VTA(Visual Tree Assessment)で見る症状のうち、キノコ(子実体)、腐朽の型と進む向き、二又の入り皮、根元の地割れと根張り、枝の付け根の膨らみを取り上げます。カールスルーエ工科大学の資料、東京都・国の手引き、論文で確かめた内容を、樹木医が解説します。
連載「マテック博士と VTA 法」の第5回です。第4回の膨らみと亀裂に続き、今回は幹の内側の腐朽を知らせる症状と、力が集まる「付け根」の症状です。症状の名前は、マテック(Mattheck)氏らがカールスルーエ工科大学(KIT)で公開している図「VTA – Symptoms」(2018年)の英語名で書き、日本語は東京都や国の手引きの言葉を出典つきで使います。
先に答え
- キノコ(子実体)は、中で腐朽が進んでいる知らせです。ただし、キノコが出ていないのに腐朽している樹木の方が多いと、東京都のマニュアルは書いています。
- 腐朽には、材が褐色になって割れる褐色腐朽と、白っぽくスポンジ状になる白色腐朽があり、材の壊れ方が違います。
- 腐朽は幹の中を上下に広がりやすく、内側へ、横へと進むほど止められやすい。これが CODIT(樹木の腐朽の区画化)の考え方です。
- 二又の股に樹皮が挟まった「入り皮」は、挟まっていない二又より弱いことが、試験で確かめられています。
- 根元の地割れや揺らぎ、枝の付け根の膨らみも、VTA の図に描かれた症状です。枝の付け根については、剪定で傷つけてはいけないブランチカラー(枝の襟)のつくりも紹介します。どれも、ほかの症状や機器診断と重ねて読みます。

この回で取り上げる症状の位置。枯れ枝のキノコ、根元のキノコ、二又の股、枝の付け根、根元の根と地面(症状名は KIT「VTA – Symptoms」2018 の英語名による。イラストは当社作成)
キノコ(子実体)は、内部の腐朽の知らせ
KIT の図には、キノコが2か所に描かれています。ひとつは「Fungus fruit-body (parasite)」として幹の根元近くに、もうひとつは「Fungus fruit-body (saprophyt)」として枯れ枝の上にあります。生きている組織にも入り込む菌と、死んだ組織だけを分解する菌を描き分けたものと読めます。図には説明文が無いので、ここでは図の上の位置と名前から読める範囲にとどめます。
この区別は、東京都の令和3年度 街路樹診断等マニュアル(以下、東京都のマニュアル)の説明と重なります。マニュアルは「キノコ(子実体)」を外観診断の項目に置き、多くの木材腐朽菌は樹木の死んだ組織を分解するが、ベッコウタケやナラタケのように条件によっては生きた組織にも入る種がある、と書いています。菌の入口は、剪定の跡、根の切断の跡、交通事故の傷、枯れた部分などです(p.28)。
キノコで注意したいのは、キノコが「見えたら腐朽、見えなければ健全」ではないことです。東京都のマニュアルの用語集は、現実には腐朽した材だけがあってキノコを形成していない場合の方が多い、としています(参考資料 p.117)。国土技術政策総合研究所(国総研)の『街路樹の倒伏対策の手引き』第2版(2019年)も、ベッコウタケとコフキタケについて、子実体が出た時点ですでに樹体内で腐朽が進行していると書いています(別冊 p.1-53)。キノコを見つけたら、腐朽の始まりではなく、中で進んだ腐朽が外に顔を出した姿だと考えておく方が安全です。

外に見えるキノコは小さくても、幹の中の腐朽はその上下に広がっていることがある(模式図。当社作成)
どこに出たかでも、読み方が変わります。東京都のマニュアルは、部位ごとに見られるキノコと、腐朽による危険を表にしています(p.29 表III-2・8)。要点を抜き出すと、次のとおりです。
| キノコの出た部位 | 見られるキノコの例 | 腐朽による危険 |
|---|---|---|
| 大枝 | カワラタケ、スエヒロタケ、カワウソタケなど | 落枝 |
| 幹 | コフキタケ、シイサルノコシカケ、チャアナタケモドキなど | 幹折れ |
| 根元や幹の下部 | ベッコウタケ、コフキタケ、ナラタケ、ナラタケモドキなど | 根返り(倒木) |
出典は東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」p.29 表III-2・8(一部を抜き出し)。同じ表は、コフキタケが出たら必ず機器診断を、根株にベッコウタケが出たら必ず根株診断を行うとしています。

キノコの出た部位と、起こりやすい壊れ方。大枝なら落枝、幹なら幹折れ、根元なら根返り(東京都 令和3年度 街路樹診断等マニュアル p.29 による。イラストは当社作成)
腐朽の型──褐色腐朽・白色腐朽で、壊れ方が違う
キノコの種類が分かると、その菌がどんな腐朽を起こすかの見当がつきます。米国農務省 林産研究所の『Wood Handbook』(2010年)は、木材を腐らせる菌による腐朽を、次のように分けています(第14章 p.14-3〜14-4)。
| 腐朽の型 | 主に分解されるもの | 材の見え方 |
|---|---|---|
| 褐色腐朽 | セルロース(リグニンは残る) | 褐色になり、繊維を横切って割れ、縮み、つぶすと粉になる |
| 白色腐朽 | リグニンとセルロース | 白っぽくなり、繊維を横切っては割れず、スポンジ状に感じる |
| 軟腐朽 | (カビに近い菌による) | 表面に浅く、湿ると柔らかい |
出典は USDA Forest Products Laboratory「Wood Handbook」(2010)第14章 p.14-3〜14-4。Wood Handbook は、褐色腐朽菌は針葉樹に、白色腐朽菌は広葉樹に多いが、どちらも両方に出ることがある、としています。

腐朽の型による材の見え方の違い。褐色腐朽は縦横に割れて角張って砕け、白色腐朽は白っぽくスポンジ状になる。軟腐朽は表面に浅い(Wood Handbook 2010 第14章と東京都 参考資料 p.126 による。当社作成の図)
日本の手引きも同じ分け方です。国土交通省の『都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)参考資料』(令和8年3月30日改訂)は、白色腐朽の腐朽面に「帯線」と呼ばれる黒い不規則な線ができ、褐色腐朽には無いことを挙げています(p.16)。
なお、東京都の参考資料は、白色腐朽を p.105 では「セルロース類とリグニンの両方を分解」、用語集(p.120)では「リグニンの方を早く分解」と説明しており、資料によって言い方が少し違います。
壊れ方の違いは、樹木の危険の読み方にも関わります。マテック氏らは、成長錐で抜いた木材の芯を折る試験の論文で、初期の褐色腐朽の材は小さな角度(樹種により10〜15°)で脆く折れ、リグニンを先に分解する型の白色腐朽の材は大きく曲がって(25〜35°)から折れる、と説明しています(Mattheck ら 1995)。キノコの種類から腐朽の型を知ることは、その樹木が「前触れなく折れやすいか」を考える手がかりになります。
腐朽の進む向き──上下へ広がりやすく、内へ・横へは止められやすい
腐朽がどの向きに広がるかについては、米国農務省森林局のシャイゴ(Shigo)氏とマルクス(Marx)氏の CODIT(Compartmentalization of Decay in Trees、樹木の腐朽の区画化)の報告(1977年)が基本の資料です。樹木は傷を受けると、材の中に壁をつくって菌の広がりを区画に閉じ込めようとします。報告は、その壁を次の4つに分けています(p.13)。
| 壁 | 場所 | 強さ(報告の表現) |
|---|---|---|
| Wall 1 | 区画の上と下(道管・仮道管がふさがってできる) | いちばん弱い |
| Wall 2 | 区画の内側(年輪の境) | 2番目に弱い |
| Wall 3 | 区画の横(放射組織) | かなり強いが、途切れがある |
| Wall 4 | 傷の後に形成層がつくる壁(バリアゾーン) | いちばん強い |
出典は Shigo, A.L. & Marx, H.G.(1977)Compartmentalization of decay in trees. USDA Forest Service, Agriculture Information Bulletin 405。報告は、壁は絶対ではないとも書いています。

CODIT の4つの壁。上下(Wall 1)が最も弱く、内側(Wall 2)、横(Wall 3)の順に強くなり、傷の後にできる壁(Wall 4)が最も強い(Shigo & Marx 1977 による。当社作成の図)
この並びから、腐朽は幹の中を上下に長く伸び、内側へ、横へと進むほど止められやすいことが分かります。傷の後に育った外側の年輪は、Wall 4 に守られます。
東京都のマニュアルは、幹の傷から入る樹幹腐朽と、根の傷から入って根株から幹へ進む根株腐朽を分けています(参考資料 p.104)。国総研の手引きは、ベッコウタケは根や地際の傷から入って時間とともに幹の上方へ、コフキタケは上下方向に広がる、と書いています(別冊 p.1-53)。根元のキノコを見たら幹の上の方も、枝の古い傷を見たらその上下も疑う、という読み方になります。

腐朽の入口と進む向き。根の傷から入る根株腐朽は根株から幹へ、枝や剪定の傷から入る樹幹腐朽は傷の上下へ広がる(東京都 参考資料 p.104、国総研 2019 別冊 p.1-53、Shigo & Marx 1977 による模式図。当社作成)
二又の股──圧縮フォークと入り皮
KIT の図には「Compression fork」と「Included bark split」が描かれています。どちらも、二又の股に描かれた症状です。マテック氏らが2011年に KIT で公開した、診断用の型紙の道具を紹介するポスターには、二又の開きの角度が25°より小さければふつう入り皮があり、25°より大きければふつう入り皮が無い、という目安が載っています。同じポスターは、この道具が示すのは力学の一面にすぎず、樹種の性質や個々の樹木の事情を合わせて見るように、と念を押しています。
入り皮(included bark)は、股の中で樹皮が2本のあいだに挟まり、材どうしがつながっていない状態です。シャイゴ氏は1985年の論文で、股の中で樹皮が枝と幹を隔てている配置を included bark と呼んでいます(p.1395)。東京都のマニュアルの用語集も、分岐部で樹皮が互いに圧迫し合い、組織が完全につながらずに内部に樹皮が残された状態を入り皮とし、風や雪で亀裂が入って裂けたり折れたりすることがある、としています(参考資料 p.117)。

二又の股の見え方。股に樹皮の盛り上がり(バークリッジ)がある U 字の二又(左)と、樹皮が挟み込まれた V 字の二又(右)(イラストは当社作成)
入り皮の二又が弱いことは、試験で確かめられています。スマイリー(Smiley)氏は、伐採したアカカエデ26本から84の二又を切り出し、力をかけて引き離しました。入り皮のある二又は、入り皮の無い二又より統計的に有意に弱く、その差は細い幹ほど大きかったと報告しています(2003年)。スレーター(Slater)氏とエノス(Ennos)氏は、若いヘーゼル(セイヨウハシバミ)の二又241個(うち入り皮106個)を折る試験で、入り皮の二又の強さ(破壊係数)が24%低いことを示しました。同じ入り皮でも、挟まった樹皮が材に一部包まれた「カップ形」のものは、樹皮が股の頂点まで達しているものより約36%強く、入り皮の程度で強さが変わるとしています(2015年)。

二又の縦断面の比べ。材がつながった二又(左)、樹皮が股の頂点まで挟まった入り皮(中)、挟まった樹皮が材に一部包まれた入り皮(右)(Slater & Ennos 2015 の比較の考え方による模式図。当社作成)
日本の手引きでも、入り皮は点検の項目です。東京都のマニュアルは「分岐部・付根の異常」の項目で、亀裂や入り皮の幹や大枝は、風や雪だけでなく初夏の葉の重さでも折れることがある、と書いています(p.33)。国土交通省の参考資料は、挟まった樹皮はくさびのような形で、強風でわずかにつながっている両脇の材から裂けることや、腐朽菌の入口にもなりやすいことを挙げています(p.18)。
「Compression fork」は、KIT の図に説明文が無いため、ここでは名前の紹介にとどめます。
根元と根──地割れ、揺らぎ、切られた根、太る根
KIT の図の根元には、地面の割れ目が2種類(Radial soil crack、Circumferential soil crack。放射状と円周状)と、「Water tap – root damage?」があります。後者は、地中に管が通る水道の蛇口の横に描かれ、原文でも「?」付きで、根の傷みを疑う症状として挙げられています。別の図には「Busy root adapts to increased load」として、力を多く受ける根が太く育つ様子が描かれています。第2回で取り上げた一様応力の考え方とつながる症状です。
根元は、東京都のマニュアルでもとくに注意して見る所です。マニュアルは、根元を地際から高さ20cm程度のルートカラー部までとし、根元は風圧を受けたときに最も力が加わる場所で、倒木被害のほとんどは根元からの幹折れや根返りによる、としています(p.20)。KIT の図の症状は、マニュアルの次の項目と見る所が重なります。
| KIT の図の症状(英語名) | 東京都・国の手引きで近い項目 | 手引きが見ること |
|---|---|---|
| Radial soil crack、Circumferential soil crack、Soil crack | 根元の揺らぎ(東京都 p.36) | 地面の地割れの有無と、幹を押したときの揺れ |
| Water tap – root damage? | 露出根被害(東京都 p.40) | 切られた根の切断面から入る腐朽菌 |
| Busy root adapts to increased load | 根張り(ルートカラー)(国交省 参考資料 p.19、東京都 p.39) | 根張りが見えるか、見えなければ深植えや盛土を疑う |
表の対応は当社の整理です。KIT の図には説明文が無いため、症状の意味の細部には立ち入っていません。

根元の見どころ。根張り(ルートカラー)が見えるか、地面に割れ目が無いか、工事などで切られた根が無いか、力を多く受けて太る根が無いか(東京都 令和3年度 街路樹診断等マニュアル p.20・p.36・p.39・p.40 と KIT「VTA – Symptoms」2018 による。イラストは当社作成)
揺らぎは、地面の地割れの有無と、幹に両手をついて体重をかけて押したときの揺れで確かめ、揺れがあれば根域の狭さや根系の腐朽を疑って地際を掘り下げます(東京都 p.36)。国総研の手引きは、根元の土ごと大きく揺れるもの、根株や根系と土壌のあいだに明らかな隙間があるものを、外観診断で「大」とする目安に挙げています(別冊 p.1-50)。
枝の付け根──枝の襟(ブランチカラー)と保護帯
KIT の図には「Branch shedding collar」「Shedding collar」という症状があります。直訳すれば「枝を落とすための襟」で、枝の付け根を取り巻く盛り上がりとして描かれています。図には説明文が無いので、ここでは、枝の付け根のつくりを調べた研究から、この盛り上がりが何であるかを見ておきます。
シャイゴ氏は1985年の論文で、枝が幹にどう付いているかをまとめました。枝の付け根では、枝の木部が下向きに曲がって付け根を取り巻き、膨らんだ「枝の襟(branch collar)」をつくり、その上を幹の木部の襟(trunk collar)が毎年包みます(p.1391・p.1395)。付け根には菌を抑える物質を含む「保護帯(protection zone)」があり、枯れ枝に入った腐朽菌はふつう保護帯を越えず、枯れ枝は保護帯の位置で落ちる、としています。剪定で幹の襟を傷つけると切り口の上下の幹に腐朽が広がり、傷つけなかった切り口では幹の材に感染が起きなかった、とも報告しています(p.1391)。

枝の付け根の縦断面。枝の襟を幹の襟が包み、付け根に保護帯がある。枯れ枝は保護帯の位置で落ちる。上側の樹皮の盛り上がりがバークリッジ(Shigo 1985 と東京都 令和3年度 街路樹診断等マニュアル p.71 による模式図。当社作成)
東京都のマニュアルは、剪定の正しい位置の説明で、枝の付根の下部にある膨らみをブランチカラーと呼び、ここに腐朽を食い止める防御帯が形成されるので切り落としたり傷つけたりしない、付根の上部のバークリッジも傷つけない、としています(p.71)。シャイゴ氏の研究では、枯れ枝は付け根の保護帯の位置で落ちます。マテック氏の図の「Shedding collar」がこの仕組みとどう関わる症状なのかは、KIT の図に説明が無いため、ここでは断定しません。
症状は、重ねて読む
今回の症状は、どれも「その症状があれば即危険」という読み方をしません。キノコは出ていないことの方が多く、二又の角度の目安も決まりごとではなく、根元の揺らぎは根域の狭さでも腐朽でも起こります。VTA は、外に現れた症状から中で起きていることの仮説を立て、疑いがあれば詳しく調べる順番の考え方です(第3回)。
当社の外観診断も、この順番で進めています。キノコや入り皮、根元の異常を見つけたら、その部位をレジ(Resi PD)やピカスなどの機器で確かめ、腐朽の広がりを数字で見ます。レジで仮説を確かめる考え方や、t/R率と腐朽空洞率の読み方(街路樹診断で何を見ているか(後編))も、あわせてご覧ください。キノコが出たから伐る、入り皮だから伐る、ではなく、安全の確保と樹木を残す努力の両方を、症状と数値を重ねて考えていきます。
株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医が外観診断から機器診断、報告書の作成、その後の管理計画までを一貫して担当しています。ご依頼は、マンション管理組合様、学校施設、寺社の御神木など様々です。根元のキノコや二又の割れ目など、気になる症状がある樹木がありましたら、樹木診断のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
次回の第6回は、腐朽した幹がどこまで持つかの目安として知られる t/R(残存壁厚÷半径)= 0.3 を、元の研究と日本の手引きから読み解きます。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくあるご質問(VTA の腐朽・菌・付け根の症状について)
Q1. 樹木にキノコが生えていたら、すぐに危ないのですか?
A. キノコは、幹や根の中で腐朽が進んでいる知らせです。ただ、危険の大きさは、出た部位、菌の種類、腐朽の広がりで変わります。東京都のマニュアルは、根元のベッコウタケには根株診断、コフキタケには機器診断を必ず行うとしています。まずは樹木医が外観と機器で腐朽の広がりを確かめます。
Q2. キノコが出ていなければ、腐朽していないと考えてよいですか?
A. そうとは言えません。東京都のマニュアルの用語集は、腐朽した材だけがあってキノコを形成していない場合の方が多いとしています。木槌の打音、鋼棒、根元の掘り下げ、樹勢などを合わせて見ます。
Q3. 褐色腐朽と白色腐朽は、何が違いますか?
A. 褐色腐朽は主にセルロースが分解され、材は褐色になって縦横に割れます。白色腐朽はリグニンとセルロースが分解され、材は白っぽくスポンジ状になります。初期の褐色腐朽の材は小さな角度で脆く折れ、初期の白色腐朽の一部は大きく曲がってから折れるという研究があります。
Q4. 腐朽は樹木の中でどの向きに広がりますか?
A. 米国農務省森林局の CODIT の報告では、樹木が菌を閉じ込める壁のうち上下の壁が最も弱く、内側、横の順に強くなり、傷の後に形成層がつくる壁が最も強いとされます。そのため、腐朽は幹の中を上下に長く伸びやすくなります。
Q5. 二又の「入り皮」とは何ですか?危ないのですか?
A. 2本の幹や枝の股に樹皮が挟まり、材どうしがつながっていない状態です。引き離す試験で、入り皮のある二又は無い二又より弱いことが確かめられています。挟まった樹皮が材に一部包まれた二又は、樹皮が股の頂点まで達したものより強いという研究もあり、程度を見て判断します。
Q6. 枝の付け根の膨らみ(ブランチカラー)は、異常ですか?
A. 異常ではありません。枝の付け根を取り巻く膨らみで、腐朽を食い止める保護帯があります。剪定でこの部分を削ると、幹の材に腐朽が広がりやすくなることが研究で示されています。外観診断では、古い切り跡がこの膨らみを傷つけていないかを見ます。
出典・参考情報
マテック氏らの資料(いずれも2026年10月に確認。図の転載はしていません)
・Mattheck, C., Bethge, K. & Weber, K.(2018)VTA – Symptoms: At a glance. Karlsruhe Institute of Technology(KIT), Institute for Applied Materials(1枚の図。症状名の英語名)
・Mattheck, C., Bethge, K. & Weber, K.(2018)10 VTA – Symptoms: Cracks in trees. KIT
・Mattheck, C., Bethge, K. & Weber, K.(2018)10 VTA – Symptoms: Growth striations and bark aspects. KIT
・Mattheck, C. & Bethge, K.(2011)A new multi-purpose tool for tree diagnosis. KIT(二又の角度と入り皮の目安)
・Mattheck, C., Breloer, H., Bethge, K., Albrecht, W. & Zipse, A.(1995)Use of the Fractometer to determine the strength of wood with incipient decay. Journal of Arboriculture 21(3): 105–112
研究
・Shigo, A.L. & Marx, H.G.(1977)Compartmentalization of decay in trees. USDA Forest Service, Agriculture Information Bulletin 405
・Shigo, A.L.(1985)How tree branches are attached to trunks. Canadian Journal of Botany 63: 1391–1401
・Smiley, E.T.(2003)Does included bark reduce the strength of codominant stems? Journal of Arboriculture 29(2): 104–106(本文で確認)
・Slater, D. & Ennos, R.(2015)The level of occlusion of included bark affects the strength of bifurcations in hazel(Corylus avellana L.). Arboriculture & Urban Forestry 41(4): 194–207(要旨で確認)
・Clausen, C.A.(2010)Biodeterioration of wood. In: Wood Handbook, FPL-GTR-190, Chapter 14. USDA Forest Service, Forest Products Laboratory(p.14-3〜14-4)
行政の資料
・東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」 外観診断の部位(p.20)、キノコ(子実体)(p.28〜30)、分岐部・付根の異常(p.33)、根元の揺らぎ(p.36)、鋼棒貫入異常(p.37)、ルートカラー(p.39)、露出根被害(p.40)、正しい剪定位置(p.71)、参考資料の病害虫(p.104〜105)、用語集(p.117・p.120)、事例集(p.126)
・国土交通省「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)参考資料」(平成29年9月、令和8年3月30日改訂) 腐朽の型と特徴(p.16)、結合部の変状及び異常(p.18)、根張り(ルートカラー)(p.19)
・国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」(国総研資料 第1059号、2019年) 本編 脆弱な分岐部(p.1-20)・剪定の位置(p.1-85)、別冊「街路樹の点検・診断」外観診断結果の目安(p.1-50〜1-51)・木材腐朽菌(p.1-53)
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連載
外観診断・機器診断
・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(後編) 機器診断のt/R率と腐朽空洞率、総合判定、処置、フォローアップ診断
・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(前編) 東京都の街路樹診断等マニュアルの流れで、樹木点検と外観診断の18項目を解説
・レジ(Resi PD)の根株診断カルテの読み方 俯角40度・補正直径・未測定部分を、実際のカルテで樹木医が解説
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・ピカス(PiCUS)とは何か。音波と電気抵抗で幹の断面を診る樹木診断機器を、樹木医が解説します
・樹木診断機器 IML社製 レジ(Resi PD)について
・ベッコウタケとは──サクラの根を腐らせるキノコと倒木、見つけたときの診断を樹木医が解説(東京都杉並区の倒木の事例)
機器診断の記録
・【ツリーケア最前線】樹木医が語るレジ(Resi PD)診断とロープワークの統合 相模原市での樹木診断レポート
・区保存樹木イチョウ 樹木医・高所外観診断 東京都
サービス
※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。
































