樹木診断機器Resi PD500の「Overload feed motor」エラー 原因は針でも設定でもなく、テレスコープ内のサポーターの曲がりでした

樹木診断で使っている穿孔抵抗測定器Resi PD500(レジ)の測定中に「Overload feed motor(送りモーター過負荷)」というエラーが2回続けて表示され、その日のうちに機器を止めました。代理店の点検でわかった原因と、IML社の公式資料で裏づけた再発防止策を、樹木医の立場で記録しておきます。

結論を先に書きます。原因は針の摩耗でも設定でもなく、テレスコープ(針を支える伸縮式のガイド)の内部で針を支えている「サポーター」が曲がっていたことでした。使い方に問題はなく、使用回数による経年劣化とのことです。同じ機器を使う方の参考になればと思い、経緯を順に書きます。

 

測定21回目と22回目で止まった――「Overload feed motor」は故障の合図ではありません

2026年9月上旬、診断の現場でResi PD500の画面に「Overload feed motor! Reduce feed speed or check if needle is worn.」(送りモーターが過負荷です。送り速度を下げるか、針の摩耗を確認してください)と出ました。OKを押して測り直すと、今度は「Overload feed motor! Check if needle is worn.」。2回続けて、針が途中で戻ってきました。振り返ると、その少し前から深さ31cm付近で測定値が乱れ、送り速度を落としても35cm付近で止まる症状があり、動作音にも機械的な異音が混じっていました。


レジは、直径1.5mmの細い針(先端は3.0mm)を一定の速さで幹に押し込みながら回転させ、押し込む力(貫入抵抗)と回す力(穿孔抵抗)を記録する機器です。針を前に送る「送りモーター」と、針を回す「回転モーター」の2つが働いています。

IML社の公式マニュアル(2024年12月版)の「4.5 Making a Measurement」には、測定が中断される条件として「the feed motor is overloaded(送りモーターの過負荷)」が明記され、中断すると針は自動で後退すると書かれています。つまりこの表示は、モーターとギアを守るために装置が自分で測定を止めた合図であって、壊れたという通知ではありません。ただし、途中で止まった測定は途中までの曲線しか残りません。私はこの2本のデータを診断には使わないと決め、その日は機器を止めました。

 

最初に疑ったのは針と設定、そしてパッキンでした

過負荷の原因として、まず疑うのは針です。IML社は、針1本で可能な穿孔回数を用途にもよるがおおむね100〜150回とし、摩耗した針を使い続けると測定が不正確になるだけでなく装置の過負荷につながる、と説明しています。次に疑うのは送り速度と回転数の組み合わせです。硬い樹木で送りが速く回転が遅いと、1回転あたりの切りくずが厚くなって負荷が上がります。Resi PD500で6樹種を測った2024年の論文(Gendvilas ほか, Forests 15(4):579)でも、高密度材で「低回転・高送り」の組み合わせが過負荷を起こすことが確かめられています。

ただ今回は、送り速度を落としても症状が消えませんでした。そこで、取扱説明書で利用者側の作業として手順が示されている範囲でテレスコープを取り外して確認したところ、内部のパッキンが切れていました。正直に書くと、この時点で私は「これが原因だろう」と考えていました。木くずや水分が入って摺動抵抗が増えたのだ、と。ここで自分たちで手を入れるのはやめ、代理店に点検を依頼しました。

 

代理店の点検でわかった原因――テレスコープ内のサポーターの曲がり

点検の結果は、私の見立てとは違っていました。原因は、テレスコープの内部で針を支えている「サポーター」にありました。針が出ていくにつれて縮んでいく構造の部品で、棒同士が連結する部分の棒が曲がり、縮むときに正常に連結しづらくなっていた。そのために稼働時に通常とは異なる負荷がかかり、オーバーロードが発生していたと考えられる、という説明でした。

写真を並べると違いは一目でわかります。正常品は3枚の支持板が平行に揃っていますが、故障品は板が傾き、縮む途中で端の板が引っかかっています。IML社はこの部分を含むテレスコープを「完全なニードルガイド付きの交換式テレスコープ」として一体で供給しているため、修理はテレスコープをアッセンブリーごと交換する形になり、私が見つけたパッキンも同時に新品になりました。パッキンの損傷は、主因ではなく随伴的なものだったことになります。

曲がりの原因についても教えていただきました。テレスコープが正常に出てこない状態で無理に引っ張ると、サポーターが曲がることがあるそうです。IML社のFAQにも、テレスコープを扱うときは針がテレスコープ内で噛み込まないよう手で導き、送りユニットは「ゆっくり」前進させるよう書かれています。

 

「使い方に問題はなく、使用回数による経年劣化」という結論をどう受け止めるか

代理店からは、弊社のレジの使い方やメンテナンスに問題はなく、使用回数による経年劣化だったとの見解をいただきました。ほっとした半面、経年劣化ということは、同じことがいつか別の1台にも起こるということです。弊社ではResi PDを複数台運用し、マンションの植栽、寺社の御神木、学校のサクラやクスノキなど、年間を通じて機器診断に使っています。消耗する部品があることを前提に、止める基準と点検の周期を先に決めておく方が、現場で慌てずに済みます。

IML社の公式マニュアルは、購入後1年以内に初回の点検、その後は年1回の点検をメーカーまたは認定サービスで受けるよう推奨しています。本体を開けてよいのもメーカーと認定サービスだけで、それ以外の者が開けると保証が失効すると明記されています。針・テレスコープ・チャックの交換は利用者の作業として手順が用意されていますが、そこから先は預ける。この線引きを社内で改めて共有しました。

 

今後の使用ルール――代理店の助言とIML公式資料を照らし合わせて

今回の点検結果とIML社の一次資料を突き合わせ、弊社のResi PDの使用ルールを次のように定めました。

  • テレスコープが正常に出ないときは、引っ張らない。そのまま修理に出します(代理店の助言。IML社FAQも「手で導き、噛み込みを避ける」としています)。
  • PD500はテレスコープを最後まで押し込む。PD500はテレスコープの押し込みがややシビアな構造で、下方向へ下がる際に線が見えなくなる位置まで完全に押し込みます。IML社の交換手順でも、しっかり押し込んで支持部にラッチが掛かったことを確認し、線を目印にするとされています。
  • 針は100〜150穿孔を目安に交換し、硬い樹木では早める。摩耗した針は装置の過負荷につながります。
  • 硬い樹木では送り速度を落とし、回転数は2500~5000rpmを基本に上げる方向で調整する。マニュアルは樹木診断の回転数を一般に2500rpmとし、簡易手順書は硬材の送りをStage 2(50cm/min)としています。
  • 自動針後退は5〜10cm。長すぎると、針が折れたときに針とテレスコープを傷めます。
  • エラーで止まった測定データは診断に使わない。原因を取り除いてから測り直します。
  • 年1回、メーカー点検推奨。本体は開けない。

 

機器を止める判断が、診断の信頼を守ります

レジの強みは、回転抵抗貫入抵抗の2本の曲線を重ねて読めることにあります。IML社も、正確な評価には両方の曲線を関連づけて解釈することが欠かせないとしています。装置の内部で余計な摩擦が生じていれば、貫入抵抗の曲線が本来より高く出て、腐朽や空洞の判読を誤らせかねません。

樹木診断は、外観診断で仮説を立て、レジやピカス(音響トモグラフ)、アーボソニック3Dで確かめ、総合して判断する仕事です。機器は道具ですが、道具の状態を疑える人間が使ってはじめて、数字に意味が生まれます。代理店の皆さまには、迅速な点検と丁寧な説明をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊

 

よくある質問(Q&A)――Resi PDの「Overload feed motor」エラーについて
※あくまで弊社の現場経験による参考としてください。異常を感じた際にはすぐにメーカーや代理店にご相談ください。

Q1. Resi PDの「Overload feed motor」とはどういう意味ですか?

A. 針を前に送る「送りモーター」の負荷が許容値を超えたため、装置が測定を中断して針を後退させたという表示です。IML社の公式マニュアル(4.5節)に測定中断の条件として明記された保護動作で、故障の通知ではありません。

Q2. このエラーが出たら、機器は故障していますか?

A. 表示そのものは保護動作です。ただし、同じ条件で繰り返し出る、送り速度を下げても消えない、異音がする、といった場合は装置側の不具合が疑われます。弊社のResi PD500では、テレスコープ内のサポーターの曲がりが原因でした。

Q3. エラーが出たとき、現場で最初に何を確認すればよいですか?

A. 順番は「針→設定と位置→装置」です。針を新品にして同じ場所で測り直し、解消しなければ送り速度を1段下げるか回転数を上げ、節や硬い部分を避けます。それでも続くなら装置側を疑って使用を止め、代理店やメーカーに点検を依頼します。

Q4. レジの針(ニードル)は何回くらいで交換しますか?

A. IML社は、用途にもよるが針1本あたりおおむね100〜150穿孔としています。摩耗した針は測定が不正確になるだけでなく装置の過負荷を招くため、ケヤキやカシのような硬い樹木では早めに交換します。

Q5. 硬い樹木を測るとき、送り速度と回転数はどう設定しますか?

A. 送り速度を落とし、回転数は上げる方向です。IML社のマニュアルは樹木診断の回転数を一般に2500rpmとし、簡易手順書は硬材の送り速度をStage 2(50cm/min)としています。研究でも、高密度材で低回転・高送りの組み合わせが過負荷を起こすことが確認されています。

Q6. テレスコープが正常に出てこないときはどうすればよいですか?

A. 無理に引っ張らず、そのまま修理に出します。引っ張ると内部のサポーターが曲がることがあります。IML社のFAQでも、針が噛み込まないようテレスコープを手で導き、送りユニットをゆっくり動かすよう指示されています。

Q7. Resi PD500のテレスコープを装着するときの注意点は何ですか?

A. PD500はテレスコープの押し込みがややシビアな構造です。下方向へ下がる際に線が見えなくなる位置まで完全に押し込みます。IML社の交換手順にも、しっかり押し込んで支持部にラッチが掛かったことを確認し、線を目印にするとあります。

Q8. 過負荷で途中停止した測定データは診断に使えますか?

A. 使いません。途中までの曲線であり、装置側に原因がある場合は貫入抵抗の値が本来より高く出ている可能性があります。原因を取り除いてから測り直します。なお、20mm以下で止まった測定は装置に保存されません。

Q9. 自動針後退(Automatic Needle Retraction)はどう設定すればよいですか?

A. IML社は後退長5〜10cmを推奨しています(初期値は5cm)。長すぎると、空洞を抜けた先で針が折れたときに針とテレスコープを損傷します。

Q10. Resi PDは自分で分解・修理してよいですか? 点検の頻度はどのくらいですか?

A. 針・テレスコープ・チャックの交換は利用者の作業として手順が用意されていますが、本体を開けてよいのはメーカーと認定サービスだけで、それ以外が開けると保証が失効します。点検は購入後1年以内に初回、以後は年1回が推奨されています。

 

出典・参考情報

 

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