私たち株式会社トシ・ランドスケープはこの度、ドイツIML社製の樹木診断機器 「PiCUS(ピカス)」 を導入いたしました。
これまで弊社では、同社製の レジ(Resi PD) を用いた診断(微破壊検査)を実施してきましたが、今回PiCUSの導入により、非破壊診断の領域でも、幹の断面を画像で確かめられるようになりました。
先に答え
- PiCUSはドイツIML社製の樹木診断機器で、当社は音波トモグラフィと電気抵抗トモグラフィの2機種を導入しました。
- 音波は、健全材では速く伝わり、腐朽や空洞があると速度が低下します。この差から樹木断面の健全度をカラーマップで描きます。
- 電気抵抗の測定では、活動的な腐朽か乾燥した空洞かといった性状まで評価できます。
- PiCUSで問題箇所を絞り、必要最小限の穿孔でレジ(Resi PD)による確定診断を行います。御神木などでは、まず傷つけない診断が選べます。
デモンストレーションと交流会を開催しました
本導入に際し、徳島県にある正規代理店より専門講師をお招きし、PiCUS(ピカス)のデモンストレーションを実施しました。さらに、関東近県でPiCUS(ピカス)を所有されている樹木医の方々、学生の皆さまにもご参加いただき、弊社主催の交流会を開催しました。技術の研鑽と情報共有、そして「樹木医」としての使命を再確認する、熱気あふれる一日となりました。

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今回導入したPiCUSは2機種です
今回導入したのは、以下の2機種です。
PiCUS Sonic Tomograph(音波トモグラフィ)
これらは、経験や勘、打音検査など主観に頼りがちだった樹木内部の評価を、客観的データとして可視化するためのツールです。
- トロニックの本体
- 幹に取り付けたトロニック(上)とピカス(下)
PiCUS Sonic Tomograph|“樹木のCTスキャン”とも言える音波診断
樹木の周囲に複数のセンサーを設置し、ハンマーで叩いて生じる音波の伝達速度を測定します。健全材では音は速く伝わり、腐朽や空洞があると音は回り道をしたり減衰したりするため、速度が低下します。
この速度差を解析し、樹木断面の健全度をカラーマップ(トモグラム)として描き出すのが本機の特長です。外見からは分からない内部の腐朽範囲や空洞位置を、より明瞭に把握できます。
- 音波トモグラフの測定画面
- 幹のセンサーと画面の断面画像
- 音波(左)と電気抵抗(右)の断面画像
PiCUS TreeTronic|音波だけでは見えにくい“性状”を電気抵抗で読む
Sonic Tomographが主に「構造(硬さ)」を見るのに対し、TreeTronicは電気抵抗を測定します。
木材の電気抵抗は、水分含有量やイオン濃度、細胞構造などによって変化します。一般的に、腐朽菌が活動している湿った腐朽部は電気が流れやすく(低抵抗)、乾燥した空洞や健全木部は流れにくい(高抵抗)という特性があります。
この解析により、音波だけでは判別しづらい、たとえば 「活動的な腐朽」なのか「乾燥した空洞」なのか といった、より踏み込んだ性状評価が可能になります。
レジ(Resi PD)との違い|“非破壊”と“微破壊”の役割分担
弊社が従来より運用している レジ(Resi PD) は、極細ドリルで穿孔し、その抵抗値から材の硬さの変化を読み取る機器です。分類としては「微破壊」検査ですが、精度が高く、腐朽の進行度をピンポイントで数値化できる強みがあります。
PiCUS×レジ|診断精度を高める「両輪」のアプローチ
PiCUS(ピカス)とレジを組み合わせることで、診断の精度と説明責任は大きく向上します。運用イメージは次の通りです。
全体像の把握(PiCUS)
非破壊で樹木断面全体のトモグラムを作成し、問題箇所(疑わしいエリア)を特定します。
確定診断(レジ)
特定箇所に対し、必要最小限の範囲で穿孔調査を行い、健全材の厚みを測ります。
データの補完
PiCUS(ピカス)の画像データとレジの測定値を突き合わせることで、誤診リスクを抑え、より確度の高い診断につなげます。
- 同じ木にピカス・トロニック・レジの機材
- 境内の樹木での測定
- レジ(Resi PD)の本体
- ピカスで測った木にレジを通す
- 釘にセンサーを取り付ける
御神木・天然記念物だからこそ、「まず傷つけない」選択肢を
神社の御神木や天然記念物など、貴重な樹木では「診断のために傷をつける」こと自体が憚られるケースが少なくありません。しかし一方で、倒木などの危険性を放置することもできません。
ここで真価を発揮するのが、PiCUS(ピカス)による非破壊診断です。
まずは細い釘を浅く打つだけで内部構造をスキャニングし、健全性が確認できれば、無用な穿孔調査(レジや成長錐など)を避けることができます。
万が一、重大な欠陥が疑われる場合にのみ、管理者様・所有者様と協議の上、必要最小限の範囲で精密検査へ移行する。
この「まず傷つけない」という順序を選べることは、長い年月を生きてきた樹木への最大の敬意であり、樹木医としての誠実な態度だと私たちは考えます。
データ共有と科学的検証の時代へ。伝統技術と科学を融合して
今回の機器導入と交流会を通じて、樹木管理は「個の技術」から「データの共有と科学的検証」へと、確実に時代がシフトしていることを実感しました。
私たちは、伝統的な造園技術と最新の科学的知見を融合させ、一本一本の樹木が持つ固有の歴史を読み解きながら、最適な処置を提案してまいります。
よくある質問
Q1. PiCUS(ピカス)とは何ですか。
ドイツIML社製の樹木診断機器です。当社は、音波トモグラフィのPiCUS Sonic Tomographと、電気抵抗トモグラフィのPiCUS TreeTronicの2機種を導入しました。経験や勘、打音検査など主観に頼りがちだった樹木内部の評価を、客観的データとして可視化するためのツールです。
Q2. 音波トモグラフィでは何が分かりますか。
樹木の周囲に複数のセンサーを設置し、ハンマーで叩いて生じる音波の伝達速度を測定します。健全材では音が速く伝わり、腐朽や空洞があると速度が低下します。この差を解析して、樹木断面の健全度をカラーマップ(トモグラム)で描き、内部の腐朽範囲や空洞位置を把握します。
Q3. 電気抵抗トモグラフィは、音波と何が違うのですか。
音波が主に構造(硬さ)を見るのに対し、電気抵抗を測定します。腐朽菌が活動している湿った腐朽部は電気が流れやすく、乾燥した空洞や健全木部は流れにくいという特性があります。このため、活動的な腐朽なのか乾燥した空洞なのかといった性状の評価が可能になります。
Q4. PiCUSとレジ(Resi PD)は、どのように使い分けるのですか。
まずPiCUSで非破壊のまま樹木断面全体のトモグラムを作り、疑わしいエリアを特定します。次に、その箇所だけをレジで必要最小限の範囲で穿孔し、健全材の厚みを測ります。両者のデータを突き合わせることで、誤診リスクを抑え、確度の高い診断につなげます。
Q5. 御神木や天然記念物は、傷つけずに診断できますか。
診断のために傷をつけること自体が憚られる樹木では、まずPiCUSによる非破壊診断を選べます。細い釘を浅く打つだけで内部構造をスキャンでき、健全性が確認できれば無用な穿孔調査を避けられます。重大な欠陥が疑われる場合のみ、所有者様と協議のうえで精密検査へ移ります。
お忙しい年度末の時期にお集まりいただきました皆様、誠にありがとうございました。
- デモンストレーションの参加者
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
スタッフ一同
※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。
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