wagener 氏は、この基準の性質もはっきり書いています。3分の1という限界は絶対ではなく、安全の余裕を含めて選んだ平均の値で、具体的な研究や記録に基づく限界ではない、そうしたデータがまだ無いからだ、と(p.25)。風に強くさらされる所や、一年中人のいる建物の近くでは、針葉樹にもう少し厳しい基準がよいこと、幹の形や枝のてこの働きが違う広葉樹には当てはめにくく、広葉樹では幹より主枝の状態の方が大事なことが多いことも、同じページにあります。生きた樹木の腐朽は水平にも垂直にも一様でないので、強さの式の当てはめは近似にすぎない、とも書いています(p.3・p.24)。

Wagener(1963)表2 の値を cm に直したもの。幹の直径が大きいほど必要な健全材は厚いが、比にするとほぼ t/R 0.3(直径の約15%)(当社が換算して作成)
マテック氏らの野外調査──0.3 と 0.32
t/R という比で樹木の危険度の目安を示したのが、カールスルーエの研究所のマテック氏らです。1993年、マテック氏とベトゲ(Bethge)氏は、幹の中の欠陥を音の伝わる速さで調べる機器の論文の中で、残っている壁の厚さが臨界の値を下回っていないかを確かめる必要があるとし、その値は「t/R ~ 0.3」で与えられる、と書きました。同じ段落で、樹冠が十分に茂り、風を受ける帆が大きい状態では、t/R=0.32 の樹木も折れうることが、多くの樹種を含む800本近くの野外調査で示された、とし、図の説明では「t/R<0.32 で破壊が起こる」としています(Journal of Arboriculture 19(6), p.377)。根拠に挙げているのは、同じ年のマテック氏・ベトゲ氏・エルプ(Erb)氏の論文と、マテック氏・ブレロア(Breloer)氏の本です。
1995年の本の章の要旨では、同じ調査を700本を超える調査とし、幹の半径の68〜70%が空洞や腐朽になると破壊が始まりうる、と書いています。半径の68%が空洞なら t/R は 0.32、70%なら 0.30 です。0.3 と 0.32 は、同じ調査から出た幅の両端として読めます。これは計算による私の整理です。本数は資料によって「800本近く」「700本を超える」と違い、原典の論文本文は当社では開けていません。

半径30cm の幹で、t/R 0.30(健全材9.0cm)と 0.32(健全材9.6cm)。差は6mm(当社作成の図)
この基準には批判もあります。ドイツのグルーバー(Gruber)氏は2008年、残存壁厚の規則を「支持できない破壊の基準」とする論文を出し、マテック氏とベトゲ氏が同じ年に応答し、グルーバー氏がさらに再反論しました(いずれも Arboricultural Journal 31巻)。当社はこの往復の論文の本文をまだ読めていないので、中身は第7回で、ほかの批判とあわせて双方の主張を並べて紹介します。ここでは、0.3 と 0.32 のどちらが正しいという話ではなく、マテック氏ら自身が「約0.3」と書き、調査の図では 0.32 を境に示している、という事実だけを押さえておきます。日本の行政の資料は、いずれも 0.3 を使っています。
米国の Kane 氏と Ryan 氏は2004年、腐朽や空洞のある19本の幹の断面で、強さの低下を見積もる4つの式を、実際の断面から計算した値と比べました。Wagener 氏の式は実際より小さく見積もる傾向があり、19本中3本で危険を見逃す側に分類しました。マテック氏とブレロア氏の t/R(いちばん薄い壁で計算し、0.3 を境にしたもの)は、見逃しは0本で、3本を危険側に分類しました。危険側に出たのは、小さな腐朽が中心から大きく外れて壁がとても薄くなっていた幹です。著者らは、どの式も危険度評価の道具のひとつとして使うべきだ、と結んでいます。
日本の資料での 0.3──東京都・国総研・景観重要樹木の手引き
日本の3つの資料の書き方を並べます。いずれも原本の該当ページで確かめました。
| 資料 | t の取り方 | 0.3 についての書き方 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 東京都建設局 令和3年度 街路樹診断等マニュアル | 4方向それぞれの ti÷Ri | 0.3 未満で倒木が発生する可能性が高くなる、面積で約50%以上(p.58)/折損の危険性が高い場合があるため注意を要する(p.66) | t/R は総合判定で考える要素、区分は腐朽空洞率の参考基準値(A 10%未満、B1 10〜30%未満、B2 30〜50%未満、C 50%以上) |
| 国総研 街路樹の倒伏対策の手引き 第2版(2019年) | 健全材の平均厚さ÷幹の半径(薄いと思われる位置を4か所以上) | 0.3 未満は「非常に高い危険性」(E)、腐朽・空洞が幹の中心を超えて広がる場合だけに使う(p.1-60〜1-61) | C 0.35〜0.5未満、D 0.3〜0.35未満、E 0.3未満 |
| 国総研 景観重要樹木の保全対策の手引き(2010年) | 健全材の平均厚さ÷幹の半径 | 0.3 未満は「不可」(p.148 表3-26) | 良 0.5以上、可 0.3〜0.5未満、不可 0.3未満 |

3つの資料の t/R の区分を同じ軸に並べたもの。どれも 0.3 が境だが、その上の区分と t の取り方は違う(各資料の該当ページをもとに当社作成)
国総研の手引きは、0.3 の根拠を情報コラムで説明しています。マテック博士の実態調査で、腐朽・空洞の半径が幹の半径の0.7(70%)を超えると、立っている樹木よりも折損する樹木が上回ることが確かめられ、0.7 を面積に直すと49%(約50%)になる、という説明です(p.1-61。引用元は邦訳『最新 樹木の危険度診断入門』)。同じコラムは、樹高がとても低い樹木や、幹の直径に対して樹冠が小さい樹木では、0.7 を超える空洞があっても倒れていない例があると書いています。東京都のマニュアルは、偏った腐朽空洞の t/R の説明に邦訳『樹木からのメッセージ』(1998年)を参考文献として挙げ、第Ⅲ章の参考文献には邦訳『最新 樹木の危険度診断入門』(日本語改訂版第2版、2020年)と国総研の手引きを挙げています。どの資料にも「VTA」という語は出てきませんが、マテック氏の著書と t/R の考え方は、このように日本の資料に取り入れられています。
先ほどの半径30cm・健全材12cm(t/R 0.4、腐朽空洞率36%)を当てはめると、東京都では t/R は 0.3 未満にあたらず、腐朽空洞率の参考基準値は B2 の範囲、国総研の表では健全材の厚さも腐朽・空洞割合も C、景観重要樹木の手引きでは「可」です。ただし、東京都のマニュアルは機器診断の結果だけから総合判定を出さず、外観診断と合わせるよう求めており(p.65)、国総研の手引きも、この基準値は単独で使わず、ほかの結果とあわせて総合的に判断するとしています(p.1-60)。同じ数字でも、樹勢、樹形、傾き、立地によって判断は変わります。
なお、面積の区分と t/R の区分は、同心円の計算でもぴったり重なりません。たとえば腐朽空洞率30%は t/R 約0.45、40%は約0.37 にあたります。2つの物差しは、それぞれ別に決められた区分で、互いの換算表ではありません。
偏った空洞と、t の取り方
上の表で目を引くのは、t の取り方の違いです。東京都は方向ごとの値、国総研と景観重要樹木の手引きは平均の厚さ、Wagener 氏の表も平均の厚さ、Kane 氏らがマテック氏の基準を当てはめたときは、いちばん薄い壁を使いました。空洞が中心にある円なら、どの取り方でも同じ値になります。差が出るのは、空洞が片側に寄っているときです。
説明のための仮の例です。半径30cm の幹に、先ほどと同じ半径18cm(面積36%)の空洞が、中心から東へ6cm ずれているとします。
| 測る方向 | 健全材の厚さ | t/R |
|---|---|---|
| 東(空洞が寄った側) | 6cm | 0.20 |
| 西 | 18cm | 0.60 |
| 北・南 | 約13cm | 約0.43 |
当社の計算(仮の例。実測ではない)。東京都の式で腐朽空洞率を出すと約34%で、実際の36%より少し小さく出ます。
同じ36%でも、東の壁の t/R は、空洞が中心にある場合の 0.40 の半分です。東京都のマニュアルは、偏った腐朽空洞について、いちばん薄い健全材の厚さを t、腐朽空洞部の中心からいちばん近い幹の表面までの距離を R とする考え方もあると紹介しつつ、そうすると測定半径で割るより t/R が大きくなり、危険性を低く評価できることに留意する必要がある、と注意しています(p.58)。この例では 6÷24=0.25 で、測定半径で割った 0.20 より大きくなります。また、国総研は健全材の厚さの基準を、腐朽・空洞が幹の中心を超えて広がっている場合だけに使うとしています。偏った空洞では、どの値をどの資料の物差しに当てるかを、所見に書いておく必要があります。

偏った空洞の計算例(仮の例)。面積は同じ36%でも、空洞の寄った側の t/R は0.20(当社作成の図)
0.3 は「折れる線」ではない──樹冠と、樹木全体
ここまでの資料を読み比べると、0.3 という数字の性格がはっきりしてきます。Wagener 氏は、データが無い中で安全の余裕を含めて選んだ実用の基準だとしました。マテック氏らは、折れた木と立っている木の調査から境を読み取り、樹冠を小さくすれば、ずっと小さい t/R でも風に耐えうることも書いています。国総研の手引きも、樹高が低い木、樹冠が小さい木では例外があるとし、樹冠の縮小などでリスクを小さくできると明記しています。0.3 を下回ったから必ず折れる、上回っていれば安心、という線ではありません。

同じ大きさの空洞がある幹でも、樹冠が大きく茂った木(左)と、樹冠を小さく保った木(右)では、風から受ける力が違う(イラストは当社作成)
空洞のある幹に出る症状は第4回・第5回で、この基準への批判は第7回で扱います。この回で押さえておきたいのは、t/R が幹の断面の一か所についての数字で、樹冠の大きさ、風の当たり方、根の状態、傾き、腐朽の種類は含んでいない、ということです。
当社の考え方
当社は、外観診断で樹形や症状を診たうえで、必要な樹木に、必要な本数だけ、レジ(Resi PD)やピカスで幹の中を診ています。東京都の街路樹診断では、カルテに4方向の t/R と腐朽空洞率を書き、t/R が 0.3 未満か腐朽空洞率が50%以上なら、腐朽の具合を所見に詳しく書きます。
原典を読み直して、数字を書くときに気をつけたい点が3つ見えました。ひとつは、どの資料のどの t の取り方で出した値かを、所見に書くこと。もうひとつは、空洞が偏っているときは、薄い側の値と、その方向を書くこと。そして、数字の上下だけで「伐る」「残す」を決めず、樹冠の大きさや立地、樹勢と合わせて、樹冠を小さくする、経過を見る、といった選択肢まで含めて考えることです。安全の確保と樹木を残す努力の両方を、数字の意味を分かったうえで考えていきたいと思います。
株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医が外観診断から機器診断、報告書の作成、その後の管理計画までを一貫して担当しています。ご依頼は、マンション管理組合様、学校施設、寺社の御神木など様々です。幹の中の傷みが心配な樹木がありましたら、樹木診断のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
次回は、VTA の限界と、ほかの方法との関係を取り上げます。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくあるご質問(t/R=0.3 について)
Q1. t/R とは何ですか?
A. 幹の中に腐朽や空洞があるとき、外側に残っている健全な材の厚さ(t)を、幹の半径(R)で割った比です。どちらも樹皮を含めません。半径30cmの幹に健全材が12cm残っていれば 0.4 です。
Q2. t/R=0.3 は、腐朽空洞率でいうと何%ですか?
A. 空洞が幹の中心にある円だと考えると、空洞の半径は幹の半径の70%で、面積は49%です。東京都のマニュアルは、これを腐朽空洞率の約50%以上と言い換えています。空洞が偏っている場合は、この換算は当てはまりません。
Q3. 0.3 という数字の根拠は何ですか?
A. 国総研の手引きは、マテック氏らが折れた木と立っている木を調べた実態調査を根拠に挙げています。それより前の1963年に、米国森林局の報告で Wagener 氏が、直径の約70%が空洞なら強さは約3分の1下がるとして針葉樹の最低安全基準を示しており、t/R に直すとほぼ 0.3 にあたります。Wagener 氏自身は、この基準は研究に基づく限界ではないと書いています。
Q4. 0.3 と 0.32 はどちらが正しいのですか?
A. マテック氏らは1993年の同じ論文で、臨界の値を「約0.3」とし、図では「0.32 未満で破壊が起こる」と示しています。この基準にはのちに批判と応答が交わされています。東京都・国総研の資料は 0.3 を使っています。
Q5. t/R が 0.3 を下回ったら、伐採が必要ですか?
A. 数値だけでは決まりません。東京都のマニュアルは外観診断と合わせて総合判定を出すよう求め、国総研の手引きも、樹冠の縮小などでリスクを小さくできる場合があるとしています。樹勢、樹形、立地と合わせて判断します。
Q6. 空洞が片側に寄っているときは、どう考えますか?
A. 同じ面積の空洞でも、寄った側の健全材は薄くなり、その方向の t/R は小さくなります。東京都のマニュアルは方向ごとに t/R を出し、偏った空洞での R の取り方によっては危険性を低く評価してしまうことに注意を促しています。
出典・参考情報
研究(いずれも2026年10月に確認)
・Wagener, W.W. (1963) Judging hazard from native trees in California recreational areas: a guide for professional foresters. U.S. Forest Service Research Paper PSW-P1. Pacific Southwest Forest and Range Experiment Station 中空の円柱の強さ(p.3〜4、図2・図3)、最低安全基準の表(p.24 表2)、基準の性質と広葉樹への当てはめ(p.25)
・Mattheck, C. & Bethge, K. (1993) Detection of decay in trees with the Metriguard Stress Wave Timer. Journal of Arboriculture 19(6): 374–378 t/R ~ 0.3、t/R=0.32、800本近くの野外調査(p.377)
・Mattheck, C., Bethge, K. & Erb, D. (1993) Versagenskriterien für Bäume. Allgemeine Forst- und Jagdzeitung 164(1): 9–12(Mattheck & Bethge 1993 の参考文献4。書誌で確認)/Mattheck, C., Bethge, K. & Erb, D. (1993) Failure criteria for trees. Arboricultural Journal 17(2): 201–209(書誌で確認)
・Mattheck, C., Bethge, K. & Albrecht, W. (1995) Failure modes of trees and related failure criteria. In: Coutts, M.P. & Grace, J. (eds) Wind and Trees. Cambridge University Press, pp.195–203(要旨で確認)
・Kane, B.C.P. & Ryan, H.D.P. (2004) The accuracy of formulas used to assess strength loss due to decay in trees. Journal of Arboriculture 30(6): 347–356
・Gruber, F. (2008) Untenable failure criteria for trees: I. The residual wall thickness rule. Arboricultural Journal 31(1): 5–18/Mattheck, C. & Bethge, K. (2008) Abridged response to the criticism of VTA-failure criteria by Franz Gruber. Arboricultural Journal 31(4): 273–276/Gruber, F. (2008) Reply to the response of Claus Mattheck and Klaus Bethge… Arboricultural Journal 31(4): 277–296(いずれも書誌で確認)
行政の資料
・東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」 腐朽空洞率は参考値(p.50)、形による差(p.52)、t/R 率と腐朽空洞率の計算(p.56〜57)、所見と t/R 0.3 の説明・偏った腐朽空洞(p.58)、総合判定(p.65〜66)、第Ⅲ章の参考文献(第Ⅶ章 参考資料 p.155)
・国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」(国総研資料 第1059号、2019年) Ⅱ 別冊 街路樹の点検・診断 p.1-60〜1-61(表-4.12、腐朽・空洞による危険性判断)
・国土技術政策総合研究所「景観重要樹木の保全対策の手引き」(国総研資料 第565号、2010年) p.148 表3-26、p.149(3-8 総合評価)
関連記事
t/R 率と機器診断
・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(後編) 機器診断のt/R率と腐朽空洞率、総合判定、処置、フォローアップ診断
・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(前編) 東京都の街路樹診断等マニュアルの流れで、樹木点検と外観診断の18項目を解説
・レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か。樹木医がレジ(Resi PD)で幹の中を「針」で診る機器診断を、一般の方向けに解説します
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診断の記録
・【ツリーケア最前線】樹木医が語るレジ(Resi PD)診断とロープワークの統合 相模原市での樹木診断レポート
・区保存樹木イチョウ 樹木医・高所外観診断 東京都
サービス
※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。

































