樹上で動くときの基本は、ロープによる確保を地上に戻るまで外さないこと、そして2つ目の確保の手段を備えておくことです。連載「アーボリストの基礎」の第14回では、日本の法令と指針を先に、そのうえで国際アーボリカルチャー協会(ISA)などの基準とリダイレクトの意味を、樹木医が解説します。
この連載をお読みいただく前に
この記事は、ツリークライミングの仕組みと安全の考え方を紹介するものです。登り方や結び方の手順は載せていません。樹上での作業は、資格と経験のある指導者のもとで訓練を受けてから行うもので、記事だけを手がかりに木に登ることは、重大な事故につながるため決して行わないでください。
第12回と第13回では、樹上で体を支えるロープのシステム、MRS と SRT の仕組みを取り上げました。今回は、そのシステムに体を預けて樹上で動くときの決まりです。軸は2つあります。確保を外さないこと、そして2つ目の確保を備えておくことです。
「樹上では常に2点で確保する」という言い方を聞くことがあります。ただ、日本の指針や海外の基準を読み比べると、言い方は資料ごとに少しずつ違います。この回では、資料の言い方どおりに並べ、どこが共通しているのかを確かめます。位置を変えるときの体の動きや、ロープとランヤードの付け替えの手順は、指導者が現場で直接教えるもので、この記事には載せません。
樹上で「確保されている」とは ― 体と木をつなぐ線を切らさない
ツリークライミングで樹上に上がった職人は、体に着けたハーネスを、ロープやランヤードを経て木の支点につないでいます。この回でいう確保は、そうして体が木につながり、思わぬ動きや墜落から守られている状態のことです。体を木につなぐ線は、主に次の2つです。
| 名前 | 何と何をつなぐか | 主な役目 |
|---|---|---|
| メインロープ | 樹上の支点とハーネス | 体を支え、樹冠の中を動き、地上へ降りる |
| ワークポジショニング用ランヤード | 幹や枝とハーネス | 作業する位置で体をとどめ、両手を空ける/2つ目の確保になる |
出典: 労働安全衛生規則 第539条の2(ロープ高所作業の規則でいうメインロープ。樹上のメインロープがこれに当たるかは第20回)、厚生労働省「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(平成30年。ワークポジショニング)、ANSI Z133 改訂案(第2回公開レビュー版、2024年1月)、ペツル「ツリーケア カタログ 2026」(日本語版)
日本の法令と指針
日本の労働安全衛生規則は、高い所で墜落の危険がある作業では作業床を設けることを基本とし、それが難しいときは墜落制止用器具を使わせるなどの措置をとるよう定めています(第518条)。器具を使わせるときは、安全に取り付けるための設備を設け、器具と取付設備の異常の有無を随時点検することも求めています(第521条)。使うよう命じられた労働者は、使わなければなりません(第520条)。
厚生労働省の「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(平成30年)は、移動するときに使う「補助ロープ」を、絶えず取付設備とつながった状態を保つためのもの、と説明しています。ロープで体を支えて行う高所の作業(ロープ高所作業)の施行通達も、リトラクタ式の墜落阻止器具を複数使って付け替える場面について、昇り降りの間、常に器具につながった状態にするよう求めています。どちらも樹上作業を名指ししたものではありません。ただ、「つながりが切れる時間をつくらない」という考え方は、樹上で動くときの基本と同じです。樹上作業にどの決まりが当たるかは、第20回で書きます。
海外の基準
海外では、ISA が事務局を務める米国の樹木作業の安全基準 ANSI Z133 の改訂案(2024年1月の公開レビュー版)が、木を登る間は常に確保されていること、作業中は確保したままでいて、作業を終えて地上に戻るまで確保を外さないことを求めています。メインロープの位置を変えるときも、確保されていなければならないとしています。ISA の木登りの資格(ISA Certified Tree Climber)の試験の範囲も、支点を移すときを含めて、常に少なくとも1点で確かな支点に確保されていることを求めています。
メーカーの資料では、ペツルの「ツリーケア カタログ 2026」が、樹上では作業用ロープに体重を預けた状態で移動し、起こりうる墜落の距離を抑えるよう書いています。

当社の現場で、ハーネスとロープに体を預けて樹上にいる職人

樹冠の中を動く間も、メインロープとランヤードで体と木がつながっている
2つ目の確保を備える ― 身に着けて登り、刃物を使うときは2点で
日本の法令と指針
墜落制止用器具のガイドラインは、移動するときにフックを付け替える間の墜落を防ぐため、2つのフックを交互に使う「二丁掛け」が望ましいとしています。また、ロープやランヤードに体を預けて作業する「ワークポジショニング」の器具は、実際に墜落を防ぐ効果があるものの、墜落したときに止めるバックアップとして墜落制止用器具を併用する必要がある、としています。
ロープ高所作業では、労働安全衛生規則が、体を支えるメインロープとは別に、墜落制止用器具を取り付けるライフラインを設け(第539条の2)、2本をそれぞれ異なる支持物につなぐよう定めています(第539条の3)。体を支える線と墜落を止める線を分け、1本に頼らないという考え方です。ただし、ガイドラインもこれらの条文も、樹上作業を名指ししていません。
海外の基準
ANSI Z133 の改訂案は、登っている間、メインロープと、少なくとももう1つの確保の手段(例えばワークポジショニング用ランヤード)を、常に身に着けていなければならないとしています。2つの確保を実際に使うのは、アーボリストがそのほうが有利と判断したときと、樹上でチェーンソーを使うときです。チェーンソーを使う間は、メインロープで確保したうえで、少なくとももう1つの確保の手段を使うよう求めています。例外は、その場面では2つ目の確保のほうが危険が大きいと雇用主が示した場合だけです。
ISA の資格の試験の範囲は、常に少なくとも1点で確保されていることを基本とし、そのうえで、振れ・滑り・墜落を防ぐ方法として、2つ目の確保(ワークポジショニング用ランヤードか、もう1本のメインロープ)を使うことを、知っておくべき事柄に挙げています。
そのほかの基準とメーカーの資料
英国の安全衛生庁(HSE)は、ワークポジショニングでは可能なら荷重を受ける2つの支点につなぎ、墜落を防ぐか止めるバックアップを備えるよう案内しています。ペツルのカタログは、手鋸やチェーンソーなどの工具を使うときは、2つの独立した確保のシステムが必要としています。器具の取扱説明書も、作業する位置では、もう1つの器具か長さを変えられるランヤードを、別の支点にとるよう書いています。
| 資料 | 基本の決まり | 2つ目の確保 |
|---|---|---|
| 日本 墜落制止用器具のガイドライン | 移動の間も取付設備とつながった状態を保つ | 付け替えるときは二丁掛けが望ましい/ワークポジショニングの器具には墜落制止用器具を併用(樹上作業の名指しはない) |
| 日本 ロープ高所作業(労働安全衛生規則) | メインロープで体を保持する | ライフラインを別の支持物に設ける(樹上作業に当たるかは第20回) |
| ANSI Z133 改訂案(ISA が事務局) | 登る間も作業中も、地上に戻るまで常に確保 | 2つ目の手段を常に身に着ける/樹上でチェーンソーを使うときは2点/有利なときも2点 |
| ISA Certified Tree Climber の試験の範囲 | 常に少なくとも1点で確保 | 振れ・滑り・墜落を防ぐための2つ目の確保を知っておく |
| 英国 HSE | ワークポジショニングにはバックアップを備える | 可能なら2つの支点につなぐ |
| ペツル(メーカー) | 作業用ロープに体重を預けて移動する | 手鋸やチェーンソーを使うときは独立した2つの確保 |
出典: 厚生労働省「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(平成30年)、労働安全衛生規則、ANSI Z133 改訂案(第2回公開レビュー版、2024年1月)、ISA Certified Tree Climber Examination Outline、英国 HSE「Tree climbing」、ペツル「ツリーケア カタログ 2026」
並べてみると、今回確かめた資料の中に「常に2点」と一律に書いたものはありませんでした。どの資料にも共通しているのは、確保を切らさないことです。そのうえで、日本の墜落制止用器具のガイドラインは、移動して付け替えるときの二丁掛けを望ましいとしています。海外では、ANSI Z133 の改訂案が2つ目の確保の手段を常に身に着けておくことを求め、樹上でチェーンソーを使う間は2点で確保するとしています。ISA の資格の試験の範囲は、2つ目の確保を、振れ・滑り・墜落を防ぐために知っておく事柄に挙げています。ペツルのカタログは、手鋸やチェーンソーなどの工具を使うときに、独立した2つの確保が必要としています。
当社では、樹上にいる間は確保を外さず、2つ目の確保の手段を必ず身に着けて登り、刃物を使うときは2点で確保することを決まりにしています。

冬のケヤキで手鋸を使う作業員。メインロープとランヤードの2点で確保している

当社の現場で、松の樹上で作業する職人を下から見上げる
なぜ1本に頼らないのか ― つながりが失われる場面
確保は、木の支点、ロープ、器具、ハーネスとのつなぎ目が、1本の鎖のようにつながって成り立っています。どこか1か所が失われれば、その線は体を支えられなくなります。2つ目の確保は、1本目に何かが起きたときに、体を止めるもう1本の線です。
日本の災害の資料から
厚生労働省がロープ高所作業の規則を改正したときのパンフレット(平成27年)は、死亡災害の要因として、支持物からロープが外れた(ほどけた)、準備作業中や移動中に墜落した、ロープと安全帯の接続を外していた(つないでいなかった)、ロープが切れた、支持物ごと墜落した、などを挙げています。ビルの清掃やのり面の作業の災害で、樹木の作業ではありません。それでも、どれも「体を支える線が1か所で失われた」場面です。
| つながりの部分 | 失われ方の例 | 関係する決まり |
|---|---|---|
| 支点(枝・幹・支持物) | ロープが外れる/支点ごと落ちる | 支点を登る前に確かめる(第10回) |
| ロープ・ランヤード | 切れる | 刃とロープを離す(第16回) |
| 器具 | 枝やロープが当たって、意図しない力が加わる | 器具と周りの枝・ロープに注意する(メーカーの取扱説明書) |
| つなぎ目 | 接続を外している/つないでいない | 地上に戻るまで確保を外さない |
| 動いている間 | 移動中に墜落する | 位置を変えるときも確保を切らさない |
出典: 厚生労働省「ロープ高所作業での危険防止のため労働安全衛生規則を改正します」(平成27年8月)、ANSI Z133 改訂案、ペツル「ZIGZAG / ZIGZAG PLUS / CHICANE 取扱説明書」

なぜ1本に頼らないのか。2つ目の確保は、1本目に何かが起きたときに体を止めるもう1本の線
刃物を使う場面
チェーンソーや手鋸を使う場面は、自分の確保の線のすぐ近くに刃がある場面でもあります。ペツルのカタログには、ランヤードを切ってしまうリスクを抑えるため、芯に金属のケーブルを入れたランヤードが載っています。一方で ANSI Z133 の改訂案は、芯に鋼線が入ったワークポジショニング用ランヤードを、電気が通っている設備や電線の近くで使わないよう定めています。器具の取扱説明書も、複数の器具を同時に使うと、1つの器具の安全性が別の器具で損なわれることがあると注意しています。1つの備えが別の危険を生むこともある、ということです。刃とロープの位置の決まりは、第16回で書きます。
海外の基準が挙げる「振れ・滑り・墜落を防ぐ」知識
ISA の資格の試験の範囲は、振れ・滑り・墜落を防ぐ方法として、次のような事柄を挙げています。
- ロープのシステムを適切な角度にすること
- 支点より上に登らないこと
- システムにたるみをためないこと
- 2つ目の確保(ワークポジショニング用ランヤードか、もう1本のメインロープ)を使うこと
2つ目の確保は、ほかの決まりと組になって働くものだと、この並びから読み取れます。
支点の位置と、ロープの向きを変える(リダイレクト)
支点は体より上に、振れない所に
日本の墜落制止用器具のガイドラインは、取付設備は原則として頭上のものを選び、墜落したときに振り子のように振れて物にぶつからない場所に取り付けるよう求めています。これも樹上作業を名指しした指針ではありませんが、体を支える点の位置を選ぶときの考え方として共通しています。
海外では、ANSI Z133 の改訂案が、支点はアーボリストが制御できない振れにさらされない位置にすること、メインロープが横へずれ動かない支点を選ぶことを求めています。電気の章では、支点を作業位置より上にとり、電気が通っている電線やほかの危険の方へ振れない位置にするよう勧めています。ペツルの取扱説明書も、アンカー(支点)はできる限り体より上にとるよう書いています。体を預ける枝そのものを樹木医の目で確かめることは、第10回で取り上げました。

支点から離れるほど、メインロープは斜めになる
リダイレクト ― ロープの向きを変える意味
日本では、ロープ高所作業の施行通達が、メインロープを切れるおそれのある所から離すため、別の支持物や滑車、カラビナなどでロープの位置と方向を変える措置を「ディビエーション技術」と呼んでいます。樹上作業を名指ししたものではありませんが、ロープの向きを変えて危ない所から離すという考え方は、リダイレクトに近いものです。
リダイレクト(redirect)は、英語で「向きを変える」という意味です。海外では、ANSI Z133 の改訂案が、リダイレクトの決まりの中で、元の支点とは別にロープを受け持つ点を「二次の吊り点」(secondary suspension point)と呼んでいます。
同じ改訂案は、枝の分かれ目の代わりに人工の支点をリダイレクトとして使ってよいとしたうえで、外れない形にすること、力に耐える点に付けることを求めています。ISA の資格の試験の範囲は、地上まで降りる道筋が途切れないよう、枝の周りにロープをリダイレクトすることを、身につける技能に挙げています。資料で言えることを表にまとめます。
| リダイレクトについて資料で言えること | 出典 |
|---|---|
| ロープの位置と方向を変えて、切れるおそれのある所から離す(ディビエーション技術) | 日本 ロープ高所作業の施行通達(平成27年) |
| 枝の分かれ目の代わりに、人工の支点をリダイレクトとして使ってよい | ANSI Z133 改訂案 |
| 部品が二次の吊り点から意図せず外れる形にしない | ANSI Z133 改訂案 |
| 登はんで加わる力に耐える点に付け、元の支点に過大な負担をかけない | ANSI Z133 改訂案 |
| 地上まで降りる道筋を途切れさせない | ISA Certified Tree Climber の試験の範囲 |
出典: 厚生労働省 ロープ高所作業に関する労働安全衛生規則の改正の施行通達(平成27年8月5日 基発0805第1号)、ANSI Z133 改訂案(第2回公開レビュー版、2024年1月)、ISA Certified Tree Climber Examination Outline
リダイレクトを作ると、ロープの通り道に、体を支える点が1つ増えます。増えた点も支点と同じように、外れない形か、力に耐えるかを確かめる対象になる、というのが改訂案の決まりの意味だと私は読んでいます。リダイレクトの組み方は、この記事には書きません。

リダイレクトの考え方。支点から下りるメインロープが、二次の吊り点で向きを変える
樹上で動くときの決まり ― 一覧
ここまでの決まりを一覧にします。日本の欄は、どれも樹上作業を名指ししたものではなく、考え方が共通する指針や通達です。
| 決まり | 日本の法令・指針 | 海外の基準・メーカー |
|---|---|---|
| 確保は地上に戻るまで外さない | 移動の間もつながった状態を保つ考え方(ガイドライン)、付け替えの間も器具につながった状態にする(ロープ高所作業の通達、リトラクタ式の器具を複数使う場面) | ANSI Z133 改訂案 |
| 位置を変えるときも確保を切らさない | 付け替えるときは二丁掛けが望ましい(ガイドライン) | ANSI Z133 改訂案/ISA の試験の範囲 |
| 2つ目の確保の手段を常に身に着ける | ワークポジショニングの器具には墜落制止用器具を併用(ガイドライン) | ANSI Z133 改訂案 |
| チェーンソーなどを使うときは2点で確保する | 名指しの決まりはない | ANSI Z133 改訂案/ペツルのカタログ |
| 支点は体より上に、振れない位置にとる | 取付設備は原則として頭上、振れて物にぶつからない場所(ガイドライン) | ANSI Z133 改訂案/ペツルの取扱説明書 |
| リダイレクトは外れない形にし、力に耐える点に付ける | ディビエーション技術(ロープ高所作業の通達) | ANSI Z133 改訂案 |
| 器具に枝やロープが当たらないよう注意する | 名指しの決まりはない | ペツルの取扱説明書 |
出典: 本文の各節と同じ(下の「出典・参考情報」)
職人の視点 ― 腰縄の時代から変わらない「木から離れない」こと
第1回で書いたとおり、私が修業時代から見てきた現場では、植木職人は腰縄で体を幹や枝にとどめ、両手を空けて仕事をしてきました。縄がハーネスとロープの仕組みに変わっても、体を木から離さないという考え方そのものは変わっていません。
現場での経験から言うと、気が緩みやすいのは、枝を切っている最中より、次の枝へ動き出すときや、位置を変えるときです。目の前の仕事に気持ちが向いているほど、自分がいまどの線で木につながっているかを忘れやすくなります。私は、動く前に、いま自分を支えている線がどこにつながっているかを確かめることを習慣にしています。
2つ目の確保の手段は、実際には使わずに終わる時間のほうが長い道具です。それでも身に着けて登るのは、要る場面が来たときに手の届く所に無ければ、役に立たないからです。
新人のための確認
この回で覚える名前
- 確保(体が木につながり、思わぬ動きや墜落から守られている状態)
- メインロープと、ワークポジショニング用ランヤード
- 補助ロープと二丁掛け(墜落制止用器具のガイドラインの言葉)
- メインロープとライフライン(ロープ高所作業の言葉)
- 支点・人工の支点・二次の吊り点
- リダイレクトと、ディビエーション技術
- 海外の基準と資格の名前: ANSI Z133・ISA Certified Tree Climber
理解しておく考え方・決まり
- 確保は、地上に戻るまで外さない。位置を変えるときも切らさない
- 2つ目の確保の手段は、常に身に着けて登る
- チェーンソーや手鋸などの刃物を使うときは、2点で確保する
- 確保は支点・ロープ・器具・つなぎ目の鎖。どこか1か所が失われれば、その線は体を支えられない
- 支点は体より上に、振れない位置にとる
- リダイレクトで増えた点も、支点と同じく確かめる対象になる
- 1つの備えが別の危険を生むことがある(芯に鋼線の入ったランヤードと電線など)
指導者のもとで習う項目
- 樹上で位置を変えるときの確保の付け替え
- 2つ目の確保のとり方
- 支点とリダイレクトの選び方と組み方
- 当社で使うランヤードと器具
よくある質問(Q&A)
Q1. 樹上作業でいう「確保」とは何ですか?
A. 体に着けたハーネスが、ロープやランヤードを経て木の支点につながり、思わぬ動きや墜落から体が守られている状態のことです。日本の墜落制止用器具のガイドラインは、移動の間に取付設備とつながった状態を保つ考え方を示しています(樹上作業を名指ししたものではありません)。海外では、米国の安全基準 ANSI Z133 の改訂案が、木を登る間は常に確保され、作業を終えて地上に戻るまで確保を外さないことを求めています。
Q2. 樹上では、常に2点で確保しているのですか?
A. 資料によって言い方が違います。日本の墜落制止用器具のガイドラインは、移動して付け替えるときの二丁掛けが望ましいとしています。海外では、ANSI Z133 の改訂案が、常に確保されていることを基本に、2つ目の確保の手段を常に身に着け、樹上でチェーンソーを使うときは2点で確保するよう求めています。ペツルのカタログは、手鋸やチェーンソーを使うときは2つの独立した確保が必要としています。
Q3. リダイレクトとは何ですか?
A. 英語で「向きを変える」という意味の言葉です。日本では、ロープ高所作業の通達に、ロープを切れるおそれのある所から離すため、ロープの位置と方向を変える「ディビエーション技術」という考え方があります(樹上作業を名指ししたものではありません)。海外では、ANSI Z133 の改訂案が、リダイレクトを意図せず外れない形にし、登はんで加わる力に耐える点に付け、元の支点に過大な負担をかけないよう求めています。
Q4. 日本の法令では、樹上作業の確保はどう決まっていますか?
A. 樹上作業を名指しした条文はありません。労働安全衛生規則は、墜落の危険がある作業で墜落制止用器具を使わせ、取り付ける設備と器具を随時点検するよう定めています。ロープ高所作業では、体を支えるメインロープと墜落を止めるライフラインを、別々の支持物につなぐよう定めています。樹上作業にどの決まりが当たるかは、連載の第20回で書きます。
Q5. この記事を読んで、自分で木に登ってもよいですか?
A. 記事だけを手がかりに木に登ることは、重大な事故につながるため行わないでください。この連載は仕組みと安全の考え方を紹介するもので、登り方や結び方の手順は載せていません。樹上での作業は、資格と経験のある指導者のもとで訓練を受けてから行うものです。高い木の手入れでお困りの場合は、専門の業者にご相談ください。
出典・参考情報
- e-Gov 法令検索「労働安全衛生規則」(第518条、第520条、第521条、第539条の2、第539条の3)
- 厚生労働省「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(平成30年6月22日 基発0622第2号)
- 厚生労働省 ロープ高所作業に関する労働安全衛生規則の改正の施行通達(平成27年8月5日 基発0805第1号。中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター)
- 厚生労働省「ロープ高所作業での危険防止のため労働安全衛生規則を改正します」(平成27年8月)
- International Society of Arboriculture「ANSI Z133 改訂案(第2回公開レビュー版、2024年1月)」(最新版は Z133-2026。本文の記述は改訂案による)
- International Society of Arboriculture「ISA Certified Tree Climber Examination Outline」
- Health and Safety Executive(英国)「Tree climbing」
- ペツル「ZIGZAG / ZIGZAG PLUS / CHICANE 取扱説明書」(日本語)、「ツリーケア カタログ 2026」(日本語版)
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次回の第15回は、降りるときの決まりを取り上げます。降りるときに何を管理するのか、そして地上と何を確かめるのかを書きます。
この連載をお読みいただく方へ
この記事は、ツリークライミングの仕組みと安全の考え方を紹介するものです。登り方や結び方の手順は載せていません。樹上での作業は、資格と経験のある指導者のもとで訓練を受けてから行うもので、記事だけを手がかりに木に登ることは、重大な事故につながるため決して行わないでください。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
※ 「アーボリスト」は、株式会社ツリークライミングワールドの登録商標です。当社の記事では、樹木の手入れを専門とする職業(英語の arborist)を指す言葉として使っています。
※ 「ツリークライミング」は、株式会社ツリークライミングワールドの登録商標です。当社の記事では、ロープとハーネスで樹木に登って作業する技術を指す言葉として使っています。
連載「アーボリストの基礎」のすべての回は、連載の一覧からご覧いただけます。

































