株式会社トシ・ランドスケープが樹木診断で使っているレジ(Resi PD)、ピカス、トロニックは、いずれもドイツのIMLグループの機器です。1985年に創業したIML社の成り立ちと、2つの拠点がつくる樹木診断機器の全体像を、メーカーの公開資料をもとに樹木医がまとめました。
機器の仕組みや波形の読み方は、これまでのブログでも書かせていただいてきました。ただ、その機器をつくっている会社そのものを、まとめてご紹介したことはありませんでした。今回を第1回として、次回からはIML社の樹木診断機器をひとつずつ、メーカーのカタログや取扱説明書を読み込みながら取り上げていきます。
先に答え
- IML社は、1985年にErich Hunger(エーリッヒ・フンガー)氏がドイツ・ハイデルベルク大学のテクノロジーパークで創業した、木材と樹木の検査機器メーカーです。本社は1993年からヴィースロッホにあります。
- 樹木診断の機器は、2つの拠点でつくられています。ヴィースロッホのIML社が穿孔抵抗測定器のIML-RESI(レジ)、フラクトメーター、マイクロハンマーを、ロストックのIML Electronic社がPiCUS(ピカス)の各機器を担当しています。
- ピカスは、ロストックのargus electronic社が開発した機器です。2022年からはIMLグループが事業を引き継ぎ、IML Electronic社として製造・販売しています。
- 「レジストグラフ(RESISTOGRAPH®)」はRINNTECH社の登録商標で、IML社の製品名は「IML-RESI」です。当社では「レジ(Resi PD)」と表記しています。
- どの機器も、外観診断で立てた仮説を確かめるための道具です。機器の結果だけで樹木の扱いを決めることはありません。
大学のテクノロジーパークから始まった会社──IML社の成り立ち
IML社が公開している沿革によると、会社の始まりは1985年、ハイデルベルク大学のテクノロジーパークでした。当初は研究者との共同作業が中心で、眼科の診断機器と、木材を調べる機器の試作から出発しています。
木材を調べる試作機のひとつが、細い針を材に送り込み、その抵抗を記録する穿孔抵抗測定の装置でした。この測定方法は1985年にKamm氏とVoss氏が特許を出願しており(特許番号 DE3501841A1)、IML社はKamm氏からライセンスを受けて開発を進めたとしています。1992年には「Densitomat(デンシトマット)」の名前で量産を始め、同社はこれを、商業的に量産された穿孔抵抗測定器としては世界で最初のものだったと説明しています。
沿革には、針の送り出しについての記述もあります。針は軸の直径が1.5mm、先端が3mm。これだけ細い針を、ぶれないように支えながら、できるだけ摩擦なく回転させなければなりません。IML社は初期の機器から伸縮式(テレスコープ式)の針ガイドを使っており、これを同社の歴史のなかでも大きな技術的課題のひとつだったと振り返っています。
当社でも2026年9月、Resi PD500で送りモーターの過負荷エラーが出て点検に出したところ、原因は針でも設定でもなく、このテレスコープの中にある部品の曲がりでした(樹木診断機器Resi PD500の「Overload feed motor」エラー)。細い針をまっすぐ送り出す仕組みがこの機器の要であることは、修理の経緯からもよく分かりました。
同じ1992年には、カールスルーエ工科大学のClaus Mattheck(クラウス・マテック)教授との協力も始まっています。マテック教授は、樹木の外観に現れるサインから内部の欠陥を読み取るVTA(Visual Tree Assessment)を考案した研究者です。外観から仮説を立て、必要なときに機器で確かめるという順番は、樹木診断機器 IML社製 レジ(Resi PD)についてでも書かせていただいたとおり、当社の診断の基本でもあります。
1993年、IML社は本社をハイデルベルクの南にあるヴィースロッホへ移しました。その頃には、欧州、米国、カナダの販売パートナーとの協力も始まっています。1997年には米国、2002年にはオーストラリアに拠点を置いています。2000年代の初めには通信業界が木製の電柱の点検に穿孔抵抗測定を使うようになり、機器の使い方を教える講習が始まりました。これが現在のIMLセミナーにつながっているそうです。
現在の主力であるIML-RESI PowerDrill(当社のレジ(Resi PD)はこのシリーズです)は、測定データを電子的に記録し、あとから解析できるようにした機器です。針の回転抵抗に加えて、針を押し込む力(送り力)も同時に測ります。この送り力の測定はIML社が特許を持つ技術とされています。
2012年には、ヴィースロッホ市内の17,000平方メートルの敷地に、5,500平方メートルの社屋と工場を構えました。2020年以降は3,000平方メートルの倉庫と、屋外の実習場を備えた180平方メートルのセミナーセンターも加わっています。従業員は約60名。創業者のErich Hunger氏に、2004年からSebastian Hunger氏、2012年からFabian Hunger氏が加わった家族経営の会社です。木材の検査機器のほかに、歯科用の機器と精密部品の製造も手がけています。
もうひとつのIML──ピカスをつくるロストックのIML Electronic社
ピカス(PiCUS)は、もともとIML社の製品ではありませんでした。開発したのは、バルト海に面した北ドイツの町ロストックにあるargus electronic(アーガス・エレクトロニック)社です。IML Electronic社の沿革によれば、同社は1994年にRolf Pohlmann氏が創業し、樹木の安全診断のほか、大気の計測や農業用の計量技術の機器を開発してきました。
ピカスの歩みについては、ポーランド森林研究所の研究者による解説に、1998年に最初の幹の断面画像が得られ、1999年にドイツ国内で販売が始まったと書かれています。
argus electronic社とIML社は、同じ分野の機器メーカーとして以前から協力することがあったそうです。2021年にargus electronic社の事業承継が課題になった際、両社で話し合い、IML社が事業を引き継ぐことになりました。Sebastian Hunger氏とFabian Hunger氏が新たにIML Electronic社(正式名称は IML Instrumenta Mechanik Labor Electronic GmbH)を設立し、2022年からargus electronic社の製品をすべて引き継いでいます。本社はロストックのまま、従業員もそのまま残ったと沿革にあります。
このため、少し前の資料や報告書では、ピカスが「アーガス社製」と書かれていることがあります。間違いではなく、その時点の社名です。現在の製造・販売元はIML Electronic社で、当社が使っているピカスとトロニックも、レジと同じIMLグループの機器ということになります。

IMLグループの樹木診断機器──どの拠点が、何を測る機器をつくっているか
両社の製品ページ(IML社、IML Electronic社)に、2026年10月時点で掲載されている樹木診断の機器を、拠点ごとに整理しました。
| 拠点 | 製品 | 何を測る機器か |
|---|---|---|
| ヴィースロッホ | ||
| 穿孔できる深さは機種により200〜1,000mm | IML-RESI Fシリーズ | 測定の曲線をワックス紙に記録する穿孔抵抗測定器。 |
| 穿孔できる深さは300〜500mm | IML-RESI MD300 | 曲線を記録しない機械式の穿孔器具。 |
| 手応えと300mmの目盛りで内部を確かめる | IML Micro Hammer(マイクロハンマー) | 衝撃が樹木の中を伝わる時間 | IML Fractometer(フラクトメーター)I・II | 成長錐で抜き取った木材の芯(コア)の強さ | ロストック |
| (IML Electronic社) | PiCUS Sonic Tomograph(ピカス) | 音波の伝わる速さから描く、幹の断面画像 | PiCUS TreeTronic(トロニック) | 電気抵抗の分布から描く、幹の断面画像 | PiCUS Calliper(キャリパー) | 断面画像の計算に使う、測定点の位置 | PiCUS TreeQinetic(ツリーキネティック) | ロープで荷重をかけたときの樹木の反応(引っ張り試験) | PiCUS TreeMotion(ツリーモーション) | 自然の風を受けたときの樹木の反応。 |
| 風速と風向を測る PiCUS Wind Measurement System と組み合わせて使える | PiCUS Tension(テンション) | 土壌の水分の状態(水分張力、体積含水率) |
このほか、測定データを管理・解析するソフトウェアとクラウドのサービス、機器の点検と校正、使い方を学ぶセミナーが用意されています。
一覧にしてみると、測る対象が少しずつ広がっていく並びになっていることに気づきます。フラクトメーターは幹から抜き取った小さな木材の試料、マイクロハンマーは2点のあいだ、レジは針が通った1本の線、ピカスとトロニックは幹の断面という面、そしてツリーキネティックとツリーモーションは、根から梢までを含めた樹木全体の動きを対象にしています。テンションは樹木そのものではなく、根のまわりの土の水分を測ります。この整理はメーカーが示しているものではなく、現場で機器を使い分けている私の見方です。ただ、点、線、面、樹木全体、そして土の中という順に並べると、それぞれの機器が何に答え、何には答えられないのかが分かりやすくなります。

当社が現場で使っているのは、このうちレジ(Resi PD)、ピカス、トロニックです。ピカスの測定には測定点の位置を正確に入力する必要があるため、キャリパー(PiCUS Calliper)もあわせて保有しています。それ以外の製品は、メーカーの資料と公表されている研究をもとにご紹介します。
「レジ」と「レジストグラフ」は、別のメーカーの製品です
日本の樹木診断の現場では、穿孔抵抗測定器をまとめて「レジストグラフ」と呼ぶことがよくあります。ただ、RESISTOGRAPH®はドイツのRINNTECH社の登録商標で、IML社の製品名は「IML-RESI」です。どちらも針の抵抗を記録する機器ですが、つくっているメーカーが違います。
当社では両者を取り違えないよう、「レジ(Resi PD)」と表記しています。東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」でも、機器診断の機器として「貫入抵抗測定器(商品名:レジ)」の特性が解説されています(51〜52ページ)。レジの仕組みを一般の方向けにまとめた記事は、レジ(Resi PD)とは何か。樹木医が幹の中を「針」で診る機器診断を、一般の方向けに解説しますをご覧いただけます。
日本ではどこで扱われているか──当社が購入した代理店
当社のレジ(Resi PD)は、エフティーエス株式会社様から購入しました。同社はIML社の正規代理店で、点検や修理でもお世話になっています。ピカスとトロニック、キャリパーは、株式会社ワイ・システムズ国際様から購入しました。同社は取り扱いブランドのひとつとして、ピカスを樹木断層画像診断装置の名称で案内されています。
そのほかの製品が国内でどのように扱われているかは、各回の記事で、確認できた範囲をお伝えしていきます。
機器を持つことより、読めること──当社がIMLの機器を使う順番
当社の機器診断は、木槌で叩き、根元を確かめる外観診断から始まります。内部の異常が疑われた樹木について、まずピカスとトロニックで断面全体を画像にし、気になる範囲に絞ってレジを通します。面で当たりをつけ、線で確かめるという順番です。詳しくはピカス(PiCUS) 樹木診断を非破壊診断×微破壊診断で、樹木診断を世界水準へにまとめております。


機器から出てくるのは、画像と波形と数字です。それを樹木の状態に置き換えて読むには、測った結果と実際の断面を突き合わせる経験が欠かせません。同じ1本のサクラをピカス、アーボソニック3D、レジで測り、その日のうちに伐採して断面と照合した樹木診断機器比較研修会や、レジで診断した街路樹が後日伐採された際のエンジュの答え合わせは、そのための機会でした。山形ではピカスとレジによる街路樹の診断検証を、山梨県都留市の西涼寺様では霊木ケヤキの樹木診断を、IMLの機器を組み合わせて行っています。
機器が出すのは判断の材料であって、答えそのものではありません。当社の実践手法GREEN MANAGEMENTに掲げる「科学的な知見(アーボリカルチャー)と現場経験の融合」は、この読み解きの部分を指しています。数値が出たからといって、すぐに伐採の話にはいたしません。安全の確保と、樹木を残す努力の両方から考えます。
株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医が外観診断から機器診断、報告書の作成、その後の管理計画までを一貫して担当しています。ご依頼は、マンション管理組合様、学校施設、寺社の御神木など様々です。樹木の内部が気になる、剪定の前に一度診ておきたいといったご相談は、樹木診断のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからお声がけをお待ちしています。
この連載で取り上げる製品
次回からは、製品をひとつずつ取り上げます。メーカーのカタログと取扱説明書に書かれている仕様を確かめ、保有している機器については現場での使い方もあわせてお伝えします。
- 第2回 IML-RESI PowerDrill(PDシリーズ)──レジの機種とオプション
- 第3回 IML-RESI FシリーズとMD300──記録紙式と機械式のレジ
- 第4回 PiCUS Sonic Tomograph──ピカス
- 第5回 PiCUS TreeTronic──トロニック
- 第6回 PiCUS Calliper──キャリパー
- 第7回 PiCUS TreeQinetic──引っ張り試験
- 第8回 PiCUS TreeMotion──風による揺れの測定
- 第9回 PiCUS Tension──土壌の水分
- 第10回 IML Micro Hammer──マイクロハンマー
- 第11回 IML Fractometer──フラクトメーター
- 第12回 ソフトウェアとクラウド
- 第13回 点検・校正とセミナー、連載のまとめ
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくあるご質問(IML社と樹木診断機器について)
Q1. IML社とはどんな会社ですか?
A. 1985年にErich Hunger氏がドイツで創業した、木材と樹木の検査機器メーカーです。本社はヴィースロッホにあり、穿孔抵抗測定器のIML-RESIシリーズを主力としています。メーカーの沿革によると従業員は約60名で、米国とオーストラリアにも拠点があります。
Q2. レジ(Resi PD)とピカスは、同じ会社の製品ですか?
A. 同じIMLグループの製品ですが、つくっている拠点が違います。レジ(IML-RESI PowerDrill)はヴィースロッホのIML社、ピカス(PiCUS Sonic Tomograph)とトロニック(PiCUS TreeTronic)はロストックのIML Electronic社の製品です。
Q3. ピカスは「アーガス社製」と聞いたことがあります。違うのですか?
A. ピカスを開発したのは、ロストックのargus electronic(アーガス・エレクトロニック)社です。2022年からはIMLグループのIML Electronic社が事業を引き継ぎ、製造・販売しています。古い資料に「アーガス社製」とあるのは、当時の社名です。
Q4. レジストグラフとレジ(Resi PD)は同じ機器ですか?
A. どちらも穿孔抵抗を測る機器ですが、別のメーカーの製品です。RESISTOGRAPH®はドイツのRINNTECH社の登録商標で、当社が使っているのはIML社のIML-RESI PowerDrillです。区別のため、当社では「レジ(Resi PD)」と表記しています。
Q5. IML社の樹木診断機器には、どんな種類がありますか?
A. 針の抵抗を測るIML-RESIシリーズ、音波で断面を描くピカス、電気抵抗で断面を描くトロニック、引っ張り試験のツリーキネティック、風による揺れを測るツリーモーション、衝撃の伝わる時間を測るマイクロハンマー、抜き取ったコアの強さを測るフラクトメーター、土壌の水分を測るテンションなどがあります。
Q6. IML社の機器は、日本でも購入できますか?
A. 購入できます。当社はレジ(Resi PD)をIML社の正規代理店であるエフティーエス株式会社から、ピカス、トロニック、キャリパーを株式会社ワイ・システムズ国際から購入しました。そのほかの製品の取扱いは、各社へのお問い合わせが確実です。
Q7. 機器診断の結果だけで、伐採するかどうかが決まりますか?
A. 決まりません。東京都建設局の「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」は、外観診断の判定と機器診断の結果をあわせて総合的に判定するとしています。当社も、樹勢、根元の状態、立地、これまでの管理履歴を重ねて判断します。
出典・参考情報
メーカーの資料(いずれも2026年10月に閲覧)
・IML「Company history」(英語) 創業、穿孔抵抗測定器の開発、ヴィースロッホへの移転、PowerDrillの開発、現在の体制
・IML Electronic「Company history of IML Electronic」(英語) argus electronic社の創業と、IML Electronic社による事業の引き継ぎ
・IML Electronic「argus electronic becomes IML Electronic」(英語)
・IML「Wood testing Systems」製品一覧(英語)
・IML「IML-RESI PowerDrill」製品ページ(英語)
・IML Electronic「Wood testing Systems」製品一覧(英語)
・RINNTECH「RESISTOGRAPH® Registered Trademark」(ドイツ語・英語)
国内の取扱先
・エフティーエス株式会社「木材貫入抵抗測定機 RESI PD-Series」
・株式会社ワイ・システムズ国際「ピカス(PICUS)」
制度・研究
・東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」 貫入抵抗測定器(商品名:レジ)の特性(51〜52ページ)、総合判定(64〜65ページ)
・Chomicz, E. (2010) Bezinwazyjne diagnozowanie kondycji drzew zabytkowych z zastosowaniem tomografów PiCUS. Kurier Konserwatorski 8(PDF・ポーランド語)
樹木診断機器(ピカス・レジ・アーボソニック3D)の記事
機器の解説・導入・研修
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サービス
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※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。

























